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元麻布春男の週刊PCホットライン

PowerShot S10の魅力と不満
~FinePix1700Zと比較して~


■FinePix1700Zを一時返却

 前々回、このコラムで富士写真フイルムのデジタルカメラFinePix1700Zを購入したこと、そしてFinePix1700Zに限らず生じているらしいスマートメディアの不可思議なデータ消失エラーに遭遇したことについて触れた。すると、富士写真フイルムの担当者の方から編集部にコンタクトがあり、「問題の起こっているカメラとメディアを貸していただけないか」、と依頼された。再現性のハッキリしないエラーだけに、これだという原因が判明するかどうかは不明だが、調査をお願いしなければ絶対に判明しないのも確か。もし原因がわかればということで、筆者のFinePix1700Zと当該のメディアを、メーカーである富士写真フイルムに1度戻すことにした。原因、あるいはデータ消失を予防する方法が明らかになれば、このコラムでぜひ紹介したいと思う(先々週書き落としていたがメディアはオリンパスブランドだ)。

 実は、このコラムが掲載されている頃、筆者はアメリカはカリフォルニアのパームスプリングスにいるハズである。年に2回開かれるIntel Developer Forumに参加するためだ。当初はFinePix1700Zを持っていくハズだったのが、あてが外れてしまった。そこで、編集部が代替機を用意してくれるという。代替機は何でも良い、ということなので、せっかくだからこの際FinePix1700Zと違う機種にすることにした。といっても、同じ人間が選ぶのだから、選択の基準は前々回のコラムと変わるわけがない。そして、あの時は次点? となった、キヤノンのPowerShot S10を使わせてもらうことに決めた。
 評価の基準が左右するわけではないが、FinePix1700Zは自分で購入したもの、PowerShot S10は自分では購入していない、ということはあらかじめお断りしておく。

■PowerShot S10の魅力と不満

 筆者にとってPowerShot S10の最大の魅力は、完全沈胴式でレンズバリア付きのズームレンズ、アルミ合金製の本体、APSカメラのIXYを思わせる(ただし本家IXYよりはかなり大きい)カメラらしさのあるスマートなデザイン、単三電池での使用を諦めたことで得られたコンパクトなボディなど、パッケージの良さに集約される(もとより筆者は、デジタルカメラを選ぶ際に、いわゆる画質をあまり気にしたことがないのだが)。今回、実物を手にしても、それは全く変わらなかった。IXYと違って、首からずっとぶら下げておくには、ちょっと気になる重さだが、許せる範囲だろう。

 逆に最大の不満は、標準添付されるのがカメラ用リチウム電池の2CR5であり、充電式バッテリが1万円のオプション(電源キットDK110)になっていることだ。本体価格を比べれば、FinePix1700ZとPowerShot S10はともに89,800円と変わらないが、FinPix 1700Zに充電式リチウムイオンバッテリが付属することを考えれば、PowerShot S10の方が1万円高いカメラ、ということになる。

 これだけバッテリにこだわるのは、2CR5が決して安価ではないからだ。新宿のカメラ量販店で購入しても、1個1,000円以上する。液晶パネルを表示させたり、ストロボを頻繁に使っていれば、2CR5もあっという間になくなる。せっかくCF Type 2に対応し、マイクロドライブが使えるとうたってみても、標準バッテリが2CR5ではバランスに欠けるのではないか。また、海外旅行先での入手性も気になる。筆者にとってPowerShot S10は、充電式バッテリとセットでなければ考えられない。そして、この充電式バッテリが、PowerShot S10の最大の弱点のように思える。

 まず声を大にして言いたいのは、「充電器が大きい」ということだ。重さはそれほどではないとはいえ、大きさはほぼ本体に匹敵する。もし最初から充電式バッテリを前提に本体が設計され、FinePix1700Zのように本体にバッテリを格納したままACアダプタに接続して充電可能であれば、もっと小型になっていたのではないだろうか。旅行に持っていくには、嬉しくない大きさだ。


 もう1つ気になったのは、充電式バッテリがニッケル水素バッテリのせいか、マニュアルにはっきりと「メモリ効果」に注意するよう書かれていることだ。メモリ効果とは、容量を使い切らずに充電を繰り返すと、容量が低下する現象のこと(フル放電、フル充電を繰り返すことで回復する)。つまり、継ぎ足し充電はできないことになる。この点で、メモリ効果のないリチウムイオンバッテリに見劣りする。カメラ本体は悪くないだけに、電源周りの改善、特にリチウムイオンバッテリを標準で内蔵することを望みたい(ウォークマン等で用いられているガムバッテリをみんなで使う、という方向になれば、ユーザーにもメリットがあると思うのだが)。

■FinePix1700Zとの「感覚」の違い

 さて、カメラ本体だが、FinePix1700Zと一番大きく異なるのは、様々な撮影モードが用意されていることだ。FinePix1700Zにも、一応マニュアルモードが用意されているとはいえ、そこでの自由度は極めて小さい。基本的にはオートモードで、ポンと撮るカメラだと思う(これはこれで、筆者は悪くないと思っている)。そして、オートモードでポンと撮って、結構良く撮れるカメラだ(最終的に、ピントも含めちゃんと撮れているかどうかは、PCで確認するまで分からないところがあるが)。

 それに対しPowerShot S10には、オートモード、マニュアルモードに加え、風景/高速シャッター/低速シャッター/夜景/白黒を選べるイメージモードが用意されている。マニュアルモードとイメージモードはプリセット(圧縮率や画像サイズなど、好みの設定を予めセットしておくこと)が効くため、ダイヤルで3種類の撮影モードをワンタッチ切り替えで使うことができる。たとえば、オートモードは1,600×1,200ドットで圧縮率は中程度のオートホワイトバランス(これらはオート時の固定設定)、マニュアルモードは1,600×1,200ドットだが圧縮率を低くしホワイトバランスを蛍光灯にした上で感度を上げておく、イメージモードは高速シャッターでホワイトバランスは太陽光に決めうちする、といった具合だ。これらのモードを使いこなすことで、撮影可能な範囲が広がるし、FinePix1700Zに比べ「これは撮れたな」、という感触がつかみやすい気がする。

 また、撮れた「画」だが、2ヵ月FinePix1700Zを使い慣れた目で、PowerShot S10の画を見ると、色温度が上がったような(寒色系に寄ったような)印象を受ける(ちなみに筆者の常用ディスプレイであるE78Fの色温度設定は6,000度である)。ヒューも若干低いのではないだろうか。銀塩カメラ用のフイルムでいえば、エクタクロームのような感じである。

 もっと大雑把に言えば、筆者にとってFinePix1700Zは、散歩の際に携帯したり、遊びの旅行のお供に最適なカメラ。たまにピントが思ったところ以外に合ってしまうことがあるのはご愛嬌。たっぷりと色がのった暖色系の表現が楽しいカメラである。PowerShot S10は、スナップにも使えるが、ちょっとした取材にも使えるカメラ。FinePix1700Zよりはフォーマルな感じがする。2倍ズームか3倍ズームか、150万画素か211万画素か、といったスペックより、こうした感覚が筆者にとっては重要だったりする。

 最後に、PowerShot S10が使用するCompactFlash(CF)だが、約1週間使ってみて今のところデータが消失したことは1度もない。これだけでCFはデータが飛ぶことはない、と断言することはできないが、周囲に聞いても、エラーは少ない(滅多にない)ようだ。
 カードが大きいということ以外に、CFでちょっと嫌なのはコネクタである。PCMCIAに準じたこのコネクタ、ハッキリとした数字は忘れてしまったが、抜き差しの寿命は数千回程度だったように記憶している。接点の数が多いことと合わせ、デジタルカメラのような民生機器にはあまり向かないのではないだろうか。この点と、スマートメディアに一抹の不安があることを思うと、後発のメモリースティックにもチャンスがあるような気がしてきた。

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【2月2日】元麻布春男の週刊PCホットライン ~デジカメを買い換えてみれば
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000202/hot78.htm

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(2000年2月16日)

[Text by 元麻布春男]


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