発売中 直販価格:319,800円 東芝の「dynabook Satellite WXW/79DW」(以下、Satellite WXW)は、東芝の直販サイトでのみ販売を行なっているWeb限定モデルだ。「グラフィック強化モデル」を謳うSatellite WXWシリーズの最上位モデルで、同シリーズには以前紹介した最下位モデルの「Satellite WXW/79CW」も含まれている。デザインやインターフェイス、液晶の仕様などはどちらも同じだが、CPUやGPUなどの搭載パーツの性能が今回紹介するSatellite WXWの方が上だ。 Satellite WXW/79CWは、CPUがCore 2 Duo T7300(2GHz)でGPUがGeForce 8700M GTだったが、本モデルではCPUがCore 2 Duo T7700(2.4GHz)になっており、GPUはGeForce 8600M GTを2つ搭載するSLI構成になっている。同シリーズには、ほかにもCore 2 Duo T7500(2.2GHz)とGeForce 8700M GTを搭載する中間のモデルとなっている「Satellite WXW/78DW」もある。また、GPUにRadeonシリーズを搭載する「Satellite TXW」シリーズもあり、グラフィックスを強化したWeb限定モデルは豊富なラインナップを揃えている。今回紹介するSatellite WXWは、メモリ4GB、HDDを320GB(160GB×2台)搭載するモデルの直販価格が319,800円で、メモリが2GB、HDDが160GBのモデルは直販価格が289,800円。紹介するのはメモリ4GBの上位モデルだ。 ●“威張れる”スペックを持つハイエンドノート まずは基本スペックを見ていこう。CPUにはCore 2 Duo T7700(2.4GHz)を搭載している。ノート用のCore 2 DuoはT7800(2.6GHz)が最上位CPUなので、上から2番目のCPUを搭載していることになる。参考にデスクトップ向けのCore 2 Duoと比較すると、自作PC市場で人気を博したCore 2 Duo E6600(2.4GHz)と同じクロックのCPUだ。L2キャッシュも同じ4MBで、EISTやIntel 64などの搭載機能も同じである。ただし、FSBクロックはE6600が1,066MHzであるのに対し、T7700は800MHzとなっている。FSBクロックが異なってはいるが、デスクトップ向けのE6600に近い性能を出せると考えてよい。 メモリはDDR2-667 SDRAMの2GBをデュアルチャンネルで2枚使用し、計4GBを搭載する。このメモリ搭載量には驚きだ。4GBのメモリを搭載するノートはあまりなく、多くのデスクトップよりも多い搭載容量で、これだけででも目を見張る。ただし、驚くのは早い。というのも、このノートが採用するOSは32bit版のWindows Vista Home Premiumなので、メモリを3GBまでしか認識できないからだ。とは言え、このような方向性自体は評価したい。東芝のやる気と勢いを感じる。 さて、このノートの最大の特徴はグラフィックス機能にある。なんと、GeForce 8600M GTを2つ搭載し、SLI構成を実現しているのだ。SLIは、2つのGPUで分散処理をすることで、3Dグラフィックスの性能を大幅に高める技術である。マルチGPUに対応するソフトで最大の効果を発揮するが、従来のソフトでも、ある程度の効果はある。 NVIDIAの現行のノート向けGPUは、上からGeForce 8800M GTX、同GTS、GeForce 8700M GT、GeForce 8600M GTなので、本製品は上から4番目のGPUを搭載していることになる。メインストリーム向けのGPUなのだが、本製品が搭載するGPUは2つだ。SLIがどれだけ性能を向上できるかが本製品の性能を決めるカギとなっている。また、性能に関係なく、ノートでありながらGPUを2つ搭載しているという事実に魅力を感じる人もいるだろう。CPUコアを2つ搭載し、GPUを2つ搭載し「このPCは凄いポテンシャルを持っているぞ」という満足感がある。このような自己満足もPCには重要な要素だ。 液晶ディスプレイは、1,680×1,050ドットの解像度を表示可能な17.1型ワイドを搭載する。17.1型のワイドを搭載するくらいなので本体サイズはかなり大きく、399×288×36~52mm(幅×奥行き×高さ)となっている。重量も約4.2kgとかなり重いので、ノートとは言っても、デスクトップの代わりに据え置きで使用するタイプのノートだ。性能は限りなくデスクトップに近く、デスクトップに比べれば遥かに小型なので、この手の大きなノートはそれなりに人気が高い。 17.1型のワイド液晶は、ノートなので目の前に画面があり、かなりの迫力を感じる。液晶パネルには、東芝のClear SuperView液晶を採用しており、液晶表面には光沢がある。ただし、映りこみはほとんど気にならない。視野角も広く、見る角度によって色が変わることが少し気になる程度で視認性は問題ない。残像は分かる程度には残るので、アクションゲームなどをプレイする際には慣れが必要かもしれない。 そのほかのスペックでは、HDDを2台搭載しているところがノートとしては珍しい。160GBの2.5インチシリアルATA HDDを2台内蔵し、計320GBの容量となる。光学ドライブはDVD±R/RW/-RAMに対応するスーパーマルチドライブだ。DVD±Rの2層書き込みにも対応している。LANはGigabit Ethernetで、無線LANはIEEE 802.11a/b/g/n(Draft 2.0)に対応する。どこを見ても不足を感じないハイエンドノートだ。 ●ノートとは思えない高音質なスピーカー このノートを使って驚いたのが、音が良いということだ。良いと言っても、デスクトップ用の高価なスピーカーとは比較にならない。しかし、ノートということを考えれば、かなり良いものだ。内蔵スピーカーで音楽などを聞いても十分に楽しめるだけの性能を持っている。 実際、音にはこだわっているようで、内蔵スピーカーには定評のあるherman/kardonの小型スピーカーを5つも搭載している。具体的には、キーボードの上部に左右に2つずつで4つ、本体の底面にサブウーファを1つの、計5つの構成だ。最大出力は計10.5Wとなっており、かなりの大音量でも無理なく音が出て、音が割れるようなこともない。音自体は軽いが、サブウーファの効果でそこそこ低音も鳴る。音量を上げると、ノート自体とノートを置いた机が振動するほどだ。ゲームをプレイする場合にも、十分迫力ある音を楽しめる。 ほかにも音関係では、音量調整を行なう回転式のボリュームが大変便利だ。多くのノートでは、キーボードショートカットやキーボード上のボタンで音量を調整できるようになっているが、それらの方法ではゲーム中にすぐに音量を調整することが難しい。しかし、この製品が採用する回転式のボリュームなら、クルッと回すだけで瞬時に音量を調整できる。音が大き過ぎるときや小さ過ぎるとき、直感的にすぐに適正な音量に調整できるというのは便利だ。 キーボードがフルサイズで、テンキーまで付いているというのがうれしい。古いゲームなど、テンキーを使用するゲームはまだある。ただ、キーストロークはかなり浅く、好みもあるが、筆者には少々打ち辛く感じた。これだけ大きなノートで厚みもあるのだから、もう少しキーが深く沈んでもよいと感じる。 また、Enterキーが小さいことも気になった。この辺りは、どのノートを購入しても存在する問題で、結局は使う側が慣れるしかない。ほかに、キーボードまわりではもう1点、タッチパッドのボタンもストロークが浅く、かつボタンが平らなので操作しにくいと感じた。全体の完成度が高いだけに、こういうところは残念だ。ただ、ゲームをプレイする人もそうでない人も、この手のノートではマウスを使うのだろうから大した問題ではないのかもしれない。 このノートは取り立ててゲーム向けを謳っていないので、ゲーム用に特化した機能はない。位置付けとしては、デスクトップの代替として何にでも使えるハイエンドノートだ。ゲーム向けとして見た場合、GeForce 8600M GTのSLIをもってしても、1,680×1,050ドットの解像度は広過ぎる。この解像度では、ドットバイドットで最新の3Dゲームを快適にプレイするのは難しいはずだ。ゲーム向けに特化したノートの場合、もう少し解像度が低い液晶を搭載するべきだと思う。だが、ゲームも楽しめるハイエンドノートとして見るのなら、基本性能、液晶のサイズと解像度、音質、インターフェイスなどかなり完成度の高いノートと言える。 ●写真で見るインターフェイス インターフェイスは言葉で説明するよりも写真で見た方が分かりやすい。Satellite WXWは豊富なインターフェイスを備えているハイエンドノートだ。簡単な解説とともに写真で見ていこう。
●一部のソフトでSLIの効果は絶大 気になる性能をベンチマークテストで見ていこう。ベンチマークテストの内容は、このコーナーで毎回行なっているテスト内容と同じだ。ただ、このノートはSLIをON/OFFできるので、すべてのテストでSLIを有効にした場合と、無効にした場合の2種類のテストを行なった。また、解像度を変更できるテストに関しては、いつものテストに加えて、このノートの本来の解像度である1,680×1,050ドットでもテストを行なった。 結果を見てみると、「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」以外のテストでは大変良い結果となっている。いずれの値も、各ゲームを快適にプレイできることを表す結果だ。この結果を見る限り、このノートなら最新のハイエンド3Dゲームを除く、ほとんどのゲームを快適にプレイできるだろう。 気になるSLIの効果だが、マルチGPUに対応しないテストではまったく効果がない一方、マルチGPUに対応するロスト プラネットと3DMark06でSLIの効果が顕著に表れている。特にロスト プラネットはSLIの有効と無効で、ほとんどの値が倍に向上しており、大きな効果が出ている。SLIは、GPUが2つになったからといって処理性能が単純に2倍になるわけではない。実際には1.8倍ほどになれば良い方だ。例えば、3DMark06の結果はSLIの効果が倍までは出ていない。これが通常のSLIの効果である。 ロスト プラネットがSLIと相性が良いということもあるだろうが、この結果がマルチGPUに最初から対応しているゲームの本来の結果だとすると、SLIの将来は明るいと言える。もちろん現時点でも、SLIの効果がロスト プラネットで大きく表れたということで、SLI構成のメリットはあるということになる。 実際にロスト プラネットをプレイしてみるとどうかというと、ベンチマークテストの結果通り、SLIを有効にしないとまともにゲームはできない。SLIを有効にすれば見違えるようになるが、それも解像度とグラフィックス設定の内容による。たとえば、1,680×1,050ドットでも各種設定を「中」程度に調整すればスムーズとは言えないながらも遊ぶことができる。ある程度グラフィックスのクオリティを維持しつつ、快適に遊ぶには、1,024×800ドットあたりの解像度が良いだろう。 では、各種設定を「高」や「DX10」にした場合にはどうなるのかと言うと、実のところ1,024×768ドットでも快適とは言えない。ただ、1,680×1,050ドットで各種設定を落とした状態でも、筆者には十分にキレイなグラフィックスに見えたし、結構楽しく遊べたのでノートでこれだけ遊べれば十分だと感じた。 このほか、最新のFPSゲームである「Unreal Tournament 3」と、ラリーレースゲームである「SEGA RALLY REVO」のデモ版をプレイしてみたが、どちらも状況はロスト プラネットと同じだ。1,680×1,050ドットでは快適に遊べないが、解像度を下げて各種グラフィックス設定を調整すれば快適に遊ぶことができる。その場合には、やはりロスト プラネットと同じで、解像度を下げたとしても、どちらもなかなかキレイなグラフィックスでゲームに熱中することができた。 メーカーの方向性どおり、ゲームもできるハイエンドノートとして、いろいろなことにノートを使いたいのなら、このノートは十分な性能を発揮してくれるだろう。ゲーム向けノートということなら、もう一工夫必要だが、そうではないので大変完成度の高いノートとして評価したい。特に、いい意味でノートらしくない音の良さは、ほかのゲーム向けノートにも見習ってもらいたい。
□東芝のホームページ (2007年12月6日) [Reported by 小林 輪]
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