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★ ゲームソフトインプレッション ★

プレイステーション2発売記念ソフトウェアレビュー

 満を持しての発売となったプレイステーション2(以下PS2)。その能力の高さは、すでに多くの方が体験済みだと思うけれど、ソフトの方はどうだろうか。「とりあえずDVDプレイヤーとして買った」という意見も多く聞かれるとおり、まだゲームソフトを入手していないという方も多くおられるようだ。そんなわけで、今回からしばらくの間、プレイステーション2用のソフトをご紹介していこうと思う。まずは同時発売のソフトの中からアクション系の3本を紹介してみる。ソフトあってのハード、そのソフトの実力のほどを探ってみる。

● リッジレーサーV
● ストリートファイターEX3
● エターナルリング


● リッジレーサーV

  • ジャンル:レースゲーム
  • 発売元:株式会社ナムコ
  • 価格:6,800円
  • プラットフォーム:プレイステーション2
  • 発売日:発売中


 走ることの楽しさ、爽快感を追求した「リッジレーサー」シリーズの最新作は、架空の都市“リッジ・シティ”を舞台に繰り広げられるシティ・レース。街中の交差点や分岐などを閉鎖してルートを変えることで、走り出しは同じでも、その先のルートはさまざまに姿を変えていく。カーブでドリフトを決めたときにコースアウトしづらいように設定された「アシスト機能」も健在で、誰でも豪快なドリフトを決めることができる。これこそが本誌taira氏をして「見えないレールの上を走ってるみたい(3月3日付編集後記)」といわしめるゆえんなわけだが、四輪車の正確な駆動を再現した「グランツーリスモ」シリーズとは対照的に、ゲームであることを前面に押し出した、ナムコらしいシステムだといえるだろう。好みの分かれるところだとは思うけれど、手軽にレースを楽しみたい方には、やはりこの「リッジレーサーV」の方をおすすめしたい。

 画面は文句なしにキレイ。太陽光がカメラに入ってレンズフレアやハレーションを起こしたり、撮影速度との兼ね合いでタイヤが逆回転しているように見えたり、車のホイールを通してブレーキディスクが熱で赤く発光するのが見えたりと、かなり細かいところまで表現されている。特に背景に関して、遠景までしっかりと描写できているところには、PS2のポテンシャルの高さを感じることができるだろう。ただ、PS2の表現力と実解像度のギャップからくるのか、妙にジャギが目立つような気がした。プレイ中は走ることに専念しているので大して気にはならないのだが、リプレイではかなり目立つ。特に、普段PCのゲームに見慣れているからかもしれないが、残念ながら目を見張るほどの驚きはなかった。それでも、アーケードの「リッジレーサー」そのままの画面が、ようやく家庭で楽しめるようになったという感じは受けた。技術の進歩というのは素晴らしいことだ。

 最初に使用できる車体は6種類。ドリフトしやすい3車種と、グリップ走行に重点を置いた3車種で、それぞれにハンドリングや加速性、最高速度などが異なるので、まずは自分の好みにあった車体を探すところから始めることになる。気に入った車が見つかったら、ボディのペイント色などを設定して自分だけの愛車を作り上げることもできる。ちなみにセーブデータには、チーム名とドライバー名も登録され、レースの戦績や走行距離(!)も記録されていく。グランプリに優勝したり、記録を更新したりしていくと、新しい車やエンジンが増えたり、プレイモードやエディット可能な項目が追加されたりと、徐々に新しい要素も追加されていく。コースも逆送コースやミラーコースなどが追加されていくので、長く楽しむことができそうだ。

 プレイ感覚は、最近の「レイジレーサー」や「R4」というよりも、アーケードの「レイヴレイサー」に近いという印象を受けた。コースは全体的に幅が広く、厳しいカーブも比較的少な目で、初心者向けに間口を広げた感がある。ただし、CPUが操作するアザーカーの動きはすこぶるイヤらしく、イージーモードでも執拗なチェックを受けることもしばしば。「走ることの楽しさ」の部分はさておき「爽快感」に関しては、残念ながら今回も今ひとつといわざるを得ないようだ。
 従来のプレイステーション用のコントロールデバイス「ネジコン」にも対応しているが、注意点がひとつ。ゲームの起動時にネジコンがすでに差し込まれていると、デバイスが正しく認識されずボタンを受け付けてくれないのだ。この場合、一度ネジコンを抜き、差し直せば問題なく使用できるようになる。起動するごとにネジコンの抜き差しをするのが手間にはなるが、レースゲームにおいてはきわめて優秀なデバイスであるネジコンがそのまま使用できるメリットは大きい(註:ネジコンは初期ロット(白)で確認。現在のバージョン(黒)では結果が異なるかもしれません)。
 いい点と悪い点がそれぞれに際だって見えてしまった「リッジレーサーV」。リッジ好きにならば文句なく楽しんでもらえるタイトルだけれど、もう少し気分のいいレースができたら、万人にお勧めできたのに、と思う。PS2の可能性を感じることのできる1本であることは間違いないのだが。


(c)1999 NAMCO LTD.


● ストリートファイターEX3



 格闘ゲームの礎を築き上げた「ストリートファイター」シリーズも「EX」シリーズではでポリゴンへとその姿を変え、今回で早くも3作目となる。アーケードからの移植だった前作までと異なり、今回はPS2完全オリジナル。それだけに、プレイモードもアーケードのものとは大分趣を異にしている。一番驚いたのは、従来のアーケードゲームのように1対1の戦いを続けていくモードが存在しないこと。メインとなる「オリジナルモード」がそれに近いが、1対多の「ドラマチックバトル」や2対2の「タッグバトル」などが主体で、1対1の戦いを求めているユーザーには意外な仕上がりとなっている。ただし、隠し要素の多いことで評判のカプコンのタイトルなので、プレイしているうちに追加されていくということも十分に考えられるのだが……。

 登場キャラクターは初期の状態で15人と、ユーザーによるエディット枠が2名分。オリジナルモードをクリアしていくごとに新キャラクターが追加され、24人+2人が使用可能となる。9×3のキャラ選択枠に26人。もしかしたら、もう一人追加されるのかもしれない。キャラクターは前作までにも登場してきたおなじみのものが多いが、PS2クオリティで生まれ変わったキャラたちは……ちょっとコワイ気もする。モデリングに関しては、ぜひ再考をお願いしたいところだ。
 ゲームとしての難易度はかなり低めで、イージーに設定すればボタン連打だけでも勝ち進んでいけるほど。必殺技のタイミングもそれほどシビアではないので、パッドでも操作は難しくない。気軽に楽しみたい人、アーケードではすぐ乱入されて練習もできないという人には、恰好のタイトルといえるのではないだろうか。必殺技やスーパーフィニッシュの画面効果にも磨きが掛かっているので、手軽にハデに戦いたい方にお勧め。

 キャラクターエディットは、画面に示された条件をクリアしていくことで経験値を貯め、その経験値と引き替えに必殺技を購入していくことで、さまざまな技が使用できるようになるというもの。購入した技のうち、ゲーム内で使用できる数には制限があるので、どれを選ぶかでプレイヤーごとの性格が現れる。メモリカードにセーブしたデータを持ち寄って対戦することもできるので、どんな技を使ってくるかわからない相手と戦うというスリルも味わうことができるだろう。ただ、エディット可能なキャラが1人だけというのは残念。できないからといってゲーム性に影響を与えるものでは全くないのだけれど、せっかくモーションに制限を受けないポリゴンのゲームなのだから、自分の好きなキャラに好きな技を覚えさせることができたら、もっと楽しかったのではないかと思う。
 笑えたのがエンディングで、制作スタッフのテロップが流れている間にもキャラクタの操作ができ、次々に現れる敵を倒していくことができる。エンディングが終わるまでに倒した相手の数も表示されるので、ついつい熱中してしまうわけ。その分、スタッフのテロップには全く目がいかないという(制作サイドから見た)問題点はあるのだけれど、こういうオマケ要素は素直に歓迎したい。

 さて、気になったポイントは1つ。先のエンディングのバトルが最たる例なのだけれど、画面内に多くのキャラ(自分含み4名以上)が出ると処理が重くなってしまう。タイミングや相手との間合いが重要な格闘ゲームでは、これはかなり大きい。慣れてくると気にせずプレイできるようにはなるのだけれど、難易度を下げてライトユーザーを取り込もうというスタンスであるのならば、こうした点にも気を配って欲しかった。初心者であればあるほど、こういう所は「しょうがないな」では済まないものなのだから。


(C)ARIKA CO.,LTD.1999.
(C)CAPCOM CO.,LTD.1999. ALL RIGHTS RESERVED.


● エターナルリング



 PS2と同時発売のRPGということもあり、早くから話題になっていたリアルタイムのRPG。同社の「キングスフィールド」と、ほぼ同じシステムを踏襲していて、ボタン1つで剣の振りや魔法を使用することができる。飛んでいる敵や、背の低い敵に対しては上下を向いて攻撃しないと当たらないなど、3Dであることを十分に考慮したシステムが採られている。また、使用する武器によって攻撃範囲が異なる。3D表現の中でも奥行きの扱いは難しく、プレイする上でも感覚的に理解しにくいので、最初のうちはとまどうかもしれない。とりあえずは「ナイフよりはショートソード、ショートソードよりはロングソードの方が遠くまで届くので有利」という程度には認識しておこう。思ったように攻撃が当たらない場合、それは武器のせいかもしれない。
 よく言われる“3D酔い”については、なぜか全く感じることがなかった。歩行時の上下の動きが小さく設定されているせいかもしれない。また、オプションには、この上下動作をカットする項目も用意されているので、3Dゲームそのものに弱い方でなければ、問題なく楽しめるだろう。

 使用できる魔法は、装備した指輪の種類によってさまざまに変化する。同時に装備できる指輪は5個まで。指輪は冒険の中で手に入れたり、素材となる魔法石を使用して自分で新たに製作することも可能だ。倒してモンスターが落とすことのある「魔法石」と呼ばれる宝石を組み合わせ、新しい指輪を作ることで生まれる新しい魔法。これを作る楽しさも「エターナルリング」の大きな魅力になっている。

 複雑に入り組んだ迷路の中を冒険していくと、開けることのできない扉にぶつかることもしばしばある。これを開けるために特定の魔法や指輪が必要になることもあり、奥に進むためには謎解きや鍵などのほか、指輪や魔法を駆使する必要があるだろう。天然の洞窟などは曲がり方や上下構造が複雑で、道に迷うこともあるかもしれない。が、このゲームにはオートマッピングの機能などはないので、なんとか自力で脱出しなければならないのだ。昨今のコンシューマゲームには珍しいくらい、ユーザーを冷たく突き放した感のある作りになっているが、そこには「与えられたフィールドの中でどう行動するかはユーザーの自由」という、海外のゲームライクなスタンスが見て取れる。国産ゲームには珍しいタイプなので、国内のユーザー、特に初心者ユーザーにどこまで受け入れられるか、興味深いところだ。

 このソフトには、デュアルショック2専用のアナログオプションがついている。さわった感じは従来のデュアルショックと全く同じで、本当にアナログ化されているのかどうか疑問のあったデュアルショック2だけれど、このオプションを有効にして十字キーを軽く押し込むと、たしかに移動速度がゆっくりになる。ああ、本当にアナログなんだ、と妙なところで感動してしまった。ただ、移動速度が最大の状態でも歩いている程度の速度にしかならないのは個人的にどうかと思う。ある指輪を手に入れれば走ることはできるようになるが、それまでは敵の出てこないエリアでも延々と歩き続けなければいけないのは、時として苦痛に感じることもある。オートマッピングの未装備とこの点だけは、不満を感じた部分だ。


(C)2000 From Software, Inc.

【総評】

 どのソフトも長所と短所を持っていて、もろ手を挙げてお勧めするわけにはいかないというのが正直な感想。どれもPS2のクオリティを十分に感じることの出きるものではあるが、おそらくスケジュール進行の都合であろう作り込みの不足を感じる部分もあり、そのあたりは次作以降に期待していきたいと思う。そうした期待の意味も込め、今回は普段よりも辛口のレビューになったが、ゲーム自体がつまらなかったというものは1本もないことを申し添えておこう。それは、すっかり腫れて痛くなってしまった私の左手の親指が、なによりも雄弁に語っている。

【筆者紹介】
  • 名前:山城 宏
  • プロフィール: 職業・もの書き、あとゲーム制作のお手伝いとか。個人で購入したPS2関連の商品が、今のところ縦置きスタンドのみという奇妙な人間。本体は楽に買えるだろうと思っていたんですが、読みが甘かったようです。今回の仕事のためにサブマシンのキャプチャ環境も整え、これであと十年は戦えそうな…って、これは違うゲームのやりすぎですね(笑)。

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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp