IEDM 2007 前日レポート
次世代不揮発性メモリの本命争いが激化会期:12月10日~12日(現地時間) 会場:米国ワシントンD.C.
将来のメモリやプロセッサなどを実現する、半導体デバイス技術に関する世界最大の国際学会IEDM(International Electron Devices Meeting)」が始まった。世界中から2,000名近いエンジニアが参加し、最大で8本もの技術講演セッションが並行して開かれる大規模なイベントだ。3日間でのセッション数は総計で38本におよぶ。 IEDMが扱う話題は幅広い。シリコン半導体のデバイス技術とプロセス技術を中心に、ガリウムヒ素などの化合物半導体技術、パワーデバイス技術、量子デバイス技術、有機エレクトロニクス技術、MEMS(micro electro-mechanical systems)などのセッションがある。前日レポートではメモリとプロセッサを主体に、技術講演の概要を紹介しよう。 ●12月10日:DRAMとフラッシュメモリの研究成果 会議初日の午前は、3件のプレナリセッション(セッション1:基調講演)が予定されている。IEDMのプレナリセッションに招待される講演者は、半導体チップの応用分野に関する技術から、基礎分野の研究者まで幅広い。講演テーマによって人気が明確に分かれるのが面白いところだ。 今回のプレナリセッションでは、始めに自動車エレクトロニクスの最新動向を独Robert Bosch GmbHのClaus Schmidt氏が講演する。続いて量子ナノ構造による電子デバイスと光デバイスの研究動向を豊田工業大学の榊裕之教授が展望する。最後に米Texas InstrumentsのLarry J. Hornbeck氏が、光MEMSとCMOSの融合によるディスプレイ応用について述べる。 昼食休憩の後は、一般講演(一部は招待講演)のセッションが始まる。ここからはセッション2~9の8本が同時に進む。 この時間帯は、メモリ技術に関する講演が非常に多い。セッション2では、まず韓国Samsung Electronicsが40nm以下の製造技術によるメモリ技術を展望する(講演番号2.1、招待講演)。続いて独Qimondaが、40nm以下の時代における溝型DRAMセル技術を発表する(講演番号2.2)。 セッション4では、東芝が15nm技術によるSONOSタイプのメモリ技術について講演する(講演番号4.1)。SONOSは次世代フラッシュメモリのセルに使われようとしている技術だ。台湾のMacronix Internationalは、高速プログラミングが可能なNANDフラッシュメモリ技術について述べる(講演番号4.4)。 セッション7では、伊Politecnico di Milanoが相変化型不揮発性メモリの信頼性とスケーリングを展望する(講演番号7.1)。STMicroelectronicsとPolitecnico di Milanoは共同で、NANDフラッシュメモリの書き込みばらつきを議論する(講演番号7.3)。セッション8では、Qimondaや独Siemensなどの研究グループがスピントルク技術による28nmノードのMRAMについて述べる(講演番号8.1)。セッション9では東京大学が印刷技術によるシート状の有機不揮発性メモリを使った通信技術を発表する(講演番号9.3)。 なおIEDMでは最近の傾向として、一般講演セッションの最初の講演に注目を集めそうなテーマを配置することが少なくない。上記に挙げた注目講演を改めて見ると、講演番号1番、すなわちセッションの最初の講演が多いことがわかる。セッションを企画する実行委員会が、より多くの聴衆を獲得するためにこのようなプログラムを組んでいるようだ。しかし参加者から見ると同じ時間に複数の講演は聴講できないので、非常に迷うところだ。 ●12月11日午前:Intelがプロセッサ向け45nm技術の詳細を公表 2日目の午前は、セッション10~16までの7本のセッションが並行して開催される。この時間帯のトピックスは、プロセッサやSOC(system on a chip)などに使われ始めた45nmのCMOSロジック技術の詳細である。 セッション10では、台湾TSMCが45nmのCMOSロジック技術を公表する(講演番号10.1)。バルクCMOS技術である。SRAMセルの面積は0.242平方μmと小さい。続いて米Intelが、プロセッサ用45nm CMOS技術の詳細を発表する(講演番号10.2)。すでに採用が発表されたメタルゲートと高誘電体ゲート膜、そして歪みシリコン、9層銅配線、ArFドライ露光、鉛フリーパッケージなどの要素技術が紹介される。それから富士通研究所と富士通が共同で、45nmのバルクCMOS技術を述べる(講演番号10.3)。米IBMは、高周波性能に優れた45nmのSOI CMOS技術を発表する(講演番号10.4)。 セッション10の後半には、次世代技術である32nmのCMOS技術に関する発表も予定されている。TSMCが、低消費電力のSOCに向けた32nm CMOS技術について講演する(講演番号10.6)。STMicroelectronicsとオランダNXP Semiconductors、米Freescale Semiconductorなどは共同で、メタルゲートと高誘電体ゲート膜による32nmの完全空乏型SOI CMOS技術を発表する。 11日の午前は、次世代不揮発性メモリの候補である、相変化型メモリの発表にも注目したい。セッション12で技術発表が相次ぐ。日立製作所とルネサス テクノロジは共同で、安定に動作するとともにデータ保持特性が優れた相変化型メモリ技術を開発した(講演番号12.3)。STMicroelectronics(講演番号12.4)、NXP SemiconductorsとベルギーIMECの共同研究グループ(講演番号12.5)、台湾ITRIと台湾Powerchip Semiconductor、台湾Nanya Technology、台湾Windbond Electronicsの共同研究グループ(講演番号12.6)、IntelとOvonyz、Stanford Universityの共同研究グループ(講演番号12.7)からも相変化型メモリ技術の発表がある。 ●12月11日午後:マルチレベルの不揮発性メモリ 2日目の午後も、セッション17~23の7本が同時に進行する。この時間帯は、マルチレベルの不揮発性メモリ技術に関する講演が目立つ。 セッション17では、東芝と米SanDiskがマルチレベルの高性能NANDフラッシュメモリ技術を共同発表する(講演番号17.1)。続いて東芝が、メモリセルを縦に積層する構造のNANDフラッシュメモリ技術の最適化について述べる(講演番号17.2)。IBMと独Infineon Technologies、Qimondaは共同で、2bit/セルおよび4bit/セルの相変化型メモリ技術を開発した(講演番号17.5)。 半導体デバイスの高速動作限界という視点では、セッション23にも注目したい。動作周波数が1THzを超える超高速トランジスタを米Northrop Grumman Space Technologyと米Jet Propulsion Laboratoryが共同で発表する(講演番号23.1)。50nm以下の微細加工技術とInP化合物半導体技術、HEMT技術を駆使した。 ●12月12日午前:次世代のメモリセル技術 最終日である3日目の午前は、セッション26~32の7セッションが並行して開催される。次世代の不揮発性メモリの候補であるReRAM(Resistance RAM)技術の発表がセッション30で相次ぐ。 セッション30では、富士通研究所が3V以下の低電圧電源で低消費と高速動作を両立させるReRAM技術を発表する(講演番号30.1)。続いて韓国Samsung Electronicsが、ReRAMのメモリセルを高密度化するクロスポイント構造について述べる(講演番号30.2)。松下電器産業は、ReRAMセルのスイッチング機構を論じる(講演番号30.4)。ソニーは、ナノ秒オーダーで高速にスイッチングするReRAMセル技術を発表する(講演番号30.5)。 メモリとプロセッサ以外で興味深いのは、ゲルマニウム半導体レーザーの講演である。台湾のNational Taiwan Universityが電流注入による室温動作を議論する(講演番号26.3)。 ●12月12日午後:次々世代メモリの可能性を探る 最終日の午後は、セッション33~38の6本が同時進行する。 セッション34ではSamsung Electronicsが50nm以下の微細加工技術によるDRAMセル技術を述べる(講演番号34.5)。基板効果を低減して信頼性を高める技術である。セッション35ではFinFETを利用したSONOS型NANDフラッシュメモリ技術を、台湾Macronix Internationalと台湾National Tsing-Hua Universityの共同研究グループ(講演番号35.1)と、STMicroelectronicsなどの研究グループ(講演番号35.3)がそれぞれ発表する。次世代の高密度トランジスタ技術であるFinFETを使い、メモリセルの密度を高めることが狙いだ。またソニーが、バルクサイリスタ技術による新しいメモリセル技術を発表する(講演番号35.6)。 これらの講演の内容をすべて紹介することは難しいが、PCユーザーにとっても興味深い内容が少なくない。順次レポートを予定しているのでご期待いただきたい。 □IEDM 2007のホームページ(英文) (2007年12月10日) [Reported by 福田昭]
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