外出先でインターネットに接続したい場合は、公衆無線LANのアクセスポイントを使う。得られる帯域幅もまあガマンできる。Webを見る程度の作業であればストレスもない。だが、どこでも無線LANが使えるとは限らない。 ●決まった端末しかつながらないのは不便 “ハイファイブ”と呼ばれた実験サービスの時代から、NTTコミュニケーションズの「ホットスポット」を使ってきた。このサービスのよいところは、アクセスポイントの多さもさることながら、端末を限定しないという点にある。利用するためには、WebページでユーザーIDとパスワードを使って認証するだけでいい。パソコンの入れ替え頻度が高く、複数台のパソコンを使い分けたりしているので、これはありがたい。 同じNTTグループでも、NTT東日本やNTT西日本の「フレッツ・スポット」では、サービス契約時に、利用する端末のMACアドレスを登録しなければならない。現在は、1契約で2台までの登録が可能となっている。 無線LANカードが外付けで、差し替えて使えた頃ならそれでもよいのだが、今は、Centrinoのおかげで、ほとんどのノートパソコンが無線LAN機能を内蔵している。だから、2MACアドレス限定というのは、ちょっと現実的ではない。NTT西日本などは、ソニーの「ロケーションフリーベースステーション」を売り、モバイルでPSPを使ってテレビを見るような提案をしているわけで、公衆無線LANに加入するくらいに積極的な個人が、端末を2台しか持っていないと本気で考えているのだろうか。 もちろん、セキュリティのことを考えたら、登録機器のみでしかアクセスできない方がいいにきまっている。MACアドレスと、ユーザーID、パスワードの3つの組み合わせはセキュリティ的にも堅牢だ。IDやパスワードが漏れて、犯罪に使われるようなことも起こりにくい。それでも、契約と端末が固定されているという旧来の発想から抜けられない会社のやり方だといわれても仕方あるまい。 そこにいくと、ドコモはもう少しまともだ。「ドコモ公衆無線LANサービス」(Mzone)が提供されている。こちらは、MACアドレスの登録は必要ない。ただ、いかんせんアクセスポイントが少なすぎる。 ●なかなか期待に応えてくれないライブドア NTTグループは、今後、公衆無線アクセスポイントの統合を計画していて、NTT東日本、NTT西日本、NTTドコモが個別に提供しているアクセスポイントをエヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォームが運用していくことになっている。この統合に、なぜか、NTTコミュニケーションズが入れてもらえない。不思議な話だ。 この計画のおかげで、ぼくが普段利用している私鉄沿線他で展開されていた「無線LAN倶楽部」のサービスが終了してしまった。このサービスは、別に入会しているISPが無料ローミングサービスを提供していたので、とても重宝していたのだが、サービス終了とともに、フレッツ・スポットとMzoneからしか利用できなくなってしまった。これにはちょっと参った。 期待していたライブドアの公衆無線LANサービス「livedoor Wireless」も、本サービスが始まったものの、山手線内80%をカバーという目標はとても達成できていないように感じる。特に、ぼく自身の行動範囲では、まったく利用できない。行動範囲が特殊なのかもしれないが、電柱を利用してのアクセスポイント設置では、電線等が地下に埋設されているエリアをカバーするのは難しい。ぼくにとっては、どうも、そういう場所がテリトリーのようだ。 この問題が早期に何らかの方法で解決され、本当に面のように展開するのだと考えていたのだが、甘かったようだ。せめて山手線の地上駅のホームに立てば必ず使えるくらいにはなるだろうと予想していたのだが、それも夢に終わっている。とにかく、本サービスが始まってから、1度も使わないまま毎月525円を支払い続けている。これからどうしようかと思案中だ。 ●重くなる一方のWebページ 無線LANが使えない場所では携帯電話に頼ることになる。ぼくの場合はノートパソコンと携帯電話をBluetoothで結び、FOMAを使ってのインターネット接続だ。この構成で得られる帯域はせいぜい200Kbps程度なので、無線LANに比較すると、決して快適とはいえない。感覚的にはWebページでリンクを1回クリックすると2~3秒で新しいページが開くという転送速度だ。このために、月に何千円も払っているのかと思うと腹も立つというものだ。 ドコモの割引サービスとして「パケットパック」が用意されているのだが、1年割引やファミリー割引の対象とはならない。同程度の金額を払うのなら、別の端末を用意して、そちらでデータ通信専用のプランを使った方がずっとトクだ。以前はそうしていたのだが、2台の端末のバッテリを管理するのがめんどうになって1つにまとめることにした。 リッチなページが増えてきた今、さすがにこのスピードではつらいと思うようになってきた。もちろん、パケット転送量も悩みのタネだ。なんだか、昔の市外電話の感覚でインターネットを使っている錯覚に陥る。 ちなみに、ドコモはこの夏にもHSDPAのサービスを開始するようだが、それがどのくらいの価格でどのくらいの帯域を担保するのかが気になるところだ。まあ、仮にサービスが始まったとしても、魅力的な端末が用意されるかどうかわからない。Bluetoothの帯域幅ではボトルネックになってしまうくらいのスピードが出れば嬉しいが、そのスピードを確保するために専用カード型端末を用意したり、携帯電話端末との間をケーブルで接続しなければならないのでは億劫だ。 ライブドアのサービスが期待通りに展開しないのなら、WiMAXをバックボーンに利用した無線ブロードバンドサービス、YOZANの「BitStand」に期待をつなごうかとも思う。こちらは、2006年の6月末までに23区内を600カ所、1,200局で面カバーする予定だそうだが、1月末の開設予定エリアが、2月末開設に延期されている状況だ。すでに本サービスが始まっているだけにユーザーの期待を裏切らないように作業を進めてほしいものだ。
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(2006年2月24日)
[Reported by 山田祥平]
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