大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

Vista発売直前!! マイクロソフト、ジェイミソン本部長直撃インタビュー
「30日午前0時は、私の熱気で暖めてみせる!」




ジェイ・ジェイミソン本部長

 いよいよ29日午後11時30分から、全国の主要店舗で、Windows Vista発売カウントダウンイベントが行なわれる。そして、30日へと日付が変わる午前0時には、一斉にWindows Vistaの販売が開始されることになる。

 発売を間近に控え、マイクロソフトでWindows本部を率いるジェイ・ジェイミソン本部長は、いま、どんな気持ちでいるのか。陣頭指揮を執るジェイミソン本部長に、発売直前の心境を聞くために直撃した。




--発売を直前に控え、準備は万全ですか。

ジェイミソン 準備はいい状況で進んでいます。これまでの期間は、ユーザーの認識を高め、「今度、新しいWindowsが登場するよ」という話題づくりの点では、成果があがっていると思います。PCメーカーは、Vistaを搭載した新たな製品を発表し、周辺機器メーカーもVistaの発売にあわせてすばらしい製品を準備した。また、販売店も1月30日からの発売にあわせて準備が整っている。PC業界全体が、Vista発売に向けて、余念のない準備を進めてきている。

 マイクロソフトが、これからもっとコミュニケーションをしていかくてはならないのは、既存のWindowsユーザーが、いかにスムーズに、新たなOSに移行していただくか、という点でのサポートです。1月30日から、Windows Vista Upgrade Advisorを日本語版でも提供します。これを実行することで、利用しているPCをスキャンして、システムやデバイス、周辺機器、ソフトが、Vistaでもそのまま利用できるかどうかを診断できます。ハードウェアの追加や、新たに買い換える必要がある場合にも推奨事項をレポートの形で提供します。

 マイクロソフトでは、こうしたサービスをはじめ、さまざまな情報を出していきますが、ハードメーカーや周辺機器メーカー、ソフトメーカーからも、さまざまな情報が提供されることになります。

 いま、インターネットが広く普及していますから、従来に比べて、数多くの情報をユーザーの方々に提供できるようになっている。ぜひ、ユーザーの方々も、既存のPCをどうアップグレードしたらいいのかといった情報を、的確に入手していただき、Vistaによる新たなPCの世界を体験していただきたいと思っています。

--ただ、業界内からはもう少し盛り上げて欲しいという声もあがっていましたね。

ジェイミソン そういう声があったことは知っています。ただ、1月15日にプレス発表を行ない、その場で、約250機種もの新製品がPCメーカー各社から発表されてからは、ずいぶん雰囲気が変わってきていると思いますよ。

 27、28日には、東京・表参道の表参道ヒルズでWindows Vista発売直前イベントを行ないましたが、会場には、数多くの方々に来ていただき、Vistaに対する関心が高まっていることを実感することができました。そして、ビジネスパートナーからも、さまざまな商品が登場しています。業界内の盛り上がりは、1月30日の発売に向けて、日を追うごとに高まってきていますよ。

--一方で、Vistaは、すべての機能が強化であり、新たな機能といえるものが何も搭載されていないという声もありますね。つまり、キラーといえるものがないと。かつてのOSでは、インターネットの接続や、ホームネットワーキングの構築といった新たな世界が提供されていたのに対し、Vistaでは、そうしたものがない。

ジェイミソン それは違うと思います。Windows Vistaは、本質的な部分で大きく進化している。普段、私たちが慣れ親しんでいるコンピューティングタスクを、より簡単に、よりやりやすく、使い勝手よく、楽しく使うことができるところにVistaの魅力がある。検索能力も少し強化されただけではないかと言われるかもしれないが、私のPCライフや、日々の業務を行なう上で、この進化の影響は極めて大きい。私は数カ月前からWindows Vistaを使っていますが、仕事での活用においては、少なくとも25%程度の生産性の向上が図れていると実感していますし、Windows XPでは5~20分かかっていただろうと思われる仕事が、わずか数十秒で終わったと感じることが、1日に3、4回はありますから、それだけでも大きな進化を実感できると思います。

 同じことがAeroという新たなインターフェイスの採用でもいえます。Aeroは、見栄えの派手なところばかりに目が行きがちですが(笑)、さまざまなアプリケーションを切り替えて、表計算や写真、eメール、サイトの閲覧などを素早く利用できるようになった。これがXPの時であったらどうか。こんなに多くのアプリケーションを素早く切り替えながら利用することはできなかった。

 Vistaを使い始めると、先進性という点では、Windows XPがかなり劣っているなぁ、ということが実感できますよ(笑)。とにかく、Windows Vistaは、触ってもらうのが一番いい。マイクロソフトとしても、触っていただくことにフォーカスしたプロモーション戦略をとってきました。ソフトウェアは、いくら口で説明するよりも、触っていただくことが一番伝わりやすい。Vistaの場合は、特にそうだと思いますよ。

--Vistaの登場は、リビングルームに、広くPCが入っていくきっかけになりますか。日本では、リビングルームの中心はあくまでもTVになるという感覚がありますが。

ジェイミソン リビングルームで、もっとリッチな経験をしたいというのは多くのユーザーに共通したものだといえます。もちろん、人々は、リビングにあるTVや、DVDレコーダなどはそのまま利用するでしょう。しかし、リビングで、より心地よい体験をしたいという人に対しては、Windows Vistaで提供されるソフトによって、さらに価値のある提案ができると考えています。Vista搭載PCをリビングの中心に置くことで、シームレスで、リッチな環境を提供できるようになります。ソニー、シャープのような家電メーカーとの協力によって、すばらしいPCが市場に投入されている。ユーザーは、それによって、デジタルライフを満喫していただきたい。

 日本のユーザーは、リビングルームPC、あるいはオールインワンPCといった、大きなスクリーンを持ち、キーボードが隠れているような製品に興味を持っています。こうしたPCがあれば、マイクロソフトが提案するリッチな環境は実現可能です。また、そうしたPCがリビングルームになくとも、ソフトウェアによって、デジタルライフスタイルが享受できるようになる。Media Center Extenderの能力とワイヤレスネットワークを使うことで、別の部屋のPCに蓄積されているコンテンツを、リビングルームのTVにストリーミングすることができるといった使い方も可能だからです。

--リビングルームのなかで、マイクロソフトあるいはWindowsのロゴを見る機会が増えると。

ジェイミソン まず最初に目に入るロゴは、PCメーカーや家電メーカーのものになるでしょうね。しかし、VistaのMedia Centerを利用しているユーザーからは、「これはすばらしい」というポジティブなリアクションが数多く出ていますから。これが広がると、ユーザーの間では、Media Centerは、リビングでリッチな体験をするためのキーポータルであるという認識が浸透してくることになるでしょう。結果として、Windowsのロゴを、リビングルームで見る機会が増えるということになるでしょうね。

--1月15日の会見では、これまでマイクロソフトが提示してきた「デジタルライフスタイル」の前に、「プレミアム」という言葉を付け、「プレミアム・デジタルライフスタイル」という言葉を使いましたね。その後のプロモーションでも、「プレミアム・デジタルライフスタイル」を使用しています。ここでいう「プレミアム」とはどういう意味ですか?

ジェイミソン プレミアムには、2つの意味があります。1つは、PCの使い方に関するものです。いまのPCの近い方は、eメールやインターネットが中心です。しかし、これを越えた新しい使い方に関して、「プレミアム」という表現をしています。Vistaによって、日本のユーザーの方々に、より進化したPCの使い方をしていただきたい。デジタル写真やデジタル音楽の楽しみ方、録画したTV番組や映画の視聴の仕方を進化させたい。より多くの方々に一歩進んだ使い方をしていただきたいというのが、「プレミアム」という1つめの意味です。

--もう1つはなんですか。

ジェイミソン もう1つは、文字通り、個人ユーザーの方々には、ぜひ「Vista Home Premium」を利用していただきたい(笑)、というメッセージです。日本のユーザーの方々は、よりきれいなもの、より洗練されたものに対して、高い評価を下す傾向が強い。Vistaでそれを実現するには、やはりHome Premiumが最適なのではないでしょうか。Home PremiumおよびUltimateは、日本の個人向けPC市場において、過半数を越え、マジョリティになると考えていますよ。

--日本のコンシューマPC市場は低迷していたましたが、これを期に回復するでしょうか。

ジェイミソン 私は楽観的な性格でもありますが(笑)、1月30日を境に、日本のコンシューマPC市場が、再度、勢い得るのではないかと予測しています。これまでに沢山のユーザーの方々とお話しをしましたが、多くの方に「1月30日を過ぎたらPCを買います」といっていただいた。とくに、イベントでタッチ&トライを体験していただいたユーザーの方々にそう言っていただいている。こうしたユーザーが、次は口コミで、友人などにVistaの良さを紹介していただいているはずです。また、PCメーカーからも、すばらしいハードウェアがラインアップされてきた。これも市場が加速する大きな要素だといえます。

--日本では、約250機種のVista搭載PCが発表されましたが、ジェイミソン本部長自身が欲しいと思うPCはありますか。

ジェイミソン 難しい質問ですね(笑)。日本のPCメーカー各社には、本当にすばらしいPCをラインアップしていただいたことに感謝しています。例えば、NECの小型軽量のノートPCは、持ち運びも楽ですし、デザインも好きなんですよ。ソニーのVAIO TP1も、きれいなデザインで、新たな利用シーンを提案するものです。東芝がCESで発表したノートPCも、モバイルPCとして先進的な機能を搭載している。富士通のウルトラスリムタイプのノートPCも好きな製品ですよ。

--たくさんありますね(笑)

ジェイミソン 家族みんなで使いたいと思いますよ(笑)。本当に、エキサイティングな製品ばかりです。また、1月30日には、マイクロソフトから新たなサービスも発表されることになります。これも楽しみにしていてください。さらに、1月30日に発売される製品だけでなく、春から夏にかけても、さまざまなイノベーションを実現するPCや周辺機器、ソフトが、日本の市場に向けて登場することになるでしょうね。まさに、プレミアムなデジタルライフスタイルを日本のユーザーに提供でき、日本のPC業界にも勢いがつくことになる。こうした変革を、マイクロソフトは起こしていきたいと考えています。

--ところで1月30日は、どんな1日になりそうですか。

ジェイミソン マイクロソフトにとっても、Windows Vistaを待ち望んでいたユーザーの方々にとっても、大変幸せな1日になるのではないでしょうか。ただ、多くの関係者にとっては、前日の深夜から当日まで、眠くなっても眠れずに仕事をしなくてはならないハードな1日になるでしょうが(笑)。私は、いの一番にVistaの発売に駆けつけてくれた方々とも、ぜひお話しをしたいですし、主要な販売店の方々とも、プレスの方々とも時間をとってお話しをし、幸せな時間を共有したい。

 1月30日のWindows Vistaの発売は、あとから振り返れば、きっと日本のコンシューマPC市場において、大きなマイルストーンであったと言われるようになるでしょうね。

--1月30日は、日本では「大安」と呼ばれる日なんですよ。

ジェイミソン それはいいですね。ぜひ、ユーザー、パートナーの方々と、この日を盛り上げていきたいですね。販売店の方々には、深夜0時の発売にあわせて楽しい企画を考えていただいているようです。私もそれを楽しみにしています。できれば温度があまり下がって欲しくはないなぁ、と思いますが、例え寒くても、私の熱気で暖かくして見せますよ(笑)。とはいえ、やはり気温は低いですから(笑)、みなさん、風邪を引かないような暖かい格好をしてきてください。多くの方に、最初のユーザーになっていただき、この新しい波に、積極的に参加していただきたいと思います。

 私も、コンピューティングの大きな変革に立ち会える仕事に就いていることを誇りに思っています。ここ数週間、忙しい日々を過ごしていますが、疲れたなんてまったく感じませんよ。30日の発売は、私自身、本当に楽しみです。

□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
□関連記事
【1月25日】【大河原】マイクロソフト、XPのサポート期間を2014年まで正式延長
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0125/gyokai193.htm
【1月15日】Windows Vista搭載PCが各メーカーから一斉登場
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0115/ms1.htm
【2006年12月22日】PCユーザー向けイベント「AKIBAX」が5年ぶりに復活
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1222/akibax.htm

バックナンバー

(2007年1月29日)

[Text by 大河原克行]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp ご質問に対して、個別にご回答はいたしません

Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.