笠原一輝のユビキタス情報局

Intel、CPUブランド戦略を修正
~Pentiumブランドは存続へ



 Intelは、年頭に同社のプレミアムCPUのブランド名として“Intel Core”を新たに導入し、モバイル向けにCore Duo/Soloを1月に、デスクトップ/モバイルPC向けにCore 2 Duoを7月に発表した。Intelは当初、PentiumをIntel Coreに完全に置き換える戦略だったが、ここにきて若干の軌道修正を始めている。

 Intelに近い情報筋によれば、IntelはOEMメーカーに対して公表した新しいロードマップの中で、Pentiumブランドを今後も継続し、CoreブランドとCeleronブランドの中間の位置付けとしていくという。

●CoreマイクロアーキテクチャベースのPentiumがロードマップに登場

 2005年の記事でもお伝えしたように、Intelはこれまで10年以上にわたり利用してきたCPUのプレミアムブランドであるPentiumに替えて、“Intel Core”のブランドを導入し、Core Duo、Core 2 Duoとして新しい製品に利用してきた。現在もPentiumのブランド名は、デュアルコアのPentium DやシングルコアのPentium 4などのブランド名が残っているが、現行のPreslerコアのPentium DやCederMillコアのPentium 4などの製品がフェードアウトするとともに消えていくと考えられていた。

Intel Coreブランドを展開し、Pentiumブランドは終息すると思われたが……

 しかし、ブランド戦略の変更により、今後も新しい製品に対してPentiumの名前を冠した製品が登場することになる。つまり、Coreマイクロアーキテクチャの製品でPentiumブランドのCPUが登場してくる、ということだ。

 現在Intelは、Core 2 Duo、Pentium D、Pentium 4、Celeronという4つの価格セグメントの製品を市場に投入しているが、Pentium Dが占めている価格帯にTDPが65Wのマイクロアーキテクチャ、すなわちConroeベースのコアを投入しPentium Dブランドで、さらにPentium 4が占めている価格帯に、もともとCeleronとして投入する予定だったConroe-L(シングルコア、L2キャッシュ1MB版)を当て、これをPentiumブランドで、プロセッサナンバーをE1000シリーズとして展開していくという。これらの製品は2007年の第2四半期に投入されることになる。

 つまり、下図のように、現在NetBurstマイクロアーキテクチャで展開されているブランドが、2007年の第2四半期にそのままCoreマイクロアーキテクチャに移行し、同じ価格帯の製品として展開されていくことになる。

【図】Intelのブランド戦略

●“Pentium”ブランド存続の最大の理由は米国や成長市場での認知度

 Intelがこうした戦略をとる背景としては、地域によって“Intel Core”の浸透率が異なることがある。日本は、いち早くCore Duoがモバイルで受け入れられたこともあり、Core DuoやCore 2 Duoの浸透率は他の地域に比べて高い状況だ。しかし、Intelのお膝元である米国や、中国、インドなどの成長市場では今でも“Pentium”の浸透度は圧倒的にIntel Coreのそれを上回っており、その地域を担当するIntelのローカルオフィスでは今後もそれは変わりそうにないと考えているという。

 特に中国、インドなどの成長市場では価格に対する要求が強く、かつブランド力は求められているという状況にあるだけに、そうした市場に対してPentiumというブランドをデュアルコアに比べて安価なシングルコアプロセッサに利用することで需要に合致させたいという思惑もあるようだ。

●今後“Pentium”ブランドで“Celeron”ブランドを置き換えることも検討へ

 ただ、これまでIntelはIntel Coreブランドの確立に大きなキャンペーンを行ってきており、そこにかなりの予算を割いてきた。このため、日本のようにIntel Coreブランドへの移行がそこそこうまくいっている市場からは逆に不満の声もでてきているという。

 そもそも、プロセッサのブランドが3つあるということ自体に対する不満の声も出てくるだろう。

 実際、店頭でIntel Core、Pentium、Celeronと3つのブランドが並んでしまえば、消費者はどれが一番良いのか理解するのも大変だし、流通市場では大きな混乱が起きることは目に見えている。となれば、ブランド名の整理が近い将来に必要になることは容易に予想可能だ。

 情報筋によれば、Intelの社内では今後CeleronブランドをPentiumブランドに置き換えることも検討し始めているという。要するに、成長市場にPentiumブランドが必要なら、思い切ってそれをCeleronブランドの替わりにしてしまおうというものだ。それであれば、安価でPentiumブランドが必要な成長市場の要求を満たし、かつ3つのブランドが併存していくという混乱も回避することができるからだ。

 ただし、このプランにはいくつかの危険性がある。1つにはIntelが思ったよりCoreブランドが普及しなかった場合、安価なバリューPCの方がプレミアムだとエンドユーザーに対して間違った印象を与えかねない。また、日本のようにCeleronが8割というマーケットで、CeleronブランドをPentiumブランドに置き換えた場合、やはりエンドユーザーに対して、Coreブランドの位置付けに対する誤解を与えかねない。

 そうした心配もあるため、今のところIntel社内でもこのプランに関する最終決定は出ていないようだ。現在OEMメーカーなどの関係先に対して提案をしており、そうしたフィードバックなどを元に今後最終決定していくことになるという。

●Kentsfieldにも新しいブランド名の導入を検討へ

 最後にやや蛇足になるが、Intelの2006年後半の最大の目玉である“Kentsfield”(ケンツフィールド)に関する最新情報をお伝えしておこう。

 以前レポートしたとおり、Kentsfieldはもともとの計画であった2007年の第1四半期から、2006年の第4四半期に前倒しになっており、現在の通り計画が進めば11月には発表される予定であるという。現在の計画では、動作クロックは2.66GHzで、Core 2 DuoのトップグレードであるE6700と同クロックになるという。つまり、Core 2 Duo E6700×2=Kentsfieldということになる。なお、プロセッサナンバーはQX6700となる。

 ただし、消費電力に関しては、Core 2 Duoに比べてかなり高くなりそうだ。OEMメーカー筋の情報によれば、KentsfieldのTDPは130W前後になるとIntelから伝えられているとのことで、ちょうどCore 2 Duoシリーズの65Wの倍になる。もともと、Kentsfieldは、Core 2 Duoのダイを2つCPUプレート上に実装した製品であるので、130Wという消費電力は驚くべきものではないが、実際にユーザーがPCを自作する場合にはかなり余裕を持った熱設計をしておく必要があるだろう。

3月のIDFで公開された資料から。Kentsfield(右)は2×2の4コア構成

 なお、IntelはKentsfieldをハイエンドゲーマー向けだけでなく、メインストリーム市場にも持ってくる計画があるという。それがQ6600のプロセッサナンバがつけられた製品で、Core 2 Extremeベースのプロセッサに比べて1四半期遅れた2007年の第1四半期に投入されるという。価格は現時点では明らかにはなっていないが、メインストリーム向け製品ということで、現行のトップグレードであるE6700(530ドル)より若干高い価格に設定される可能性があり、コストパフォーマンス重視のユーザーは要注目だろう。

 このQ6600に関してはブランド名がCore 2 Duoから変更される可能性があると、IntelはOEMベンダに説明しているという。どうしても現行のCore 2 Duoはデュアルコアのブランド名であるという印象が強くなっており、聞いてクアッドコアだとわかるようなブランド名を導入したいという意向があるようだ。ただ、こちらも現時点では決定でなく、現在OEMベンダなどのフォードバックなどを聞いている段階であるという。ちょうど来週Intel Developer Forumが開催されるので、そこで何らかの発表があるかもしれない。もっとも、そのままの名前でいく可能性もあり、このあたりは流動的な情勢だ。

AMDの4x4プラットフォーム構想

 2006年の年末に向けては、AMDも「4x4」と呼ばれるプラットフォームを投入する。AMDの4x4はマザーボード上に2つのCPUソケットを搭載し、そこに2つのCPUを挿入することでトータルでクアッドコアを実現するというソリューションだ。要するにOpteronのデュアルソケットマザーボードをAthlon 64 FXにも拡張することで、IntelのKentsfieldに対抗しようというものだ。こちらも実現すれば、高いパフォーマンスを発揮しそうで、年末に向けて自作PC市場では“クアッドコア対決”で盛り上がることになりそうだ。


□関連記事
【6月9日】【笠原】主力チップセットIntel 965の詳細
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0609/ubiq160.htm
【3月7日】【IDF】次世代CPU「Conroe」の内部構成が明らかに
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0307/idf01.htm
【2005年11月21日】【笠原】Intel、新デュアルコアのブランドネームを“INTEL CORE”と命名へ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0524/ubiq156.htm

バックナンバー

(2006年9月21日)

[Reported by 笠原一輝]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp ご質問に対して、個別にご回答はいたしません

Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.