塩田紳二のPDAレポート

続・iPod touch有償アップグレードの中身
~「マップ」の位置検出機能を追試



iPod touch

 前回、iPod touchのアップデート内容をレポートしたが、短時間での執筆となったために、十分にテストが行なえない部分があった。特に、「マップ」の機能である無線LANによる位置検出は、都心部での試用ができず、一度も自分の位置を検出できずに終わった。

 そこで、「マップ」の位置検出機能について追試した結果をお伝えする。また、「株価」の情報内容についても明らかになった部分があるので、簡単にお伝えしよう。

●位置検出にはインターネット接続が必要

 iPod touchアップデートのマップには、位置検出機能が搭載されている。これは、無線LANを使って行なうもので、米Skyhook Wirelessの技術を使ったものだ。Webサイトには、同社の技術であるWPS(Wi-Fi Positioning System)がiPhone、iPod touchに採用されたというニュースリリースがある。

 WPSは、受信機を搭載した車輌を走らせ、アクセスポイントの位置を特定していき、これを元にデータベースを構築、どのアクセスポイントが受信できるのかを調べることで、位置を検出するものだ。同社のサイトには、このWPSで位置検出が可能な地域を示すマップがある。これによれば、日本では、都内と成田空港近辺、および常磐自動車道や筑波研究学園都市近辺がカバーエリアになっている。

Skyhook Wirelessのエリアマップ。下のほうにサンフランシスコ市内のアクセスポイントをプロットした地図がある(左)。検索欄にtokyoと入れると日本のカバーエリアが表示される(右)

位置検出が行なえた場合の表示。地図が現在位置近辺となり、位置を表す円が表示される。この円は、精度に応じて大きさが変化するようだ

 というわけで、改めて都心部を中心に、サービスエリア内で位置検出機能を試してみた。

 結果から言うと、サービスエリア内であれば、自分の位置検出は可能だったが、その際にはiPod touchがインターネット接続されている必要があった。つまり、位置が登録されたアクセスポイントが受信できることはもちろん、同時に無線LANによるインターネット接続が確立できていなければならない。

 想像するに、位置を登録したデータベースは、Skyhook側にあり、インターネット接続を介してこれにアクセスするのだろう。理屈から考えると当たり前ではあるのだが、実用性を考えると、ちょっと残念なところだ。なぜなら、路上では、いくつものアクセスポイントを見つけることができるが、オフィスや店舗などで利用しているものであって、開放されているものではない。したがって、ファーストフード店などのアクセスポイントを除けば、都心部とはいえ、常時インターネット接続を確立できるとは限らないのだ。これがiPhoneであれば、携帯電話網の通信機能が使えるので、アクセスポイントの電波さえ受信できれば、どこでも位置検出が可能なのだと思われる。

 というわけで、Skyhookのサービスエリア内でも、位置検出が利用可能な可能な場所は、さらに限られるというのが現状だった。

 ただ、まったく無意味というわけでもない。少なくとも、位置検出ができれば、地図をスクロールさせたり、住所検索をして現在位置の近辺を表示させる手間は省ける。もし、ナビゲーションサービスがあれば、目的地を指定するだけで良いのでさらに便利だろう。

●株価指標として日経平均は表示可能だが

 株価のアプリケーションについては、日経平均が表示可能なので、「日本の株式市場に対応していない」というのはおかしいのでは、という読者からのご指摘があった。たとえば、コードとして“^N225”を入力すれば、日本の株式市場の指標である「日経平均」を表示させることはできる。しかし、日本の株式市場に上場している企業(銘柄)の株価を表示させることはできなかった。日本企業の米国法人が上場している米国株式市場での株価は表示できるが、これは、日本の株式市場とは違うものだ。日経平均は、あくまでも指標であり、株価そのものではない。

 日本でも、株式情報として米国ダウ平均などが情報として提供されているように、touchの株価で表示できる日経平均は、あくまでも市場動向に対する指標の1つでしかない。他国の株価動向が市場に影響する可能性もあるため、米国でも日本の市場状態を表す指標として日経平均を提供しているのだと思われる。

 こうしたこともあって、「日本の株式市場に対応していない」と表記したわけである。

 このアプリケーションのデータソースは、米国Yahoo! のFinanceページだと思われる。ここでは、ページ左上にある検索欄に会社名(アルファベット)を入力すると、該当する企業名をインクリメンタル検索でき、検索結果を見ると、米国以外にドイツなどEU圏などの市場の銘柄も表示される。しかし、日本の銘柄は表示されない。

 ページ内にリンクとしては、日本のYahoo!のファイナンスページへのものがあるが、表示のシステムが異なっている。グラフなどに表示されるコピーライト表示も、米国のものは“Yahoo! inc”となっているのに対して、日本のものは“Yahoo! Japan”となっている。これは、日本のYahoo!がソフトバンクとの合弁であるため、独自に構築した部分があって、システムが同一でないためだと思われる。たとえば、Yahoo! メッセンジャーは、日本と米国ではシステムが違っており、サービス内容に違いがある。

 こうしたこともあって、日本の銘柄は、米国のYahoo!のサーバー経由では表示できないのではないかと思われる。もっとも、裏技を使えばできるという可能性もあるが、少なくとも銘柄登録で検索しても日本の銘柄が出ないので、現状はどうしようもない。

 この件についてアップル日本法人の広報部に確認した結果も、やはり日本の株価を表示することはできないとの回答だった。

 なお、iTunes Storeの「1月のソフトウェア・アップグレード」のページにある「一部の機能またはサービスは地域によってはご利用できません。詳細はこちらをクリックしてください」という記載にあるリンクは、1月26日時点で開くことができず、この件が記載されているかどうかは確認できなかった。

●やはり待ち遠しい日本語版iPhone

 というわけで、「マップ」については、エリアと必要条件がはっきりしたことで、自分が使えるか使えないかという点が判断できるようになった。「株価」については、先週の記事に書いた評価を変えなくても良いだろう。

 アップグレード機能全体についていえば、「メール」が一番便利に使えるという評価は変わらない。ほかの機能については、2つの点が課題となっている。1つは、米国でのサービスが前提となっていることで、日本市場では制限がでている例で、「株価」が代表例だろう。

 もう1つは、個々の機能がiPod touch用として設計されたのではなく、iPhoneを前提として設計されている点だ。繰り返し書いているように、iPhoneは携帯電話網を利用してインターネット接続がいつでも確立できる。これに対し、iPod touchでは無線LAN経由でしかインターネット接続できないため、機能の使い勝手に差が出てしまうのだ。「天気」や「マップ」などが該当する。

 PDAの機能に限って言えば、“米国版iPhone”という完成型があり、それに通信機能の制限が加わった“米国版iPod touch”があり、さらに日米の差で制限が加わった“日本版iPod touch”があるという状態だ。

 端的な感想を言えば、日本国内でiPod touchのPDAサービスは、米国でのiPhoneサービス体系の香りだけ嗅がされているような状態だと感じる。こうなると、日本国内でのiPhoneサービスの開始が待たれるところだ。それが登場する際には、今回のレポートで見られたようなサービスのローカライズの甘さについても改善されていることを望みたい。

□関連記事
【1月21日】【塩田】iPod touch有償アップグレードの中身
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0121/pda73.htm
【1月16日】Apple、iPod touchとiPhoneに新ソフトを追加するアップデート(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20080116/apple2.htm
【1月17日】Macworld Expo基調講演詳報、MacBook Airを発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0117/mw03.htm

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(2008年1月28日)

[Reported By 塩田紳二 / Shinji Shioda]


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