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Macworld Conference&Expo San Francisco 2008レポート

Macworld Expo基調講演詳報、MacBook Airを発表
~サービスで広がる米日格差

会場:San Francisco The Moscone Center

会期:1月15日~18日(現地時間)



 Macworld Conference&Expoは今年も米Appleのスティーブ・ジョブズCEOによる基調講演からスタートした。基調講演が行なわれるモスコーニセンターのウェストホール周辺には、昨日からの徹夜組を含めた大行列ができあがった。

 講演は定刻より遅れて午前9時15分頃のスタート。お馴染みのPC & MacのCMが上映された後、ジョブズCEOが大歓声に迎えられて登場した。冒頭はiPhone、iMac、iPodそしてLeopardの出荷など、2007年をきわめて簡単に振り返った。ジョブズCEOによれば、昨年10月末に出荷が始まったLeopardはMac OS X史上の最大の成功を納めているとのこと。これまで(プリインストールも含めて)500万本のLeopardを出荷。現時点でMac OS Xのインストールベースの19%がLeopardになっているという。

今年も基調講演を行なった米Appleのスティーブ・ジョブズCEO

 また当日(15日、現地時間)Microsoft Office for Mac 2008が出荷開始することにも触れ、Universalアプリ化される最後の大物として紹介した。そしてLeopardに搭載されている機能「Time Machine」をピックアップし、最初の新製品がアナウンスされた。

 冒頭、今日は4つのトピックがあるとした。1つ目「Time Capsule(タイムカプセル)」は、その名称のとおりTime Machineと密接に関連する製品となる。今のところ、Time Machine機能を使ってバックアップを作るときは、Macに直接外付けHDDを接続するのが一般的だ(ほかにMac OS X Serverをバックアップ先に指定することもできる)。この新たなバックアップ先としてTime Capsuleは提供される。Time Capsuleは言うなれば、IEEE 802.11n対応の無線ルーターとNASを一体化した製品。ジョブズCEOの示したスライドでもAirPort Extreme+HDDと表記されている。

 このTime Capsuleは、家庭内(オフィス内)のLeopard搭載MacすべてのTime Machineバックアップ先として設定することが可能だ。しかも802.11nを使ったワイヤレス接続で実現する。製品は内蔵HDD容量の違いにより2グレードあり、500GBモデルが299ドル、1TBモデルが499ドルで発売される。

 もともとTime Machineは、AirPort ExtremeにUSB接続するHDDをバックアップ先とすることも検討されていたわけだが、今回改めてそれが実装されたことになる。これがTime Capsuleのほか、従来のAirPort Extreme+HDDの構成でも利用できるアップデートとなるかは今後確認する必要がある。

サンフランシスコの早朝、午前6時前。しかもこの列は優先入場が可能なプレミアムパスを持った人々。一般来場者の行列は開場裏手にある。今年は一般入場者がホールに入場できたボーダーラインは午前4時前に並んだ人だったらしい 出荷開始から3カ月弱。これまで(プリインストールも含めて)500万本のLeopardを出荷。現時点でMac OS Xのインストールベースの19%がLeopard Intel CPUにネイティブ対応。Universalアプリ化される最後の大物「Microsoft Office for Mac 2008」は当日(日本では16日)から販売が開始される
Time Capsule。AirPort Extreme(AirMac Extreme)を肉厚にした感じの製品だ。言うなれば無線LANルーター搭載のNASだが、TimeMachineのサポート製品と考えれば、Macユーザーにとっては他社製品より安心感があるだろう ジョブズCEOが「非常にアグレッシブ」とするTime Capsuleの価格設定

●iPhone、iPod Touchの機能を大幅にアップデート

 続いて話題はiPhoneへと移行した。昨年6月末の出荷開始以来、iPhoneの出荷は400万台を達成した。世界中で1日あたり2万台のiPhoneが販売されている計算になる。米国内におけるスマートフォンでのシェアも、大人気のBlackberryに迫る19.5%に達しているという。

 そのiPhoneは、同日付けでソフトウェアアップグレードが行なわれる。Ver.1.1.3にあたるアップデートでは、Google Mapに現在の位置情報をサポートする機能が加わった。これは GPSを用いるのではなく、Wi-FiスポットやGSMの基地局情報から端末位置を特定する仕組みを採用している。このほか、任意の地点にピンを打ってマーキングしたり、交通情報を表示する機能なども同時に追加されている。

 さらに追加されるのがWebClip機能。これはホーム画面に任意のWebサイトをブックマークしておくもの。同時に画面数も拡張され、数多くのアイコンを管理できるようになった。こうしたアイコンの配置を変更する方法もいかにもAppleらしく、任意のアイコンを長押しすることで、全部のアイコンがぷるぷると震えだす。これが配置変更のサイン。あとは、移動したい位置へとアイコンをスライドさせていけばいい。

 またSMSにマルチ送信機能が追加。複数のユーザー宛にメッセージを同報できるようになる。そのほかiPodの機能としてムービーのチャプター表示、音声言語とサブスクリプトの変更機能が加わった。また歌詞表示機能も新たにサポートしている。

米国内におけるSmart Phoneのシェア。トップはBlackberryを擁するRIMだが、後発のiPhoneが追い上げて19.5%のシェアを獲得していることを示している iPhoneのホーム画面をカスタマイズ。アイコンを任意の位置にスライドして配置することができる。写真では伝わりにくいが、このときすべてのアイコンが震えているあたりが、いかにもアップルらしい ムービー再生にチャプター表示機能が加わる
音声言語とサブスクリプトの変更機能も加わった 歌詞表示にも対応 今回のソフトウェアアップデートでiPhoneに追加される機能の一覧

 iPhoneだけではない。兄弟機とも言えるiPod Touchも同等の機能強化が行なわれる。特にまだiPhoneが提供されていない日本のユーザーにとってのビッグニュースは、Mail、Map、Stock、Notes、Weatherなど、これまでiPhoneだけに提供されてきた5つのアプリケーションがiPod Touchでも利用できるようになることだ。もちろん、前述したiPhoneのアップデートによる機能追加はiPod Touchにも適用される。

 ちなみにiPhoneのアップデートは無償だが、iPod Touchのアップデートは有償で行なわれる。米国では20ドル、日本のユーザー向けには2,480円で提供される。同日から新たに出荷されるiPod Touchにはアップデートが適用済みで前述のアップデート料金は発生しない。

iPod TouchにもMail、Map、Stock、Notes、Weatherなど、iPhoneと同じ機能が加わる iPod Touchのアップデートは有償。日本のユーザーには2,480円で提供される iPod Touchのアップデートは同日から配布が始まったiTunes 7.6を使って行なわれる

●米国限定でiTunesにおける映画レンタルをスタート

 3番目のトピックは、かねてより噂の高かったiTunesを使った映画のレンタルサービスが同日よりスタートすることだった。ジョブズCEOは、これまでiTunesで音楽を40億曲、TV番組を1億2,500万本販売したと紹介。それに対して映画の販売本数は700万本にとどまっていることを指摘した。

 ジョブズCEOによれば700万本という数字は確かに競合他社を上回ってはいるものの、決して満足できる数字ではないという。そこでiTunesを使って映画を配信する手段として、これまでの「販売」に加えて「レンタル」を導入するという。このレンタル事業に参加するのは下記の写真で紹介する11社。Sony Pictures、Universal、Walt Disney、Warner Bros、20th CENTURY FOXほかの大手11社が勢揃いする。

 レンタルサービスは当面1,000タイトルほどからスタート。米国におけるDVD販売の開始から30日後にレンタルが可能になる。レンタル開始から30日間有効だが、いったん視聴(再生)を始めてしまうと24時間後には有効期限が切れる仕組み。iTunes対応の製品間ではどれでも視聴ができ、例えばMacで見始めた映画を途中で中断し、続きをiPodで見終えるといった使い方もできる。レンタル価格は旧作が2.99ドル。新作は3.99ドルで提供される。残念ながら今回のアナウンスでは、サービスの提供は米国内のみとなる。

iTunes Movie Rentalsに作品を提供する11社。先に中堅どころの映画会社のスライドのみを示し、そのあとに最大手が勢揃いして見せるという、もったいをつけた紹介だ iTunes Movie Rentalsの概要。有効期限付きのDRMが付加されている以外は、販売される映画とほぼ同様に扱えると考えていい

 もう1つ、映画を観るためにデバイスとしてジョブズCEOは家庭のTV画面を挙げた。そのうえで、Apple、Microsoft(Xbox360)、Amazon、TiVo、Blockbusterなど、多くの企業がインターネットを介して映画をTVに配信するための試みをしているが、Appleを含めていずれも成功していないと分析した。

 Appleが目指した手段としては「Apple TV」があるが、これはMac(PC)とiTunesの周辺機器であり、「(TV画面で映画を観たい)ユーザーが求めていたものではなかった」、と結論づけた。その上で、「もう一度Apple TVを使ってチャレンジする。これは言うなれば『Take 2』」と映画用語を使って表現。MacやPCに依存せず、単独でも機能するApple TVを提供するという。

 このMac(PC)と同期しなくても使えるApple TVでは、映画もDVD相当のスタンダード画質なものだけでなくHD画質のものが視聴可能で、Dolby 5.1chのサラウンドにも対応する。ユーザーインターフェイスも大幅に改良される。映画以外に視聴可能なコンテンツとしては、.MacとFlickrのフォトライブラリ、さらにポッドキャストでもHD画質のコンテンツを楽しむことができる。HD画質の映画をレンタルする場合、前述のiTunesを利用した場合よりそれぞれ1ドルずつ高くなって、旧作が3.99ドル、新作は4.99ドルで利用が可能だ。

 ステージには、iTunesにおけるMovie Rental事業において一番最初にAppleと契約を交わしたという20th CENTURY FOXのGim Gianopulos会長兼CEOが登場。iTunesにおけるレンタル事業開始の意義と、DVDなどの既存メディアとコンテンツ配信の融合などについてコメントした。その上でDVDからiTunesのライブラリへと正規にタイトルをコピーできる仕組みを紹介。同日に発売されるアニメ作品などから利用することができるという。

 再チャレンジとも言うべき新しいApple TVは、約2週間後から出荷が開始される。価格は従来の299ドルから229ドルへと値下げされた。既存のApple TVユーザー向けには無料のソフトウェアアップデートが提供されて同等になるということなので、ハードウェアにおける大きな変更点などはない模様だ。

 なお、サービスの中核となる映画のレンタルが現時点では日本国内向けには提供されないだけに、日本のApple TVユーザー向けの対応は不透明なままだ。現状では画面が大型のiPodのような使い方にとどまっているだけに、日本での詳しい説明が待たれる。

Mac(PC)のiTunesライブラリに依存せず、単独でも動作可能となる新AppleTVの機能。レンタルへの対応やHD画質での視聴、Dolby5.1chへの対応などがTV画面ならではメリット HD画質のレンタル価格は、iTunesライブラリ向けのSD版よりそれぞれ1ドル高くなり、旧作が3.99ドル、新作が4.99ドルとなる 新しいAppleTVのインターフェイス。単独でも動作することを意識したものになっている
ジャンルやトップレンタルリストなどからタイトルをピックアップすることができる 新しいソフトウェアを導入したAppleTVは、約2週間後に229ドルで出荷されるが、既存のユーザ向けには無料のアップデートで対応する Movie Rental事業において一番最初にAppleと契約を交わしたという20th CENTURY FOXのGim Gianopulos会長兼CEO。手にしているのはDVDからiTunesライブラリへ合法的にコピーが可能となる最初のタイトル

●「There's something in the air.」の正体。MacBook Air

 この日最後となる4番目のトピックは、既報のとおりMacBook Airである。まずジョブズCEOは「最高のノートブックであるMacBookとMacBook Proを作っているAppleが、第3のノートブックを発表する」とブチあげた。

 この先はお馴染みの手法で、最初は製品の姿を見せることなく製品コンセプトや競合機種の問題点を指摘して見せる。今回比較対象にされたのはSony製のVAIO TZシリーズ(日本でのType T)。まずはVAIO TZのスペックを総括して、本体重量こそ合格点をつけたものの、本体厚、液晶パネルとキーボードのサイズ、そしてCPUパフォーマンスにも×をつけた。

ジョブズCEOのVAIO TZに対する不満点。本体の重量こそ合格点だが、それ以外は不満らしい 側面からみたVAIO TZとMacBook Airの厚さの比較。VAIOの最薄部よりもMacBook Airの最厚部のほうが薄いと、わざわざ反転してみせたスライドまで用意されている
本体披露の演出の小道具はビジネス封筒。「封筒に入るほど!」と薄さを強調して見せた。この演出は同製品のCMにも使われている 薄い、軽い、MacBook Air。やはりこう持ってみせるのが基本であるらしい

 続いて紹介されるMacBook Airの基本スペックは既報のとおり。LEDバックライトを採用した13.3型ワイド液晶パネル。環境光センサーを搭載したフルサイズのバックライトキーボード。トラックパッドはiPhoneライクなマルチタッチを採用している。パフォーマンスに妥協をしていないという部分も強調。Core 2 Duoのパフォーマンスを60%あまり小さなパッケージングで実現したIntelを賞賛した。標準搭載されるのは1.6GHzのCore 2 Duoで、1.8GHzがオプションで用意される。バッテリは802.11nの無線LAN機能を標準的に使った状態でも5時間持続する。

Appleは、ここだけは絶対に譲ることがないであろうフルサイズのキーボード ピンチイン・ピンチアウトや回転、スライドなどさまざまな操作が行なえるマルチタッチのインターフェース
バッテリは薄型のものが本体内に実装され、ユーザーレベルでの交換はできない。確認したところ、部品扱いでAppleStoreなどで交換が可能だという 標準搭載されるのは、1.8インチのHDD。オプションとして、64GBのSSDを選択することもできる マザーボードにあたる部分はここまで小さい
60%もシュリンクされたCore 2 Duoのパッケージ。Intelのポール・オッテリーニ社長も登場し、ジョブズCEOにプロセッサを手渡す演出も見せた

 インターフェイスはUSB2.0、外部ディスプレイを接続するためのmicro DVIポート、ヘッドフォンに対応するアナログのステレオ音声出力端子がそれぞれ1つずつ装備されている。光学ドライブは搭載せず、外付けのSuperDriveが99ドルで提供される。接続方法はUSB 2.0で、バスパワーによる給電方式。ただし用意はしたものの、外付けの光学ドライブの必要性はさほどないとAppleでは考えているようだ。

 802.11nのWi-Fiを搭載することで、基本的なデータのやりとりはすべて無線を介して行なうことが前提とされている。前述のとおり有線のEthernet端子はなく、どうしても有線の接続が必要な場合はUSB-Ethernetアダプタを使った接続になる。前述の光学ドライブに関してもRemote Discという仕組みを導入し、他のMacやPCに搭載されている光学ドライブを、ネットワークを経由してあたかもMacBook Airのドライブであるかのように認識させることができる。

 光学ドライブが必要とされる4つの局面、1つは映画などに代表されるDVDコンテンツの再生についてはiTunesのライブラリで対応する。データのバックアップはCDやDVDではなく、TimeMachineを使えばいい。カーステレオで音楽を聴くためにCDを焼く作業もiPodをつなげば問題ない。そして最後に残った問題、CDやDVDで提供されるアプリケーションのインストールに関しても前述のRemote Discを使うことで解決するというのが、ジョブズCEOからのメッセージだ。

 また、液晶パネルからは水銀やヒ素を排除したり、外装パッケージもMacBookのものに比べて56%小型化して流通に関するコストやエネルギーを削減するなど環境問題に配慮する姿勢も強調した。

インターフェイスは、USB2.0、外部ディスプレイを接続するMicro-DVIポート、ヘッドフォンに対応するアナログのステレオ音声出力端子 外付けの光学ドライブはUSB接続のバスパワー方式。99ドルで提供される 他のMacやPCに搭載されている光学ドライブをあたかもMacBook Airのドライブのように扱うRemote Disc。MacBook Airに付属するインストールディスクを使って設定するとのことだ
これら光学ドライブが必須と考えられていた局面も、すべてAppleの提唱するサービス、ソリューションを使うことで回避が可能と説明するジョブズCEO 液晶パネルやマザーボードからは有害物質を排除。外装の化粧箱も小型化するなど環境問題に配慮する姿勢も強調した

 最後にジョブズCEOは今日の発表をまとめた。さらに先週にはMac Pro、Xserveをリフレッシュしたことに触れて「(Appleは)2008年になってわずか2週間でこれだけの新しいアナウンスを行なった。今年はまだ50週も残っている!」と、今後への大きな期待をうかがわせるメッセージを残して締めくくった。およそ1時間30分弱、そのほとんどを新サービスや新製品の紹介に費やした密度の濃い基調講演だったと言えよう

「今年はまだ50週間も残っている! 」締めくくりのメッセージは今後への期待をうかがわせるもの 最近のAppleのイベントでは恒例となった音楽演奏。今回は「デジタルと映画や音楽を結びつけるアーティスト」として、Pixerの映画音楽を担当するRandy Newman氏 基調講演の終了後は、久しぶりに新製品「MacBook Air」のポスター配布も行なわれた

□関連記事
【1月16日】Macworld速報。ジョブズCEOがMacBook Airを披露
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0116/mw02.htm
【1月16日】アップル、2cmを切る超薄型モバイル「MacBook Air」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0116/apple1.htm
【1月15日】「Macworld San Francisco」、15日開幕
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0115/mw01.htm

(2008年1月17日)

[Reported by 矢作晃]

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