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元麻布春男の週刊PCホットライン

YMF744サウンドカードをまた買った理由


●サウンドはオンボードが主流に

 前回のIntel 815の評価で取り上げた5枚のマザーボードのうち、最も古い440BXチップセットを用いたCUBXを除く4枚が、オンボードにサウンド機能を持っていた。マザーボードが標準機能としてサウンドを取りこみつつある大きな理由は、新しいチップセットがAC'97コントローラ機能を内蔵し、CODECチップを追加するだけで、極めて安価にサウンド機能を実現できるからに違いない。

 確かに、サウンド機能を備えた4枚のマザーボードのうち、Intel純正の2枚(VC820およびD815EEA)はマザーボード上にCreative製のサウンドコントローラチップ(いずれもES1373)を搭載しており、チップセットのAC'97コントローラ機能を用いていなかった。しかし、同じマザーボードであっても、モデルによってはコントローラチップを持たず、AC'97コントローラを用いたサウンドを提供しているものもある。全くサポートしないというオプションも含め、サウンド機能をどうするかは、OEMの要望あるいは市場のニーズにより作り分ける、というのが現時点でのIntelの考えなのだろう(わざわざCreative製のコントローラを搭載するというのは、リアルモードアプリケーションとの互換性を重視してのことだろうが、いつまで必要とされるのだろうか)。

 それでも長期的に見れば、今後ますますサウンド機能がマザーボードの標準機能となっていくことは間違いない。チップセットにサウンドコントローラ機能が統合されたことに加え、多チャンネルのサウンドへのアップグレードを可能にするCNRの登場など、時代はPCIのサウンドカードをプロフェッショナル向けの高価なオプションに変えつつある。もし、一般向けPCのAV機能が今以上に重視される時代がやってきたとしても、そこで用いられるのはUSBやIEEE-1394といったテクノロジであって、再びサウンドカードが主役になることはないのではないか、という気がしている。

 だが、そう言いながら、筆者はPCIサウンドカードを今も愛用している。それどころか、ついこの間も秋葉原に出かけたおり、YMF744ベースのサウンドカードを1枚購入したくらいだ。S/PDIFの入出力(オプティカル)をサポートしたLabwayXwave-6000 R1Xという製品で、筆者が良く使うものの1つ。全く同じデザイン(回路パターンだけでなく、基板サイズ、パーツなども含め)のMinton SP402Dも含めれば、筆者にとって同じサウンドカードを購入するのはこれが3枚目だ(他に、S/PDIF入出力をサポートしたデザインの異なるYMF744ベースのカードを1枚、S/PDIFの出力のみをサポートしたYMF744ベースのカードを1枚、それぞれ持っている)。ただ、今回購入したのは、特に目的があったわけではなく、3,980円と安かったことから、もう1枚予備として確保しておこう、と考えたに過ぎない。

●YMF744カードにこだわる理由

 なぜここまで同じカードにこだわるのか。その最大の理由は、S/PDIF入出力、中でも出力を必要としているからだ。筆者は、サウンドカードのS/PDIF出力をソニーのサラウンドヘッドホンシステムMDR-5000に接続している。MDR-5000は、5.1チャンネルのドルビーデジタルや4チャンネルのドルビープロロジック(アナログ)のサラウンド音場を、ヘッドホンで仮想再現するバーチャルドルビーデジタルに対応していることで知られている(現在はDTSにも対応したMDR-DS5100が後継モデルとして販売中)。

 筆者はMDR-5000を、5.1チャネルのDVD鑑賞に用いたり、ソフトウェアDVDプレーヤーのS/PDIF出力がちゃんとドルビーデジタルを出力しているかの確認に使う、といったバーチャルドルビーデジタルを生かした用途だけでなく、単にDACを内蔵したヘッドホンアンプとしても使っている。要するに、サウンドカードからS/PDIF出力した通常のステレオサウンド(たとえば音楽CDやMP3データの再生)をMDR-5000経由でヘッドホン出力しているのである(さすがに音楽用には付属のワイヤレスヘッドホンの音質は辛いので、別途ケーブル接続のヘッドホンを用いているが)。

 夜中に仕事をすることが多い関係上、ヘッドホンは必須アイテムに近いのだが、普通にアナログ出力していると、どうしてもノイズを拾いやすい。PC内部のノイズはもちろん、筆者の住まいはかなり交通量の多い幹線道路からいくらも離れていないため、違法CBもかなりの割合で飛びこんでくる。すべてを極力デジタルにすることで、こうしたノイズから逃げることができる。ピュアオーディオ的には、MDR-5000と大差ない価格で購入可能な(といってもローエンドモデルになるが)スタックスのイヤスピーカーシステムの方がベターなのかもしれないが、筆者にはDACやドルビーバーチャルといったMDR-5000の持つ付加価値の魅力の方が大きい。このMDR-5000のデジタル入力がオプティカルのみである関係上、サウンドカードにS/PDIF出力が不可欠なのであり、しかもそれは同軸でなく、オプティカルでなければならないのである(筆者が知る限り、市販の光同軸コンバーターはステレオのみの対応で、ドルビーデジタルのマルチチャネルには対応していないようだ)。

 そうである以上は、S/PDIF(オプティカル)をサポートしたサウンドカードであれば、別に他の製品でも構わないことになる。これはその通りなのだが、敢えてYMF744ベースのカードを選ぶ理由を述べれば、ドライバ類がシンプルであることだ。筆者の手元には、YMF744よりずっとポピュラーなSound Blaster Live!もある。しかし、SB Live!のソフトウェアは、ドライバ、付属のアプレットなどてんこ盛りで、実験マシンのようにしょっちゅうOSをクリーンインストールする環境(つまりしょっちゅうドライバ類をインストールする環境)にはあまり向かない(ドライバのアップデートもファイルサイズが大きかったり、CD-ROMを申し込まねばならなかったりするのも面倒だ)。

 仕事マシンは1年間くらいは、ハードウェア構成を変更しないから、アプレットがてんこ盛りでも困りはしないのだが、基本的なコンポーネントが実験マシンのお下がりであること、SB Live!に添付されているアプレット類をあまり利用しないこと(ただし、これが他社製品との差別化のポイントであることは理解している)、ドライバ類の管理のためにはサウンドカードを揃えておいた方が楽ができること、といった理由で、YMF744ベースのカードを主力にし続けている。他にもS/PDIFをサポートしたサウンドカードが現在はあることを知っているのだが、筆者が最初に購入した時点では、他に選択肢はあまりなかった(今でもS/PDIF入力をサポートしたカードはそれほど多くない)。

●S/PDIFはPCでは非主流のままか

 さて、最後にわざわざ予備まで購入している理由だが、それは今後増えるであろうオンボードのサウンド機能がS/PDIFをサポートすることはまずない、と考えているからだ。オンボードにコントローラまで搭載すれば、オンボードサウンドでS/PDIFをサポートすることは可能だが、Windows MEへの切り替えなどリアルモードサポートの比重が下がることを考えれば、チップセットが内蔵するAC'97コントローラが主流になることは間違いない(何せコストが安い)。

 加えて、IntelやMicrosoftといったPCのアーキテクチャに大きな影響力を持つ会社は、基本的に米国の会社であり、その米国でS/PDIFがそれほど普及していない(日本で普及を促進したMDの普及率が極めて低い)ことも、オンボードS/PDIFにはマイナスに働く。そもそも、現在わが国で普及しているS/PDIFからUSBオーディオ、あるいはIEEE-1394にどう移行するのか、といったロードマップは、彼らの頭の中にはほとんど存在しないのである。当面はアナログとして、切り替わる時は一気にUSBかIEEE-1394へ、というのが彼らが本命とするシナリオだ。日本もそのシナリオでいいのか? とは思うものの、実際に個人でできることは、せいぜい予備のカードを買っておくくらいしかない。後は、どこまでドライバサポートが継続されるか、祈るばかりだ。

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(2000年7月12日)

[Text by 元麻布春男]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp