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SSEに対応した0.18μmの新世代Celeron登場!
~Coppermine-128K 600/533A MHzをベンチマーク



 昨日の速報でも述べたように、Intelは0.18μmの製造プロセスルールを採用した新世代のCeleronを発表した。現時点では秋葉原では販売されていないが、編集部でES(エンジニアリングサンプル)を入手できたのでレビューをお届けする。なお、実際の製品とは異なる可能性があることをあらかじめお断りしておく。


●CoppermineコアPentium IIIとの大きな違いは6つ

Celeron 600MHz
 今回発表されたCeleronは「Coppermine-128k」というコードネームからもわかるように、基本的には0.18μmのPentium IIIである「Coppermine」とほぼ同等のコアが採用されている。よく、Coppermine-128kはCoppermineのL2キャッシュを1/2にしたものであると言われているが、細かく見ていくとそれ以外にも違う部分があることがわかる。改めて両者の違いを挙げてみよう。

(1)L2キャッシュの容量はハーフサイズの128KB

 最も大きな違いは、オンダイで搭載されるL2キャッシュの容量がPentium IIIの256KBの半分の128KBになったことだ。データがL2キャッシュの容量を超えると、メインメモリへのアクセスが発生し処理能力は著しく低下する。L2キャッシュの容量が小さいと、これが発生する確率が高くなる。

(2)プロセッサバスは66MHzのまま

 0.18μm版Celeronのプロセッサバス(いわゆるFSB)のクロックは、0.25μm版のCeleronと同じ66MHzだ。Pentium IIIが133/100MHzというクロックに移行しているのに比べると、どうしてCeleronは66MHzのままなのかという疑問がわいてくるだろう。現時点では100MHzをサポートしないチップセットは皆無と言ってもいいし、133MHzをサポートするチップセットも少なくない。とすると、これは技術的な問題ではなく、マーケティング戦略上の判断ととらえるのが正しいだろう。

 仮にCeleronのプロセッサバスを100MHzとした場合、現在100MHzのプロセッサバスが主流のPentium IIIとの差は縮まってしまい、パフォーマンスもあまり変わらなくなってしまう可能性が高い。それでは、Pentium IIIとCeleronの差別化ができず、Celeronばかり売れてしまう。そこで、Celeronのプロセッサバスを66MHzに固定したのだろう。

 そうだとすればPentium IIIのプロセッサバスの主流が133MHzへ移行済みであれば、Celeronのプロセッサバスも100MHzになる可能性もあったのだろうか。

(3)L2キャッシュのレイテンシ

 H.Oda!氏作のWCPUID Version2.7cを利用して、CPUの詳細情報を表示させたところ0.18μm版CeleronのL2キャッシュレイテンシは2であることがわかった。ちなみに、0.18μmのPentium IIIは0、0.25μm版Celeronは5だ。

L2レイテンシ
0.18μm版Pentium III0
0.18μm版Celeron2
0.25μm版Celeron5

 L2キャッシュのレイテンシとは、L2キャッシュへの読み込み命令が発生してから実際に読み込みが開始されるまでの待ち時間、短ければ短いほどCPUのストール(CPUがメモリやキャッシュなどからデータが読み込まれるのを待っている時間)が短くなり、結果的にCPUの処理能力は向上する。

 L2キャッシュのレイテンシが、Pentium IIIに比べて遅いのは2つの理由が考えられる。1つは歩留まりの問題だ。当然、L2キャッシュのレイテンシを上げればL2キャッシュの動作に対する要求はよりシビアなものとなる。レイテンシが2では動作するが0では動作しないというCPUは不良品としなければならない。しかし、レイテンシを2と規定すれば、それも動作品として出荷できるわけで、歩留まりは向上するだろう。

 2つ目の理由として考えられるのは、性能に与える影響だ。既に述べたように、L2キャッシュの容量を半分にしたりプロセッサバスを「わざわざ」66MHzにしたりと、IntelはPentium IIIとCeleronに性能面で差を付けている。同様にレイテンシを2にすればさらに差を広げることができる。

 ただ、2つ目はうがちすぎかもしれない。というのも、Intelはこの件に関して何も公表していない。つまり、それほど性能面での差にはならないと考えている可能性が高い。となると、歩留まりへの影響を考えた措置という可能性が高いのではないだろうか。

 なお、H.Oda!氏のページにはL2キャッシュのレイテンシをソフトウェア的に変更できるツールが用意されているが、それを利用しても0.18μm版CeleronのL2キャッシュレイテンシは変えることができなかった。同様の機能が用意されているBE6-IIやBF6のBIOSセットアップもでも変更できない。今後、この0.18μm版CeleronのL2キャッシュレイテンシが変更可能になるかどうかはわからないが、自作ユーザーには気になるポイントだ。

Celeron 533A MHz Celeron 533A MHz Pentium III 600E MHz
Celeron 533A MHz Celeron 533MHz Pentium III 600E MHz

(4)コア電圧は1.5V

 CPUのコア電圧は1.5Vで、2.0Vであった0.25μm版Celeronはもちろん、SECC2のPentium IIIの1.65V、FC-PGAのPentium IIIの1.6Vに比べても低い。そのため0.25μm版Celeron 533MHzの消費電力は28.3Wなのに対し、0.18μm版Celeronでは17.1Wと低い。あまり大きな容量の電源を搭載できないコンパクトPCなどでは効果があるだろう。

(5)PSNに未対応

 0.18μm版CeleronはCoppermineコアがベースになっているため、Intelのマルチメディア系の拡張命令であるインターネット・ストリーミングSIMD拡張命令(SSE)に対応している。が、Pentium IIIのもう1つの特徴であるプロセッサシリアルナンバー(PSN)には対応していない。PSNは、基本的には企業内などでセキュリティを向上させるためにCPUに固有の番号を割り振ったものだ。Intelでもこの機能は企業向けであるとしており、(将来はともかく)基本的に個人ユーザーには関係の無い機能と言える。このため、個人ユーザー向けのCeleronでは機能を削ったということなのだろう。

(6)パッケージはFC-PGAのみ

 Celeronは従来通り、パッケージはFC-PGAのみでPGA370(いわゆるSocket370)対応マザーボードでしか利用できない。ただし、速報編でも述べたように、従来のPGA370マザーボードの中にはFC-PGAが利用できないものがある。このため、古い世代のPGA370マザーボードで0.25μm版Celeronを利用しているユーザーは、FC-PGAの0.18μm版Celeronは利用できない。PGA370マザーボードがFC-PGAを利用できるのかどうかは外見では判断できないので、FC-PGA対応と明示されているマザーボード以外は0.18μm版Celeronを利用できないとみた方がいい。

●SSEに対応することで高いパフォーマンスを発揮

 ベンチマークはいつもの6つのテストを行なった。Business Winstone 99、High-End Winstone 99、CPUmark99、FPU WinMark、3DMark99 MAX、3D CPUMark、MultimediaMarkの6つだ(それぞれのベンチマークの詳細に関しては「冬季CPU購入ガイド~Intel、AMDの現役全41種類CPUベンチマークデータ付き~」を参照していただきたい)。

 結論から言えば、CPUの持つ整数演算能力が結果を左右するBusiness Winstone 99、CPUmark99に関しては、同クロックのCeleronと変わりがなく、同クロックのPentium IIIに比べるとかなり劣る結果になった。整数演算能力は、L2キャッシュの容量やメモリのバンド幅などに影響を受けやすい。このあたりに、L2キャッシュの容量がPentium IIIの半分で、プロセッサバスが66MHzと制限されている影響が出ていると考えることができるだろう。

 浮動小数点演算能力が影響するアプリケーションでは、拡張命令に対応しているかどうかで結果が別れた。SSEに対応していないHigh-End Winstone 99、FPU WinMarkに関しては同クロックの0.25μm版Celeronと変わらなかった。また、High-End Winstone 99に関しては同クロックのPentium IIIに劣るという結果になった。これは整数演算の時と同じように、L2キャッシュの容量やプロセッサバスのクロックが影響していると考えていいだろう。これに対して、SSEに対応したベンチマーク(3DMark99 MAX、3D CPUMark、MultimediaMark)では、0.25μm版Celeronを上回り、Pentium IIIを下回るという結果になった。

Business Winstone 99High-End Winstone 99
Celeron 600MHz29.4 23.9
Celeron 533A MHz28.6 23.5
Celeron 533MHz28.8 23.6
Athlon 600MHz34.5 28.5
K6-2/55027.6 21.4
Pentium III 600EB MHz35.1 27.8
Pentium III 600E MHz36.4 29.4
Pentium III 600B MHz32.9 26.5
Pentium III 600MHz33.8 28.5
Pentium III 550E MHz34.6 28.2

CPUmark 99FPU WinMark3DMark99 Max
Celeron 600MHz40.2 3,120 4,636
Celeron 533A MHz37.4 2,840 4,385
Celeron 533MHz37.4 2,850 3,839
Athlon 600MHz55.7 3,260 5,602
K6-2/55033.5 1,820 3,781
Pentium III 600EB MHz55.7 3,210 5,912
Pentium III 600E MHz54.9 3,220 5,846
Pentium III 600B MHz44.2 3,030 5,657
Pentium III 600MHz44.2 3,040 5,672
Pentium III 550E MHz50.9 2,950 5,580

3D CPUMarkMultimediaMark 99
Celeron 600MHz 7,794 1,535
Celeron 533A MHz 7,081 1,399
Celeron 533MHz 4,557 1,138
Athlon 600MHz10,227 1,527
K6-2/550 6,877 1,011
Pentium III 600EB MHz 9,404 1,742
Pentium III 600E MHz 9,255 1,736
Pentium III 600B MHz 9,103 1,738
Pentium III 600MHz 9,006 1,772
Pentium III 550E MHz 8,620 1,625

 このような結果から考えて、0.18μm版Celeronは、0.25μm版Celeronと比べるとSSE対応アプリケーションでは大きな性能向上が望め、それ以外のアプリケーションでは同等、Pentium IIIと比べるとほとんどのアプリケーションで下回るという結論を出すことができるだろう。なお、ライバルのAMDのバリュー向けCPUであるK6-2/550MHzとCeleron 533A MHzを比較すると、すべての項目でCeleron 533A MHzがK6-2/550MHzを上回っている。SSEに対応していなかった従来のCeleron 533MHzが、3DNow!に対応しているK6-2/550MHzに3DMark99 MAXでは負けていたのに比べると、完勝と言ってよいだろう。

●差別化には成功したが100MHzのプロセッサバスには対応してほしい

 Pentium IIIが登場する前、IntelはPentium IIとCeleronの差別化に苦慮していた。それがPentium IIIとなってSSEに対応するとことなどで差別化に成功したのだが、今回CeleronがSSEに対応することでその性能差は縮まり、再び両者の位置づけに苦しむのではないかという観測もあった。しかし、K6-2やCeleronより上、Pentium IIIより下という性能を持たせることで、Pentium IIIとCeleronの新しい位置づけの構築に成功したと言ってよい。マーケティング的な位置づけとしては、とにかく性能やディテール(詳細)重視のパワーユーザーや企業ユーザーなどにはPentium III、クロックの数字さえ大きければよいというコンシューマユーザーにはCeleronを提案できるわけで、ビジネスという観点では正しい判断なのかもしれない。

 ただ、エンドユーザーの立場から言わせてもらえば、技術的にできないわけではないのに、マーケティングのためにプロセッサバスが66MHzになっているなどの制限が加えられているのは納得がいかない。ユーザーとしては同じお金を払うのであれば、少しでもよいものがほしいというのは当然だ。Intelはこのような方法が、エンドユーザーの利益になると考えているのだろうか?

 その点では、今後AMDが発売するSpitfireは要注目と言える。SpitfireがIntelのCPUを上回る性能を発揮するようであれば、IntelもCeleronのプロセッサバスを66MHzにしてPentium IIIとの差別化を……などということは言えなくなる。そういう意味でもAMDにはSpitfireでがんばって、Intelと対抗していってほしい。

 このSSEに対応した新しいCeleronの登場で、バリューPC用のCPUも遂に600MHzの大台に突入した。Intelはさらに、4月の終わり頃には667MHz、633MHzの2製品を投入し、第2四半期の終わりには700MHzを投入とCeleronのクロックを急激に上げていく。そうした意味ではコンシューマユーザーにとっては、より高クロックなCPUを安価に入手できるようになるという意味ではメリットがあるCPUといえるだろう。自作ユーザーにとっては、0.25μm版Celeronが登場した時のように、どこまでクロックアップできるかが注目される。

 今回筆者が入手したのはエンジニアリングサンプルであったため、クロックアップは試していないが、今後実際の製品が発売後にクロックアップの報告などがユーザーのページなどにアップロードされるだろうから、そちらにも注目していきたい。

ベンチマーク環境
○マザーボード:
ABIT Computer BF6(440BX、Celeron 533A、600、Celeron 533、プロセッサバス100MHzのPentium III)
SOLTEK COMPUTER SL-67KV(ApolloPro133A、プロセッサバスが133MHzのPentium III)
○メモリ:
PC133 SDRAM(プロセッサバスが133MHzのPentium III)
PC100 SDRAM(それ以外、Celeronでは66MHzで駆動)
○HDD:
WesternDigital AC14300(4.3GB)
○ビデオカード:
カノープス SPECTRA5400 Premium Edition(RIVA TNT2 Ultra、32MB)

□関連記事
【3月29日】米Intel、Coppermine-128kことCeleron 600/566MHz発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000329/intel.htm

バックナンバー

(2000年3月31日)

[Text by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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