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ソニー
VAIO R PCV-R73KL5

i815と新キャプチャボード、Windows 2000の採用で
生まれ変わったVAIO R

TEXT:中嶋敦司 Atsushi Nakajima



本体前面下部には4ピンのi.LINK、USB端子や、S-VIDEOとコンポジットビデオの入力端子が配置される
 「バイオでテレビ生活」のキャッチコピーとともに登場し、PCによるテレビ番組録画を一気に普及させたVAIO Rシリーズ。初代VAIO Rシリーズが発売されて約1年が過ぎた現在でも、MPEG2方式による高画質録画やインターネット番組表を利用した録画予約、タイムシフト再生などの機能は、後を追って登場した競合製品の一歩先を進んでいると言えよう。そのVAIO Rがハードウェア、ソフトウェア構成を一新し、より魅力的なマシンとなって新登場した。この「VAIO R PCV-R73KL5」(以下、R73KL5)は今回の新VAIO Rシリーズの中でも、15インチTFT液晶ディスプレイがセットとなった最上位モデルである。


ケースはmicroATXに対応したもので、外部5インチベイと、内蔵3.5インチベイにそれぞれ一つずつ空きがある 付属の液晶ディスプレイはデザイン的に優れているだけでなく、ヒンジが2段階に曲がるため柔軟なレイアウトが可能だ

i815チップセットを搭載

本体背面。LAN、モデム、USBやビデオ入力など、多彩な機能を持っているが、唯一、S/P DIFが装備されていない点は残念なところ 付属のリモコンは従来と同タイプ。サスペンドモードへの切り替え、再起動にも対応するが録画に関する操作はできない
 R73KL5は外観こそ従来機種と変わらないものの、その内部は、多くの主要なパーツが新たなものに変更されている。まず注目されるのが、Intelの最新チップセットi815を搭載している点だ。i815はi810の後継に位置付けられ、MCH(Memory Controller Hub)にビデオ機能を統合したGMCH(Graphics Memory Controller Hub)としてFW82815AA、従来のSouth Bridgeに当たるICH(I/O Controller Hub)としてFW82801AAを採用している。その多機能性はi810を上回り、FW82815AAはビデオ機能統合型チップセットとしては初めてAGPスロットをサポートしたことに加え、唯一のPC133 SDRAMに対応したIntel製チップでもある。また、FW82801AAはi810Eにも採用されているもので、Ultra ATA/66やUSBコントローラ、AC '97対応オーディオ機能などを内蔵している。

 このi815を搭載したマザーボードはASUSTeKが開発、製造するmicroATXフォームファクターのCUSL-LEで、そのCPUソケットには133MHzのFSBクロックに対応したPentiumIII 866MHzを搭載する。メモリスロットは2本を持ち、このうちの一つに、128MBの容量を持つPC133対応DIMMモジュールが装着されている。また、AGPスロットにはnVIDIAのRIVA TNT2 Proと16MBのSDRAMを実装したビデオカードを装備する。

 本機のプライマリIDEコネクタに接続されているMaxtor製のHDDはUltra ATA/66に対応した7,2000rpmの高速モデルで、容量は従来機と同様に40GBと十分に確保されている。さらに、セカンダリIDEコネクタには書き込み8倍速、書き換え4倍速のCD-R/RWドライブが接続されており、バンドルされるEasy CD Creator 4 Standardを使って録画ファイルの保存にも対応できる。


マザーボードはASUSTeKのCUSL-LE。i815のほかに、IEEE1394コントローラをオンボード実装している i815のGMCHである、FW82815AA。i810相当のビデオコアを内蔵しながら、AGPスロットをサポートする

高画質化を実現

本機に搭載される第二世代のリアルタイムMPEG2キャプチャボード(下)とDV-MPEGリアルタイム変換ボード(上)

 VAIO Rの特徴はテレビ番組表示、録画機能だが、そのエンジンとなるのは「MPEG2リアルタイムエンコーダーボード」だ。このボードには地上波テレビチューナー、S-VIDEO/コンポジットビデオ兼用入力端子が備えられ、これらから入力されたソースをハードウェアによってMPEG2、もしくはMPEG1形式へと変換できる。実のところ、競合機種では、初代VAIO Rから従来モデルまで採用されていた第一世代のボードと同品質の録画が可能なものさえ少ないのだが、このR73KL5ではより美しい表示と録画が可能な新設計のボードが採用された。この第二世代のボードの目玉となるのが、次に挙げる二つの新技術である。

 一般的なテレビでは、最初のフレームで画像の奇数行だけを描画し、次のフレームで偶数行だけを描画する動作を交互に繰り返すインターレース方式が採用されている。このインターレース表示の映像を、偶数行も奇数行も一つのフレームで描画するノンインターレース方式のPC用ディスプレイに表示した場合には、動きの激しい場面などで櫛型のノイズが発生してしまう。従来のVAIO Rでは、このノイズ対策のために偶数行の情報をカットして、奇数行の情報を2行ずつ描画していたが、その半面、解像度が半減するというデメリットも持っていた。この対策として導入されたのが、「インターレース補完フィルタ」だ。これは偶数行の情報を、もともとの偶数行とその上下の奇数行の情報を組み合わせて作り出すもので、櫛型ノイズを低減しつつ、画像本来の解像度を保つことを可能としている。


 もう一つは、「3次元DNR(デジタルノイズリダクション)」と呼ばれる技術だ。これはテレビ番組やアナログビデオ信号の録画時に適用され、一つのピクセルとその周辺のピクセル、さらに直前のフレームの同じ位置に存在するピクセルが持つ輝度信号を比較し、明らかに異なる値を持つと判断された場合はノイズと見なして周辺ピクセルの輝度信号の値と近いものに変換することで、大幅なノイズの低減を実現するものだ。

 実際の映像を見ると、粗さやブレなどが従来機よりもはるかに緩和されており、明らかな画質の向上が確認できた。これは従来機の画質に満足できなかったユーザーでも一見の価値があるだろう。


 また、R73KL5のエンコーダボードには、DVとアナログ信号、DVとMPEGの相互リアルタイム変換を可能にするカードも標準で搭載されている。これによりDV形式で編集したデータを気軽にMPEG形式のファイルや、ビデオテープに録画して配布、保存することが可能となる。


Windows 2000による新環境

 ソフトウェア面での最大の進化は、OSにWindows 2000 Professionalを採用した点だ。VAIO Rシリーズは、i.LINK端子やPCカードスロット、MPEG2エンコーダボードをはじめとした多数のデバイスを装備する上に、システム起動時に常駐するアプリケーションも多く、従来機のWindows 98環境ではシステムリソースを初期状態から多く消費していた。このため、PremiereやPhotoshopといった大型アプリケーションを同時に使おうとすると、リソース不足が原因でうまく起動できないこともあった。これに対してWindows 2000ではリソースの制約が大幅に緩和されているので、アプリケーションを複数動作させて作業を行なう際の安定度は飛躍的に向上している。

今回からWindows 2000に対応となった、Giga Pocket Ver.3.0。録画、再生操作の使い勝手もよい
 当然のことながら、バンドルアプリケーションもすべてWindows 2000対応となった。なかでも、VAIO Rをビデオデッキのように扱うことを可能にしているGiga PocketはVer2.0からVer3.0へ強化されたが、その新機能で目立つのは、「PicoPlayer」の存在だ。VAIO R独自の「ビデオカプセル」方式で保存された動画ファイルを外部メディアに書き出す際に、これを添付する設定にしておけば、メディアを受け取った環境では、ビデオカプセルファイルをPicoPlayerにドラッグ&ドロップしてやるだけでその再生が可能となる。録画、編集した画像を、ノートPCやLAN上の別のマシンで再生したい場合に便利な機能だ。

 基本機能に関しての大きな変化はなく、ウィザードによって行なう時間指定の予約録画はもちろん、インターネット上のVAIO対応番組表の「予約」ボタンをクリックするだけで、その番組の予約録画が可能となる機能も継承している。とくに後者は見たい番組を確認した後、ワンタッチで予約録画が可能となるため使い勝手がよく、初心者でも確実に録画が行なえる。また、サスペンド中に予約録画の開始時刻が訪れると自動的にマシンが起動し、録画が行なわれるようになったこともうれしい強化ポイントである。


本機に対応したインターネットTVガイドの番組表。「予約」ボタンを押すとタイマー録画がセットされる
 選択可能な録画画質は従来と変わらず、高画質(MPEG2形式、bitレート8Mbps、解像度720×480ドット/30fps)、標準(MPEG2、4Mbps、720×480ドット/30fps)、Video CD形式(MPEG1、1.41Mbps、352×240ドット/30fps)の3種類だ。本機では出荷状態で35GBのHDD領域を録画に利用でき、高画質で約9時間40分、標準で約19時間、Video CD形式で約52時間と、ビデオテープをはるかに上回る長時間の連続録画が可能となっている。画質に関しては個人により意見が分かれるところだが、筆者としては高画質モードでVHS以上、S-VHS未満といったレベルに感じられた。

 また、最上位機種のR73シリーズのみであるが、Premiere 5.1Jが付属し、このソフトによる本格的なノンリニアビデオ編集も可能だ。本機のCPUパワーとHDD容量があれば、編集作業も容易に行なうことが可能だろう。そのほか、フォトレタッチソフトPhotoshop 5.0 LEや、ドラッグ&ドロップを中心とした簡易な操作でオリジナルビデオクリップを自動作成するMovieShaker Ver.3.0などもバンドルされる。


 PCV-R73KL5の価格は約480,000円と、現在のPCの中では高価な部類に入るが、DVI接続の15インチTFT液晶ディスプレイも付属し、この1台でテレビ番組の鑑賞からDV編集までが可能なことを考えると、高過ぎるものではないはずだ。また、テレビ録画機能だけを必要としているのであれば、約220,000円で手に入るエントリーモデルのPCV-R53V7を選ぶのもよいだろう。いずれにせよ、従来機の特徴を強化し、より完成度の高まった新VAIO Rは今年の夏も注目のモデルとなることは間違いない。


  • 製品名:VAIO R PCV-R73KL5
  • 標準価格:オープン(Sony Style価格474,800円)
  • メーカー:ソニーマーケティング株式会社
  • 問い合わせ先:03-5454-0700
  • URL:http://www.vaio.sony.co.jp/
  • CPU:Pentium III 866MHz
  • チップセット:Intel 815
  • メモリ(最大):128MB(512MB)
  • HDD:40GB
  • FDD:2モード
  • CD-R/RWドライブ:書き込み最大8倍速、書き換え最大4倍速、読み出し最大32倍速
  • ビデオチップ:nVIDIA RIVA TNT2 Pro
  • ビデオメモリ:16MB SDRAM
  • ディスプレイ:15″TFT液晶
  • 最大解像度:1,024×768ドット/1,677万色
  • サウンドチップ:Intel 815内蔵
  • モデム機能:56kbps(V.90、K56flex対応)
  • キーボード:109キー(PS/2接続)
  • 拡張スロット(空き):AGP×1(0)、PCI×3(1)
  • インターフェース:i.LINK(S400、6ピン)×1、i.LINK(S400、4ピン)×1、USB×3、キーボード(PS/2)×1、マウス(PS/2)×1、シリアル(Dsub 9ピン)×1、パラレル(Dsub 25ピン)×1、DVI(DVI-D)×1、CRT(Dsub 15ピン)×1、S-VIDEO IN×1、VIDEO IN×1、ビデオ入力(S-VIDEO、VIDEO共用、ミニDIN7ピン)×1、ビデオ出力(S-VIDEO、VIDEO共用、ミニDIN7ピン) ×1、LINE IN(ミニジャック)×1、LINE IN(ピンジャック)×1、LINE OUT×1、ヘッドホン×1、マイク×1、GAME/MIDI×1、モデム(RJ-11)×1、10BASE-T/100BASE-TX(RJ-45)×1、PCMCIA Type II×1(CardBus対応)、アンテナ端子×1
  • 本体サイズ(W×D×H):220×394×352mm
  • 重量:約12kg


    ■写真撮影
    若林直樹(STUDIO海童)

    □ソニーのホームページ
    http://www.sony.co.jp/
    □製品情報
    http://www.sony.co.jp/sd/ProductsPark/Consumer/PCOM/PCV-R73K/index.html
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    ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp