OEMメーカー筋の情報によれば、Intelは1月下旬にOEMベンダへのロードマップを更新し、2008年の第2四半期に投入する予定の次々世代のモバイルプラットフォーム“Montevina”(モンテヴィーナ)の詳細を公開した。 情報筋によれば、Montevinaプラットフォームは、45nmプロセスルールで製造される“Penryn”(ペンリン)、チップセットの“Cantiga”(カンティーガ)、無線モジュールの“Ebron”(エブロン)と“Shiloh”(シャイロウ)から構成される。 中でも無線モジュールのEbronは、Wi-Fiの無線LANとWiMAXの無線WANの両方の機能を標準でサポートする予定で、2008年に登場するノートPCの多くが標準でWiMAXに対応することになる可能性が高まってきた。 ●6MBのL2キャッシュを搭載したMeromの45nm版となるPenryn Montevinaの詳細に関しては、すでに後藤氏の以前の記事で触れられた通りなのだが、一部アップデートもされているので、以下にまとめてみた。
【表】Montevinaを構成する各コンポーネント(筆者予想)
Penrynの基本的なマイクロアーキテクチャは、現在のCore 2 Duoなどで採用されているものと同じ、Coreマイクロアーキテクチャとなる。つまり、基本的な位置付けとして、PenrynはMeromの45nmプロセス版という言い方ができるだろう。 ただし、いくつかの点で強化が図られている。最大の強化点はL2キャッシュがMeromの4MBから6MBへと容量が増やされていることだ。 また、命令セットに関しても、新たにSSE4と呼ばれる新命令が追加されることになる。現時点ではSSE4がどのような命令セットになるのかは不明だが、SSE3の拡張命令のようにメディア系の処理が高速になるような命令セットが追加されると、IntelはOEMベンダに説明しているという。 ●デスクトップPC向けのYorkfield、Wolfdaleも用意される Penrynは、Montevinaのリリースに先駆けてCPU単体でも投入される。IntelはMontevinaの投入時期は2008年の第2四半期と説明しているが、Penryn自体は2008年の第1四半期に投入されるからだ。このため、Penrynは、Intelの次世代モバイルプラットフォーム“Santa Rosa”の後期部分を担うプロセッサとしても利用されることになる。このあたりは、現在のIntelのNapaプラットフォームが、CPUは最初Core Duo(Yonah)でスタートし、途中でCore 2 Duo(Merom)に切り替わったのと同じような状況だと考えるとわかりやすいだろう。 なお、Intelは、PenrynコアをデスクトップPCにも投入する計画ももっている。PenrynのデスクトップPC向けクアッドコアは“Yorkfield”(ヨークフィールド)、デュアルコア版は“Wolfdale”(ウルフデール)として、2008年の第1四半期に投入する計画であるとOEMメーカー筋は伝えている。 これらのプロセッサでは、Coreマイクロアーキテクチャとしては初めてHyper-Threading Technology(HTテクノロジ)をサポートすることになるほか、WolfdaleではFSBが1,333MHzに引き上げられることになるという。現在の65nmのConroeコアでの最高クロックは3GHz(Core 2 Extreme X6800)だが、おそらくWolfdaleはそれを超えるクロックを実現することになるというが、現時点ではOEMベンダに対しても確定したクロック周波数や製品構成(SKU)などは伝えられていない模様だ。
●WiMAXとWi-FiのコンボカードとなるEbron チップセットのCantigaは、グラフィック内蔵版のGMと外付けGPU版のPMの2つのSKUが用意され、サウスブリッジにはICH9-Mが採用される。OEMベンダ筋の情報によれば、基本的にCantigaは、デスクトップ向けのBarelake(ベアレイク、2007年第2四半期に投入される次世代チップセット)のモバイル版で、DirectX 10に対応可能な内蔵GPUの機能やDDR3のサポートなどの基本的な機能はBarelake譲りになるという。 だが、Montevinaプラットフォームでの最大の注目点は、WiMAXとWi-Fi(無線LAN)のコンボモジュールが用意されることだ。Ebronは、WiMAXと、IEEE802.11a/g/nに準拠したWi-Fiの機能がサポートされる。また、Wi-FiのみのShilohも用意される。いずれの製品にも、3×3ないしは1×2のMIMO機能をサポートしたSKUが用意されることになる。 WiMAXはWi-Fiよりも長距離の通信が可能な無線技術で、Intelなどが中心になって設立されたWiMAX Forumにより仕様などが定められている。WiMAXの仕様として一般的に言われているのは、IEEE 802.16の一連の仕様(802.16aや802.16eなどがある)ということになる。現時点では、EbronのWiMAXがどれを指すのかは明確ではないが、ノートPCに利用するという性格を考えると、Mobile WiMAXともいわれる移動体通信向けの拡張仕様となるIEEE 802.16eをサポートしていると考えるのが妥当なのではないだろうか。 おそらく価格的にはEbron>Shilohということになるので、上位モデルはEbronを搭載し、下位モデルにはShilohという位置付けになるだろう。このため、2008年のノートPCの上位モデルには、WiMAXが標準搭載ということになる可能性が高い。 これにより、一挙に世界中にWiMAXに対応したノートPCが増えることになる。2003年に、初代CentrinoにおいてIntelがWi-Fi(無線LAN)を標準機能にしたことで、無線LANが急速に広まったことを考えると、2008年にもWiMAXが急速に普及するということも十分あり得るのではないだろうか。
●Santa Rosa世代ではモバイル向けにもExtremeシリーズが投入される なお、Intelは2007年の第2四半期に投入する予定のSanta Rosaプラットフォームのロードマップも若干の変更を行なっている。Santa Rosa世代では、新たにモバイル向けにCore 2 Extremeプロセッサが投入される。第3四半期には2.6GHzのCore 2 Extreme X7800、第4四半期には2.8GHzのCore 2 Extreme X7900が、モバイル向けプロセッサの最高峰として投入されることになる。 これらの製品では、プロセッサのTDPは44Wへと拡張される。Santa Rosa世代のほとんどの製品は35Wをターゲットにして開発されており、そうしたノートPCにはこのCore 2 Extremeは利用できない。また、デスクトップPCのExtremeシリーズと同じように、CPUの倍率はロックされておらず、エンドユーザーがオーバークロックしてみることも可能になっているという。なお、このノートPC向けCore 2 Extremeシリーズは、NVIDIAとの共同マーケティングも計画されており、SLIのサポートにはNVIDIAのIntel向けモバイルチップセットの利用が推奨されているという。 こうした製品が計画される背景には、日本以外の市場ではゲーマー向けノートPCというセグメントができあがりつつあることがある。PCゲームが日本よりもメジャーな米国などでは、ゲーマーがSLIを搭載したノートPCを購入するということが珍しいことでは無くなってきているのだが、これまでそうしたノートは、モバイルAthlon 64やTurion 64を搭載した製品が多かったのだ。そこで、Intelとしては、モバイル向けのCore 2 Extremeを投入していくことで、巻き返したいという意図があると考えられるだろう。もっとも、PCゲーム自体があまり盛んではない日本市場には、あまり関係のない話題ということもできるのだが……。
□関連記事 (2007年1月31日) [Reported by 笠原一輝]
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