発売中 価格:オープンプライス マウスコンピューターのネットブック「LuvBook U100」(以下、U100)は、8月に発売され、Eee PCから続いているネットブックラッシュのなかでどういう立ち位置なのだろうか。弊誌では、すでにミニレビューや分解の速報レポートをお届けしているので、今回はより突っ込んだ使用感を中心に紹介していこう。 ●キーボードが想像以上に打ちやすい 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の低価格ミニノート「HP 2133 Mini-Note PC」が人気を集める要因の1つは、キータッチのしやすさにある。英語配列の大型キーボードを搭載し、フルサイズキーボードに匹敵するピッチで、直接的な使用感を高めたところが評価された。やはりモバイルシーンであっても、打鍵のしやすさは大切。筆者の場合だと、Eee PCは確かにコンパクトだが、長い文章を書くにはやはりキツく、敬遠していた。低価格ミニノートゆえ、ある程度の性能や機能の制限は我慢しなくてはならないが、やはり入力についてはあまり妥協はしたくないものだ。 U100は幅260mmとミニノートのなかでは大きい。ちょうどB5サイズの本と同じ寸法だ。その分、キーボードスペースには余裕があり、打鍵はとてもしやすい部類に入ると感じた。ただキーボード配列はやや特殊である。文章を書く際に主に使用するA~Zなどのキーピッチを大きく取るために、「」や?など時々使う程度のキーピッチを短くしているのだ。 A~Zなどは約17.5mm、形状は写真を見ても分かる通り、傾斜が設けられており、ストロークを約1.5mm確保。HP 2133 Mini-Note PCよりも狭いピッチとなるが、ストロークに余裕があるため、初めて触ったときもあまり違和感を感じなかった。非常に次のキーを見つけやすいのだ。その反面、?キーなどは約13mmとピッチが狭く、とても打ちにくい。というか、距離感が狂ってしまい打ち間違えやすい。ここは慣れでカバーするしかないだろう。またサイズの大きいエンターキーも良好。フルキーボードを使用する際、エンターキーの下側を押す派なら重要なところだ。筆者も同様なので英語配列キーボードを触ると、だいたいエンターキーを押し損ねてしまう。この原稿をU100にて作成しているが、フルキーボードとさほど違いなく楽に入力できているので、キータッチ面での不満はない。
またShiftやスペースキーも大きく、打鍵するほど、よく考えられているなと感じた。少し残念なところはCtrlキーだ。A~Zキーと同じピッチで、その隣にあるFnキーよりも小さく、ショートカットを頻繁に使う人だと、最初は戸惑うかもしれない。CtrlキーのサイズはFnキーのサイズであったほうが良かったのではないだろうか。もしくはあまりお世話にならないWindowsキーのピッチを狭くして幅を取るなどの対処法はあったと思う。 キーボード全般は高く評価したいのだが、タッチパッドはあまりよくない。タッチパッドの下にクリックボタンがあるスタンダードなレイアウトだが、クリックバーとなっており、左クリックなら左へ傾けての入力となる。その上、やや硬く、膝上での入力が面倒だ。その対策として、ポインティングデバイスのデフォルト設定で、タップによるクリックが有効になっているのだが、これもやや難がある。反応が良すぎてしっかりとタッチパッド表面に指を這わせてマウスカーソルを移動させないと、誤動作させやすいのだ。現状のドライバだと、タップ間隔の設定がないので今後のアップデートに期待したい。 ノート全般で気になるのが高負荷時に「熱くなる」場所だ。数世代前のA4ノートなどは、高負荷が続くとキーボード全体が熱くなり、不快感を覚えたが、U100の場合はさほど気にならない。Intelの低消費電力CPU「Atom」とチップセットが設置されているタッチバッド左上周辺が室温26℃に対して約33℃と少し暖かく感じる程度だった。また背面の熱も左サイドから主に排気されているので、ほとんど気にならないレベルである。
●液晶は可もなく不可もなく 視覚情報面を見ると、液晶解像度はWSVGA(1,024×600ドット)で、HP 2133 Mini-Note PCのWXGA(1,280×768ドット)には及ばないものの、Eee PC 4G-XのWVGA(800×480ドット)より圧倒的に視認性に優れている。また10.2型液晶であるため、ドットピッチは0.218mmと余裕があり、ドットピッチが狭く文字がつぶれしまうこともない。もちろん、デスクトップ向け液晶のドットピッチが0.25~0.28mmであることを考えると、若干の視認性ダウンは否めないがモバイルレベルでは問題はないだろう。
ブックマークしているサイトを見て回ってみたが、少し縦幅が足りないのはしょうがないとして、十分に見ることができた。気になるワードを検索して該当ページを探すときに少しスクロールが増えた程度だ。意外だったのがニコニコ動画(夏)である。「WINDOW」ボタンで動画を大きく表示させようとすると逆に小さくなってしまうのだ。デスクトップ上でもブラウザを横長に表示して縦幅を小さくしておくと再現可能なので確認してもらいたい。 液晶パネル自体の品質は上々で、表面に光沢もなく映り込みの心配もない。ただ電源駆動時のデフォルトでは輝度が100%となっていることもあって、ほんの少し色が薄い印象を受けた。また室内では高輝度状態にする必要もなく、50%にまで落としても問題なく見られるので、色を気にする人は少ないだろう。 ●モバイルは期待できない ネットブックの大半は、SSDを搭載して省電力性や対衝撃性能を高めているが、U100はWestern Digital製HDD「WD800BEVS」を採用している。SSDと比べると消費電力は多く、3セルバッテリということもあり、正直なところモバイルには向かない。この点はマニュアルにも書かれており、15分程度のバッテリ駆動を推奨しているほどだ。車内での使用よりも、比較的電源確保が容易な室内や社内での用途に絞ったほうがいいと感じた。
マニュアルによる公式駆動時間は2時間30分となっているが、ほぼ放置した状態での数値なので実際にブラウジングをしたり、何かしらのデータを作成したりすると2時間程度が限界だろう。実際にビットレート1,011kbps、解像度640×480のWMVをストリーミングで見てみたところ、液晶モニタ輝度を50%状態で約1時間40分、液晶モニタ輝度を100%で約1時間20分だった。 無線LANをOFFにするなどすれば、さらに駆動時間を伸ばすことはできるだろうが、やはり3時間以上の駆動は欲しいところ。また、気になるCPU使用率だが、テスト用のWMV再生時では100%に貼り付くこともなく、40~60%程度。HTによる恩恵もあり、複数の作業も苦ではなかった。 ストレージを見てみると、SSDほど静音とはいかないものの、一定時間のアクセスがない場合はプラッタの回転が止まり、ヘッドが引っ込む仕組みで、駆動音はあまり気にならない。容量80GBとのトレードオフとして、バッテリ駆動時間を削ったという形だろうか。もちろん、HDDにアクセスがあるとカシュンと動き出す音とともに動き出すので、揺れのヒドイところでの作業は注意が必要である。 電車やバスの中では人体クッションがあるので筆者はあまり気にせず使用しているが、重要なデータは念のためUSBメモリに格納してアクセスしている。またSDカードスロットも搭載しているので、モバイルする必要があるときは、こちらをメインにアクセスしてバッテリ駆動時間を延ばすという方法もアリだろう。 ●メモリ増設プラスαで真価を発揮
U100のメモリはオンボードだが、ちゃんと増設用のメモリスロットが用意されている。マウスコンピューターのサイト上ではメモリ増設可能であると謳っていないが、1GBのメモリを増設してみたところ問題なく動いた。電源から近い距離で使うのであれば、マシンパワーがあったほうが何かと都合がいい。手順を紹介しよう。
U100はMSI「Wind Netbook U100」のOEMである。原稿作成時点でマウスコンピューターからBIOSは公開されていないが、MSIのサイトを見てみるとBIOS Ver1.07が公開されていた。Ver 1.06までは、VRAMが最大64MBとせっかくのマシンパワーを活かしきれない状況にあったが、8月21日にVer1.07が公開され、224MBまで割り当てることが可能となったのでアップデートを試してみた。もちろん、保証外となるばかりかOEMとはいえ異なるメーカーのBIOSを入れることになるので、よほどのパワーユーザーではない限り、純正BIOSの登場まで待つことをお勧めする。
アップデートは問題なく進行したが、キーボードが認識しなくなる不具合が発生。原因はどうやらメモリを増設していたことが原因のようで、メモリ1GBの状態でアップデートを行なったところキーボードは認識され、VRAMも224MBとなった。もちろん、その後にメモリを増設してもなんら問題は発生していない。 しかし、ユーサーのレポートを見ているとUSBが認識しなくなった(とても致命的)、カードリーダーが認識しないといった症状がでている。これらの症状を見る限り、やはりマウスコンピューター純正のBIOSの公開を待ったほうがいい。 ベンチマークはメモリ増設前後、BIOSアップデート後、HP2133 Mini-Note PCハイパフォーマンスモデルとで比較してみた。注意点として、U100の純正ドライバではVRAMを最大で64MBまでしか確保できないよう設定されているため「3DMark05(Build 1.3.0)」によるベンチマークはCPU Testのみ行なった。また「PCMark05(Build 1.2.0)」によるベンチは、1,024×768での計測ができず、「PCMarks」「Graphics Score」はN/Aとなった。また、BIOS Ver1.07でのスコアも、いずれ公開されるであろうということで掲載しておく。
【お詫びと訂正】初出時に2133ハイパフォーマンスモデルのメモリ容量が誤っておりました。お詫びして訂正させていただきます。 メモリ増設による恩恵はベンチマークには予想通り現れにくい。が、やはり体感速度が大幅に上昇して、ストレスなく巨大なファイルを開いたり、アプリケーションを立ち上げたりできて便利である。用途次第だが、室内での持ち歩きを考えているのなら、メモリ増設は外せないファクターだ。メモリ増設後は、スワップが発生しにくくなり、HDDへのアクセスが少なくもたつきを感じることもなくていい感じだ。GPUを激しく使う用途を想定しないのであればビデオメモリは拡張せず、メモリ増設だけで十分といえる。 ●今後の課題は「重量」と「マニュアル」 ベンチマークでのスコアは優秀だったが、問題はいくつかある。USB端子の配置などには不便を感じなかったが、重量がやはり気になる。実測1,139gで数値的には軽いと思うのだが、持ってみると重く感じるのだ。持ち方によっては軽く感じるので、原因は重心にあると思う。やや右側、つまりHDD周辺に重心があり、とくにノートを閉じて持ち運ぶ際は、指に重さが分散されないのだ。マザーボードレイアウトもまだまだ考える余地はあるのではないだろうか。 手を出しやすい価格帯なだけにマニュアルのシンプルさは致命的と感じた。PCに慣れている人ならばマニュアルなど見ないで操作に入るが、そうでない人もいる。紙マニュアルは主にOSのインストールなどに留まり、PDFマニュアルはカンタンな説明のみで、Fnキーが示すアイコン説明も簡素なものだった。少し慣れている人ならば、すぐにわかるのだろうがそうではない層もターゲットに捉える以上、初心者でもわかりやすいマニュアルを期待したいところだ。 ●ネットブック兼サブノートとしてオススメ U100は「モバイルはほんの少し」という人にオススメだ。バッテリ駆動を考えない、もしくは短時間のバッテリ駆動ならばなんら問題ない。とくに自宅や社内であれば楽に持ち運べるサブノートとして極めて優秀。筆者の場合だと、複数の取材で写真撮影しまくるシーンでとくに便利と感じた。次の取材先への移動中に写真データをHDDに落としつつ、ちょっとしたメモを作成といった感じで愛用している。また寝る前にゴロゴロしながら無線LAN経由でブラウジングというときにも活躍してくれているのだ。ネットブックを越えた用途はかなり魅力を感じている。よほど高負荷でない限り、駆動音が気にならないというのもいいところだ。 初期状態ではややパワーに欠けるが、メモリ増設とBIOSのアップデート(対応待ちではあるが)でネットブック兼サブノートとして優れたコストパフォーマンスも見せてくれる。キーボードレイアウトもよく考えられているため、どっちでも使いたいというわがままなユーザーに、U100を強く推奨したい。
□マウスコンピューターのホームページ (2008年8月25日) [Reported by 林 佑樹]
【PC Watchホームページ】
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