1月26日 発売 メーカー希望小売価格:オープンプライス カシオの電子辞書「XD-SP6600」は、100コンテンツを搭載した総合タイプの電子辞書だ。最新版である広辞苑第6版を収録したほか、業界初となるツインタッチパネルを搭載したことが大きな特徴だ。 ●業界初のツインタッチパネルを搭載 春商戦を前に発表された、カシオの電子辞書の新ラインナップ。全15モデルの中核を担う存在が、今回紹介する「XD-SP6600」シリーズだ。従来モデルとの最大の違いは、手書きパネルだけではなく、メイン画面までもがタッチパネル化されたことだ。 タッチパネル方式のメイン画面は、過去にもキヤノンの電子辞書などで採用されているが、子画面ともどもタッチパネルに対応した製品は初めてである。従来モデルでは、手書き入力時に誤ってメイン画面をタッチペンでつついてしまうことも少なくなかったが、本製品ではそれが解消され、直感的な入力が可能になった。ユーザビリティ的にも正しい方向に進化したと言えるだろう。
特に、タッチペンによるタブメニューの選択はもちろんのこと、タッチペンを用いたスクロールは非常に快適で、これまでの電子辞書に比べ、まさに異次元の使い心地を実現している。これまでカシオの電子辞書を使っていたユーザーであれば、従来と同じタブ形式のメニューがすべてタッチペンで操作できることに感動するに違いない。 なお、2つの画面がいずれもタッチ入力対応ということで、どちらを使ってよいか迷いそうな気もするが、実際には役割分担ははっきりしている。具体的には、文字を書く時は従来通りキーボード手前の手書きパネルで、メニューの操作やスクロールはメイン画面、という位置づけである。例外として、漢字源がメイン画面での漢字手書き入力に対応しているのが目立つ程度である。
●手書きパネルが横5文字分に大型化。ソフトキーボードも表示可能 本モデルでは、子画面である手書きパネルも大幅に進化している。 まずはサイズ。従来モデルでは左右2マス表示が限界だったが、本モデルではなんと横に5マスが表示できるようになった。従来モデルであれば、数文字書く場合に左→右→左→右と交互に書く必要があったが、本モデルであれば5文字までは順番に書いていくだけで済む。これにより、入力時の違和感が大幅に軽減され、入力効率もアップしている。 手書きパネルの横幅が広がったことで、もう1つ新しい機能が追加になっている。それは、アルファベット以外のキーについて、ソフトウェアキーボードが表示できるようになったことだ。中国語簡体字のピンインを直接入力できるほか、別売のコンテンツを追加すれば、ハングルやロシア語のソフトウェアキーボードを表示することまでできてしまう。つまり、入力する文字に応じて、キーボードを自由に切り替えることができるのだ。 単に手書きパネルをワイドにしただけにとどまらず、これまで弱点だったアルファベット以外の文字入力の壁を取り払ったこの試みは、高く評価されるべきだろう。メイン画面のタッチパネル化の陰に隠れてしまっているが、これだけで従来機種から乗り換える価値がある機能だと言えるだろう。 唯一マイナスと言えるのが、競合であるシャープに先行を許した、手書きパネルのバックライト対応についてだろうか。ないものねだりというわけではなく、ソフトウェアキーボードとして使うことを考えると、やはりバックライトは必要だろう。今後の進化に期待したいところだ。 余談だが、ここまで紹介したタッチパネル周りの機能については、同社が店頭で展開している、お父さんやお母さん、娘らが出演する販促用ビデオが非常にわかりやすい作りになっている。店頭に足を運ぶ機会があればぜひ観てほしい。
●コンテンツ数は100。最新版である広辞苑第6版を収録 次にコンテンツについて見ていこう。 コンテンツ数は100。中でも、10年ぶりの改訂となった広辞苑の第6版を収録したことが目玉として挙げられる。図表の収録数も2,800点と膨大な数で、少なくとも本モデルが存在している上で、従来の広辞苑搭載機種を購入する必然性はないと言えるだろう。 ほかにも、従来モデルであるXD-SW6500から入れ替わったコンテンツは数多い。増えたコンテンツとしては音声読み上げコンテンツである「現代文名作選」シリーズや脳鍛アプリシリーズ、省かれたコンテンツとしては「日本酒ハンドブック」「DVDのカタログが理解できた本」などが挙げられる。「現代文名作選 小説 舞姫」など、音声読み上げコンテンツの1作品が1コンテンツとカウントされているのは少々疑問を感じるが、全体的にはバランスのとれたラインナップだと言えそうだ。
●手書き入力を生かしたユニークな暗記カード・メモ機能 手書きを生かした機能として、本モデルで新規搭載された「暗記カード」や「フリーメモ」もユニークな機能だ。 「暗記カード」では、英単語や年号を登録し、オリジナルの暗記カードを作る機能だ。最大6冊まで作成できるほか、出題の仕方も表/裏から表示したり、間違った項目だけを表示したりと、多彩な使い方ができるよう工夫されている。 ちなみに従来の「単語帳」機能も用意されているので、特定のコンテンツから覚えたい単語をワンタッチで取り込む際は「単語帳」、手書きでオリジナルのカードを作成したい時は「暗記カード」といった具合に使い分けることが可能だ。暗記カードは書いて覚えることを念頭に置いた機能である、と解釈しておくとよいだろう。 「フリーメモ」では、手書きパネルからちょっとしたメモを残しておくことができる。上蓋をあけるとすぐにスリープ状態から復帰するカシオ製品の特長を考えると、ちょっとしたToDoリストとしても使えそうである。上限30件という制限はあるが、ビジネスマンはぜひタスク管理ツールとして試してみてほしい。 新しく追加されたこれらの機能を実際に使っていると、どうしてこれまでの電子辞書になかったのか、不思議に思えるくらい馴染んでしまっている。学生はもちろん、ビジネスマンの資格取得や、ふだん使いにも重宝しそうだ。 ●携帯電話によく似た上下左右/決定キーで直感的な操作が可能 ハードウェアについても、かなりの改良の跡が見られる。 キーボードについては、上下左右キーと決定キーが携帯電話に近いインターフェイスに変更された。電子辞書の上下左右キーといえば、これまでは四角を基調とした無骨なデザインであることが多い上、レイアウトも機種ごとにバラバラで、どれだけ慣れても手元を見ながらでないと操作が困難だった。今回のモデルは中央に決定キー、その上下左右に方向キーがレイアウトされており、直感的に操作が行なえる。また、すぐ隣に「戻る」キーが配置されるなど、主要操作が片手で完結できるようにレイアウトが考慮されている点も、ユーザビリティ的にポイントが高い。 一方、キーボード手前に搭載されていたスピーカーは、これまでの2基から1基に変更になった。競合であるシャープが1基→2基に変更したのとは逆に、スピーカー数が減ったところに、両社の各機能に対するプライオリティの差が見え隠れしているようで面白い。 ちなみにこの音声出力は、側面のスライドスイッチで出力先を切り替える方式。イヤホン端子が抜けてしまい、いきなりスピーカーから音声が漏れてしまう事故を防ぐことができるというわけだ。ちなみにボリュームはキーで操作する方式で、個人的にはロータリースイッチが望ましいと思うが、これは世の中の流れという点で致し方ないだろう。 メモリカードについては、これまでのSDカードから、microSD対応へと変更された。本体側面に装備されていたスロットも、本モデルでは電池フタの内部へと移動されている。頻繁に抜き差しするものではないという認識だろう。
●完成度の高さはピカイチ。初心者から買い替えまで幅広くお勧め 以上、従来モデルとの違いを紹介するだけで紙数が尽きてしまったが、とにかく新機能盛りだくさんのモデルである。特に、タッチパネル化されたメイン画面を一度体験してしまうと、もう従来モデルには戻れなくなってしまう。競合他社の製品に比べて、一歩二歩どころか、数歩リードしたと言っても過言ではないだろう。 もちろん、気になる点もいくつかある。1つは本体の重量バランスが悪いこと。メイン画面をタッチパネル化した影響からか、メイン画面のある上蓋部が重く、本体の安定感がいまいちよろしくないのだ。メイン画面をタッチパネル化しながら従来モデルと同等の重量を実現したこと自体はスゴいとは思うのだが、メイン画面をタッチペンで操作する際、手でしっかり押さえていないと、本体ごと後ろに倒れてしまいやすいのはやはり気になる。さらなる進化を期待したい。 コンテンツに関する不満としては、本モデルで大幅に強化された脳鍛系のコンテンツにおいて、テストのあとに正解が表示されないことが挙げられる。回答が終わったあと、10問中7問正解しました→どれが間違ったのか表示されないまま終了するというのは、学習系のコンテンツとして矛盾しているのは明らかだ。不満というよりも、なぜそうなっていないのか不思議極まりない。メニュータブとして独立したことで利用率も上がると思われるので、見直しが求められるだろう。 また、前回のレビューで取り上げた筆順大字典搭載モデル「XD-SW6000」のコンテンツがまったく継承されていない点も不思議だ。XD-SW6000は製品カタログを見てもかなり異端な扱いをされているのだが、むしろ「筆順大字典」はメイン画面がタッチパネル化したことで意味を持ってくるコンテンツであるはずである。個人的には復活を期待したい。 ともあれ、本モデルの完成度の高さはピカイチで、買って失敗だったと感じることは少ないだろう。カラーバリエーションも6種類を数え、選ぶ楽しみにおいても抜かりはない。電子辞書が初めてというユーザーから、買い替えのユーザーまで、幅広くお勧めしたいモデルである。
【表】主な仕様
□カシオ計算機のホームページ (2008年3月12日) [Reported by 山口真弘]
【PC Watchホームページ】
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