富士通は、同社のノートPC FMV-BIBLOシリーズの2006年秋冬モデルとして、新シリーズとなる「FMV-BIBLO NF」シリーズを追加した。これまでのBIBLOのイメージから大きくかけ離れる、白(ヴィーナス・ホワイト)をメインカラーとしたすっきりとしたデザインを採用したり、ホームユースをメインターゲットとするエントリークラスのノートPCながら15.4型ワイド液晶を搭載するなど、FMV-BIBLO 2006年秋冬モデルの中でも特に目立つ存在の製品である。 今回は、そのNFシリーズの中から、上位モデルとなる「NF60T」を試用した。 ●15.4型ワイド液晶搭載で上位クラスに見劣りしない表示能力を実現 このところ、ノートPCでも機能面の底上げが一気に進んでおり、エントリークラスの製品といえども、パフォーマンス面での不満はあまり感じなくなっている。そういった中で上位モデルに見劣る部分があるとすれば、それは液晶ディスプレイではないだろうか。 一般的なエントリークラスのノートPCでは、15型ほどでアスペクト比が4:3の液晶を搭載する製品が大半を占める。それに対し上位クラスの製品では、横長のワイド液晶を搭載する製品が大半を占めている。映像コンテンツ、それも動画コンテンツは、アスペクト比4:3の画面より、ワイド画面で表示させた方がはるかに迫力がある。また、上位クラスの製品での採用が多いこともあってか、アスペクト比4:3の液晶を搭載するエントリークラスのノートPCは、どうしても見た目の印象が劣っているように感じてしまう。 そういったこともあってか、2006年に入ってワイド液晶を搭載するエントリークラスの製品が登場してきており、今回登場したNFシリーズでもエントリークラスながらワイド液晶を採用している。表示解像度は1,280×800ドット(WXGA)で、サイズは15.4型ワイド。パネルには、高輝度かつ鮮やかな発色で定評のあるスーパーファイン液晶が採用されている。実際に静止画や動画を表示させてみても、発色や明るさは申し分なく、十分に満足できる。加えて、表面が光沢のあるグレアタイプの液晶ではあるものの、反射が抑えられており、映り込みがほとんど気にならない点もポイントが高い。 上位クラスのBIBLOでは、スーパーファインDX II液晶が採用されており、それと比較した場合には輝度や発色の面でやや劣る部分もあるだろう。とはいえ、一般的なノングレアタイプの液晶ディスプレイと比較すると、明るさや発色は明らかに1レベル上の品質だ。横長のワイド液晶となっている部分とも合わせ、これなら液晶ディスプレイの見劣りもほとんど感じないと言っていいだろう。
●デュアルコアCPUを採用するなど基本スペックも充実 液晶ディスプレイだけでなく、基本スペックもエントリークラスとしては十分充実している。 CPUは、AMDのデュアルコアCPUであるTurion 64 X2 TL-50(1.60GHz)を採用。AMD製のデュアルコアCPUとしては最もローエンドに位置するモデルで、より高クロックで動作するシングルコアCPU搭載ノートと比較すると、単純なパフォーマンスでは劣っている。とはいえ、体感的なパフォーマンスは明らかに優れている。特に、複数のアプリケーションを同時に実行した場合でも、もたつかずに作業を行なえる点は大きな利点となっている。 チップセットにはATI Radeon Xpress 1150が採用されており、グラフィック機能はチップセット内蔵機能が利用されている。Radeon Xpress 1150にはRadeon X300 SE相当のGPUコアが統合されており、比較的高い3D描画能力が発揮される。よほど高い3D描画能力を必要とするものでない限り、3D描画のゲームなども十分楽しめるはずだ。もちろん、Windows Vista Capableロゴも取得しており、次世代OSへの対応も問題ない。 メインメモリは、PC2-5300 DDR2 SDRAMを標準で512MB搭載し、最大4GBまで増設可能。本体底面にSO-DIMMスロットが2基用意されており、同一容量のSO-DIMMモジュールを2枚取り付けることによって、メインメモリはデュアルチャネル動作となる。チップセット内蔵のグラフィック機能はメインメモリの一部をビデオメモリとして利用するため、最大限の描画能力を発揮させるには、メインメモリをデュアルチャネル動作させる必要がある。 ただ、今回試用したマシンでは512MBのSO-DIMMが1枚のみ搭載されていたために、メインメモリがシングルチャネル動作となっており、最大限の描画能力が発揮できる環境とはなっていなかった。加えて、メインメモリとして利用できる容量も少なくなるため、マシン起動時などに若干のもたつきを感じた。最大限のパフォーマンスを引き出し、OSやアプリケーションの動作をより快適にしたいのであれば、購入時にメインメモリを1GBに増設することをおすすめする。 内蔵HDDは容量が100GB。もう少し大容量のドライブを搭載してもらいたい気もするが、基本的には必要十分だ。ちなみに、搭載されているドライブはIDE仕様の2.5インチドライブで、ネジを3本外すだけで簡単に取り出せ交換できるため、メーカー保証外とはなるが大容量ドライブへの交換も視野に入れられる。光学ドライブは、±R DL対応DVDスーパーマルチドライブを標準搭載している。 ●インターフェイスも充実 NF60Tでは、エントリークラスとは思えないほどインターフェイス類が充実している点も特徴の1つだ。 本体右側面には、Type2 PCカードスロット、SDカード/メモリースティック/xD-Picture Cardに対応するダイレクト・メモリースロット、USB 2.0×1、IEEE 1394に加え、ExpressCard/54スロットも用意されている。ちなみに、写真を見ると2スロットタイプのPCカードスロットが用意されているように見えるが、実際には上段がExpressCard/54スロット、下段がPCカードスロットとなっている。また、内部に仕切りがあるため、ExpressCardを利用していない場合でもType3 PCカードは利用できない。 本体後部には、USB 2.0×2、Gigabit Ethernet、Sビデオ出力とミニD-Sub15ピンの2系統の映像出力端子、モデム端子が用意されている。USB 2.0コネクタは、右側面と合わせて3個と、今時のノートPCとしてはやや少ないが、PCカードスロットやメモリカードスロットだけでなく、ExpressCard/54スロットもあることを考えると、拡張性は申し分ない。
●キーボードは水に強い構造を採用 キーボードは、キーピッチ約19mm、ストローク約3mmのフルサイズキーボードを搭載。主要キーには変則的な配列やピッチが異なる部分もなく扱いやすい。タッチはやや軽めで適度なクリック感があり、筆者の好みだった。また、キーボードの底面部分周囲に0.5mmほどの高さの壁が用意された「バスタブ構造」となっており、万が一キーボードに水などをこぼした場合でも、本体内部に水が浸透しづらいように工夫されている。本格的な防水機構というわけではないものの、安心感を与えてくれる仕組みであることは間違いない。ただ、キーボード自体の強度はあまりないようで、打鍵時にキーボードがしなる点はやや気になった。 ポインティングデバイスは、パッド式のスクロールポイントを搭載。使い勝手は、一般的なパッド式ポインティングデバイスと同じで、扱いづらいと感じることはほとんどない。また、クリックボタンの中央にはスライド式の指紋認証用センサーが配置されている。Windowsログオン時などに活用するのはもちろんのこと、スクロール機能にも活用できる。そして、3ボタン/スクロール機能付きの光学式マウス(USB接続)も標準添付されているので、パッド式ポインティングデバイスでの操作に慣れていない人でも安心だ。 キーボード上部には、ブラウザやメーラーを呼び出せるワンタッチボタンを配置。もちろん、呼び出せるアプリケーションはユーザー側で自由に変更が可能だ。また本体前面には、内蔵無線LAN機能をON/OFFするスイッチも用意されている。ちなみに、無線LAN機能はIEEE 802.11a/b/g対応で、標準搭載となっている。
●パフォーマンス重視ならメインメモリをデュアルチャネル動作に いつものように、パフォーマンスを検証するためにいくつかのベンチマークテストを行なった。利用したソフトは、Futuremarkの「PCMark05」と「3DMark05」、「3DMark06」、スクウェア・エニックスが配布している「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」だ(3DMark03は測定中にエラーが発生して実行不能だった)。測定は、電源オプションプロパティの電源設定を「常にオン」に設定して行なっている。 結果を見ると、さすがにAMD製デュアルコアCPUのローエンドモデルということもあってか、ややスコアが伸び悩んでいる。また、メインメモリがシングルチャネル動作だったために、メモリやグラフィックの結果もやや低調だ。もちろん、メインメモリがデュアルチャネル動作となっていれば、グラフィックの結果は向上するはずなので、これがこのマシンが持つ本来のポテンシャルではない。パフォーマンスを重視するなら、購入時に512MBのSO-DIMMを増設して、メインメモリをデュアルチャネル動作にしておくべきだろう。とはいえ、標準状態でもプリインストールされているアプリケーションやマルチメディア関連機能を活用するには十分なパフォーマンスが発揮されており、不満を感じることはほとんどない。
【表】ベンチマーク結果
NF60Tは、実売価格10万円台の、エントリークラスの製品であるが、15.4型ワイド液晶やデュアルコアCPUを搭載し、高い拡張性を実現酢など、エントリークラスを超える実力を持つ製品だ。キーボードがやや華奢な点や、空冷ファンの騒音がややうるさい点は気になったが、機能面が非常に良くまとまった魅力的なマシンだと感じる。もちろん、上位クラスの製品と比較すると見劣りする部分があるのも事実で、特に他のFMV-BIBLOシリーズに用意されているTV機能が搭載されていない点は若干残念だ。とはいえ、価格を考えると十分に満足度の高いマシンだと言える。コストパフォーマンスを重視し、安価ながら比較的高い性能を持つマシンを探している人におすすめしたい。 □富士通のホームページ (2006年9月20日) [Reported by 平澤寿康]
【PC Watchホームページ】
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