PCで稼働するアプリケーションの多くが、インターネットに依存する以上、“Anywhere、Always Connect”は、とても重要なマターだ。そうはいっても、東京という大都会で、山手線内側のような場所にいても、コスト的、スピード的に快適な環境を得るのは難しい。 ●Centrinoから4年 ここ数年の間、ちっとも変わっていないものの1つに、移動中のノートPCのインターネット接続環境がある。Intelが、Centrinoテクノロジーを発表したのは2003年の3月だが、以来、ノートPCの多くが無線LAN機能を搭載するようになったものの、インフラそのものがまだまだ追いついていない。 ぼくが個人的に都内を移動しているときに、インターネット接続が必要になった場合にどうするかというと、まず、地下鉄での移動中であれば、駅に着いたところでベンチに座り、NTTコミュニケーションズによる「HOTSPOT」を利用する。これは、まあ、満足できるパフォーマンスが得られるので、月額1,600円の定額サービスを支払っている。現時点で、インフラとしてもっとも快適な環境を提供しているのが地下鉄駅構内で、ほとんどすべての駅でブロードバンド接続が保証されるというのは心強い。 地上を移動しているときには、同様にHOTSPOTが利用できるコーヒーショップや施設などが近くにないかを確認する。日常的に訪れるエリアは、ほぼ決まっているので、そのテリトリー内のポイントはだいたい把握している。最近では、Yahoo BB!のモバイルポイントサービスも充実してきているのも心強い。 無線LANでは、NTT東日本のフレッツ・スポットなどのサービスの選択肢もある。HOTSPOTがカバーしていないエリアでのアクセスポイント整備が進んできているようなので、気になる存在だ。ただ、このサービスは、端末のMACアドレスを登録しなければならないので、加入する気になれない。その点、HOTSPOTは、Webによる認証のみで端末は自由だ。 【お詫びと訂正】記事初出時、ドコモ公衆無線LANサービスの申し込みにはMACアドレスの登録が必要としておりましたが、必要ありませんでした。お詫びして訂正いたします。 不幸にもHOTSPOTのサービスが利用できないエリアにいる場合は、携帯電話経由でインターネットを使うしかない。たとえば、ホテルでの記者会見会場、打ち合わせに訪れた会社の会議室や応接室、あるいは地上を走る電車内にいるような場合だ。 携帯電話を使ってインターネットに接続するには基本的に3つの方法がある。 1. PCと端末をBluetoothで接続しダイヤルさせる方法 まず、1. はとても気軽でスマートだが、PC、端末ともにBluetooth対応の機器が少なすぎる。PCにはUSBアダプタなどを使ってBluetooth機能を拡張できるが、端末はそういうわけにはいかない。また、USBアダプタは出っ張るので装着しっぱなしにしにくい。ぼくは、ノートPCに「USB方向転換くるくるアダプタ」を装着し、そこにBluetoothアダプタをつけっぱなしで持ち歩いているが、何かの拍子にもげてしまいそうで、本当はちょっと不安だ。 2. の方法は安直ではあるが確実だ。ほとんどすべての携帯電話で対応できる。1. の方法よりも高速であるというメリットもある。なぜか、WindowsのBluetoothダイヤルアップによる接続ではIEによるWebブラウズが異様に遅いのだ。Macではそのようなことはないので、おそらくWindowsのBluetooth実装に関わる現象だと思われる。もっとも、ケーブルでの接続は、それなりにめんどうなので、電車の中で立ったまま、つり革につかまり、ちょっと接続したいという用途には向いていない。意外とそういうことは多いのだ。 3. の方法は、2つの契約を維持しなければならない点で、コスト的につらい。ファミリー割引で、プランの無料通信分の余りを分け合えたりするのが救いだが、どうプランを選ぼうにも、どうしても割高になってしまう。 さらに、1~3の方法ともに、致命的な問題としてパケット料金が高すぎる。ぼくの場合、1カ月のパケット通信トラフィックは、PC接続で約40MBだが、相応のパケットパックを選んでおいても、それだけで8,000円近くになる。昨今のWebページは、クリックするだけで数百KBというのも、ごく日常茶飯事なので、なかなかつらい。それでも速ければガマンもできるのだが、決して快適な速度は得られない。そういうわけで、携帯電話で接続する機会は、以前よりも減少傾向にある。 ●希望の星はいつ現れるのか なんだかんだといいながら、Bluetoothの普及は遅々として進まないし、無線LANにたよろうにも、あれだけ面展開するといっていた、livedoor Wireless公衆無線LANインターネット接続サービスも、個人的に徘徊するテリトリーはちっともカバーされないままに月会費を払い続けている。 希望の星はHSDPAによる高速データ通信だが、お目当てのBluetooth搭載端末であるNTTドコモの「P903iX」は、4月の発売予定で、ちょっと先の話だ。 場合によっては、先に発表されたイー・モバイルの「EMモバイルブロードバンド」への乗り換えを考えてもいいかもしれない。こちらは月額固定制で、少なくともぼくの場合は、現在のFOMAよりも安くあがる。 ただ、Bluetooth接続のためだけに、250gもある「EM・ONE」を持ち歩くわけにもいかないので、データカード端末を使わざるを得ないだろう。いずれにしても、こればかりは、使い心地を試してみなければわからないので、しばらくは様子見といったところだ。 高速インターネットという意味では、Mobile WiMAXにも期待している。各社が実験を進めているが、本格的なサービスの開始は2008年以降になるだろう。対応機能を内蔵したノートPCの発売ともなれば、もっと先の話になる。 結局のところ、現時点では、ノートPCをインターネットに接続する優れたソリューションが皆無であり、そのときのロケーションによって、いろいろな方法を用意しておかなければならない。 ●3年かかったブロードバンド 昨今の携帯電話端末のトレンドは、なんといってもワンセグ対応だ。だが、携帯電話でテレビを視聴できることを、そんなに喜んでいていいのだろうか。これは、放送に、今後ともメディアとしての安泰を約束するようなことでもあるからだ。 ワンセグ対応することは、携帯電話のネットワーク通信によるサービス提供の限界を認めたことにはならないのだろうか。携帯電話では、テレビなんて見ている暇がないくらいに、おもしろくて役に立つコンテンツがたくさんあれば、誰もワンセグなどに魅力を感じなくなる。本当なら、そこを目指さなければ意味がないように思う。 NTTグループは、NGNの実験の一環として、地上デジタル放送のIP同時再送信実験を開始しているが、その延長として、携帯電話網からも、それを受信したり、録画できるような仕掛けが実現されれば、放送はネットワークコンテンツの1つにすぎなくなる。今の対応は、携帯電話が放送のために特別席を用意したようなもので、メディアのヒエラルキーの再構築を遠のかせることになるだろう。それは、ちょっとくやしい。ここまで来ていながらという感がある。 そんなわけで、移動先で使うノートPCで、自宅に置かれたPCと同等のネットワーク環境を得られるようになるまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。当然、今年は無理だし、来年だって危ない。 2000年以降、ブロードバンドが普及し、常時接続による高速大容量通信は、ごく当たり前のインフラになった。ぼくの個人的なブロードバンドは、東京めたりっく通信のADSLサービスで、2000年の12月に自宅に開通した。NTT東西によるフレッツ・ADSLの提供が開始されたのもほぼ同じタイミングだ。 ブロードバンドの動きに関しては、関連記事の年表で詳しくたどれるが、日本のブロードバンドの普及開始をこのタイミングとすると、1つの峠に達したのは、2003年12月末にDSL加入者数がほぼピークの1,000万回線を突破したあたりだろう。かかった期間は3年間だ。そして、次の3年間で加入者数は倍以上になっている。 同じようなパラダイムの変化が、モバイルノートPCに起こるのは、どのくらい先の話になるのか。2003年を元年として、今年で4年目。少なくともあと3年、2010年以降になることはあるまいと高をくくってはいるのだが、本当にそううまくいくかどうか。
□関連記事
(2007年2月23日)
[Reported by 山田祥平]
【PC Watchホームページ】
|