マイクロソフトは、Windows XP Home Edition(以下Home)および同Media Center Edition(同MCE)のサポート期間を、2014年4月まで延長することを正式に決定した。 この2つのOSには、2014年まで修正プログラムが提供されることになる。そして、日本のユーザーの声を反映したといわれるこの意志決定には、日本市場について熟知する米マイクロソフトのWindows & Windows Liveエンジニアリング担当シニアバイスプレジテント スティーブン・シノフスキー氏の存在があったことが見逃せないともいわれる。なぜ、Vista発売直前のタイミングでWindows XPのサポート期間の延長を決定したのか。この狙いや背景などについて、マイクロソフト Windows本部のジェイ・ジェイミソン本部長に話を聞いた。
--HomeおよびMCEのサポート期間延長の狙いはなんでしょうか。 ジェイミソン マイクロソフトは、お客様の信頼をしっかりと勝ち得ていくことが最重要課題だと認識しています。そのためには、コンシューマユーザー、企業ユーザー、ビジネスパートナー、政府関係者、ステイクホルダーといった方々の声を、きちっと聞くことが大切です。今回、Homeおよび同MCEのサポート期間の延長について、検討を開始するきっかけになったのは、まさに、ユーザーの声でした。ユーザーが所有するWindows PCを、できる限り長い期間、セキュアな状況を維持すること、しかも、それをリーズナブルな形で提供することが大切であり、そのためには2009年1月までのサポート期間をさらに延長することは、前向きに検討しなくてはならないものであったといえます。マイクロソフトが、ユーザーからの信頼性を構築するためには避けては通れない案件であったといえます。 --サポート期間の延長については、日本のユーザーからの要望が多かったと聞いていますが。 ジェイミソン その通りです。今回の案件は、日本のユーザーからの声を最も反映したものといっていいでしょう。日本のコンシューマユーザーや販売店からは、「PC以外のコンシューマ機器に比べると、Windows XPのサポート期間が短すぎるのではないか」といった声があがっていましたし、現在、使用しているPCを長年に渡って、セキュアな環境で利用したいという要望は、日本が最も強かった。 つまり、このサポート期間の延長に関する検討は、日本のユーザーが牽引したといって良いでしょう。 そして、もう1つ大切なことは、マイクロソフト全体として、日本に対するコミットメントが非常に強力であることを証明したものである、ということです。日本からのフィードバック、インプットが牽引役となって、グローバル戦略にも影響をもたらすことになったのです。 --検討はいつ頃から始まっていたのですか。 ジェイミソン 数カ月前からです。ただし、この件に関しては、世界的な規模で歩調を取る必要がありましたから、調整については困難を要する部分もあったといえます。とはいえ、この意志決定に向かうプロセスは、大変クリアな形で進んできました。社内、社外を含め、あらゆる人たちの意見を集めて検討を繰り返してきた。延長することに対するポジティブな意見もあれば、ネガティブな観点で想定される意見も出てきました。意志決定に際しては、2006年に就任したWindows部門の技術責任者が明確な形でプロセスを示していましたから、スムーズに進んでいたといえます。いずれにしろ、マイクロソフトが前に進むべき選択として、最も良い決定へとつながるプロセスを踏んだことには自信を持っています。この検討は、マイクロソフトが、ユーサーからのフィードバックを真摯に受け止め、それに対して、正しい回答をし、お客様の信頼に応えるという目標を具現化するものといえます。 --Windows XPのサポート期間の延長は、Vistaの売れ行きにネガティブな影響を与えるのではないでしょうか。 ジェイミソン 私はそうは思いません。むしろ、ポジティブに捉えることができます。サポート期間が延長されれば、むしろ、「マイクロソフトは信頼できる企業じゃないか」ということを多くの人が認識してくれるはずです。いつも顧客がセキュアにいられるように、できる限りの措置をとり、ケアをしてくれる企業だと。この検討の結果については、マイクロソフト、そしてWindowsに対する信頼性を大きく上昇させることにつながると思っています。 一方、Windows Vistaには、数多くの新たな機能が搭載されている。この先進の機能に対して興味を持っていただいているユーザーは大変多い。Vistaは、新世代のプレミアムエクスペリエンスを提供するものであり、それを求めるユーザーには、ぜひいち早くVistaを購入していただきたい。その際に、Windows XPのサポート期間の延長ということによって、Vistaも安心して長期間に渡って利用できると判断してくれることになるでしょう。発売直前のWindows Vistaにとって、決してネガティブな要素ではないと思います。
□マイクロソフトのホームページ (2007年1月25日) [Text by 大河原克行]
【PC Watchホームページ】
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