エプソンダイレクトのA4ノート新モデル「Endeavor NJ5000Pro」は、15.4型ワイド液晶を搭載する、同社の最新フラッグシップモデルだ。Core 2 DuoやOpenGL対応GPUを搭載することで、プロユースにも余裕で対応できる非常に高いパフォーマンスを実現できる。 ●フラッグシップという名に恥じない仕様を実現
エプソンダイレクトのノートPCシリーズの新たなフラッグシップモデルとして追加された、「Endeavor NJ5000Pro」(以下NJ5000Pro)。15.4型ワイド液晶を搭載しており、そのサイズはノートPCとしてもかなりおおきな部類だ。重量も約2.93kg(最小構成時)となっており、ターゲットとなっているのはモバイル用途ではなく、デスクトップリプレースのデスクノートとなる。 とはいえその仕様は、フラッグシップという名にふさわしく、デスクトップに全く劣る部分が感じられないほど非常に優れたものとなっている。 まずCPUは、Intelのノート向け最新CPUであるCore 2 Duoを採用する。エプソンダイレクトの製品であることから、当然CPUなどの基本パーツは自由にカスタマイズ可能となっており、CPUとしては、L2キャッシュを4MB搭載するCore 2 Duo T7xxxシリーズ3モデルと、Core 2 Duo T5500の中から選択可能となっている。 そして、NJ5000Proの最大の特徴と言っていい部分が、搭載されるGPUだ。搭載チップセットは、Intel 945PM Expressのためグラフィック機能が統合されておらず、NJ5000Proでは標準で外部GPUが搭載されることになるが、標準でATI Mobility Radeon X1600が採用される。しかも、ビデオメモリは液晶ディスプレイの解像度に合わせ、512MBまたは256MBが搭載されることとなる。これなら、最新3Dゲームはもちろん、Windows Vistaの新UIであるWindows Aeroも余裕で対応できるだろう。 さらに、液晶ディスプレイに高解像度タイプを選択した場合には、Mobility Radeon X1600に加え、ATI Mobility FireGL V5200も選択可能となる。Mobility FireGL V5200のベースはMobility Radeon X1600と同等であるが、主要な3D CADソフトや3D CGソフトなどの動作がサポートされたグラフィックスワークステーション向けGPUとして位置付けられている。 実際にNJ5000Proでは、Autodeskの3D CGソフト「Maya 7.01」やCADソフト「AutoCAD 2007」、SolidWorksのCADソフト「SolidWorks 2007」などの動作が確認され、そのほかOpenGLベースのグラフィックスソフトにも広く対応する。もちろん、Mobility FireGL V5200搭載時もビデオメモリは512MB搭載されることになる。これなら、プロのグラフィックス用途にも問題なく対応できるはずだ。こういった仕様を考えると、NJ5000Proは単なるハイエンドノートではなく、モバイルワークステーションと呼んだ方がいいかもしれない。
●表示解像度WUXGA対応の液晶ディスプレイを搭載可能 搭載される液晶ディスプレイも特徴の1つ。サイズは15.4型と、ノートPCとしては大きめのクラスに位置している。そして、表示解像度としてWSXGA+(1,680×1,050ドット)表示に対応したパネルに加え、WUXGA(1,920×1,200ドット)表示に対応したパネルの2種類から選択可能となっている。 今回試用したマシンには、WUXGA表示に対応した液晶パネルが搭載されていたが、これだけの解像度があれば、作業領域は液晶サイズ以上に広大に感じる。実際にPC Watchのサイトを表示させてみたが、画面領域の半分も必要とせずに表示が可能だった。これなら、3DCGソフトやCADソフトはもちろん、ExcelやWordなどを同時に表示させた場合でも快適に利用できるだろう。 また、WUXGA表示のパネルであれば、フルHD解像度の映像も情報を損なうことなく表示できる。フルHDクオリティの映像素材を楽しむのはもちろん、編集作業も快適に行なえる。 ちなみに、液晶ディスプレイは表面がノングレア処理されており、グレア処理の液晶ディスプレイと比較すると、表示画像の鮮やかさという点でやや劣るように感じる。とはいえ、発色や視認性は十分満足できるレベルであり、問題になる部分はほとんどない。また、輝度も十分高く、グラフィックスソフトも全く問題なく利用可能と言える。 ただし、15.4型とはいえ、WUXGAという高い表示解像度となると、画面に表示されるアイコンや文字はかなり小さくなってしまう。一般的な液晶ディスプレイでは、WUXGA対応というと20型を超えるサイズが中心であり、そういった液晶ディスプレイと比較すると、どうしても見やすさという点では劣ってしまう。そのため、見やすさを優先したいのであれば、やや解像度の低いWSXGA+対応のパネルを選択、表示領域を優先させたいのであればWUXGA対応のパネルを選択すればいい。 ところで、NJ5000Proには、アナログRGB端子に加え標準でDVI-D端子も用意されている。これにより、搭載する液晶ディスプレイと外部ディスプレイを組み合わせたデュアルディスプレイ環境を実現する場合でも、DVI-D端子を持つ液晶ディスプレイを利用して高品質な映像出力が可能となる。また、外部ディスプレイを2つ用意してデュアル表示環境を実現することも可能だ。トリプルディスプレイには対応しないものの、搭載するGPUや液晶ディスプレイと合わせ、NJ5000Proの表示機能はデスクトップPCに相当すると考えていいだろう。 ●基本スペックやインターフェイスは必要十分 CPUやGPU以外の基本スペックも、フラッグシップマシンらしく充実している。メインメモリはPC2-5300 DDR2 SDRAMを512MBから最大2GBまで搭載できる。本体裏にメインメモリ用のSO-DIMMソケットが2個用意されており、どの容量を選択した場合でも2枚のSO-DIMMモジュールが取り付けられ、デュアルチャネル動作となる。 HDDは、2.5インチドライブとして現時点での最大容量となる160GBまで選択できる。搭載できるHDDはシリアルATAタイプで、ネジ2本を外すだけで簡単に取り出せ交換できる。また、光学ドライブは、CD-RW/DVD-ROMコンボドライブまたは±R DL対応DVDスーパーマルチドライブを選択できる。 ネットワーク機能は、Gigabit Ethernetを標準で搭載し、IEEE 802.11a/b/g対応無線LAN機能はオプションで搭載可能。無線LAN機能は、本体手前に用意されているスライドスイッチによって物理的にON/OFFの制御が可能。また、Bluetoothも標準搭載されている。IPフォン用のヘッドセットやワイヤレスマウスなどの利用に活用できる。 本体右側面と奥にUSB 2.0コネクタを2個ずつ計4個用意。本体右側面には、IEEE 1394とミニD-Sub15ピン/DVI-D/Sビデオの各映像出力端子、モデム、Gigabit Ethernetの各コネクタも用意されている。Type2 PCカードスロットは1スロット。本体手前にはSDカードやメモリースティックなどが利用できる3in1スロットも用意されている。インターフェイス類は、特に豊富というわけではないものの、必要十分なものが用意されており、不満に感じることはないだろう。
●作業領域が広大すぎてタッチパッドではやや扱いづらい キーボードは、キーピッチ19mm、ストローク2.5mmのフルサイズキーボードを搭載。変則的な配列やピッチの違いはほとんどない。タッチは適度な堅さとクリック感があり、個人的にはかなり扱いやすいように感じた。感覚的には、ノート用のキーボードよりもデスクトップ用のキーボードに近い。 ポインティングデバイスは、タッチパッドを搭載。ワイドディスプレイに合わせたように横長のものを採用している。他のモデルと同じ、左右のクリックボタンが一体となった構造となっている点が若干気になったが、全体的な使い勝手は問題ない。ただ、WUXGA対応液晶を搭載している試用機では、あまりにも作業領域が広く、何度も指をスライドさせなければ目的の場所までカーソルを移動できずに使いづらく感じた。広大な作業領域でもマウスカーソルを自由に操作したいなら、外付けのマウスを利用すべきだと感じた。 標準搭載のバッテリは、容量4,800mAhという仕様のリチウムイオンバッテリだ。バッテリ駆動時間は約3時間ほどと、それほど長いものではない。また、付属のACアダプタも、モバイルノートのような小型のものではない。とはいえ、もともとNJ5000Proはモバイル用途のマシンではなく、デスクノートに位置付けられる製品であり、バッテリ駆動時間があまり長くないとしても大きな問題ではないだろう。
●フラッグシップモデルにふさわしい高パフォーマンスを確認 パフォーマンスを検証するため、いくつかのベンチマークテストを行なった。利用したソフトは、Futuremarkの「PCMark05」と「3DMark03」、「3DMark05」、「3DMark06」、スクウェア・エニックスが配布している「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」だ。試用機の仕様は、CPUはCore 2 Duo T7600、メインメモリは1GB、内蔵GPUはMobility FireGL V5200(512MB)となっていた。測定は、電源オプションプロパティの電源設定を「常にオン」に設定して測定している。 結果を見ると、どのテストも非常によい結果が得られており、フラッグシップモデルにふさわしいパフォーマンスが発揮されていることがよくわかる。また、3D描画能力も非常に高く、これなら3Dゲームはもちろん、ハイエンドグラフィックソフトも十分快適に利用できるはずだ。当然、Windows Vistaの利用も全く問題ないと考えられる。
【表】ベンチマーク結果
このようにNJ5000Proは、他のノートPCにはない非常に高いパフォーマンスを備えている。もちろん、CPUなどのスペックは自由にカスタマイズできるため、その内容によってパフォーマンスは大きく違ってくるが、デスクトップ顔負けのスペックを詰め込み、モバイルワークステーションとして活用できることだけは間違いない。 価格は、今回試用したスペックでは30万円を超えてしまうが、最小スペックで16万円台から購入できるため、必要なスペックを見極めてカスタマイズすればコスト面でも満足できるはず。多少モバイル性が犠牲になっても、3Dグラフィックソフトなどを快適に利用できるスペックが搭載され、モバイルワークステーションとして活用できるノートを探している人におすすめしたい。 □エプソンダイレクトのホームページ (2006年9月12日) [Reported by 平澤寿康]
【PC Watchホームページ】
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