このモデルは、昨年秋に発売された「PowerShot S10」と同じ基本ボディを採用した、コンパクトで高品位な300万画素級モデルだ。発売時期、価格ともに未定だが、同社ブースには、実機がきちんと展示されており、詳細なデモンストレーションも行なわれて、かなり熱の入ったアピールを展開していた。
今回は、実写は不可ながらも、「S20」の実機を手にすることができたので、S10との違いと、その感触をレポートしよう。
■“S10”ベースの300万画素モデル
右がS20、左がS10 |
今回発表された「PowerShot S20」は、まさに“「S10」の300万画素版”という印象のモデルといえる。
本機はベースとなるボディシェルはもちろん、レンズを含めた主要部品の大半が、「S10」との共通品となっている。実質的には、S10のCCDを334万画素タイプに載せ代えた進化モデルといっても過言ではない。
外観上はほとんどS10と同じ、とてもコンパクトで高品位なもの。先だって発表された3倍ズームの300万画素機「カシオ QV-3000EX」と比べると、ボディサイズは一回り、というより二回り近く小さく、携帯性は十分に良好だ。
パッとみた感じは、ほとんど見分けがつかないが、2台を並べてみると、「S20」はボディカラーがゴールド調になっており、より高級感が感じられる。また、細かな点では、レンズの斜め下にあるグリップ部(?)がS10では半透明だったものが、本機では同系色になっている。
操作部もS10とまったく同等であり、ブースで操作した印象も、S10と変わりはない。もともとS10は、デザインや操作性の洗練度が高く、「これで300万画素ができれば……」と思っていただけに、私自身は今回のS20の成り立ちについては、さほど違和感はなく、十分に魅力的な仕上がりだと感じた。
左がS20、右がS10 | レンズ仕様部分のアップ |
■ややワイド寄りの2倍ズーム
S10との機能面での違いとしては、まず、CCDがあげられる。具体的には、従来の1/2インチ211万画素タイプから、1/1.8インチの334万画素タイプへと進化しているわけだ。ちなみにCCDのカラーフィルターは、今回も原色系ではなく、補色系を採用している。
CCDの高密度化により懸念された実効感度は、S10と同等。基本はISO100で、必要に応じてゲインアップ(ソフト的な感度アップ)することで、ISO200または400相当で撮影できる。この点もS10と同様だ。
レンズはS10と同じものだが、焦点距離と明るさが微妙に異なっている。具体的には、S10が「6.3-12.6mmF2.8-4.0」だったのに対して、本機では「6.5-13mmF2.9-4.0」となっている。つまり、同じレンズでも300万画素CCDに最適化するために、若干の変更を受けているわけだ。
その最大の要因は、おそらくCCDサイズの違いといえる。つまり、S10は1/2インチで、今回のS20では1/1.8インチとわずかながら大きくなっている。そのため、同じレンズを使っても、写る範囲がややワイド寄りになるわけだ。実際に、35mmカメラ換算でいうと、S10は35-70mmレンズ相当だったのに対し、S20では32-64mm相当となっている。たぶん、従来のレンズを完璧にそのまま利用すると、もっとワイドになってしまい、望遠側が若干物足りなくなるため、わざわざ利用するズーム焦点域を、わずかでも長めにすることで、32-64mm相当というスペックをなんとか実現しているわけだ。
日常的なスナップであれば、これくらいワイド寄りのほうが使いやすいこともあるが、やはり2倍ズームだけに、もう少し望遠側が欲しくなるもの事実。このあたりは、レンズという重要なパーツを流用することによる弊害であり、苦肉の策といえそうだ。
■撮影間隔はS10と同レベルを実現
高画素化による情報量の増大により、気になるのは処理速度の低下。だが本機は、会場で比較した範囲では、211万画素機のS10とほとんど同じ速度を実現している。もちろん、今回比較したS20はベータ版モデルのため製品版ではやや高速化される可能性もある。だが、少なくとも画素数が約1.5倍に増えても、高画質モードで約3秒弱の撮影間隔を実現できているため、実用域ではほとんどストレスのない撮影を楽しめるレベルといえる。
また、カメラの起動時間もS10と同等。液晶ファインダー使用時のレスポンスに関しても、とくに低下している感じはないので安心だ。
CANONブース | 展示されている実写例 |
■ベータ版ながらも十分な画質のサンプルデータ
残念ながら、今回出品されたモデルは、まだ開発途中のもの。そのため、実写することはできなかった。
だが、会場にはS20で撮影されたサンプルプリント(BJプリンターによるA4サイズプリント)が展示されており、自由に見ることができた。そのプリントを見る範囲では、画質は十分に良好。
また、CD-300という同社の昇華型プリンターでA6版にプリントしたものでも、従来のS10との解像度の違いがきちんと見られた。
実写データはすでに、米CANONのホームページで公開されているので、実際に自分の目でその実力を確かめてみるといいだろう。
■常用できる、高品位な300万画素2倍ズーム機
もともと、S10は200万画素ズーム機のなかでも、トップクラスのコンパクトさを備えたモデルであり、ボディそのものも十分に高品位なもの。その魅力は、そのまま今回の334万画素機である「PowerShot S20」にもきちんと受け継がれている。
一昨日レポートした「カシオ QV-3000EX」もなかなか画質のいいモデルだったが、3倍ズーム機ということもあって、気軽に持ち歩くにはサイズが大き過ぎる。その点、この「S20」のように2倍ズームながらも、これだけコンパクトで高品位であれば、気軽に持ち歩き、常用できるレベルといえる。
ただ、S10の欠点として、液晶ファインダー使用時のバッテリ消耗が激しい点があげられる。この部分がS20で改良されているのかどうかは不明だ。だが、本機は、高価なリチウム一次電池の「2CR5」か、専用の充電式ニッケル水素バッテリしか利用できない点が気になるところ。そのため、常用機として考えると、このバッテリの問題が大きくクローズアップされるわけで、このあたりの実力を知りたいところ。
今回はCES会場のブース内で実機に触れただけなので、このあたりの実用度がどの程度進化しているのかは知る由もない。また、画質にしても、メーカー提供の好条件のもの以外のシーンもぜひ試してみたい。このあたりについては、テスト機が入手出来次第、追ってレポートしよう。
注目の300万画素級モデルは、早くもこれで2機種が発表されたわけだ。おそらく、残りの各社も2月はじめに開催される、米国最大のカメラショーである「PMA」をターゲットに新製品を続々発表してくることだろう。
これからの一ヶ月は空前の新製品ラッシュになる可能性が高いわけだが、今回の2機種を見る限り、いずれも従来の200万画素級モデルとほぼ同じ感覚で扱えるレベルに仕上がっており、今年は300万画素モデルがさほど特殊な存在ではなく、上級パーソナル機のメインモデルとして定着しそうな気配が感じられる。
だが、その一方では今年の中堅どころになる、“新生200万画素ズーム機”が、どのような価格帯で、どんな魅力を備えたモデルとして登場してくるのかも、とても楽しみであり、大いに期待したいところだ。
□米CANONのホームページ
http://www.usa.canon.com/
□ニュースリリース
http://www.powershot.com/powershot2/s20_press.html
□製品情報
http://www.powershot.com/powershot2/s20_f.html
□関連記事
【1月5日】米CASIO、光学3倍ズームを備えた300万画素デジタルカメラ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000105/casio.htm
【1月5日】プロカメラマン山田久美夫の
CASIO「QV-3000EX」β機ファーストインプレッション
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000105/qv3000.htm
□2000 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/
(2000年1月7日)
■注意■
[Reported by 山田久美夫]