今回のCESでは大手家電各社が、メモリカードを家電系製品に採用するといった動きがきわめて活発だった。なかでもCES初日には、東芝、松下、SanDiskが共同で「SDアソシエーション」設立を発表。今後、SDカードの普及とそれを中心とした積極的な展開を図っていくことを表明した。
SDカードに先行して、多数の製品を展開しているメモリースティック陣営からは、本家ソニー以外からのメモリースティックを採用した製品が出品され、広がりを見せていた。
そこでメモリカードを中心とした、大手各社の展開をレポートしよう。
●東芝:SDカードとスマートメディアのロードマップと多数のモックアップを出展
今回、SDカード陣営で、もっとも積極的な展開を見せていたのが東芝だった。といっても、同社のブースは一般来場者は入れず、ディーラーとプレス向けの半非公開での出展となっていた。なかでも目を引いたのが、具体的な今後のロードマップと、猛烈な数のデザインモックといえる。
まず、ロードマップを見てみよう。ここでは、SDカードとスマートメディアが同じスタンスで語られている点が大きな特徴。今後はSDカードに一本化されるのでは……と思っている人も多いと思う。だが、同社の説明によると、SDカードとスマートメディアは用途による棲み分けがあり、SDカードはメモリカードという機能とともに、今後はI/Oカードとして展開してゆくという。一方、スマートメディアはシンプルなメモリであり、安価に製造できるため、音楽などのデータをメディアごと販売するといった展開も考えられるという。
といっても、心臓部となるメモリ技術はほぼ同一。そのため、今後の大容量化は同じペースで進んで行く。具体的には、2000年に128MB、2001年には256MBや512MBのものが登場し、2002年には1GBまで進化するというのだ。
もちろんこれは、単なる推測ではなく技術的な裏付けがあってのもの。特に大容量化に関しては、チップの大容量化と同時に昨秋のCOMDEX/Fallでソニーがメモリースティックの大容量化技術として紹介した内部の多層化が大きなキーになるようだ。
具体的には、チップの薄型化による内部メモリの4層化を考えており、ワンチップで256MBを実現できれば、全体の容量はその4倍である1GBを達成できるわけだ。それも2002年、つまりあと2年あまりで1GBのSDカードやスマートメディアが登場するというのだから、驚いてしまう。
そして、SDカードに関しては、積極的にI/Oカードとしての展開を図るようだ。もっとも具体的に語られていたのは、メモリースティック同様Bluetoothに関するもので、近い将来に実現できるものとして紹介されていたのが印象的。さらに、デジタルカメラ、携帯電話、GPS、ボイスレコーダー、TV/FMチューナーといった展開を図っていくという。
また同ブースには、SDカードとスマートメディアを使ったデザインモックアップが極めて多数出品されている。基本的には、一昨年のCOMDEX/Fallのソニーによるメモリースティックの展開に似たものも多いが、デザイン優先でやや具体性に欠けるものも見うけられた。
これらのモックアップは、SDカードとスマートメディア、それぞれの特性にあったものが出展されていたが、個人的には、SDカードに一本化したほうがスッキリすると思う。だが、すでにスマートメディアを搭載した製品が数多く市場に出回っていることを考えれば、今後もこの両方のメディアで展開していくことになるのだろう。
SDカード搭載のモックアップ | |||
SD I/Oカード | ||
●松下:SDカードの積極展開を強くアピール
SDカード陣営のもうひとつの雄であるパナソニックは、ブースで大々的にSDカード採用製品をアピールしていた。
基本的には昨年秋のエレクトロニクスショーでのモックと同じものが多数展示されていたが、今回初出品のモックアップも多く、製品化間近と思われるようなものもいくつか含まれていた。
また、東芝のモックにはない、電子レンジのような家電系の製品にもSDカードを採用している点は新鮮だった。ブースでの人気は上々で、モックを興味津々に眺めている人が多かったのも印象的だった。
●SanDisk
SDカード開発3社の1つであり、そのベースとなったMMCカードを作ったSanDisk。同社のブースでも、SDカードを大々的に出展しているかと思いきや、展示はSDカードよりも、MMCカードがメイン。しかも、その大半が、MP3関連の製品で占められていた。
つまり、SanDiskとしては、SDカードはコンソシアムの大手家電メーカー主体で展開し、MMCカードはMP3などを中心に普及させてゆくというイメージのようだ。
SDカード関連展示 | |
MMCカード関連展示 | ||
●JVC
SDカードの開発3社以外のメーカーでほとんど唯一、SDカード機器を出品していたのが「JVC」だ。出展されたのは音楽プレーヤーだが、同社はすでにビデオカメラでMMCカードを採用しているため、それとの互換性がある記録媒体としてSDカードを選択したようだ。
●メモリースティック関係
・ソニー
メモリースティック系では、やはり今回も、ソニーが積極的な展開を見せた。同ブースでは、DVカメラやCyber-shot、メモリースティック・ウオークマンといった具体的な製品群を展開。
さらに、大型イベントでは名物となっているメモリースティック関係のモックアップも出品されていた。だが、すでに製品化されたものもあるせいか、それとも発売時期が迫っているのか、モックの出品数は以前ほど多くはなかった。そのなかで目立っていたのが、「VAIO PCG-C1XE」をベースにした音楽サーバー。これはC1XEの上部にメモリースティックを2枚セットできるもので、メモリースティック・ウオークマンの母艦としても使えるPCという感じだ。
また、MGメモリースティックの、トランスルーセントタイプも出品。色は4色あり、いかにも音楽用のMGメモリースティックという雰囲気をうまく演出していた。
パイオニアとシャープは今回、オーディオ機器を中心にメモリースティックを採用した機器を多数出品した。メモリースティックを採用した製品は、COMDEX/Fallでパイオニアが出品していたが、シャープが展示を行なうのは今回がはじめて。もちろん、賛同を表明したメーカーはこれまでも多数あったわけだが、参考出品やモックとはいえ、他社から具体的な製品展示があったことは大きな意味がある。つまり、これでメモリースティックがソニー独自のものではなく、汎用のメモリ媒体として認知されたことになるわけだ。
それは同時に、この新展開により、新型メモリカードに、SDカード陣営とメモリースティック陣営の二つが存在することを意味する。しかも、今回のCESでは、SDカードもI/Oカードとしての展開をアピールするなど、メモリースティックと同じ方向性を打ち出したこともあって、今後はこの両雄がどのような展開を図るのか、興味津々だ。
もっとも、各ブースや説明員の雰囲気を見ると、SDカード陣営はメモリースティックを強く意識しているのに対し、メモリースティック陣営は先行しているせいか、さほどSDカードを意識していないのが、印象的だった。
シャープ | |||
パイオニア | |||
米国市場では、デジタルカメラ用メモリカードの大手メーカーとして有名なレクサーメディア。同社のメディアはデータの読み書きが他社に対して高速な点が大きな特徴だ。
そして、今回のCES初日に、ソニーがレクサーの高速化技術に関するライセンスを受けるという発表があった。それによると、レクサーの高速化技術を駆使することで、メモリースティックの記録速度を飛躍的に高速化することができるという。
具体的には、64MBのデータを10秒以内で書き込むことが可能になるとアナウンスされており、高速版メモリースティックは2001年に発売されるという。
今後、メモリカードに、音楽データはもちろん、ムービーデータといった大容量データを記録するケースが増えるのは確実。だが、現在のメモリカードは、記録速度といった面では、高速なものでも秒間1.5MB程度のものが主流となっている。
だが、今後登場するであろうメモリカードを利用するビデオカメラや、店頭での音楽やムービーデータのコピー販売といった展開には、この速度では、書き込みに時間がかかりすぎる。だが、レクサーの技術を利用すれば、その数倍レベルの高速化が図れるため、今回のライセンス提供となったわけだ。
現在は、大容量化にばかり目を奪われがちだが、今後はメモリカードの読み書きの高速化といった、具体的な使い勝手の部分もこれまで以上に脚光を浴びそうだ。
□2000 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/
(2000年1月13日)
[Reported by 山田久美夫]