MSIのAtom搭載ミニノート「Wind Notebook U100」
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MSI Wind Notebook U100 |
6月末以降
価格:未定
各社からリリースが相次ぐミニノートの1つとして、以前より噂が出ていたMSIの新製品「Wind Notebook U100」を評価する機会を得たので、ここにファーストインプレッションをお届けする。
なお、本稿執筆時は正式発表前のため、製品に関する情報が限定的になっている。掲載時にはCOMPUTEXで台湾における製品発表が予定されており、何らかの追加情報があるかもしれないので、別途参照していただきたい。また、評価機のキーボードは英語配列になっているが、国内製品版では日本語配列となる。なお国内では、6月末以降の発売を予定しており、価格は未定となっている。
●Diamondvilleを採用
まず、本製品のスペックだが、CPUには「Diamondville」(ダイヤモンドビル)コアのAtom 1.6GHzを採用している。これは以前に紹介したデスクトップの「Wind PC」と同じで、チップセットも「システム・コントロール・ハブ (Poulsbo)」ではなく「Intel 945GSE Express+ICH7M」を採用している。これは本製品がどちらかというと、電力や価格よりも性能を重視したことによるものだ。
AtomやC7-Mなどを採用しているノートPCは、もともと新興地域での利用を想定しており、性能や機能を妥協して、価格を最優先させていた。ところが、こういった製品が、先進国でもWebサービスなどに利用するセカンドPCとして一躍注目を集めるようになってきた。
Wind Notebookも、そういったセカンドPCを対象にしているが、MSIによると本製品は、一定レベル以上の性能を求める最初のPCを求める層も対象に含めている。CPU以外でこの点を象徴しているのが、キーボードのサイズだ。
本製品の文字キーのピッチはすべて17.5mmを確保しており、一般的ノートPCやキーボードと同じ感覚で打鍵できる。常時利用するPCにとって、無理なく打鍵できるかどうかは重要だ。
フルサイズのキーを採用したことで、必然的に本体面積は大きくなり、それにあわせて(もしかすると液晶のサイズの方が先に決まったのかもしれないが)、本機は10.2型というミニノートとしては大型の液晶を搭載している。
ただし、解像度は8.9型のASUSTeK「Eee PC 900」と同じ1,024×600ドットに留まっている。やはり、8.9型で1,280×768ドットを実現しているHP「2133 Mini-Note PC」を見ると、やや物足りない感じもあるが、Webベースの用途なら問題なく利用できる。
本体サイズは260×180×19~31.5mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約1kgと、Eee PCとほぼ同じレベルにとどめていることは評価できる。液晶のバックライトにはLEDを採用しており、これが少なからず薄型化や軽量化に寄与していると思われる。ただ、12型クラスでも1kgを切る製品があることを考えると、劇的に軽いとは言い切れない。
メモリはDDR2-667 1GB(最大2GB)、HDDは80GB(2.5インチSATA)を搭載。インターフェイスはUSB 2.0×3、Ethernet、SDカード/MMC/メモリースティック(PRO)スロット、IEEE 802.11b/g無線LAN、Bluetooth 2.0+EDR、Webカメラ、ミニD-Sub15ピン、ヘッドフォン出力、マイク入力を装備。OSはWindows XP。このあたりも、一般的ノートPCとして必要十分なスペックを備えている。
●マザーボード上に空きSO-DIMMスロット
■■ 注意 ■■・分解/改造を行なった場合、メーカーの保証は受けられなくなります。 |
マザーボード。ファンの右にあるのがSO-DIMMスロット |
なお、海外では8.9型WSVGA液晶モデル(本体サイズは同一)や、本体色のカラーバリエーションが予定されているが、国内では10.2型の黒モデルのみとなる。
続いて、内部を見てみよう。本体底面にあるネジ9個を外すと、カバーが外れマザーボードがあらわになる。低消費電力のAtomとはいえ、ファンレスは厳しいようで、ファンが1つついている。
マザーボードを見て気づくのが、メインメモリが見あたらないことだ。当然、背面にあるのだろうが、マザーボードを外して裏を見るには、さらに本格的に分解する必要がある。今回は借用品であるため、そこまではしなかった。
メモリについてもう1つ気になるのが、未使用のSO-DIMMスロットがあることだ。マザーボードのシルク印刷にも「DIMM」と書かれているので、メモリ用だと思われる。上述の通り、本製品の仕様として最大メモリ搭載量は2GBとなっているので、手持ちのSO-DIMM 1GBを2種類挿してみたのだが、いずれも認識されなかった。原因は不明だが、現在のBIOSがメモリの搭載量を1GBに制限している可能性はある。
●ベンチマーク結果
ベンチマークもいくつか測定してみた。参考までに、過去のEee PCとWind PCの結果もあわせて紹介する。
まずCPU性能を見るのに、Sandra XIIとPCMark05を実施した。Atom 1.33GHz搭載のWind PCと比べると、素直にクロック向上分だけ性能が上がっているのが分かる。Wind PCも製品版では1.6GHzを搭載するので、同等の性能になるはずだ。
Celeron M 900MHzを搭載するEee PC 900と比較すると、PCMark05のシングルタスクでは概ねCeleron Mの方が10~30%近く高い数値を出している。マルチタスクではAtomのHyperThreadingが効き、Atomの方が最大で5割ほど良い結果を収めている。Sandraの結果は、マルチコアでスコアが跳ね上がるProcessor Multi-Mediaテストを除いても、概ねAtomの方が5割前後良い結果になっているが、.NET Multi-Mediaの浮動小数点は4割ほどスコアが劣っている。
Wind Notebook U100 | Wind PC | Eee PC 900 | ||
---|---|---|---|---|
CPU | Atom(1.6GHz) | Atom(1.33GHz) | Celeron M 900MHz | |
GPU | Intel 945GSE Express内蔵 | Intel 945GC Express内蔵 | Intel 910 GML Express内蔵 | |
メモリ | DDR2-667 1GB | DDR2-667 1GB | DDR2-800 1GB | |
OS | Windows XP | Windows Vista | Windows XP | |
Sandra XII | ||||
Processor Arithmetic | Dhrystone ALU (MIPS) | 3849 | 3235 | 2563 |
Whetstone FPU(MFLOPS) | 3320 | 2786 | 2128 | |
Processor Multi-Media | Multi-Media Int(iit/s) | 29211 | 24623 | 8157 |
Multi-Media Float(fit/s) | 19755 | 16507 | 9275 | |
.NET Arithmetic | Dhrystone .NET(MIPS) | 1103 | 841 | 1015 |
Whetstne .NET(MFLOPS) | 2271 | 1652 | 1637 | |
.NET Multi-Media | Multi-Media Int .NET(iit/s) | 4595 | 3208 | 3246 |
Multi-Media Float .NET(fit/s) | 751 | 541 | 1204 |
Wind Notebook U100 | Wind PC | Eee PC 900 | ||
---|---|---|---|---|
PCMark05 | ||||
CPU Test シングルタスク | File Compression | 3.74 | 3.03 | 3.83 |
File Decompression | 57.16 | 45.73 | 51.90 | |
File Encryption | 14.99 | 12.22 | 21.86 | |
File Decryption | 14.69 | 12.02 | 21.93 | |
Image Decompression | 9.06 | 7.30 | 10.28 | |
Audio Compression | 826.44 | 665.45 | 921.42 | |
CPU Test マルチタスク | File Compression | 2.97 | 2.04 | 1.99 |
File Encryption | 11.32 | 9.59 | 10.96 | |
File Decompression | 20.07 | 16.75 | 13.00 | |
File Decryption | 5.77 | 3.68 | 5.50 | |
Audio Compression | 266.21 | 217.26 | 184.16 | |
Image Decompression | 3.46 | 2.20 | 2.61 |
HDBENCHの結果は整数演算、浮動小数点演算、メモリ性能ともAtomの方が上回るが、ビデオ機能は大きく劣っている。HDD性能は、SSDの長所を活かして、ランダムリードはEee PCの方が良いが、書き込みはWind NotebookのHDDの方が高速だ。
グラフィックス性能については、PCMark05と3DMark06を実行したのだが、前者はWind Notebookが外部ディスプレイにつないでも1,024×768ドットの表示ができなかったため実行できず、後者は全く動作しなかった。そのため、ここではFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3の結果のみをお伝えする。なお、Wind PCはOSがWindows Vistaだったため、比較対象から外している。結果としては、2Dで弱かったWind Notebookが健闘し、Eee PCとほぼ同じスコアになっている。
Wind Notebook U100 | Eee PC 900 | |||
---|---|---|---|---|
HDBENCH Ver3.40beta6 | ||||
All | 33704 | 24628 | ||
CPU:Integer | 92566 | 54828 | ||
CPU:Float | 63662 | 43033 | ||
MEMORY:Read | 47000 | 35518 | ||
MEMORY:Write | 47647 | 34187 | ||
MEMORY:Read&Write | 83524 | 34187 | ||
VIDEO:Recitangle | 15888 | 22149 | ||
VIDEO:Text | 8559 | 10517 | ||
VIDEO:Ellipse | 2930 | 4220 | ||
VIDEO:BitBlt | 241 | 124 | ||
VIDEO:DirectDraw | 29 | 59 | ||
DRIVE:Read | 43686 | 40204 | ||
DRIVE:Write | 41727 | 9417 | ||
DRIVE:RandomRead | 16715 | 32915 | ||
DRIVE:Read | 18938 | 5984 | ||
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | ||||
LOW | 1390 | 1409 |
消費電力は、アイドル時で12~13W、負荷時で17~18Wと、それぞれ30W/35WだったWind PCと比べても格段に下がっている。
●総評
総合的に見るとAtom 1.6GHzのCPU性能は、Celeron M 900MHzと比べて、どっこいどっこいというイメージだ。言い換えるなら、サブとして利用するPC向けのプロセッサとして必要十分な性能を持っていると感じた。
非常に重要な要素である価格が分からないので、何とも言えないが、性能や仕様から言うと、既存の他社製品と比べて特に優れた点も、特に劣った点もない。
この記事が掲載される頃には、さらに他のメーカーからも同等の製品が発表される可能性が高い。この手の製品の購入を考えているユーザーには、しばらく悩ましい日々が続きそうだ。
□MSIのホームページ(英文)
http://www.msi.com.tw/
□関連記事
【5月19日】MSIのAtom搭載ミニPC「WIND PC」速報レビュー
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0519/msi2.htm
【5月8日】【Hothot】ASUSTeK Computer「Eee PC 900 台湾版」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0508/hotrev362.htm
(2008年6月3日)
[Reported by wakasugi@impress.co.jp]