富士通のFMV DESKPOWER TXは液晶一体型のPCとして人気を博しているが、その中でも2006年の夏モデルから追加されたのが、一体型PCとしては最大級の37型液晶を採用した、「TX95」シリーズだ。 中でも最上位モデルの「TX95S/D」は、記録型BD(Blu-ray Disc)ドライブを採用しており、HDDに録画した地上デジタルTV番組をHD解像度のままムーブも可能だ。 秋モデルでも引き続き継続販売されたTX95S/Dを試用する機会を得たので、レビュー記事をお届けしていきたい。 ●もはや1人で持ち上げることは不可能な37型液晶を統合 「FMV DESKPOWER TX」シリーズは、同社デスクトップPCの中でも大きめの液晶ディスプレイを搭載したモデルとなっている。その中でもTX95S/D(以下本製品)は37型という、PCとしては最大級の液晶ディスプレイを搭載しており、かつ記録型BDドライブを内蔵している。 本製品が筆者宅に届いて、もっともびっくりしたことは、その重さだ。一般的に32型液晶TVぐらいまでならなんとか1人で持ち上げられるが、本製品はとてもではないが1人では持ち上げられなかった。カタログスペック上の重量は52.5kgとなっており、購入する場合は、設置まで手配可能な量販店などで購入した方がいいだろう。 本製品に採用されている37型液晶は、解像度が1,920×1,080ドットの、いわゆる“フルHD液晶”(1080iがドットバイドットで表示可能という液晶を慣例的にこう呼ぶ)だ。画面比は16:9で、デジタル放送や映画などコンテンツを再生する環境としてちょうどよい比率になっている。 画素ピッチは0.427mmと、一般的な17型液晶(1,280×1,024ドット)の0.264mmに対し1.6倍程度になっており、文字は大きめで非常に見やすい。もちろん、逆に言えば近くで見るには大きすぎるともいうことができるので、1~2m程度は離れてみるというのに適しているといえるだろう。 この37型のパネルはもともと液晶TV用として設計されていることもあり、輝度は明るめで、逆にPCとして利用するには明るすぎるぐらいだ。このため、輝度はリモコンで簡単に変えられるようになっている。OSDメニューを呼び出してPCモードに設定すると輝度をやや下げた状態に簡単に変更できる。
●リモコンを利用して簡単にTVとPCの間を行き来できる 本製品は、PCとしてはいわゆる「液晶一体型」と呼ばれる製品カテゴリになるが、実態はどちらかと言えば液晶TVにPCの機能が付属しているという表現の方が正しい。なぜかと言えば、本製品は5つの表示モードが用意されており、入力切替を押すたびに(1)TV(2)ビデオ1(3)ビデオ2(4)コンポーネント(5)HDMIの順で切り替わっていくからだ。これらだけを利用しているのであれば、ほとんど液晶TVと同じ使い勝手だと言っていいだろう。 TVモードとPCモードの切替はリモコンを利用して行なう。具体的には、それぞれの電源ボタンを利用する。PCが起動している状態でTVの電源ボタンを押すとTVに切り替わり、逆にTVが起動している状態でPCの電源ボタンを押すとPCに切り替わる。 ややわかりにくいのは、PCが起動している状態でTVモードに切り替えたとしてもPCの部分は動作したままになっているのだが、その場合でもPCに戻る時はPCの電源ボタンを押す必要がある。電源ボタンを押すとなると、PCの部分の電源が落ちてしまうような印象があるので、PCの電源ボタンを押すのをややためらってしまった。PCとTVを切り替えるボタンは独立しているとさらによかったのではないだろうか。 なお、これらの入力の切替は本製品付属のPC用リモコンでも操作可能だが、TV機能だけを操作できるシンプルなリモコンでも操作できる。例えば、家族の中にPCを使いこなせない子供などがいる場合でも、シンプルなリモコンさえ操作すればとりあえずTVとして利用することができることは特筆しておきたい。
●記録型BDドライブを採用し、データの書き込みやBDビデオの再生が可能に 本製品のもう1つの特徴は、PCとしては初めて記録型BDドライブを内蔵した製品として発表されたということだ(実際の発売は8月になってしまったので、市場に初めて登場したという称号はソニーの「VAIO type R」にさらわれてしまったのだが……)。 本製品に内蔵されている記録型BDドライブはパナソニック(松下電器産業)の「SW-5582」で、スペックは以下のようになっている。 【お詫びと訂正】初出時、SW-5582のメーカー名をパナソニック(松下電器工業)と表記しておりましたが、正しくはパナソニック(松下電器産業)です。お詫びして訂正させていただきます。
【表】SW-5582のスペック
【お詫びと訂正】初出時、SW-5582のスペックでDVD+RWの書き込み速度を最大8x(2層は4x)としていましたが、2層はありません。また、CD-RWの書き込み速度を最大16xとしていましたが、最大10xです。お詫びして訂正させていただきます。 現在市場に出回っているBDドライブ搭載製品(ドライブ単体も含む)は、いずれもこのSW-5582がベースになっており、本製品でも大きな違いはない。 市販のBDディスクの再生用にはInterVideoの「WinDVD BD」が採用されている。ただ、1つ気になったのは、なぜかリモコンを利用してWinDVD BDの操作ができなかった。DVD再生は可能なだけに、やや残念だ。ソフトウェアのアップデートなどで対応可能だと思うので、今後対応して欲しい。BD-R/REに対するデータ形式での書き込みはRoxioの「DigitalMedia SE」を利用して行なわれ、2層のディスクを利用すると、最大で50GB近いデータディスクを作成することが可能になっている。 ただし、残念ながらBD-AV形式でBD-R/REなどにビデオを書き込み可能なソフトウェアはバンドルされていない。従って、HDVカムなどを利用して撮影したHD映像をBD-R/REにビデオ形式で記録しようと思っている場合には別途ソフトウェアを用意する必要があるので注意したい。
●デジタルTVチューナで録画したコンテンツをBDへムーブ可能 本製品は、地上/BS/110度CSデジタルTVチューナ(ピクセラ PIX-DT011)と、地上アナログTVチューナ(ピクセラ PIX-MPTV/P6W)が搭載されている。このため、地上波放送を受信する場合、最大で2番組まで同時に録画できる。 液晶TV側にも、デジタルおよびアナログTVチューナが各1基ずつ用意されている。例えばPC側でデジタル放送、アナログ放送をそれぞれ録画していたとしても、液晶TV側でデジタル、アナログ放送のどちらも視聴することができる。 このように、本製品では、低価格な製品にありがちな、TV側とPC側がTVチューナを共有するため、録画している時にはインスタントTVの機能が使えないという制限がないのはうれしいところだ。 気になるTVの画質だが、筆者宅にあった720pパネルの液晶TV、シャープ「AQUOS(LC-32GD1)」と比較すると、ややシャープネスが甘いことが気になったが、それでもデジタル放送のTVとしては十分合格点を与えられる表示品質と言えるだろう。シャープネスの問題も、OSDで調節可能なので、気になるユーザーは自分で調節してみるといいだろう。 液晶TV側でデジタル放送を利用している場合には、デジタル放送のEPG機能が利用可能で、そこから録画予約をすることも可能になっている。もっとも、実際には液晶TV側で予約録画を行なった場合、録画予約のデータはPC側に転送され、実際の録画はPC側で行なわれることになる。 HDDに録画したデジタル放送は、内蔵されている記録型BDドライブを利用してBD-R/REディスクにムーブできる。録画された番組リストの中から、ムーブしたい番組を選びムーブボタンを押すだけで簡単にできる。書き込み時間は、番組のビットレートによるが、ハイビジョンの番組をムーブしてみると、1時間の番組を約30分程度でムーブすることができた。なお、CPRMに対応したDVD-RAMにも、SD解像度に変換した上でムーブ可能になっている。 本製品は、DLNAクライアント/サーバーの機能として、「MyMedia」と呼ばれるソフトウェアがプリインストールされており、他のDLNAクライアントに対して本製品のコンテンツを公開したり、逆に他のDLNAサーバーに対してリモコンを利用してアクセスすることができる。 なお、PCが起動していなくてもこうした機能を利用できる「インスタントMyMedia」が用意されており、PCが起動していない状態からわずか4~5秒程度で起動する。このインスタントMyMediaの機能は、Windows Embededの機能を利用して実現されているのだが、これはOSの終了時にインスタントMyMediaの高速起動にむけた準備を行なうことで実現している。 他社の製品で同じようにWindows Embededを利用したインスタント機能を搭載しているものもあるが、中には起動に1~2分かかるものがあることを考えると、この点は特筆に値するだろう。
●D端子やHDMI端子が標準で用意されており、TVとしても十分活用可能 すでに述べたように、本製品はPCと液晶TVが1つになった製品であるため、単なる液晶TVには搭載されていないようなポートも多数用意されている。 前面にはSDカード/メモリースティック対応スロット、USB 2.0×2、IEEE 1394、ヘッドフォン、マイク、ビデオ入力。さらにはボリューム、チャンネル、入力切換、放送切換、マウス/キーボード認識ボタンなどが用意されている。ユニークなのは、TVと同じようにリモコンがどこかにいってしまっても、本体側でTV機能を操作できるボタンが用意されているので、TVと同じような使い勝手を実現していると言っていいだろう。 右側面はUSBとPCカードスロットが用意されている。このPCカードスロットには、付属のIEEE 802.11b/g無線LANカードを挿して利用することができる。 左側面はアンテナ入力(地上/BS/110度CSデジタル、地上アナログ)、B-CASカードスロット、ビデオ入力、D端子、HDMI端子、Ethernetデジタル放送用)などが用意されている。さらに左側面の奥には、USB 2.0×2、Ethernet、光デジタル出力、オーディオ出力、モデムといった端子が用意されている。 うれしいのは、D端子に加えて、HDMI端子が用意されていることだろう。例えば、HD DVDのプレーヤーを別途接続したい場合、HDMI端子があれば簡単に本製品に接続できる。また、一体型PCではよく指摘されることとして、TVとPCの製品寿命のサイクルが異なるので、PCの部分が使えなくなるとTVとしても使えなくなるという指摘がある。だが本製品のようにD端子やHDMI端子が用意してあれば、外部機器を接続して本製品を液晶TVとしても活用することが可能であり、仮にPCの部分が時代遅れになったとしても、TVとしては十分そのまま使い続けることができるだろう。 ●Windows Vista Home Premium以上も十分利用可能なスペック もちろんPCとしても十分活用可能なスペックとなっている。CPUはPentium D 820(2.8GHz)とデュアルコアが採用されており、GPUはATIのMobility Radeon X1600(256MB)、チップセットはRadeon Xpress 200(サウスブリッジはIXP450)、メインメモリは1GB、HDDは600GB(300GB×2)という構成になっている。こうした高いスペックを持っていることで、2007年1月にリリースが予定されているWindows Vistaでも十分余裕で利用できるだろう。 特に、DirectX 9に対応したGPUと、256MBのビデオメモリ、1GBのメインメモリというスペックを満たしているので、Windows Vistaの3Dを利用したユーザーインターフェイス、「Windows Aero(Aero Glass)」も余裕で対応するだろう。 キーボード、マウスは2.4GHz接続のワイヤレス式で、最大10m離れたところからでも利用できる。本製品のようにドットピッチが大きめの液晶は、数m離れたところから使うことが前提になるので、PC本体から離れていてもキーボードやマウスが利用できるのはうれしいところだ。
●37型液晶TV+BD対応ハイビジョンレコーダ+PCと考えれば決して高くない 以上のように、本製品は37型のフルHD液晶という、超弩級の液晶を統合した“液晶一体型PC”ということになるのだが、TV機能専用のアナログ/デジタルチューナ、D端子やHDMI端子の搭載、TV機能だけのリモコンなどの存在により、十分単体の液晶TVとしても利用可能だ。 そこにさらに、デジタル/アナログ放送の録画機能、BD/DVD-RAMへのムーブ機能、DLNAホームサーバー、DLNAクライアントなどの機能を有しているだけでなく、通常のWindows PCとして利用可能になっている。 37型の液晶TVが30万円台後半、先日発表された松下のBD対応レコーダ「DIGA」が20万円台半ば、DLNA対応DMAが2万円、DLNA対応ホームサーバーが2万円……などと計算していくと、本製品の店頭予想価格である60万円弱に十分届いてしまう。そこに、さらにPCの機能が入っているのだから、内容を考えれば十分お買い得と言っていいのではないだろうか。 誰にでも買える価格ではないのも事実だが、もしリビングにPCをおいて、HDDレコーダやBDレコーダとしてだけでなく、PCとしての機能も活用していきたいと考えているのであれば、本製品は価格以上の価値がある製品と言っていいのではないだろうか。 □富士通のホームページ (2006年9月22日) [Reported by 笠原一輝]
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