発売中 価格:オープンプライス 東芝の軽量B5モバイル「dynabook SS RX2」シリーズの最新モデルが登場。基本的な仕様は従来モデルを踏襲しているが、一部スペックの向上と低価格化が実現されており、さらに魅力が向上している。今回登場したdynabook SS RX2の2009年春モデルは、全7モデルが用意されているが、その中から最上位モデルとなる「dynabook SS RX2/T9HG」を試用する機会を得たので、さっそく紹介していこう。 ●SSD搭載モデルが大幅値下げ dynabook SS RX2シリーズ2009年春モデルの最大のトピックと言えるのが、SSD搭載モデルの大幅な値下げだろう。従来モデルの最上位「dynabook SS RX2/T9GG」は、128GBと大容量のSSDを搭載することで話題となったものの、登場直後の実売価格が40万円前後と非常に高価であった。それに対し、今回取り上げる「dynabook SS RX2/T9HG」(以下RX2/T9HG)は、従来モデルと同じ128GBのSSDを搭載するとともに、基本スペックの向上を実現しながら、登場直後の実売価格が30万円前後と、実に10万円ほど低価格となっている。この大幅な値下げによって、HDDモデルとの価格差は3万円ほどにまで縮まっており、従来のような割高感が解消され、かなり購入しやすくなった。 搭載されるSSDは、東芝製のものだ。今回、内部を見ることが出来なかったため、実際にSSDの形状などは確認できなかったが、デバイスマネージャで確認した型番(THNS128GE8BMDC)から、SATA接続のモジュール型SSDを搭載しているものと考えられる。 このSSDの仕様はこちらに記載されているように、MLCタイプのNANDフラッシュメモリを採用し、読み出し速度が最大100MB/sec、書き込み速度が最大40MB/sec(双方ともシーケンシャル時)となっている。実際に、CrystalDiskMark 2.2を利用して速度を計測してみても、ほぼ公表通りの速度であった。 現在数多く市販されているMLCフラッシュ採用の高速SSDと比較すると、読み出し速度こそ遜色のない数値と言えるが、書き込み速度に関しては少々遅いという印象もある。とはいえ、実際にWindows Vistaやアプリケーションの起動は非常に高速で快適だったし、データ書き込み時にも遅いという印象はほとんど感じられなかった。もちろん、書き込みが頻発する用途では、より高速なSSDとの比較で遅いと感じられる場面もあるだろう。しかし、dynabook SS RX2シリーズがターゲットとするビジネスモバイル用途ではほぼ影響がないはずで、他の高速SSDよりも速度がやや遅い点を気にする必要はない。少なくとも、HDD搭載モデルとの比較では、レベルの違う快適さが実現されていることだけは間違いないはずだ。
●本体形状や半透過型液晶などの特徴はそのまま踏襲 本体の形状は、従来モデルをそのまま踏襲している。 本体サイズは、約283×215.8×19.5~25.5mm(幅×奥行き×高さ)。重量は、3セル(容量2,900mAh)の「バッテリパック32A」搭載時に893.5g(実測値)、6セル(容量5,800mAh)の「バッテリパック63A」搭載時に1,017g(同)。双方とも、発表値では従来モデルと全く同じで、本体のサイズや形状、重量は全く変わっていないと考えていい。 本体は、手前が薄く、後方に向かってやや厚くなっているが、薄さは申し分ない。また、重量も、実際に手に持ってみると、驚くほどの軽さが実感できる。RX2/T9HGよりもフットプリントの小さいネットブックと持ち比べると、RX2/T9HGは中身が入っていないのでは、と思ってしまうほど軽く感じる。 このように薄く軽いボディではあるが、もちろん堅牢性は失われていない。ボディにはねじれやたわみに強いバスタブ構造を採用するとともに、周辺部を曲面にしたり、プロテクト用のラバーを取り付けるなど、衝撃を吸収・分散させる構造を採用することによって、面加圧100kgf、75cmからの落下などの衝撃テストをクリアする堅牢性が実現されている。また、キーボードやタッチパッドには、液体をこぼしても本体内部に水を侵入しにくくする防水フィルムが取り付けられており、ある程度の耐水性も実現している(耐水性を保証しているわけではない)。 もう1点、従来モデルからの特徴である液晶ディスプレイの仕様もそのまま受け継がれている。その特徴とは、1,280×800ドット(WXGA)表示対応の12.1型ワイド半透過型液晶を採用し、直射日光の当たる野外でも優れた視認性が確保されているという点だ。さらに新モデルでは、最大輝度が従来モデルの200cd/平方mから、250cd/平方mに向上している。 この半透過型液晶は、先代となるdynabook SS RX1シリーズからの特徴で、バックライトをON/OFFできる専用ボタンも、もちろん用意されている。今回、試用期間中の天候が優れずに晴天下では試せなかったものの、薄曇りの状態でもバックライトをOFFにして問題なく内容が確認できた。ちょうど1年前に、先代となるdynabook SS/RX1をレビューしたときに、直射日光下での視認性も確認したが、RX2/T9HGでもそれとほぼ同じ視認性が確保できるはずだ。ただし、発色に関しては、バックライト時ほどの鮮やかさは感じられない。また、室内の蛍光灯などの照明だけでは光量が足りないようで、バックライトをつけないとかなり厳しい。 それに対し、バックライト点灯時の視認性や発色は、一般的な透過型液晶と比較しても大きく劣ることはないが、視野角はやや狭く感じられる。こういった特徴から、液晶パネルの特色も輝度以外ほぼ変更なしと考えていいだろう。
●基本スペックの強化は、メインメモリの増量のみ
dynabook SS RX2 2009年春モデルのスペック面は、基本的には従来モデルからそれほど大きくは変わっていない。搭載CPUはCore 2 Duo SU9300(1.20GHz)、チップセットはIntel GS45 Expressと、双方とも従来モデルから変更はない。また、ストレージ容量も、SSDモデル、HDDモデル共に従来モデルと同じだ。CPUとして、1.40GHz動作のCore 2 Duo SU9400が搭載されなかった点は少々残念だが、東芝ダイレクトPCのWebオリジナルモデルでは、Core 2 Duo SU9400を搭載し、さらにBluetoothが追加されている。 その他の機能面についても、従来モデルとほぼ同等。無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n ドラフト2.0対応の無線LANを全モデル標準搭載し、今回取り上げているRX2/T9HGをはじめ一部のモデルではKDDI CDMA 1X WINベースのワイヤレスWANモジュールも搭載。また、厚さ7mmの超薄型DVDスーパーマルチドライブを内蔵する点や、eSATA/USB混合ポートを備える点も同様だ。 ただし、メインメモリ容量は、全モデルで従来の2GBから3GBへ増強されている。dynabook SS/RX2シリーズは、オンボードで1GBのメインメモリを搭載し、最大3GBまでの増設が可能となっており、今回のモデルでは標準で最大容量のメインメモリが搭載されるようになった。メインメモリ容量は多すぎて困ることはなく、この変更は当然歓迎できる。 ●キーボード、ポインティングデバイスの使いやすさも従来通り キーボードは、キーピッチ約19mmと、余裕のあるサイズのキーを搭載しており、従来モデル同様非常に扱いやすい。Enterキー付近の一部のキーでは、若干ピッチが狭くなっているものの、その違いもほとんど気にせずに利用できる。 また、ポインティングデバイスのタッチパッドも、操作性は申し分ない。個人的には、パームレストとの段差がもう少しあるといいと感じたが、それ以外について気になる部分はなかった。 タッチパッドのクリックボタン中央には、指紋認証用のセンサーが取り付けられている。また、TPMセキュリティチップの搭載はもちろん、BIOSパスワードやHDDパスワードなどのさまざまなセキュリティ機能が搭載されている。ビジネスシーンでの利用を想定した高いセキュリティ性能の搭載もdynabook SS RXシリーズの特徴の1つだが、2009年春モデルも、この点に不安はない。 バッテリは、冒頭でも紹介したように、3セル(容量2,900mAh)の「バッテリパック32A」と、6セル(容量5,800mAh)の「バッテリパック63A」の2つが標準添付される。重量は、バッテリパック32Aが183g(実測値)、バッテリパック63Aが305.5g(実測値)。とはいえ、6セルのバッテリパック63Aを搭載した状態でも本体重量は十分に軽く、もう一方のバッテリを同時に持ち歩いても携帯性は損なわれないはずだ。 また、ACアダプタ自体は従来同様非常に小型で軽量なものが付属するが、新たに直接コンセントに取り付けられる「ウォールマウントプラグ」が添付されるようになった。このウォールマウントプラグをACアダプタに取り付ければ、ACケーブルを持ち歩く必要がなくなるのはもちろん、付属のACケーブルを同時に持ち歩くよりも軽量となるため、携帯性にも優れるようになる。
●携帯性と操作性を高いレベルで両立するマシンを探している人におすすめ では、ベンチマークテストの結果を紹介していこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage(Build 1.0.0)」と「PCMark05 (Build 1.2.0)」、「3DMark05(Bulid 1.3.0)」、「3DMark06(Build 1.1.0)」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の5種類。Windows Vistaに用意されているパフォーマンス評価の結果も加えてある。各テストは、省電力機能を切り、フルパワーが発揮される環境で行なった。また、比較用として、VAIO type Z VGN-Z90USと、FMV-BIBLO MG/A75Nの結果も掲載している。
結果を見ると、特にVAIO type Zとの比較でかなり大きな差が見られるが、CPUの動作クロックに倍以上の差があることを考えると、当然の結果と言っていいだろう。 また、PCMark VantageおよびPCMark05のHDD関連のテスト結果も、VAIO type Zの結果と大きな差がある。ただしこれも、このVAIO type Zの結果は、2台のSSDをRAID 0で搭載している状態であることを考えると当然の差だ。HDDを搭載するBIBLO MG/A75Nとの比較では大きく勝っており、この違いが実際の体感として現れると考えるべきだ。 次に、バッテリ駆動時間だ。こちらもいつもと同じように、省電力機能を切ってフルパワーで動作する状態かつ、液晶輝度を最大に設定し、無線LANも動作させた状態で、動画ファイル(WMV9、ビットレート1,156kbps、640×480ドット)をWindows Media Player 11を利用して連続再生させることで行なった。また、RX2/T9HGには、3セルの「バッテリパック32A」と、6セルの「バッテリパック63A」の2つが標準添付されるため、双方で計測を行なった。 結果は、バッテリパック32A利用時で約1時間25分、バッテリパック63A利用時で約3時間01分だった。省電力機能を一切利用せず、バックライトを最大輝度にし、無線機能も切らず、という最も過酷な状態での測定のため、さすがにかなりバッテリ駆動時間が短くなってしまった。そこで、バッテリパック32Aを利用して、液晶のバックライトを消灯して同様に計測してみたところ、約1時間49分と3割ほど駆動時間が延びた。もちろん、CPUの省電力機能を有効にしたり、無線機能を切るなどすれば、バッテリパック32Aで3時間弱、バッテリパック63Aでは5~6時間ほどは余裕で動作するだろう。
今回、筆者の手元にちょうど良い比較対象となる機種のベンチマーク結果がなかったこともあって、RX2/T9HGのパフォーマンスがあまり優れないように感じるかもしれないが、ビジネス用途などで支障が出るような低いスペックということはなく、十分快適に利用できるマシンであることは間違いない。また、6セルのバッテリパック63Aを搭載した場合でも1kg少々という軽量さ、薄型ながら堅牢性に優れるボディなど、携帯性も申し分ない。 基本スペック面が、従来モデルからほとんど変更されていない点は少々残念ではあるが、SSD搭載モデルが10万円ほど大きく値下げされた点は大いに歓迎できる。価格の点で従来モデルのSSD搭載モデルを諦めたという人も多いと思うが、2009年春モデルなら、SSD搭載モデルも現実的な選択肢となる。容量の点ではHDD搭載モデルに劣るものの、使用時の快適さは大きく異なるため、今回試用したRX2/T9HGも含め、2009年春モデルの購入を考えるなら、SSD搭載モデルを優先することをおすすめしたい。 □東芝のホームページ (2009年2月3日) [Reported by 平澤寿康]
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