塩田紳二のPDAレポート

デジタルペンと文字認識ソフトウェア



 以前、Nokiaの「SU-1B」とLogitechの「io2」を紹介したが、SU-1Bの後継として「SU-27W」が発売になっている(ただし日本のノキアでは扱っていない)。ところがこのペン、Logitechのio2に外観がそっくり。以前Logitechは、Bluetooth対応のio2を開発するといった発表を2005年にしており、ビジネス向けに製品が出荷されている。このNokiaのSU-27Wだが、どうもLogitechのOEMのようだ。というのは、付属してくるソフトウェアがio2と同じだからである。

 これまで、筆者は、携帯電話用にSU-1B、その他のメモ用にio2を使い分けてきたが、これからは、このSU-27W 1つで両方に対応できる。で、SU-27Wだが、PCと接続して利用する場合には、io2とまったく同じだ。違いは、Bluetoothを内蔵していて、Nokiaの携帯電話へテキストやイメージを転送できるという点だ。

 io2に関しては、関連記事を参照してほしい。ソフトウェアはあのあと、若干のアップデートが行なわれたが、基本的には同じである。

 外観は、io2の古いタイプと同じである。最近のio2はパッケージがブリスターパックとなり、一部が銀色のちょっと違ったデザインだが、初期モデルは、全体がグレーで、正面のロゴ部分がツヤのある黒だった。

 SU-27Wは、全体が黒で、ロゴがNokiaになっている程度の違いしかなく、形はまったく同じである。なお、SU-27Wには、専用ノートブックなどが付属しないパッケージもあるようだ。通常パッケージよりはその分安くなっているが、インターネットなどで見ると、携帯電話用のソフトウェアが付属しないといった記述が見られる。この記事を読んで買う人などいないとは思うが、この製品は、日本国内向けには販売されておらず、筆者はイギリスにて購入した。価格は80ポンド。日本円で2万円弱である。また、当然、Bluetoothの国内認定が取られていない。SU-1Bの後継として国内での取り扱いが期待されるところだ。

Nokia SU-27W(上)とLogitech io2(下)。色やロゴが違うだけで、本体形状などは同じ SU-27Wは、ロゴがNokiaになっているほか、LED表示などが若干違う

●SU-27Wのソフトウェア

 SU-27Wでは、携帯電話側へ「Nokia Pen Suite」と呼ばれるソフトウェアを転送して利用する。SU-1Bでは、Bluetoothの内部でGIF画像を生成してBluetoothのオブジェクトプッシュプロトコル(OPP)で転送していたが、SU-27Wでは、同じBluetoothでも独自の転送プロトコルを使うようだ。下位プロトコルは、シリアルポートプロトコル(SPP)のようである。これを受信するためのソフトウェアがPen Suiteで、具体的には、受信を行なう「PenPalOS」と「PenMail」という2つのソフトウェアから構成されている。PenPalOSは、バックグラウンドで動作して、SU-27Wからのデータを受信するためのもので、PenMailは、受信したペンデータの表示や携帯電話のメール(MMS)送信のためのソフトウェアだ。

 また、文字認識に対応しており、これは、携帯電話側で行なわれる。io2では、単にペンの軌跡を記録しているだけで、文字認識は外部で行なう必要がある。PC上のio2 Softworeも別途文字認識ソフトウェアを持っている。

 ただし、携帯電話で認識できるのは、英語またはドイツ語だけである。携帯電話のハードウェアはPCに比べると非力だが、最近の携帯電話は高性能で、アルファベットや数字程度なら認識できるようだ。パッケージに付属しているものと同じB7サイズのノートに9行程度の英文を書いたとき、文字認識に必要な時間はメモリカードへのセーブも含めて30秒程度。携帯電話には「Nokia E61」を使ったが、この程度なら文字認識させてメールを送ってもそれほど苦にはならない時間だ。

 SU-27Wからページを転送すると、自動的にpenMailが起動、受信したページを表示する。ここから、メールでの送信(文字、イメージを選択できる)や保存ができる。

SU-27Wからデータを受信するためのソフトウェアPenPalOS。電話機に常駐する 手書きの英文を受信したところ。同じ英文をブロック体(大文字のみ)、筆記体、ブロック体(大文字小文字)で書いてみた
テキストメッセージ(SMS)への変換を指定 SMSの本文欄に手書き認識されたテキストが入力される。全部大文字のブロック体の認識率が少し悪いが、その他はおおむねOKである

●PC用ソフトウェア

 付属のPC用ソフトウェアは、io2 softwareのVer.4である。これは、Logitechのio2用のソフトウェアと同じである。なので、現在io2を使っているなら、そのままSU-27Wが利用可能だ。

 前回io2を紹介したときよりも、少しバージョンがあがっていて、現在のものは、アルファベットを丸で囲んで、コマンドを記述するio tags機能が装備されている。初期のioでは、ノート自体に、カレンダーやTo Do、メモなどの種別を指定する欄があったが、このio tagを使えば、ページ内に指定した方法で必要なテキスト(たとえば、カレンダーなら日付、メールならアドレスなど)を記述しておけば、PCへの転送時に自動的に処理が行なわれる。なお、ユーザーがコマンドを指定することも可能である。ただし、できることはそんなに多くなく、文字認識してワードに転送する、OutlookのカレンダやTo Doへの登録、メール送信などである。

 また、io2 softwareが作成するページデータ用のGoogle Desktop Searchプラグインも用意されている。io2では、PCに転送したとき、自動的に文字認識を行なっている。これはそのままでは見えないが、「Text Optimizer」などでファイルを開けば文字認識の結果を見ることが可能だ。また、再認識などを行なうには、付属の「My ScriptNote」を起動しておこなう。

 Google Desktop Searchプラグインは、この自動の文字認識結果を検索対象とするためのプラグインである。Google Desktopを使っているなら、これを入れておけば、自動で検索できるが、io2 softwareからは、日本語の文字認識は行なえないので、英文のみの検索となる。

●MyScript Notesをバージョンアップする

 Logitechのio2に付属していたMyScript Notesは正式版だったが、SU-27Wに付属しているMyScript Notesは、トライアル版である。このMyScript Notesは、仏VisionObjectの製品で、最近のバージョンでは日本語の認識が可能になっている。どうも、日本国内で販売されているペン関連の製品のバンドル版として採用されているようだ。

 認識言語と、ソフトウェアの表示言語は別になっていて、英語表示のMyScript NotesでもVer.2.x以降なら日本語の認識は行なえる。それで、とりあえず、io2に付属のMyScript Notesをバージョンアップしてみた。バージョンアップ価格は、3,400円程度である。ただし、VisionObjectからバージョンアップとして購入できるのは、メニューなどが英語のものだけである。このMyScript Notes 2.1は、io2以外にいくつものペンデバイスのファイルに対応している。また、変換先としてMicrosoftのWord以外に一太郎もサポートされているようだ。

 このMyScript Notesは、文字だけでなく、図も認識できる。手書きの丸や四角、矢印を綺麗な図形に変換してくれる。ただし、日本語の場合、認識できるのは横書きのみ。縦書きには対応していない。もっとも、筆者など、日常生活でも横書きが普通で、縦書きは仕事で要求されない限りすることはないので問題はそれほど感じない。

 また、このMyScript Notesは、日本語の手書き認識を行なうのに、枠の中にきちんと書く必要もない。CPU性能が低いとき、日本語の手書き認識は、オンライン(その場で認識するもの)、オフラインを問わず、枠の中に書き込むことが必要だった。しかし、CPUが高性能化してきたため、そんな必要はもうない。横書きであれば、紙に対して多少斜めでもちゃんと認識する。

 実際には、筆者は、io2をメモ用として使っているので、文字認識させる機会はそんなに多くない。メモを取ることで、だいたい覚えてしまうし、あとで見返すことは数字や番号といった覚えにくいものだけだからだ。

 ただ、図の下絵を描くなんてときには、結構重宝する。ちょっと複雑な図になると、描画ソフトでちまちま書くよりも、ノートに手書きでざっと書いてしまったほうが簡単である。あとは、図形認識させ、適当に修正したあと、Wordへエクスポートすれば、図が出来上がる。最近では、Wordのファイルは多くのソフトウェアで読み込めるし、Word自体でも簡単な描画は可能なので、あとからちょっとした修正も可能だ。

 MyScript Notesは、io2 Softwareからは直接起動できるが、単体でペン記録ファイルを直接読むことができる。対応しているのは、io/io2やSU-1B/27Wなど、10種類程度である(表1)。

【表1】MyScript Notes Ver.2.1の対応フォーマット
ACECAD(.dhw)
Digital Ink Pad(.top)
IBMCrosspad(.ps)
IRex iLiad(.irx)
Logitechio、io2(.pen)
マクセルDigital Pen(.pgd,.pgc)
NokiaSU-1B,SU-27W Digital Pens(.pgd,.pgc)
PegasusNoteTaker(.pnt)
Sony EricssonChatpen(.svg)
UC LogicLaPazz(.dnt)

 認識後は、書式の付いたRich Textまたは、図と文字が混在したGraphics&Textのどちらかになる。これは、変換設定で切り替えが可能。たとえ図の入っているページでも、Rich Textとして認識させることは可能だ。なお、あらかじめ、ページ上の筆跡データに対して、領域を設定し、それが文字なのか図なのか、あるいは認識言語を指定してやることで、認識率を向上させることができる。

 認識後は、右側の領域で該当の文字、図形をクリックすることで、他の変換候補を表示できる。文字は行単位、図形は個々に修正が可能。図形の認識は、円、楕円、直線、弧、多角形で行なわれる。これらの中から、最も近いものを選択してくれる。認識後の図形をクリックすると、これらの候補を確率とともに表示し、簡単に変更できる。ただ、マンガのようなフリーハンドの図は、文字や図形と誤認識しやすいので、予め領域指定でフリーハンド(Freeform Drawing)と指定してやったほうがいい結果が出やすい。

 いままで、いろいろなデジタルペンを使ってきたが、このMyScript Notesは、認識率も高く、手書きデータがここまでちゃんと文字や図になるのは、少々感慨深い。

 ただ、残念なことに、io2 Software自体が持つ、自動文字認識機能は、日本語への変換ができず、手動で一回MyScript Notesを起動して変換を行なわねばならない。もともとのソフトが、英語などにしか対応していないので、しかたがないところである。自動で変換できると、付属のGoogle Desktop用のプラグインにより、検索が可能になるのだが……。

筆者がアップグレードで入手したMyScript Notes Ver.2.1は英語版だが、日本語の認識は可能 範囲指定で、手書きの絵を文字と認識しなくなり、結果、ほかの部分もきちんと認識されたようだ

●タブレットタイプのデジタルペン

 io2は、便利なのだが、専用のノートを使うのでこれが少々お高い。米Logitechの直販サイトで、A4サイズのノートが3冊で14.99ドル、120円換算で約1,800円となり、一冊600円である(店頭で購入するともう少し安い)。一束いくらのノートと比べると10倍はする。しかし、このio2の方式(anoto)では、書くときにペンの動きを検出するアダプタなどが不要で、書いている最中は、普通のノートとペンとまったく変わらない(ちょっとペンが太目だが)。また、書き込んでいるページを認識するので、ページを変えても何もする必要がない。

 ランニングコストだが、筆者の場合、A4とA5サイズのノートを併用して1年に2~3冊程度。毎日何か書くわけではなく、取材などで使うのが主である。1年で1,800円ぐらいであれば、許容範囲じゃないかと思うのだが。

 会社なんかで、毎日何か書くことがあるなんて場合には、普通のノートが使える方式のほうがランニングコストは安くなる。また、社内だけで使うなら、持ち運びもそんなに苦にはならないかもしれない。

Technote TN-A401。A4サイズのレポート用紙が使えるため、本体はかなり大きい

 それで、タブレット方式のデジタルペンもちょっとためしてみた。ためしたのは、海連の「Technote TN-A401」という製品である。これは、タブレット上に普通紙のノートやレポート用紙を置き、専用ペンで書き込むことで筆跡の記録が行なえるもの。

 昔使っていたCrossPadに近いのだが、この製品は、ペンが3種類あり、3色を切り替えて使うことができるようになっている。図を書くときなどには、色を変えることができるというのは便利だ。たいていのデジタルペンでは、PCに取り込んだのち、筆跡に色をつけることができるものは多いが、後からの作業は、面倒といえば面倒だ。色を変えてノートを取るなんて、なんだか、学生時代の優等生を思い出す。どうも筆者は、この手のノート作りが不得意だったので、ついつい、1色で書いて、重要なところにを丸で囲んだりしてしまう。まあ、ペンの使い分けが得意な人にはいいかもしれない。

 この手のタイプでは、タブレット側で、書き込んでいる頁を指定しておく必要がある。次のページに書き込む前にボタンを押して、タブレットに新しいページへ進んだことを通知する。これを忘れると、2つのページのデータが1つのページに記録されたようになってしまうが、このTN-A401の付属ソフト「Digital Organizer」では、これを分離できるようになっている。あとから修正は可能なので、ボタンを押すことにそんなに神経質になる必要はない。

 また、このTN-A401には、専用の「MyScript Notes for U」が付属している。これは、先ほど紹介したものと同じだが、メニューなどが日本語化されていること、対応フォーマットがTechnoteの.DNTファイル(およびMyScript Notesの.Note)などに制限されている点などが違う。また、付属のDigital Organizerからページを指定して起動させることもできる。

 こちらは、国内で容易に入手できるし、専用ノートも必要ない。文字認識も可能である。筆者が試用したのはA4サイズの用紙に対応したもので、これは、持ち歩くにはちょっと大きい。A4のレポート用紙を乗せて使うのだから、いわゆるA4ファイルサイズである。気軽に持ち歩くなら、A5サイズのTN-A501のほうがいいかもしれない。

TN-A401付属の編集ツールDigital Organizer。TN-A401からのアップロードやファイルの管理、簡単な修正などが可能。ここからMyScript Notesを起動できる TN-A401に付属のMyScript Notes for U。バージョンは2.0である。右側は、何も指定せずに日本語で変換を行なったところ。筆者のキタナイ字もかなりの確率で認識してくれている

□Logitech io2の製品情報(英文)
http://www.logitech.com/index.cfm/mice_pointers/digital_pen/devices/408&cl=us,en
□Nokia SU-27Wの製品情報(英文)
http://www.nokiausa.com/A4431587
□海連 Technoteの製品情報
http://www.kairen.co.jp/japanese/technote/
□MyScript Notesの製品情報(英文)
http://www.visionobjects.com/products/application-software/myscript-notes/
□関連記事
【2005年5月10日】【塩田】特色のある2つの電子ペン
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0510/pda42.htm
【2003年2月3日】【塩田】専用パッド不要の手軽な電子ペン
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0203/pda12.htm
【'99年2月4日】【塩田】CrossPadのここがイイ!
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990204/crosspad.htm

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(2007年9月26日)

[Text by 塩田紳二]


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