Microsoftの組み込み系OSの開発者向けイベントであるMEDC(Mobile and Embedded DevCon)が、米国ラスベガス市で5月1日から3日(現地時間)、開催された。ゴールデンウィークにもかかわらず、このイベントを取材したので、簡単にレポートしたい。 ●組み込み系Windowsの開発者向けイベント MEDCが対象とするのは、WindowsCEとEmbedded版のWindows XPである。Microsoftは、これらの製品を「Windows Embedded」と総称している。また、最近では、Windows XP EmbeddedをPOS端末専用にしたWindows Embedded for Point of Serviceという製品もある。もちろん、PDAやスマートフォン用のWindows Mobileやカーナビ用などのWindows Automotiveもこの範疇に入る。
MEDCでは、このうち、Windows Embedded CE、Windows XP Embedded、Windows Embedded for Point of Serviceをメインに、アプリケーションやハードウェア開発者向けにテクニカルな情報を提供するためのイベントである。 通常、MEDCは、米国で最初に開催され、そのあと、世界各国を回る。日本でも6月に開催される予定だ。 イベント自体は、基調講演、同時並行で開催されるセッション、そして展示会場の3つからなる。会場は、ラスベガス市内のVenetianホテル。ここは、ホテル内に大きなイベント会場を持ち、かつ、SANDSのコンベンションセンターにもつながっている。
ほとんど同時期に同じホテル内で、Microsoft主催のMIX07というWeb関連のイベントも行なわれていた。こちらは、WPF/E(Windows Presentation Foundation Everywhere)というコードネームだった、Sliverlightが話題の中心だった。 今年(2007年)2月の3GSMで発表されたWindows Mobile 6.0だが、今回また製品名称が違っている。電話機能の有無とタッチパネルを必要とするかどうかでStadnard、Professional、Classicの3つのタイプに分けられている。分け方は、Windows Mobile 5.0と同じなのだが、最近では、スマートフォンなどの呼び方に混乱があり、新規に名称を変更したというのがMicrosoftの説明である。下の表1は、その対応を示すものだ。
【表1】Windows Mobileの名称変更
基調講演は、現状や製品紹介を行ない、一応、今後のロードマップも発表された。それによれば、2009年にWindows Embedded CEは次のバージョン(7.0?)となり、また、Windows XP Embedded(とfor POS)は、XPベースからVistaベースへと変更になるという。Windows Mobileについては説明がなかったが、これまで、ほぼ毎年、バージョンが上がっているので、来年(2008年)ぐらいには、CE 6.0カーネルへのアップデートが行なわれるのではないかと思われる。 ●会場で見つけたWM6スマートフォン 展示会場には、国内では見られないWindows Mobile搭載のスマートフォンがいくつか展示してあった。ここでは、そのうち、新しいものを中心に紹介していくことにしよう。 NTTドコモ(hTcZ)やソフトバンクモバイル(X01HT)にも採用されているHTCのブースには、スマートフォンとしては巨大ともいえる「HTC Advantage」と一見普通の携帯電話のように見える「HTC S710」(コードネームでVoxと呼ばれていたもの)があった。 Advantageは、8GBのHDDを搭載、分離型のキーボードは、磁石で本体と合体し、液晶カバーにもなる。また、3Gにも対応している。
これに対して、HTC S710は、キーボードを閉じた状態では、普通のモノボディの携帯電話にしか見えない大きさ。しかも、液晶側には、テンキーがある。デザイン的には、ウィルコムの「W-ZERO3 es」と同じだが、角の部分が丸いせいか、esよりは少し小さい感じがある。ただし対応はGSMのみ。
この2機種を含め、会場内のショップで販売が行なわれていたが、特別価格で、S710は、430ドル、Advantageは、1,050ドルだった。インターネットの広告などを見るとAdvantageは1,200ドルぐらいなのでかなり安くなっていたようだ。 Hewlett-Packard(HP)のブースには、やはりモノボディの携帯電話デザインの「iPaq 510」があった。これは、Windows Mobile 6 Standard搭載で、キーボードはないが音声認識機能を持っている。電話機としては4バンドのGSMに対応している。 Microsoftのブースには、i-mateやMotorolaの製品が展示してあった。 i-mateの「SPL」は、Windows Mobile 6 Standard搭載でモノボディの携帯電話型、JAQ4は、WM6 Porfessional搭載でフルキーボードを持つタイプ。どちらもGSM対応である。
Motorolaは、一昨年(2005年)にでたMotorola QをWM6 Standardにバージョンアップした「q9」が展示されている。これは、4バンドのGSMに加えてUMTS(日本でいうW-CDMA)、HSDPAにも対応している。 インターネット上に公開されているスペックと、会場で表示されていたスペックが違うところがあるので、これらの機種のスペックを下の表2にまとめておいた。
【表2】各製品のスペック
国内でも、Windows Mobileを搭載したスマートフォンが登場しているが、取りあえず、auを除く、各キャリア1機種という感じで、もう少しバリエーションが欲しいところ。 筆者は現在、以前レポートしたE61をメインに使っているのだが、この機種のように、フルキーボードが液晶の下に付いている機種のほうが圧倒的に使い勝手がいい。というのは、片手で操作がすべて行なえ、必要なら、両手に持って作業できるからだ。引き出し式も悪くはないが、持ち替えて両手で操作しなければならないのと、このときに画面の向きが切り替わるのが煩わしい。ペンを使えば、必ず両手で操作することになり、外出中にちょっと操作するなんてことがやりにくい。 昨年あたりから、スマートフォンでも、液晶の下にフルキーボードを持つ機種が増えてきた。Samsungも「BlackJack」という機種を出しているし、HTCにも「S620」という機種がある。そういうわけで、国内でも、こうしたタイプの出荷を期待したいところだ。
□MEDC 2007のホームページ(英文) (2007年5月7日) [Text by 塩田紳二]
【PC Watchホームページ】
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