笠原一輝のユビキタス情報局

「より薄く」を第一目標に据えた新世代ThinkPad
~ThinkPad X300開発者インタビュー




13.3型液晶を搭載しながら1.42kgを実現したThinkPad X300

 レノボの「ThinkPad」シリーズといえば、PCをよく知るユーザーにとっては自動車でいえばメルセデスやBMWなどといった堅牢で機能性も優れた高級車というイメージのノートPCブランドだが、そのThinkPadシリーズに新しいシリーズとなる「ThinkPad X300」という新しいラインナップが追加された。

 ThinkPad X300は、レノボが「ThinkVantageテクノロジ」と呼ぶセキュリティ性の高さや、使いやすさを追求した機能性というThinkPadの特徴を受け継ぎながら、LEDバックライトの13.3型のWXGA+(1,440×900ドット)液晶を搭載し、最薄部で18.4mm、重量が1.42kgと薄くかつ軽量を実現した製品として、多くのユーザーから注目を集める製品となっている。

 今回、ThinkPadシリーズの研究開発を行なっているレノボ・ジャパンの大和事業所でThinkPad X300の開発のとりまとめを行なった2人のエンジニアに、話を伺ってきた。

●ThinkPad X300の出発点は「より薄く」。X61とは別セグメントの製品

 おそらく多くのThinkPadユーザーが気になるのは、このThinkPad X300(以下X300)の立ち位置ではないだろうか。具体的にはX300がリリースされることで、X60/61などの12型液晶を搭載したモデルがどうなるのかだ。

 これについてレノボ・ジャパン株式会社 ノートブック開発研究所 開発 製品開発担当統括担当の田保光雄氏は「ThinkPad X300は、従来の12型の製品であるX6xシリーズなどを置き換える製品ではない。あくまで13型クラスという新しいセグメントの製品になる」と、従来のXシリーズの製品を置き換える意図で開発された製品ではないことを語った。

 田保氏によれば、X300を開発するにあたり、最も重要視したことはとにかく「薄く」というコンセプトであったという。「弊社では製品をワールドワイドに展開しているが、各地域で軽く、薄くということへの要求は異なっている。例えば、日本では軽いなら画面が小さいことも許容されるが、米国などでは自動車社会ということもあり軽さも重要だが、液晶の大きさも重要である。そうした中で各地域のニーズをまとめていくと軽くよりも薄くということがでてきた」(田保氏)。ワールドワイドに製品を展開するレノボらしく世界中のニーズに応えられるようなコンセプトとして「より薄く」ということをトッププライオリティに据えたのだ。

レノボ・ジャパン株式会社 ノートブック開発研究所 開発 製品開発担当統括担当 田保光雄氏 レノボ・ジャパン株式会社 製品開発研究所 企画・開発推進 テクニカル・プロジェクト・マネージャ 木下裕之氏

●何を残すのかでこだわった光学ドライブの内蔵と3つのUSBポート

 「X300の開発は一昨年に始まったが、当時の技術ではここまでは出来なかった。そこで、発売時には利用できるようになるであろう新技術なども見込みながら、スペックを決めていった」と田保氏が語るように、開発陣としてもスタート時にはここまでできるかどうかはわからなかったのだという。

 例えば、光学ドライブ。光学ドライブは厚さもあるし、実装面積も小さくないため、入れるか入れないかは大きな問題だろう。奇しくも、X300に先立って発表された同じ13型ワイドを搭載しているアップルのMacBook Airは光学ドライブを内蔵していない。当然、X300だって内蔵しないという選択肢もあり得ただろう。では、X300では何を残し、何をあきらめることで、薄さを実現したのだろうか。

 レノボ・ジャパン株式会社 製品開発研究所 企画・開発推進 テクニカル・プロジェクト・マネージャ 木下裕之氏は「何か1つで薄くなるということはなく、いろいろなものの組み合わせで薄さを実現している。まず第一に議論したのは光学ドライブの有無。ユーザーの使い方を考慮すると、それは外せないだろうと判断した。それを決めてから残りの要素についても検討した」と説明する。

 そこで、X300は光学ドライブに7mm厚のドライブを採用している。従来のTシリーズやXシリーズのドッキングステーションに内蔵されていたウルトラベイ・スリムのドライブは9.5mm厚のドライブだったので、どうしても厚さがでてしまっていたのだが、それを7mm厚のドライブに変更することで回避したわけだ。

X300の光学ドライブ部 X300に採用されている光学ドライブは7mm厚のDVDマルチドライブ

 しかし、それにより失っている部分ももちろんある。具体的にはウルトラベイ・スリムで実現されていたホットドック・アンドック(通電中の取り付け、取り外し)ができなくなっているのだ。

 「取り外し可能なドライブにしようとすると、ドライブの外部に追加のパネルを取り付けたり、取り外しのための機構を本体側に用意する必要がある。それは、今回の薄くというコンセプトと相反するものになるので今回はそれは見送ることにした」それでも、光学ドライブの存在は大きな差別化のポイントとなるので、取り外しができないことは大きな問題ではないだろう。

 それ以外に、もう1つあきらめた部分もある。それがカードスロットだ。X300には通常のノートPCなら用意されているようなカードスロットが用意されていない。一般的なノートPCなら、PCカードスロット(ないしはExpressCardスロット)、メモリカードスロット(SDカードやメモリースティック)などのカードスロットが1つか2つ、場合によってはもっと用意されていることが通常だが、このX300には何も用意されていない。これについても、取捨選択を行なったのだという。

 「当初カードスロットを入れることも考えたのだが、PCカード、ExpressCard、CF、SDなどをどれか1つだけと考えると、どれも帯に短したすきに長しだった。そこで、カードスロットを用意しない代わりに、3つのUSBポートを装着することにした。それはメモリカードスロットも、通信モジュールもPCカードもUSBで代替することはできるが、その逆は難しいと判断したからだ」(田保氏)

 例えばキャリアのデータ通信カードも最近はPCカードやCF型だけでなくUSBモジュール型も提供されることが増えているし、メモリカードのリーダもUSB型の物を持ち歩けば代替可能だろう。従って、できるだけUSBポートの数を増やすことが結果的にユーザーの利便性の向上につながるのだと判断したのだ。

●複数規格の無線通信に対応可能な一体型アンテナを採用

 カードスロットが必要ないと判断したもう1つの理由は、この製品が通信系の拡張性を最初から考えた設計であることも影響している。「本製品は多彩な無線通信に対応可能な設計になっている。このため、通信系のPCカードなどは必要ないだろうと判断した」(木下氏)のだという。

 今回レノボ・ジャパンが発表したX300の3製品には、通信機能としてIEEE 802.11nドラフト 2.0に準拠した無線LANと、Bluetooth(2.0+EDR)の2つの無線機能が搭載されている。しかし、それで充分かといわれれば、本当にそうか? というのが正直なユーザーの感想ではないだろうか。だが、木下氏が「多彩な無線通信に対応可能」と話す背景には、X300のアンテナに秘密がある。

 「X300の液晶部分には2つの一体型アンテナを用意しており、この製品で必要なすべての周波数帯を受信できるようになっている」(木下氏)と、ThinkPadシリーズとしては初めて1つのアンテナで複数の周波数が受信できる一体型アンテナを採用しているのだという。

 従来のXシリーズやTシリーズでは、無線の規格毎にアンテナを用意していた。例えば、UWBと無線LANが利用可能なモデルの場合、液晶の内部に複数のアンテナがあり、それによりそれぞれ受信していた。しかし、それではスペース的にも小型化が難しく、場所によっては感度のよいところと悪いところがでてきてしまうなどの問題点があった。

 しかしX300は、液晶の上部に用意されている2つの一体型アンテナにより、複数の周波数を受信できるのだという。一体型アンテナとはいえ、実際にはそれぞれの周波数毎に枝分かれしており、それぞれの周波数帯を受信することが出来るようになっている。「この2つの一体型アンテナの中に、無線LANが3つ、無線WANが2つ、UWBが1つ、GPSが1つ、WiMAXが2つというアンテナが入っている」(木下氏)との言葉の通り、今のところ考え得る限り、全ての無線通信の規格に対応できるようになっているのだ。つまり、将来的に、無線WAN(HSDPAやEV-DOなど)やUWB、GPS、WiMAXなどの機能を搭載するモデルをリリースすることが可能である設計になっているということだ。

X300のアンテナ部分。左右に2つの一体型アンテナが用意されている Bluetoothのモジュール。アンテナ一体型になっている。Bluetoothだけは一体型アンテナを使わないのは、他の電波と同時に利用する可能性があるからだ。ちなみに、後ろに見えるのは無線LAN(Intel Wireless WiFi Link 4965AGN)

 こうしたアンテナの設計に応えるため、マザーボード側の設計もそれを考慮したものとなっている。具体的には、PCI Express Mini Cardのスロットが3スロット用意されている。2つはフルサイズのカードで、1つはハーフサイズのカードとなっている。そのため、例えば、無線LAN+無線WAN+GPSとか、無線LAN+無線WAN+UWBとか、無線LAN+WiMAX+GPSなど、さまざまな組み合わせが将来の製品では可能になる設計となっている。

 「確かに外部のカードスロットは用意されていないが、内部の拡張性はそれを上回るものを確保していると考えている」(田保氏)という言葉はその通りで、将来そうしたさまざまな無線通信をサポートした製品がでてくるのであれば、カードスロットが用意されていないというのも頷ける話ではある。

X300の基板表。PCI Express Mini Cardスロットが2つある(1つはフルサイズ、もう1つはハーフサイズ) X300の基板裏。PCI Express Mini Cardのフルサイズが1つ用意されている

 なお、現時点では無線WANなどの機能を搭載したモデルは用意されていないが、バッテリを取り外した内側にSIMカードスロットが用意されており、前述のPCI Express Mini Cardスロットに無線WANのモジュールを組み込めば、キャリア各社が提供するHSDPAやEV-DOのデータ通信に対応するモデルをリリースすることも可能である。今回それが用意されていないのは「現時点では規格が併存している段階で、どれがいいのかは検討している段階。しかし、X61シリーズでは無線WAN対応モデルも用意しており、今後機種を増やしていくことも検討しているので、X300シリーズにも展開する可能性はある」(木下氏)と、将来的にはそうしたモデル展開もあり得ることを示唆した。

●差別化できる1,440×900ドットのパネルを採用

 本体天板の素材は、ハイブリッドCFRPと呼ばれるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)とGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)の複合素材となっている。CFRPは自動車のパーツなどにも使われている強度の強い素材で、最近はノートPCにも使われることが増えてきている。しかし、CFRPは電波の通りが悪く、アンテナ部分もCFRPで作ってしまうと、感度が悪くなってしまうのだ。そこで、液晶カバーの周辺部分を電波をよく通すGFRPで作ることで、電波の感度を下げることなく液晶部分を保護できる液晶カバーを用意したのだ。

 「CFRPとGFRPは一体成形で作っている。見た目には途中で継ぎ目があるように見えるが、実際には一度に作っているので、素材と素材が噛み合っていて継ぎ目は非常に強く、液晶を保護できる充分な強度が確保されている」(田保氏)と、2つの素材をうまく組み合わせることで強度を維持しつつ電波の感度を確保したのだ。

 そうした素材を採用しなければならなかったのも、X300設計の最大のテーマである「薄く」を実現するためだ。液晶カバーに強度の強い素材を採用したのは、液晶部分もできるだけ薄くするためだが、もう1つはLEDバックライトを利用した液晶パネルを採用しているためだ。

 「LEDバックライト液晶を採用するメリットは薄く、軽く、消費電力が少なく、明るいことだ。以前のLEDバックライトが持っていた蛍光灯に比べて寿命が短いという問題もすでに解決されており、水銀が少ないなど環境に優しいというメリットもある」(田保氏)と、LEDバックライトはよいことずくめに見える。

塗装前のX300、中央部がCFRPで周辺部がGFRPになっている。継ぎ目を見ることができるが、実際には継ぎ目ではなく、素材が同士が溶け合うようにつながっているので、一体成形となっている X300のLED液晶。駆動部の上がLEDになっており、一般的な蛍光間に比べて明らかに薄いのがわかる

 実際、これまでThinkPadの液晶というと、正直他社の液晶に比べると、あまり明るくないという印象だったのではないだろうか。200cd/平方mを切るものがほとんどで、他社の製品に400cd/平方mを超えるものがある中で、ちょっと見劣りするというのも事実だったと思う(他社のようにAVを志向していないことは考慮する必要はあるが)。しかし、このLEDバックライトを採用したことで、パネルのスペックとしては300cd/平方m程度を実現しており、従来製品よりも明らかに明るくなっている。

 ただ、LEDバックライト液晶の最大の課題はコストだ。液晶パネルの価格というのは、どれだけ数がでているかに依存している。このため、大量に需要がある製品は安くなるし、そうでない製品は高くなる。だから、需要が少ない10型よりも、需要が多い15型の方が安いということが常識となっている。そのため、まだ数が少ないLEDバックライトの液晶は当然コスト面で不利になる。

 それだけではない、「X300の液晶はメーカーと共同開発としており、13.3型のワイド液晶としてはおそらく初めて1,440×900ドットを実現した」(田保氏)と、そもそも液晶自体もパネルメーカーと共同開発した最初の製品だという。つまり、通常だったら数社から供給される液晶パネルも、当初はそのパネルメーカーからしか供給されないことになる。田保氏は将来的には他のパネルメーカーからも供給してもらえるように交渉しているし、現状でも予定数は確保できていると説明しているが、仮にX300がレノボの予想よりも売れた場合には「嬉しい悲鳴になる」という可能性がある。

 逆に言えば、それだけのリスクを背負ったとしても液晶にはこだわりたかった、そういうことではないだろうか。

●キーボードベゼルも一体型のロールゲージ構造を採用

 本体部分にもさまざまな薄型化のための工夫が見られる。注目して欲しいのは、本体部分の厚さは、ちょうどEthernetポートであるRJ45コネクタ程度の厚さになっていることだ。通常であれば、RJ45コネクタは底面がマザーボードに貼り付けられるように実装されることが多いが、X300ではマザーボードに穴を開け、その穴にRJ45をはめるような形、ちょうどRJ45の中間点あたりにマザーボードがくるというユニークな実装になっている。

本体部分の高さはほとんどRJ45コネクタで決まっているような感じすらする

 X300ではロールゲージデザインと呼ばれるマザーボードを頑丈なフレームで包み込むことで強度を確保する設計を採用している。このロールゲージデザインはT6xシリーズでも採用されているが、X300では同時に薄さを実現するために、キーボードベゼル部分と一体型にするデザインが採用されている。

本体下部のカバー キーボードベゼル一体型のフレーム。本体下部のカバーとこのベゼル一体型フレームでマザーボードを挟み込むことで、たわみによるマザーボードの破損を防いでいる

 それだけではない、ユニークなのはキーボードのデザインで、キーボードの裏側を見ると、ちょうどファンクションキーのあたりが段差になっており、文字入力を行なうキーとファンクションキーではストロークが違うようになっているのだ。

 これまでのThinkPadでは、キーボードの裏面はすべて平面で、基本的にすべてのキーが同じストロークになるようになっていたので、これはちょっとした驚きだった。「ちょうどファンクションキーの下あたりに通信系のカードが入っているのでこうしたデザインにした。確かにストロークの深さは異なっているが、キータッチはできるだけ同じになるように調整している」(田保氏)とのことで、いわれてみて初めて気付く程度の違いだ。

 ちなみに、キーボードの担当者によると、文字のキーとあまり打たないファンクションキーなどでキータッチを変えることで逆に打ち間違いが減るというメリットもあるので、これはこれでよいのだという答えも返ってきた。残念ながら筆者は長時間入力を試してみる時間がなかったので確認するには至ってないが、実機を入手したら試してみたいと思う。

 ここ最近のThinkPadシリーズでは、バッテリは背面側に装着されることが多かったが、X300では久々にパームレストの下あたりにバッテリを装着するデザインとなっている。背面にバッテリを装着する最大のメリットは、マシンの幅を飛び出すような大容量バッテリを装着できることなのだが、X300ではその手が使えないことになる。

 「そうした問題は大容量バッテリでは素材を変えることで対応している。標準バッテリはリチウムポリマーを採用している。これに対して大容量はリチウムイオンとなっている。薄くしたい場合にはリチウムポリマーの方が有利だが、ある程度の厚みがとれる場合には容積あたりの容量でリチウムイオンの方が有利。このため、サイズで使い分けている」(田保氏)との通りで、標準バッテリと大容量バッテリで素材を使い分けることで対処しているのだ。

 「実際に大容量バッテリを装着しても、標準バッテリを装着している時とあまり違和感なく利用することができる。これは大容量バッテリを装着したままにされるユーザーも少なくないからだ」(木下氏)と、大容量バッテリをつけた時にも「薄い」というイメージを損なわないように工夫されているのだ。

キーボードの裏面。従来のThinkPadでは裏面が平面だったが、X300ではスペースの都合もあり、2段になっている(凹んでいる部分はファンクションキー部分)。ファンクションキーとメインのキーではストロークが異なることになるが、キータッチはできるだけ同じように近づけるように調整が加えられている 奥が標準バッテリで、手前が大容量バッテリ。若干の違いはあるが、あまり大きな差が無いように見えるようにデザイン上も工夫されている

●Core2 Duo SL7100(1.2GHz)が採用されているのはTDPが低いため

採用されているSSDはサムスン電子の64GBで、1.8インチHDDと同形状になっている

 ロールケージにより守られているマザーボードだが、Tシリーズのものに比べて実装面積で50%、重量で60%も小さく軽くなっているという。その要因の1つは、Intelの新しい小型パッケージを採用していることだ。この新しいパッケージは以前の記事で紹介したもので、CPU向けは22×22mm、ノースブリッジ向けは27×25mm、サウスブリッジ向けは16×16mmとなっており、従来製品(CPUは35×35mm、ノースブリッジは37.5×37.5mm、サウスブリッジは31×31mm)に比べて圧倒的に小さくなっている。

 この小型パッケージは、Intelの公式ロードマップではPenryn世代から導入されるはずだったもので、Penryn-SFFなどというコードネームで呼ばれていた。しかし、このX300や富士通のLOOX R、アップルのMacBook Airなどにも採用されているCore2 Duo SLシリーズは、Merom-SFFの開発コードネームで呼ばれている製品で、Intelの公式ロードマップには載っていない特別用途向けの製品となっている。

 アップルなどには1.6GHzや1.8GHzのSKUが搭載されているが、X300ではSL7100というプロセッサー・ナンバーで呼ばれる1.2GHzのSKUが採用されている(いわゆる低電圧版のプロセッサとなる)。なぜX300がやや低いSKUなのかと質問を向けてみると「具体的な数値は言えないが、一般的な低電圧版のプロセッサのTDPよりは低めに設定されている」(田保氏)との答えが返ってきた。通常の低電圧版のTDPは17Wであるから、それよりも低い数値に設定されているということだろう。それであれば、1.2GHzというやや低めなクロックに設定されているのも納得できる話だ。

 ストレージにはSSDが採用されている。しかも、今回の製品ではすべてのモデルが64GBのSSDのみで、HDDを搭載したモデルは用意されていない。「今回はX300をフラッグシップとして位置づけており、とんがったスペックにしたかった。このため、米国向けモデルなども含め、てすべてがSSDになっている」(木下氏)とのことだった。ちなみに、採用されているSSDは、1.8インチHDDと同形状のもので、そのままSATAの1.8インチHDDに置き換えることはもちろん可能だ。実際、保証の範囲外ではあるが、ユーザーレベルでHDDへの交換も可能であり、将来のアップグレードパスも用意されているのは嬉しい点だと言えるのではないだろうか。

 このように、X300はスペックには表われない点にも、数多くの工夫を盛り込むことで、モバイルに必要なスペックと薄さを実現しているのだ。

□レノボのホームページ
http://www.lenovo.com/jp/ja/
□製品情報
http://www-06.ibm.com/jp/pc/notebooks/thinkpad/x-series/x300_lineup.shtml
□関連記事
【2月26日】レノボ、1.42kgのSSDモバイルノート「ThinkPad X300」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0226/lenovo1.htm
【2月26日】ThinkPad X300発表会レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0226/lenovo2.htm
【2007年4月18日】【笠原】ノートPCのさらなる小型化が可能なMontevinaプラットフォーム
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0418/ubiq186.htm

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(2008年2月27日)

[Reported by 笠原一輝]


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