発売中 価格:52,000円 セイコーインスツル株式会社(SII)の電子辞書「SR-G7000M」は、4.0型ながらVGA(640×480ドット)の高解像度液晶を搭載したコンパクトタイプの電子辞書だ。ビジネスパーソンモデルと銘打たれた本機は、豊富な英語コンテンツとともに、経済新語辞典に代表されるビジネス向けコンテンツも多数搭載されているのが特徴だ。 ●胸ポケットに収まるサイズ。電源は充電のみで電池には非対応 まずは外観から見ていこう。 本体サイズは約116×78mmと、前回紹介した「SR-S9000」より二回り以上小さく、手のひらにすっぽりと収まってしまう。胸ポケットにも問題なく収納できるサイズで、以前紹介した同社製「SR-ME7200」に近い。重量は電池込み約145gと、昨今の携帯電話よりもやや重い程度だ。 筐体色、キーボード盤面ともブラック一色で、上蓋部はマグネシウム合金製。本体底面はABS樹脂にピアノ塗装と、上下面でかなり質感が異なっている。後述するが、液晶画面は白黒反転が可能なため、本体・画面ともにオール黒に統一することができる。かなり精悍な印象を受ける製品だ。
キーボードはQWERTY配列で、10列×3行にわたって配置されている。レイアウトはqとaが上下に並んでいるなど少々独特であるため、使い始めてすぐは違和感を感じた。キーそのものも、同社が「カイテキー」と呼ぶパンタグラフキーとは異なるので、打鍵感にこだわる人は、購入前に店頭で実機に触れてみることをお勧めする。 キーボード上部には2行にわたってファンクションキー、下段には戻るキーや決定キーのほか、上下左右キーが配置されている。これらキーのレイアウトはそれほど特殊というわけではないが、いかんせんキーのサイズが小さいため、上段のファンクションキーなどはやや押しづらい。中でも、右側のメニューキーや、左端の電源の入/切キーについては、もう少しサイズが大きいほうがありがたいと思う。 電源はリチウムイオン電池にのみ対応し、ACアダプタを用いて充電を行なう。モバイルユースを前提とした製品でありながら、緊急時に単4電池など入手性の高い電池を利用できないのは、やや不安が残る。とくに出張などではACアダプタの携帯が必須となりそうだ。 スピーカーはキーボード部の手前、他社製品では手書き入力のインターフェイスが装備されている位置にレイアウトされている。本体右側面にボリュームダイヤルが装備されており、音量の調整が行なえる。 拡張機能に関しては、同社が採用している追加辞書用のシルカカードにのみ対応する。上位モデルのSR-S9000とは異なり、MP3プレーヤー機能や、テキストの取り込み機能など、SDカードを利用した数々の機能は省かれている。
●コンパクト筐体モデルには珍しいVGA液晶を搭載 続いて画面について見ていこう。 本機の大きな特徴として、手のひらに収まるコンパクトな筐体でありながら、VGA(640×480)サイズのTFT液晶を装備していることが挙げられる。4.0型という画面サイズでありながらこれだけ高精細な液晶を搭載した電子辞書というのは、ほかに例がない。筐体はコンパクトなほうがいいが、コンパクト筐体モデルにありがちな低解像度液晶はパスしたい、というニーズにズバリ応えてくれる製品だと言える。
ただ、実機を見た限り、スペックから予想していたほどのインパクトは感じなかった、というのが正直なところだ。本モデルを試用する直前に、上位モデルである「SR-S9000」の5.2型VGA液晶をさんざん見ていたことも差し引かなくてはいけないだろうが、外光の反射が映り込みやすいことや、ヒンジの機構のせいで画面が奥まって見えてしまうことが、せっかくの高精細液晶の評価を下げた理由だ。 また、画面のスクロールがややもっさりしており、上下キーを連打してスクロールしようとすると画面が追従せずにワンテンポ遅れることが頻繁にある。ビジネスシーンでバリバリ使う際には、少々気になるかもしれない。 なお、本製品では、液晶の表示モードを「通常」のほか「反転」に切り替えることができる。この「反転」では、黒バックに白抜き文字という、いわゆるPCのDOSモードと同じ状態で画面の表示が行なえる。ユニークな機能ではあるが、前述の通り液晶画面への映り込みがそこそこあるので、あまり実用性が高いとは感じなかった。 ちなみに本製品では、上位モデルと同様、画面のタテ/ヨコ2分割表示や、訳画面を表示したまま別のワードを検索できるツイン検索に対応する。行間を空けたり、行間に罫線を入れるといった表示スタイルの変更についても同様だ。また、文字サイズも5段階で変更することができる。このあたりのモードの細かさは、高解像度の恩恵を被っていると言えるだろう。
●コンテンツは英語に特化するも、全体的には少なめの印象 次にメニュー画面と、搭載コンテンツについて見ていこう。 メニュー画面は、上位モデルSR-S9000などと同じく、横向きタブ形式を採用している。搭載コンテンツの数そのものが少ないため、タブも「国語」「英語」「ビジネス」「旅行」「役立つツール」の5つしかなく、特に「国語」「旅行」はそれぞれ3つ、1つのコンテンツしかなく、やや物足りなさを感じる。
ファンクションキーは複数回押すことで異なるコンテンツが起動する方式ではなく、1つのキーに1つのコンテンツが割り当てられている。 コンテンツ数は22。同時に発売された姉妹モデルのSR-G6000Mが44コンテンツであることを考えると、ちょうど半分でやや見劣りするのは否めない。もっとも、英語関連については、英和、和英、英英で計10コンテンツを搭載しており、その内容もリーダースに英和活用大辞典、またオックスフォード系の4コンテンツなど、上位モデルとほぼ同じ充実したラインナップを誇っている。 また、モバイルユースの筐体ということで、旅行カテゴリに「わがまま歩き旅行会話 英語」が収録されている。ただし旅行用のコンテンツはこれ1つで、やや物足りなさを感じた。 また、SR-S9000に収録されていた「笑うコマ単」や、TOEIC関連コンテンツ、SPI2対策ドリルなどは収録されていない。ビジネスパーソンモデルという触れ込みなので、ある程度のコンテンツの割り切りは必要だとは思うが、かなりバッサリと削りすぎた印象はある。なにより、せっかくのVGA液晶のよさを感じられるコンテンツが、ブリタニカの挿絵くらいになってしまっているのは、少々残念だ。 ちなみに発音機能については、ジーニアス英和大辞典の重要見出し語(約6万語)のほか、わがまま歩き旅行会話英語の会話文(2,300文)を発音できる。他のコンテンツについても、ジーニアス英和大辞典収録の見出し語を利用して発音が行なえる。このあたりは、搭載されていないTOEIC関連の発音機能を除けば、上位モデルに当たるSR-S9000の発音機能にまったく引けをとらない仕様となっている。
●自社内競合品に押されがちな製品? 製品カタログで「英語にこだわるアクティブなビジネスパーソンモデル」と銘打たれている本製品だが、実際に試用した限りでは、ターゲットユーザがいまいち見えにくい製品であると感じた。例えば、ビジネスパーソンで英語といえば真っ先に海外出張が思い浮かぶが、英会話系のコンテンツは本製品には1つしか収録されていない。その一方、オックスフォード系の英語コンテンツなど、机上で使う機会が多いコンテンツは豊富に収録されている。モバイル向けのコンパクト筐体であるにもかかわらず、である。 以前レビューしたSR-ME7200もこれに近いコンテンツの収録状況だったが、例えば広辞苑を搭載するなど、本製品に比べると広い範囲をカバーしている印象が強かった。また、本製品と同時に発表された姉妹モデル「SR-G6000M」は、本製品の英語コンテンツほどエッジは立っていないものの、コンテンツはちょうど倍に当たる44種類が収録されており、その多くは英語を始めとする外国語の会話集が占めている。海外出張などはむしろこちらのほうが得意そうだ。 そうなると、本製品の存在価値というのは、上位モデルSR-S9000と同等の機能(ただし英語に限る)を、つねに身近に置いて利用したいというニーズに絞られてくる。MP3プレーヤー機能などSR-S9000にあった豊富な付加機能を必要とせず、筐体もなるべくコンパクトであることが望ましい、しかし解像度などの面で妥協したくないというユーザには魅力的な一台だろう。その上で、海外ユースを前提とするのであれば、姉妹モデルのSR-G6000Mも候補に加えるというのが、購入を検討する上での賢い選択だと言えるだろう。
【表】主な仕様
□セイコーインスツルのホームページ (2008年7月15日) [Reported by 山口真弘]
【PC Watchホームページ】
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