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★ ゲームソフトインプレッション ★

第2回「プレイステーション2」ソフトウェアレビュー

 先週に引き続き、プレイステーション2のソフトウェアレビューをお送りする。今回はシミュレーション系を中心に、じっくり楽しむタイプの作品3本を紹介しよう。プレイステーション2(PS2)の持つ高い処理能力と描画能力によって、ゲームのリアリティは格段に増した。また、メディアにDVD-ROMを使うことによって扱えるデータ量が増え、それがシミュレーションゲームに与える影響も気になるところだ。アクションゲームに比べて複雑な操作が求められるこれらのゲームが、パッドひとつで本当に操作できるのかについてもチェックしたい。

● FANTAVISION
● A列車で行こう6
● 決戦


● FANTAVISION




 「FANTAVISION」は、花火をモチーフにしたアクションパズル……といっても、具体的にどんなゲームなのかイメージしにくいと思うので、軽く遊び方から説明しよう。

 プレイが始まると、花火玉が次々に打ち上げられる。花火玉の色は、赤、緑、青、そしてどの色としても利用できる“ワイルド”の4色。PS2のアナログコントローラ(左スティック)を回転させて打ち上げられた花火玉を選択し、“赤・赤・赤”のように3個以上同じ色を揃えたら、“○”ボタンを押して爆発。間に“ワイルド”を挟めば、“赤・赤・赤・ワイルド・青・青・青”と、色の違う花火玉を同時に爆発させることも可能だ。爆発した花火は、周囲にある同じ色の花火玉を誘爆させることができるので、この連鎖をうまく使いながら次々に爆発させていく。爆発に失敗すると画面左下のエネルギーゲージが減り、これがゼロになった時点でゲームオーバー。

 一見単純なゲームに思えるが、打ち上げられた花火玉の色を瞬時に見極め、なおかつ連鎖や誘爆を考えながらクリアしていくのは、かなり難しい。一昔前に流行った落ちモノ系パズルに似た味わいで、熟練すればするほど様々なテクニックが身につき、それに連れてスコアも伸びていく。一瞬の判断と度胸がモノをいう、とても奥の深いパズルだ。
 そして、映像も美しい。打ち上げられる花火は“割物”、“柳”、“蜂”、“千輪”など様々で、これらが次々と夜空に大輪の花を咲かせる様は見事。数秒遅れで響く、炸裂音とパッドの振動も心地よい。プレイ中は忙しくて、とても花火を楽しむ余裕などないが、記録した映像をあとからゆっくりと楽しむことができる。背景も、都市の夜景や宇宙空間、月面都市、ワープ中の超空間などが用意されていておもしろい。

 パズルに花火を使ったアイデアは必ずしも目新しいものではないと思うが、この美しい画面を実現できたのは、PS2の描画能力とCPUならではのこと。スティックを使った操作とビリビリ感じる振動も、PS2のデュアルコントローラをうまく利用していると思う。グラフィックの美しさという点において、PS2ならではの作品といえるだろう。'60年代風のインターミッションや音楽も心地よく、仕事の合間の息抜きや気分転換に最高の1本だ。


(C)2000 Sony Computer Entertainment Inc.


● A列車で行こう6

  • ジャンル:シミュレーション
  • 発売元:株式会社アートディンク
  • 価格:6,800円
  • プラットフォーム:プレイステーション2
  • 発売日:発売中



 アートディンクからは、同社の看板タイトル「A列車で行こう」の最新版、「A列車で行こう6」が発売されている。

 このゲームは「鉄道シミュレーション」として扱われることが多いが、それはちょっと違う。たしかに列車を走らせるゲームなのだが、むしろ鉄道を人口増加のための“道具”として利用する、「都市開発シミュレーション」と位置づけたほうが正しいだろう。プレーヤーは与えられたマップに線路を引き、列車を走らせて、都市の成長や再開発を促す。鉄道という物流インフラを作る(整備する)ことによって、その街が抱える問題を解決するのが目的だ。シミュレーションゲームであると同時にパズル的な側面もあり、いかに効率よく駅や線路を配置するかも、考えなければならない。

 PS2用に作られた「A列車で行こう6」も、こうした基本的な部分はそのまま継承されている。しかし、ビジュアルが大きく進化した。最大の変化は、操作のすべてが1つのマップに統合されたという点だ。前作では2次元のマップ+一部3D表示という2本立ての表示だったが、「A列車で行こう6」では、3次元で描かれたマップを真上から表示することによって2次元(俯瞰図)を表示している。航空写真をイメージしてもらえば、わかりやすい。上空から眺めた2次元のマップをズームアップすると、シームレスに3D画面に切り替わる。空間を自由に移動しながら街を眺めたり、列車の視点で風景を楽しむこともできる。
 3D表示の美しさも、「これが作り物の映像か?」とにわかには信じがたいほどリアルだ。西の空を赤く染める夕焼けや、高層ビルが織り成す夜景。どこかで見たような気がする郊外の駅前商店街や、雪が降り積もる田舎の風景。PS2の描画能力をフルに引き出した映像は、誰の目にも自然で、美しく感じるに違いない。

 ただし、操作はちょっとわかりにくい。マップ全体を見ながら位置を決められないし、パッドを使った線路の引き方にもコツがいる。慣れてしまえばなんてことはないのだが、最初のうちはうまく線路を引くことができず、かなり血圧が上がった。2時間もプレイすれば自然に覚えるが、コンストラクション部分に限っていえば、やはりマウスのほうが楽だと思う。しかしその反面、ズームアップや視点の切り替えはPS2のアナログコントローラ(左右のスティック)のほうが格段に使いやすい。それぞれに一長一短があり、どちらが的しているかは判断に迷うところだ。いずれにしても、この複雑な操作をパッドひとつでこなせるまで単純化した点は、高く評価すべきだろう。

 鉄道に興味がない人には、イマイチこのおもしろさが理解しにくい内容であることは確かだが、ゲーム性が高く、手に入れてからのシアワセ度が高い作品だ。アートディンクの底力を見たような気がする。


Copyright 2000 ARTDINK.All Rights Reserved.


● 決戦

  • ジャンル:ストラテジー
  • 発売元:株式会社コーエー
  • 価格:6,800円
  • プラットフォーム:プレイステーション2
  • 発売日:発売中



 歴史シミュレーションのコーエーからは、「決戦」がリリースされた。戦闘シーンをここまでリアルに再現したシミュレーションは前例がなく、たしかにこれはゲームソフトの「天下分け目」にある作品だと思う。

 プレーヤーは「東軍」の総大将徳川家康として、「西軍」の石田三成と戦う。同じ歴史シミュレーションといっても、たとえば「信長の野望」は富国強兵を基本とした戦略級の作品だが、このゲーム「決戦」は合戦シーンの指揮のみを行なう戦術級。関ヶ原や水口など歴史の名場面を舞台に、勝利を目指す。登場する武将たちは戦いを重ねるたびに経験を積み、強さを増していくので、誰をどのように育てるのかも重要だ。

 操作性もかなりいい。プレーヤーが行なうのは出陣前の部隊編成といくつかの工作(伏兵や寝返りなど)、そして大局の判断で、いったん合戦が始まると、基本的には武将たちの判断に任せることになる。あとは戦況を見ながら軍全体の方針を決め、各武将に「攻撃」「撤退」などの命令を下すだけ。数万という大軍が思うままに動き、「なるほど、総大将とはこういうものか」としみじみ実感することができた。
 ドラマも重厚だ。音楽は、NHK大河ドラマ「秀吉」を手がけた小六禮次郎。演出も、同じくNHK大河ドラマ「元禄繚乱」を手がけた片岡敬司。BGMや武将たちのセリフ、光と影を絶妙に使いこなした演出は、まさに大河ドラマそのもの。声優陣も一流どころを揃え、たとえば家康は玄田哲章、三成は森功至、淀君に小山茉美。八奈見乗児、塩沢兼人も参加している。

 いくつか注文を挙げるとすれば、まずひとつは、武将たちの甲冑がちょっとハデハデに感じるところ。プレステ2ならではの描画能力が、逆に華美な映像となってしまったような気がする。もう少し使い込まれた雰囲気が出ていれば最高だった。たとえば合戦が長引くにつれて馬や下足が泥にまみれるとか、「剛腕」を振るった武将の胸当てが血糊を浴びるとかすると、これはもう大河ドラマを完全に超えた合戦シーンになったと思う。
 もうひとつは、登場する武将や姫が美男・美女揃いであるということ。石田三成や小西行長などはだいたいイメージどおりなのだが、島佐近や加藤清正はもっと骨太で、ふてぶてしい顔つきでもよかったのではないか。顎の尖った二枚めばかりではなく、味わいのあるキャラクターもドラマには必要だ。

 とはいえ、これだけ凄まじい映像を目の当たりにすると、思わず溜め息をつかずにはいられない。映像、サウンド、ゲーム性ともに、「決戦」はいまのところもっとも“PS2らしい”タイトルだと思う。歴史シミュレーション好きなら、「決戦」のためだけにPS2の購入もアリではないのか? このシステムをベースに、西洋や中国を舞台にした作品にも期待したい。


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【総評】

 PS2といえば、やはり最新のアクションゲームに目がいってしまいがちだが、パズルやシミュレーションゲームの出来もかなりいい。少なくとも今回紹介した3本は、いずれもPS2ならではの機能を存分に使った傑作だ。価格も手頃で、どれを買っても損はしないが、気分転換で気持ちよく楽しみたいなら、夜空に浮かぶ大輪の華が美しい「FANTAVISION」。PS2ならではの映像とリアルなシミュレーションを体感したいのなら「A6」が1番。重厚なストーリーと最新のゲーム技術が目当てなら、やはり「決戦」に尽きる。

 なにはともあれ、「すごいぜ、PS2!!」というのが、いまの心境だ。手配に苦労したが、買ってよかったとしみじみ思う。

【筆者紹介】
  • 名前:駒沢丈治
  • プロフィール: パソコンからコンシュマーまで、あらゆるゲームを愛する中年ゲーマー。年末に買ったばかりのドリキャスが、息子のよだれ攻撃を受けて早くも絶不調。Nintendo64も、パッドのボタンが壊れた。2歳児相手には説教のしようもなく、海に向かって叫びたい気分だ。PS2は、せめてPS2だけは死守せねば!!

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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp