●Appleが新型iPodを発表
9月5日(日本時間6日)に発売になった新しいiPod。新色が加わっただけのshuffleを除くと、すべてフルモデルチェンジとなった。新製品の中で最も注目されるのは、電話機能を持たないiPhoneとでもいうべき「iPod touch」であることは疑いようがない。Appleが“マルチタッチ”と呼ぶUIを採用したiPod touchは、もはや単なるミュージックプレーヤーではない。が、その分、価格も高いのが難点である。同じ8GBのメモリを内蔵したiPod nanoの約5割増しという価格で本当に市場に受け入れられるのか注目される。 米国では100ドル違いで電話機能付きのiPhoneが買えるというのも微妙なところ。399ドルの電話機は高いかもしれないが、iPodと電話機の両方を買うつもりのユーザーなら、電話機(能)は100ドルと見なせなくもない。iPhoneが値下げされていなければ、棲み分けることも可能だったかもしれないが、この場合、多くの米国人は安価な携帯電話とiPod touchの組み合わせを選んだかもしれない。いずれにしてもiPod touchが、電話機能を外すことで米国以外でも販売可能にしたiPhoneと呼ばれてしまうのか、デジタルミュージックプレーヤーの新次元を切り開く製品になるのか、市場の反応が気になるところだ。 ●iPod classic 160GBを購入 一番ネタになりそうなiPod touchを横目に、筆者が購入したのは「iPod classic」の160GB版だ。確かにiPod touchはおもしろいが、これでは容量的に5.5G iPod(iPod video)の後継にはならず、併用するしかなくなる。筆者が持ち歩くデバイスのうち、iPod touchで置き換えることができるのは、60GBのiPod videoではなく、PDAであるiPAQだと思うが、ネットワーク機能がWi-Fiに限られるのは辛い。BluetoothとWi-Fiの両方を内蔵したiPAQの方が、ネットワーク端末としては実用的なのである。
今回のニューモデル登場に際しては、さまざまな予想がたてられていた。が、筆者が望んでいたのは、とにかく今より容量の大きなiPodを出して欲しい、ということだけであった。100GB超のモデルなら、今度は5.5Gのまんまのマイナーチェンジ版でも良いと公言していたほどだ。 筆者のライブラリは、音楽のみでだいたい70GB弱というところ。iPodが60GBといっても、これは10進法表記だから、実際は55GB程度しかない。iPodに入りきらない分は、iTunesのライブラリから除外して、別のフォルダに隔離する手作業を行ないながら利用してきたが、それも忍耐の限界に近づきつつあった。昨年(2006年)の秋、80GBモデルがマイナーチェンジであったことから見送ったものの、この夏にはやっぱり買おうかと一度は血迷ったくらいである。ただ、幸か不幸か、その時には量販店からHDDタイプのiPodが姿を消しつつあり、否が応でも新モデル投入の近さがうかがえたため、辛うじて思いとどまることができた。 ●前モデルと互換性あり。カラーはiMac風に 今回リリースされたHDDタイプのiPodは、基本的には従来のユーザーインターフェイスと、外観を継承したモデルで、iPod classicと呼ばれる。HDDモデルに次世代のユーザーインターフェイスが採用されなかったこと、「classic」と命名されたことから、HDDモデルはこれが最後になるのではないかと見る向きも少なくない。Macでclassicと名付けられたモデルの運命を見ていれば、そう思うのも無理のないところだろう。 筆者の勝手な予想では、あと1サイクルclassicをモデルチェンジせずに継続した後、フェイドアウトかな、という感じだ。classicという命名から、HDDモデルの新規開発が継続される雰囲気はあまり感じられない。かといって、HDDモデルを完全になくすには、少なくともフラッシュで64GB級が必要になるのではないかと思うのだが、それを手頃な価格で提供できるのは、早くても2009年になるのではないかと考えるからだ。 というわけで、ひょっとすると最後になるかもしれないiPod classic、早速購入して、AppleCare Protection Plan for iPodまでつけてしまった。保証期間の延長は1年間だけ(計2年間)だが、来年(2008年)、新しいHDDタイプを買うことはないだろうという読みからである。 容量が160GBもあれば、筆者が死ぬまで購入するであろうCDをおさめて足りるハズだ。実際は、これまで容量の点から利用を諦めていたビデオの持ち運びも可能になるだろう。それどころか、ある程度遅いのを我慢すれば、外部ストレージとして利用することもできる。遅いと言っても、バスパワーで駆動されるポータブルタイプのUSB外付け2.5インチHDDとの比較であれば、それほど大きな違いはないようだ。
いずれにせよ、Appleが今回のiPod classicに160GBという容量を選んだのは意外だった。これまでの最大容量である80GBの2倍まで一気に引き上げられたという意味はもちろんのこと、1.8インチドライブとしてはまだノートPCなどに使われたことがない容量であるからだ。60GBのiPodでやりくりに苦労していた筆者にとって、容量は大きければ大きいほど良いし、80GBのiPodを買い増しして容量を合算したよりも、大容量が価格据え置きで入手できたのだから大満足である。
いったいどんなドライブが使われているのか。この疑問は、iPodと同日に東芝が発表したリリースにより解消した。どうやらiPod classicに採用されているのは、東芝が携帯機器向けに開発した新型ドライブ。スピンドル回転数を3,600rpmに抑えるなどして、消費電力を抑えている。ちなみに、インターフェイスは家電向けのCE-ATAなので、取り外してもそのままPCで利用することはできない。 さて、早速入手した実物だが、従来の5.5G iPodと大きさはほぼ同じ。スペック上は0.5mm薄くなっているのだが、この違いは平らな場所に並べてみない限り分からない程度だ。そのおかげもあって、これまでと同じDOCKアダプタで、そのままクレイドルやスピーカーにマウントすることができる。確認したところ、5.5世代の60GBモデルに付属したDOCKアダプタと、今回の160GBモデルに付属するDOCKアダプタは同じ10番だった。なお、80GBのclassicをプレスイベントで触った際、従来の30GBモデルより薄く感じたのだが、個人的に所有しているわけではないので、単なる思い違いかもしれない。
iPod classicの色は、シルバーと黒の2色。少し前に発売されたiMacが白からシルバーになったことを考えると、この変更は必然というところか。今回、筆者は黒を購入したが、付属のケーブルやヘッドホンはこれまで通り、白のみである。前世代で黒は、傷が目立ちやすいということで嫌う人もいたが、第6世代ではフロントパネルの材質が樹脂からアルミニウムに変更になった。周囲にRがつけられていることに加え、ちょっとマットな質感でなかなか良いと気に入っているが、傷が目立たないことを祈るばかりだ。これから発表されるMacにも、このマットな黒が使われるのだろうか。 ユーザーインターフェイスは、基本的に従来のiPodを踏襲したもので、iPod touchのようなラジカルな変更はない。画面の右側にグラフィックスが表示される、といった違いだ。それでも基本ソフトウェアが違ったせいか、従来のiPod用のゲームをこの第6世代iPodで利用することはできない。標準添付されるゲーム(3種類)も、グラフィックスが向上したり、サウンドやBGMが加わったりと改良されている(ホイールでゲームをやるのは、相当に大変ではあるが)。 そんな中で最も目新しいのは、やはりCover Flowをサポートしたことだろう。当初は、かなりもたつくのではないかと思ったが、予想よりはちゃんと動く。ただ、Cover Flowに入る際に結構待たされる印象で、入ってしまえばそれほどでもないように感じる。フラッシュメモリを用いたプレーヤーに比べて、操作のレスポンスではどうしても見劣りするのはやむを得ないところだが、Cover Flowに限らず、何かの操作を行なう初期段階での待ち時間が大きい。 最後に音質だが、基本的には従来のiPod videoの延長線上にあると思う。が、全般に中低音がふっくらとした感じで、より自然なバランスに近づいたようだ。容量の点からいっても他に選択肢はないわけだが、音質や使い勝手の点でも不満はない。
□関連記事 (2007年9月12日) [Reported by 元麻布春男]
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