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元麻布春男の週刊PCホットライン

ソフトウェアでの問題点が残るDVD-RAM 2.0
~DVD-RAM 2.0試用レポート~


●DVD-RAM 1.0が買えなかった理由

 今年の1月、筆者はこの欄で、DVD-RAMを買えない7つの理由について取り上げた。その見だしだけを再録すると、次のようになる(詳細はバックナンバーを参照)。

 1. 乱立するフォーマットに対する不安
 2. メディアの互換性
 3. 中途半端な容量
 4. 低い性能
 5. 書き込み用ソフトウェアが必要
 6. ドライブの種類が限られる
 7. メディアが高い

 これらの疑問の中には、簡単には答えの出ないもの、あるいは市場でのシェア争いの中で答えを導き出すしかないものも多く含まれており、約半年が経過した今も状況に決定的な違いが生じたわけではない。また、筆者がDVD-RAMのアプリケーションとして、動画の保存を本命に考えていることにも変わりはない。だが、状況に全く変化がないのかというと、それもまた違う。いよいよDVD-RAM 2.0に準拠した製品が登場し始めたのである。


●当初の予定から1四半期遅れてDVD-RAM 2.0登場

 当初、今年の春といわれていたDVD-RAM 2.0準拠製品の販売は、約1四半期遅れ、この夏からスタートすることになった。その先陣を切るのが松下電器産業の製品だ。同社が7月上旬から発売する製品は、DVD-RAM 2.0に準拠したドライブが外付と内蔵の2種、メディアが3種の計5製品ということになる。まずドライブは外付型のLF-D200JD(標準価格74,800円)と内蔵型のLF-D201JD(同68,500円)の2モデルで、いずれもSCSI(Fast SCSI)インターフェイスを採用する。とりあえずATAPIの内蔵タイプ、IEEE-1394に対応した外付けタイプは見送られた格好だが、USB 2.0対応の外付タイプも含め、早い時期のリリースを期待したい(日立製作所がATAPIの内蔵ドライブを発表している)。

外付け型のLD-D200JD 内蔵用のLD-D201JD メディアはケースに入ったType1のほかに取り出し可能なType2も用意される

 新しく提供されるメディアは、カートリッジからディスクを取り出し可能なType2の4.7GB(片面、標準価格2,700円)と、取り出し不可であるType1の9.6GB(両面、同3,800円)、そして最初からカートリッジに入っていない4.7GB(片面、同2,300円)の3種だ(この価格設定を見る限りカートリッジ代が400円ということになる)。1月の記事を読んだ方ならご存知の通り、筆者はDVD-RAMの難点としてカートリッジに入ったメディアを槍玉に挙げた。別に筆者のコラムが影響を与えた、ということは全くないと思うが、カートリッジに入っていないメディアが登場したのは、ちょっとした驚き(もちろん良い意味で)だった。


●書き込み速度が2倍になったDVD-RAM 2.0ドライブ「LF-D200JD」

 さて今回、このDVD-RAM 2.0に準拠したドライブであるLF-D200JDとType2メディアを短時間試用する機会を得た。もちろん? 筆者の興味はDVD-RAM 2.0が動画の記録保存にどれくらい適しているか、ということにある。評価のために用いたシステムは表1に示した通り。いずれも、筆者のテストでは標準的なデバイスばかりだが、LF-D200JDの接続用にSCSIホストアダプタのAHA-2940AU(LF-D200JDの推奨品の1つ)を加えてある。また、システムの起動用としてDPTA-372050を、ビデオキャプチャのテンポラリ用としてDTLA-307030を接続している。いずれもATAドライブだが、前者は1世代前のDeskstar 34GXPシリーズに属する7,200rpmドライブ(7.5GB/プラッタ)、後者は最新のDeskstar 75GXPシリーズに属する7,200rpmドライブ(15GB/プラッタ)である。

【表1:動作環境】
 OS:Windows 98 Second Edition
 CPU:Pentium III 600EB MHz
 マザーボード:Intel VC820
 メモリ:128MB PC800 RDRAM
 ビデオカード:ATI All-In-Wonder 128 Pro
 HDD(起動用):IBM DPTA-372050
 HDD(キャプチャ用):IBM DTLA-307030
 DVD-ROMドライブ:東芝 SD-M1212
 サウンドカード:Labway X-Wave 6000 R1X(YMF744)
 SCSIホストアダプタ:Adaptec AHA-2940AU

 この評価システムで、まずAll-In-Wonder 128 Proに付属のソフトウェアリアルタイムMPEG-2エンコーダーを用いてTV番組をキャプチャ、動画ファイルを作成した。作成されたMPEG-2ファイルは1.31GB、解像度は640×480ドットで30分間の動画が収められている。個人的にはAll-In-Wonder 128 ProによるMPEG-2キャプチャは、320×240ドット解像度で行ない、再生時にストレッチした方がベターだ(データサイズあたりの画質で優れている)と感じているが、今後より高性能なエンコーダーが登場するであろうこと、テスト目的で手っ取り早く大きなファイルを作成したいと考えたため、あえて640×480ドットでキャプチャしている。

 このMPEG-2ファイルを、いったんキャプチャ用のハードディスク(DTLA-307030)からシステム用のドライブ(DPTA372050)に移動させ、それからハードディスク(DTLA-307030)とDVD-RAMの両方にコピーしてみた。DVD-RAMについては、4.7GBのメディアと2.6GBのメディアの両方を用意し、4.7GBについてはFAT32、UDF 1.5、UDF 2.0の3種類のファイルシステムでフォーマットを行なった。ちなみにUDF 1.5がDVD-RAMの標準的なファイルシステムであり、現時点でWindowsとMacintoshでデータ交換可能なフォーマットであるのに対し、UDF 2.0はビデオレコーディング規格が定めるファイルフォーマットで、DVD-RAMを用いたビデオ録画装置や、将来発売予定のPC用ビデオキャプチャソフトが利用する(民生用録画機とPCのビデオキャプチャ/編集環境で互換性を提供する)ファイルシステムである。

 その結果が表2だ。ハードディスクに対するコピーが6分弱であるのに対し、4.7GBのDVD-RAMでは3倍以上の時間を要している。しかし、ファイルシステムの違いによる差は、あまり大きくないようだ。それに対し2.6GBメディアを使うと、性能は急激に低下する。4.7GBメディアに対しほぼ2倍の時間がかかっている(ハードディスクの6分の1のスピード)。DVD-RAM 2.0はDVD-RAM 1.0の倍速といって良いだろう。ちなみに今回はテストしていないが、小さいファイルが多く含まれるようなディレクトリをコピーした場合、キャッシュアルゴリズムの改善等により、同じ2.6GBメディアを使っても、DVD-RAM 1.0に準拠したLF-D102JDに比べ、LF-D200JDの性能は高いとされている。

【表2:ベンチマーク結果】
ファイルシステム所要時間
DTLA-307030FAT32 5分56秒
DVD-RAM 4.7GBメディアFAT3219分49秒
DVD-RAM 4.7GBメディアUDF 1.518分53秒
DVD-RAM 4.7GBメディアUDF 2.018分53秒
DVD-RAM 2.6GBメディアUDF 1.536分46秒

 4.7GBメディアを用いてもハードディスクの3分の1以下、という性能をどう評価するかは難しいところだ。純粋にコンピュータ用として考えても、倍速になった4.7GBメディアなら、ある程度使えそうに思う。さらに動画記録用と考えれば、かなり使えそうな気がしてくる。ファイルサイズが1.31GBの場合、640×480ドットでは30分程度しか記録できないが、320×240ドットに抑えれば軽く1時間を越える記録ができる。1時間の動画を20分でダビングできる(しかも画質の劣化なしに)と思えば、それほど悪くない。


●メディアの価格とソフトウェアサポートが今後の課題

 問題は、メディアの価格(これは普及して価格が下がることを期待するしかあるまい)と、ソフトウェアサポートだ。現在DVD-RAMドライブは、Ver 1.0、Ver 2.0を問わず、Windows 2000で利用することはできない。MicrosoftはDVD-RAMやCD-RWのような、読み出しと書き込みが可能なデバイスで、1つのドライブレターしか用いないよう求めている。しかし、現在のDVD-RAMドライブは、CD/DVD-ROMドライブとして1つのドライブレター、書き込みができるリムーバブルストレージとして別のドライブレターを占有する仕様になっている。おそらくドライブレターを1つしか占有しないソフトウェア(デバイスドライバ)がまだ完成していないことがWindows 2000での正式サポートができない理由ではないかと思われる(Windows 2000のサポートを行なう意向であることは明らかにされている)。

 だが、ソフトウェアの問題はドライブベンダが提供するドライバだけではない。Windows 9xの仕様として、4GBを超えるファイルが作成できない、エクスプローラで2GBを超えるファイルのコピーができない、といった問題が、本製品のReadmeに書かれている。また、大きなMPEG-2ファイルをMedia Playerで再生していると、途中で止まるという問題もあるようだ(同じファイルがDVDプレーヤーソフトであれば、問題なく再生できる)。Microsoftによる改善も必要だろう。

 DVD-RAMで一番気になるのは、DVD-RWやDVD+RWといった競合する規格の存在だ。民生用の録画機で先行するDVD-RWは、年内にもPC用ドライブが出てくる可能性がある。DVD+RWは年内に民生用録画機が出てくるものの、PC用ドライブは来年の春以降だと見られている。それでもDVD+RWが既存のDVD-ROMドライブや民生用DVDプレーヤーとの互換性を売り物にしていることを思えば、あなどれない。民生用録画機とPC用ドライブを揃え、メディアの低価格化に成功するのはどの規格か。それは現時点ではわからない。

 だが、これからリリースされるDVD-RAM録画機の登場で、一番最初に民生用録画機とPC用ドライブの両方が揃うのはDVD-RAMである(6月30日に発売)。今回発売になるDVD-RAM 2.0ドライブの価格も、比較的リーズナブルに設定されているように思える。現時点で最有力であることは間違いない。今回試用したDVD-RAMドライブを買うか、と言われるとちょっと困ってしまうのだが、USB 2.0に対応した外付ドライブ、あるいはATAPIの内蔵ドライブの価格が手ごろなら、購入に踏み切っても良いような気がし始めている。

□関連記事
【5月15日】松下、4.7GB DVD-RAM対応ドライブとDVDビデオレコーダー
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000515/pana.htm
【1月19日】TV録画を保存する選択肢はDVD-RAMしかないが……
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000119/hot76.htm

(2000年6月28日)

[Text by 元麻布春男]


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