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元麻布春男の週刊PCホットライン

Intel 815/815Eチップセットは市場の期待通りの性能か?


●Intel 820の失敗で空席になったIntel 440BX後継チップセット

 先日、筆者が秋葉原の店頭で販売されているマザーボードを見たところ、チップセットのシェアはApollo Pro133A、Apollo KX133、Intel 440BXが3強だった。これは、あくまでも筆者の感覚によるランキングだし、秋葉原という特殊な場所の事情も絡んでいるハズだ。それを加味しても、上位の2つをVIA Technologies製が占めるというのは、しばらく前なら考えられなかったことだし、同社が年末にもチップセット市場シェア50%を上回る見こみだと発表するのも、うなずける気がする。大手OEMの獲得という点でも、SGIのワークステーションにも採用されるなど、実績を重ねつつあると言って間違いない。VIAの躍進は疑う余地のない事実だ。

 もう1つ気づくのは、Intelの主戦(エース)チップセットが、今もなお440BXである、ということだろう。'98年の4月にリリースされた440BXは、もう2年以上もの間、Intelのチップセットを代表し続けているのだ。もちろん、この間Intelのチップセットの新製品がなかったわけではない。440DXや440ZXといった440BXの一種のサブセットと考えられるもの、グラフィックスを統合したローエンドPC向けIntel 810シリーズなど、440BXより下位のセグメント向けのものは存在した。

 そして何より、Intelが440BXの後継と期待していたのがIntel 820である。Intel 820が実際にリリースされたのは'99年11月のことだが、当初の予定はIntel 810と同じ'99年4月のことだった。この時はDirect RDRAMの量産準備が整っていない、という理由で延期され、今度こそと思われた同年9月は、3本のRIMMスロットを搭載したマザーボードデザインの不具合が見つかり、土壇場でキャンセルの憂き目となった。ようやく11月にIntel 820がリリースされた時には、すでに市場の目はかなり冷めたものになっていたし、RIMMの価格が高いことも、Intel 820への移行を妨げた。

 今年の6月にはとどめを刺すように、MTHの不具合が確認され、搭載マザーボードのリコールまで生じてしまった。MTHはIntel 820チップセットそのものではないとはいえ、Intel 820にとって不名誉な事件であり、信頼性に傷をつける出来事には違いない。筆者自身はこの1カ月余り、VC820(Intel純正の820ベースのマザーボード。RIMM専用)を実験用に使ってきたが、特に不安定なこともなく、大きな問題を感じていない(初期のものはかなり不安定だった印象がある)が、Intel 820に対する市場の評価は、RIMMの価格を抜きにしても「もう結構」というものであるように思える。

 Intel自身も、この6月5日、Intel 820の後継としてIntel 820E(Intel 820と同じNorth Bridgeに新しいICH2を組み合わせたもの)を発表したものの、もはやIntel 820シリーズに大きな期待をかけられないということは自覚しているようだ。そう判断する理由は、IntelのWebサイトに、いまだにIntel 820Eを用いたマザーボードの情報が掲載されないことだ。2週間後に発表された、後述のIntel Intel 815Eチップセットを用いたマザーボード(D815EEA)が、Webサイトに情報があり、製品としても流通しているのと対照的である。

 また6月下旬、Intelはアプライド・コンピューティング機器向けプロセッサとして、Pentium III 733MHz以下5種のプロセッサを発表した。アプライド・コンピューティング機器向けプロセッサとは、ネットワーク/通信機器やPOS端末やATMといった組み込み用途に使われるもののこと。ちょっと前までは組込み用途向け、と呼ばれていた分野だ。PC以上の高信頼性が求められる上、この種の製品はライフサイクルも長い。製品サポートも長期間に及ぶのだが、発表された5つのプロセッサのうち、唯一のFSB 133MHzの製品であるPentium III 733MHzと組み合わせるチップセットとしてプレスリリース名前が挙げられているのは、i840チップセットなのである。本来はサーバ/ワークステーション用のチップセットであるi840の名前がこんなところに出てくるということは、Intel 820のイメージの悪さを示唆すると同時に、Intel 820シリーズの将来をも暗示しているように思えてならない。


●Intel 815/815E登場

 こうした状況下、Intelが発表した新しいチップセットがIntel 815/815Eだ。正式発表は6月19日であるものの、事実上Intel 820Eと同じく6月5日(Computex初日)にデビューをしたIntel 815/815Eは、Intel製としては外部AGP 4Xスロットをサポートした初めてのSDRAMベースのチップセットだ。Intelにとって、初めてPC133 SDRAMをサポートしたチップセットでもある。サポートするFSBは66MHz、100MHz、133MHzの3種、これに対してサポートするメモリは表1のようになる。つまり、Apollo Pro133Aのように、100MHzのFSBに対し、PC133 SDRAMを組み合わせる、ということはできない。また、Intel 810Eシリーズのものに改良を加えたグラフィックスコアを内蔵しており、AGP 4Xスロットと内蔵グラフィックスのどちらか一方を選んでディスプレイ表示させることになる(デュアルディスプレイ不可)。AGPスロットには、AGPグラフィックスカード以外に、GPAと呼ばれるモジュール(Intel 810シリーズのディスプレイキャッシュに該当し、Zバッファとして利用される)を装着することも可能だが、現時点では流通していないようだ。

表1:Intel 815がサポートするFSBクロックとメモリ
FSBクロックメモリ
66MHzPC100
100MHzPC100
133MHzPC100
133MHzPC133

 以上のような特徴を持つNorth Bridgeチップ(82815)に、2種類用意されたSouth Bridgeチップ(ICH/ICH2)のどちらを組み合わせるかで、チップセット全体の名称がIntel 815になるか、Intel 815Eになるかが決まる。Intel 820やIntel 810Eに用いられてきたICH(82801AA)を組み合わせるとIntel 815、Intel 820Eと共通の新しいICH2(82801BA)を組み合わせるとIntel 815Eというわけだ。

 ICH2の新フィーチャーは、

の4点。性能の向上に最も影響しそうなのは1で、2はどちらかといえば機能性の向上、3と4はシステム価格の低価格化に貢献するフィーチャーと言えるだろう。

 いずれにしてもIntel 815は、440BX同様安価なSDRAMをベースにしながら、

という440BXに欠けていたフィーチャーをサポートしており、これでようやくスペックの点でApollo Pro133Aに追いついたといえるだろう。

 あえて差を見つければ、Intel 815EがUltra ATA/100をサポートしているのに対し、Apollo Pro133AがUltra ATA/66どまりである一方、Apollo Pro133Aが最大で2GBのメモリをサポート可能であるのに対し、Intel 815Eが512MBどまりという違いはある。Intel 815Eのメモリサポートが512MBまでであるのは、元々クライアントPC用としてデザインされていることを考えれば、不思議な話ではない。おそらく型番からいって、Intel 810シリーズの流れを汲んだバリューPC向けだったIntel 815が、Intel 820の不調によりメインストリームPCまでカバーするようになったわけだが、クライアントPCである限り512MBで不足するとは思えない(そのかわり、Apollo Pro133Aのように「ワークステーション」には採用してもらえないかもしれないが、それはIntelも望んではいないだろう)。Ultra ATA/100については、VIA Technologiesも対応を表明しており、そう遠くない将来、South Bridgeの更新が行なわれるものと考えられる。


●Intel 815/815Eの実力を測る

 以上のようなスペックを持つIntel 815/815Eチップセットは、紙の上で見る限り、ある意味市場が期待していたもの、と見ることもできる。ただし、これはあくまでもスペックでの話。期待に応えたものであるのかどうかは、実際に動かして見なければ分からない。というわけで、テストを行なうことにした。用意したマザーボードはIntel 815ベースのものがChaintechのCT-60JV、Intel 815EベースのものがIntelのD815EEA。意図したわけではないが、サードパーティ製と純正マザーボードが揃った。

 CT-60JVは、ごく一般的なATXフォームファクタに準拠したマザーボード。AGPスロットに加え、6本のPCIスロットと1本のCNRスロットを備える。オンボードにはAC97 CODECチップが搭載されており、ICHのAC97コントローラを利用したサウンド機能がインプリメントされている(オプションでCreative製のオーディオコントローラ搭載可)。本マザーボード独自のフィーチャーとしては、LTI-II Riserと呼ばれるライザーカード用のコネクタ(40ピン)があり、これを利用してTV出力、DVI出力等をサポートするようだが、このオプションの入手性は不明だ。また、2個のフラッシュメモリを搭載し、BIOSの更新失敗といった事態に備えることができるようだが、今回試用したマザーボードはこのフィーチャーをサポートしていなかった。

 D815EEAも、一般的なATXフォームファクタのマザーボードだが、PCIスロットが5本と、拡張スロットが1本少ない(AGP 4XスロットとCNRスロットは同じ)。今回試用したボードは、オンボードにCreative製のオーディオコントローラ(ES1373)とAC97コーデックチップが実装されていたが、ICH2のAC97コントローラ機能を利用しAC97コーデックチップのみを実装するオプション、全くオーディオ機能を提供しないオプションも用意されるようだ。加えて、ICH2が内蔵するEthernetコントローラ機能を利用した10Base-T/100Base-TX対応のネットワークインターフェイスも搭載可能だが、今回試用したマザーボードには実装されていなかった(オーディオ、ネットワーク、いずれのオプションもCNRは利用しない)。このD815EEAにもデジタルビデオ出力用のコネクタが用意されているが、現時点でここに接続されるオプションの入手性は不明だ。なお、D815EEA、CT-60JV共に、COM2ポートのコネクタ部分が、内蔵グラフィックスのVGAコネクタで置きかえられている。いずれのボード上にもCOM2ポート用のヘッダコネクタが用意されているのだが、COM2ポート用のケーブル/コネクタは添付されていなかった。

 D815EEAで困ったのは、メモリの設定が全面的にSPDの情報に依存することだ。筆者の手元にはWinbondのチップを用いた256MB PC133 DIMM、LG電子のチップを用いた128MB PC133 DIMMの2枚があったのだが、いずれもD815EEAではPC133メモリとして認識されなかった。Winbondのチップを用いたDIMMは、ほかのマザーボードでもよくトラブルを起こすため、驚きはしなかったのだが、LG電子のチップを用いたDIMMは、CT-60JVを含め今回テストしたほかのPC133対応マザーボードで問題なく動作するもの。D815EEAに用いると、SPDの情報が完全でない、といった趣旨のエラーメッセージが表示され、PC100での動作となってしまう。

 サードパーティ製のマザーボードでは、BIOSセットアップにSDRAMのアクセスについてSPDの情報をオーバーライドするオプションが用意されているのだが、D815EEAには見当たらなかった。LG電子ブランドのチップを使ったDIMMということは、同社が現代電子に買収されたことを思えば、結構古いDIMMであるということは間違いないのだが、SPDの情報を更新する方法がないため、お手上げになってしまう。結局、メルコ製のPC133 DIMM(VS133)がちゃんと動作したものの、現代電子のチップが用いられていたのが筆者にとっては皮肉だった。

Intel D815EEA
ASUStek CUBX


●ベンチマーク結果

 この2枚に対し比較のために用意したのは、永らくエースの座を守り通した440BXマザーボードの代表としてASUStekのCUBX、そしていわくつき?のIntel 820マザーボードとしてIntelのVC820、さらにはApollo Pro133A搭載マザーボードとしてSoltekのSL-67KVの3枚だ。CUBXは440BX搭載マザーボードとしては最新の部類に入るため、サポートするCPUはFC-PGAタイプ。440BXの弱点を補うべく、CMD製のUltra DMA/66対応のIDEコントローラ、Alcor Micro製のUSBハブチップを搭載する。結果、South Bridgeチップが提供しているUltra DMA/33の2チャンネルに加え、2チャンネルのUltra DMA/66インターフェイスをサポート、USBも計5ポートのサポートを可能にしている。拡張スロットはAGP×1に加えPCI×6の計7本だが、PCIスロットの1本はISAとの共有スロットになっている。800番シリーズのチップセットと異なり、440BXのSouth BridgeであるPIIX4eはISAブリッジ機能を内蔵しているため、別途ISAブリッジを必要としないことが、このようなスロット構成になった理由かもしれない。

 VC820は、Intel 820マザーボードの標準とでもいうべき存在。SoltekのSL-67KVは、Apollo Pro133Aのマザーボードとしては、最も早い時期に流通したものの1つ。いずれも新しい製品ではないため、ここで特に紹介する必要もないだろう。なぜか、SL-67KVがFSB 100MHz、PC100メモリという一番ノーマル?な状態でベンチマークテストを実行できなかったのだが(Windows 98 Second Editionは起動する)、今回の主目的(Intel 815/815Eのテスト)に対して必ずしも不可欠というわけではないので、あえてそのままにしている。

 さて、比較用を含め、用意した5枚のマザーボードのうち、FSB 100MHzにしか対応していないCUBXを除き、Pentium III 600EとPentium III 600EBの両方を組み合せている(CUBXは600Eのみ)。メモリはCUBXはPC100、VC820はPC800 RIMMのみを組み合せているが、残る3枚についてはPC100とPC133、両方のメモリを組み合わせてみた。

 実施したベンチマークテストはZiff DavisのWinBench 99 Ver1.1の中から、CPUmark 99、FPU WinMark、Business Disk WinMark99、High-End Disk WinMark99の4つに、Mad Onionの3DMark 2000を加えた計5つ。CPUmark 99は主にメインメモリのアクセス性能、Business Disk WinMark99とHigh-End Disk WinMark99の2つは言うまでもなくハードディスク性能、そして3DMark 2000はAGPの性能を見るためだ。FPU WinMarkは今回のようにCPUが同じコア、同じ動作クロックの場合、ほとんど差が生じないのが分かっている(ワーキングセットがL1キャッシュに収まってしまうため)が、逆にほぼ同じスコアが出ることで、セットアップ等に致命的な問題がないことを確認するために実行している。

チップセットIDEコントローラマザーボードBIOS VersionFSBCPUメモリバスクロックメモリ
1440BXPIIX4eASUS CUBX1005100MHzPentium III 600E100MHz128MB PC100
2440BXCMD648ASUS CUBX1005100MHzPentium III 600E100MHz128MB PC100
3Intel 82082801AA (ICH)Intel VC820P11100MHzPentium III 600E400MHz128MB PC800
4Intel 82082801AA (ICH)Intel VC820P11133MHzPentium III 600EB400MHz128MB PC800
5Intel 81582801AA (ICH)CT-60JV06/05/2000100MHzPentium III 600E100MHz128MB PC100
6Intel 81582801AA (ICH)CT-60JV06/05/2000133MHzPentium III 600EB100MHz128MB PC100
7Intel 81582801AA (ICH)CT-60JV06/05/2000133MHzPentium III 600EB133MHz128MB PC133
8Intel 815E82801BA (ICH2)Intel D815EEAP03100MHzPentium III 600E100MHz128MB PC100
9Intel 815E82801BA (ICH2)Intel D815EEAP03133MHzPentium III 600EB100MHz128MB PC100
10Intel 815E82801BA (ICH2)Intel D815EEAP03133MHzPentium III 600EB133MHz128MB PC133
11Intel 815E(内蔵グラフィックス)82801BA (ICH2)Intel D815EEAP03133MHzPentium III 600EB133MHz128MB PC133
12Apollo Pro133AVT82C686ASL-67KVRev F4100MHzPentium III 600E100MHz128MB PC100
13Apollo Pro133AVT82C686ASL-67KVRev F4100MHzPentium III 600E133MHz128MB PC133
14Apollo Pro133AVT82C686ASL-67KVRev F4133MHzPentium III 600EB100MHz128MB PC100
15Apollo Pro133AVT82C686ASL-67KVRev F4133MHzPentium III 600EB133MHz128MB PC133

CPUmark 99FPU WinMark3DMark 2000
1440BX56.1 3,180 5,416
256.1 3,180 5,416
3Intel 82055.1 3,170 5,489
456.0 3,200 5,603
5Intel 81555.0 3,180 5,114
655.2 3,210 5,160
756.7 3,210 5,525
8Intel 815E54.1 3,160 5,036
954.2 3,200 5,100
1056.3 3,190 5,463
11Intel 815E
内蔵グラフィック
55.1 3,200  909
12Apollo Pro133AN/AN/AN/A
1353.8 3,170 5,112
1452.5 3,200 4,822
1554.6 3,200 5,204

Business Disk WinMark99CPU占有率High-End Disk WinMark99CPU占有率
1440BX5,360 25.76%19,000 18.57%
25,450 26.56%21,000 20.02%
3Intel 8205,160 26.06%20,000 20.38%
45,300 26.20%20,100 20.12%
5Intel 8155,180 27.20%20,000 21.08%
65,460 27.43%19,900 20.81%
75,210 25.79%20,300 19.88%
8Intel 815E5,410 27.79%20,200 21.47%
95,400 27.65%19,900 21.35%
105,360 26.51%20,400 19.99%
11Intel 815E
内蔵グラフィック
5,520 27.70%19,600 20.74%
12Apollo Pro133AN/AN/AN/AN/A
135,310 27.23%19,800 23.48%
144,890 26.31%19,400 23.81%
155,570 27.66%20,000 22.50%

【動作環境】
OS:Windows 98 SE
グラフィックスカード:Leadtek WinFast GeForce 2 GTS
ディスプレイドライバ:Detonator 5.22
 ※チップセットによるパフォーマンスの違いを見るために今回は汎用ドライバを使用した
解像度:1,024×768ドット、ハイカラー
リフレッシュレート:85Hz
HDD1(システム起動用):DPTA-372050
HDD2(ベンチマークテスト用):DTLA-307030

【インストールしたソフトウェア】
Intel 440BX
 Intel Chipset Software Installation Utility V2.30.021
 (440BXは特にINFパッチを必要としないが,条件を揃える意味で念のためインストールした)

Intel 820/815/815E
 Intel Chipset Software Installation Utility V2.30.021
 Intel Bus Master Driver 6.0

Apollo Pro133A
 4in1 Driver 4.22
 AGP Driver 4.03


●魅力が感じられない内蔵グラフィックス

 基本的にAGPグラフィックスカードを利用した状態でベンチマークテストを実施しているのは、筆者が内蔵グラフィックスに全く魅力を感じなかったからである。参考までに、1つだけ内蔵グラフィックスを用いた場合のベンチマーク結果を掲載しているが、それを見れば明らかに3DMark 2000のスコアが悪いことが分かる。だが、筆者が魅力を感じなかったのは、何も3Dグラフィックス性能が悪いからではない(全くないとは言わないが、少なくとも決め手ではない)。

 筆者が内蔵グラフィックスに魅力を感じなかった理由は、1,024×768ドット/ハイカラーという今回のベンチマーク環境において、YUVオーバーレイができないこと(たとえばDVD再生ができない)、この解像度でもアナログ的な画質に問題を感じること、の2点による。1,024×768ドット/ハイカラーというのは、筆者が考えるグラフィックスの最低条件である。この条件で問題があるようでは、とても使えない、というのが筆者の判断だ。ユーザーのすべてがPCでゲームをするわけではないし、すべてのPCゲームが3Dグラフィックスを用いているわけではない(筆者が最も頻繁に起動するゲームは、風来のシレンfor WindowsとPlus!98のSpiderだったりする)。

 だが、Windows MEにビデオ編集アプリケーションが標準添付される時代に、最低条件下でYUVオーバーレイができないというのはあまりに寂しい。また、筆者はアナログ的な画質についてあまり触れたくない方なのだが(それを問題にするよりデジタル化を急ぐべきだと考えている。その点ではマザーボード上にデジタル出力用のコネクタが用意されていることは高く評価したい)、Intel 815の内蔵グラフィックスの画質は一言触れておかねばならないのではないか、と思わせるものがある。そして、いずれの問題も、Intel 810から改善が見られていないのである。

 Intel 815の内蔵グラフィックスは、Tri-Linearフィルタリングのサポートなど、3Dグラフィックスに関しては若干の改良が施されているというが、それより優先すべき部分があるのではないか、というのが筆者の考えだ。現時点で、AGPスロットに用いるGPAモジュールは市場で流通していないようだが、ハッキリ言って必要性を感じない。Intel 815のグラフィックスは、BTOやCTOを行なうPCベンダが最小価格のシステムを構築する際に用いるものであり、そのアップグレードとして必要なのはAGPのグラフィックスカードだろう。PCを購入したユーザーがアップグレードを望む場合、今では珍しくなってしまったPCIのグラフィックスカードを探さねばならないIntel 810シリーズより、ポピュラーなAGPカードが使えるIntel 815ははるかに良いと思う。


●各マザーボード間の性能差は極めて小さい

 内蔵グラフィックスについてはこれくらいにして、話をマザーボード(チップセット)間の比較に移そう。まず全体を見て気づくのは、マザーボード間の、あるいはコンフィギュレーション間の性能差が極めて小さい、ということだ(上述の内蔵グラフィックスを除く)。強いていえば、Apollo Pro133AのAGP性能が若干低目だが、それでも同様なコンフィギュレーションであれば、Intel製のチップセットと1割とは違わない。メモリやハードディスクの性能差はもっと小さい。これくらいの差であれば、それぞれのチップセットに用いたマザーボードが変わることで、性能が逆転する可能性も十分考えられる(今回用いたマザーボードは、それぞれのチップセットで最も高性能なものを選んだわけではない)。

 それにしても予想以上だったのは、440BXの健闘ぶりだ。デビューから2年以上を経過したこの老兵は、今でも性能で大きくヒケをとることがない。意外だったのは、スペックの点で大きく見劣りするハードディスクとAGPの性能においても、十分な競争力を示したことだ。ここではPIIX4eとCMD648のそれぞれにハードディスクを接続した場合について、スコアをとってみたが、PIIX4eのスコアも決して悪くない。CMD648との差は、一般的なアプリケーションの利用であれば、気づくことはないレベルだし、全体でみれば優秀なレベルとも言える。ここではUltra ATA/100(Ultra DMA Mode 5)をサポートしたハードディスク(DTLA-307030)を用いているのだが、Ultra ATA/100に準拠したIntel 815E(ICH2)の優位性は特に認められない。現時点でのUltra ATA/100は、あくまでも将来に向けてヘッドルームを確保する、という意味が強いようだ。

 AGPについても同様なことがいえる。今回のテスト結果だけで3Dグラフィックス性能のすべてを語れるとは思っていないが、少なくとも見劣りするとか、時代遅れとかいう言葉を用いるのは不適切であろう。ここで用いたマザーボードの結果だけで、チップセットレベルの性能比較が可能だとも思わないが、CT-60JV、D815EEA共、440BXと同じ条件(FSB 100MHz、PC100 SDRAM)では、ほとんどのテスト項目で揃ってCUBXの返り討ちにあってしまったのは、チップセットのデビューに横たわる2年間の月日を考えると悲しいものがある(幸い?FSB 133MHz、PC133メモリという条件では、CT-60JV、D815EEA共に面目を施したが、そのマージンは小さい)。

 同じことは価格が3倍近いメモリ(RIMM)を用いるVC820にも言える。Intel 820は、Intel 815よりさらに上位に位置付けられるチップセットだが、明らかな優位性がうかがえるのは、3DMark 2000のみ。しかもそのマージンは決して大きくない。そのほかのテストでは、似たり寄ったりの成績になっており、メモリ価格の高さを正当化することは難しい。


●Intel 815/815Eの新機能の有効性は?

 ここでもう1度話をIntel 815/815Eに戻すが、上述したFSB 133MHz、AGP 4Xスロット、高速なIDEインターフェイス、PC133 SDRAMといった、440BXにないフィーチャーは、少なくとも今回のベンチマークテストにおいては、その有効性を実証することができなかった。この2年間販売されたことでかなりの数に上ると思われる440BXシステムのオーナーが、性能の向上を目的に、マザーボードだけをIntel 815/815Eベースのものに換えても、おそらく期待を裏切られることになるだろう。

 一方、新規にPCを購入する、PCを買い増しするという場合はどうだろう。Intel 815/815Eのシステムには検討する意味がなく、今でも440BXベースのシステムを購入するべきなのだろうか。おそらくそんなことはない。確かに性能面でのメリットはないにしても、デメリットがあるわけではない。機能面でも、Intel 815/815Eでなければ(440BXでは拡張スロットを用いても絶対に実現できない)、というものはほとんどないにせよ、Intel 815/815Eの方がベターなことは明らかだ。

 特に133MHzのFSBクロックに対応できる、というのは440BXにはないフィーチャーである。FSBが133MHzになることが、そのまま性能には結びつかないにせよ、CPU選択の余地が広がるのは良いことに違いない(おそらく、もうFSB 100MHzの新しいプロセッサが登場することはないだろうが、FSB 133MHzのPentium IIIにしても、どこまでクロックの引き上げが継続されるかは微妙なところだ。年末にPentium 4のリリースを控えていることを思えばなおさらそうだろう。したがって、133MHzのFSBをサポートしているからといって、必ずしも明るい未来が待っているとは限らないのだが)。

 Intelによるサポートも、最新のバスマスタIDEドライバが800番シリーズのチップセットのみのサポートになるなど、シフトが始まっている。Intel純正マザーボードの場合、Windowsから直接BIOSをアップデートできるExpress BIOS Update、BIOSのPOST時間を短縮するRapid BIOS Bootといったものも、基本的には800番台のチップセットを用いたマザーボードにのみ提供される。何より、一般用途向けには、2000年の第3四半期で440BXはフェーズアウトすることになっており、やがて買いたくても買えない状況になるだろう。その一方で、Intel 820が相変わらずパッとせず、Intel 820Eでの巻き返しも期待薄であること(おそらくPentium 4/WillametteでRIMMは仕切り直し)を考えれば、現時点でIntel製チップセットを選ぶのであれば、選択肢はIntel 815/815Eしかない、ということになる。

 Apollo Pro133A(あるいはApollo Pro133AをProSavage PM133とピン互換にしたApollo Pro 133Z)との比較は難しいところだが、Windows 2000を使うのであれば、Intel製チップセットの方がベターだろう(上述したSGIのワークステーションも、Windows 2000をサポートしていない)。Windows 9xの場合は、Apollo Pro133Aマザーボードの方が価格面で有利であること、今回テストに用いたApollo Pro133Aマザーボードが筆者手持ちのかなり初期のものであること(性能がふるわなかったのは、これが原因かもしれない)を考慮すれば、さらに判断は難しい。価格を重視すればApollo Pro133A、ハードウェア互換性(新しいグラフィックスカードが確実に動くか、とか)を重視すればIntel 815/815Eというところだろうか。

 最後に、Intel 815とIntel 815Eはどちらを選ぶべきなのだろう。今回のテストを見る限り、性能面で両者に大きな違いはなかった。が、ヘッドルームという点で、Ultra ATA/100をサポートしたIntel 815Eに分があるのは間違いない。これが、現在の両者の差額(3,500円~5,000円)に見合うかどうかを考えて決めれば良いだろう。後の機能差はマザーボードベンダやシステムベンダが考慮する必要はあっても、エンドユーザーが考える必要はほとんどないと思う。

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(2000年7月5日)

[Text by 元麻布春男]


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