13.3型WXGA液晶を搭載する2スピンドルモバイル「VAIO type S」。ハイエンドノートに匹敵するパフォーマンスを実現しながら、2kgを大きく下回る重量や最長6時間のバッテリ駆動を実現する高いモバイル性を実現し、カーボン素材を利用したスタイリッシュボディなどにより、発売以来高い人気を誇っている。そのVAIO type Sの2006年秋モデルでは、CPUにモバイル向けCore 2 Duo(コードネーム「Merom」)が追加されたことで、さらに魅力が向上している。 今回、ソニースタイルでのオンライン販売専用モデル「VAIO type S プレミアムバージョン」、VGN-SZ92PSをいち早く試用できたので、その詳細を紹介していくことにしよう。 ●モバイル向けCore 2 Duoをいち早く採用
VAIO type Sの2006年秋モデルは、一般店頭販売モデルとなる「VGN-SZ72B/B」と「VGN-SZ52B/B」の2モデルに加え、ソニーの直販ページ「ソニースタイル」でのオンライン販売専用モデル“VAIO・OWNER・MADEモデル”「VGN-SZ82PS/SZ82S」、そして同じくオンライン販売専用モデルで、ボディ素材としてカーボンファイバー積層板を使用する“VAIO・OWNER・MADEモデル プレミアムバージョン”「VGN-SZ92PS/SZ92S」の計6モデルが用意される。このうち、今回試用したのは、プレミアムバージョンとなるVGN-SZ92PSだ。 VAIO type S 2006年秋モデルの最大の特徴となるのが、店頭販売モデルのVGN-SZ72B/Bの搭載CPUおよび、VAIO・OWNER・MADEモデルのBTOメニューに、モバイル向けCore 2 Duoが採用されている点だ。VGN-SZ72B/Bには1.83GHz動作のT5600を搭載、BTOモデルには2.33GHz動作のT7600も用意され、購入時に選択できるようになっている(選択できるCPUは、Core 2 Duo T7600/T5600、Core Duo T2300、Celeron M 430の4種類)。 コードネーム「Merom」ことモバイル向けCore 2 Duoは、Coreマイクロアーキテクチャを採用し、新たにストリーミングSIMD拡張命令「SSE4」や、64bit拡張命令「Intel 64」(従来までEM64Tと呼ばれていた)をサポート。搭載される共有2次キャッシュを4MB搭載するモデルも用意される(T7600/T7400/T7200の3モデル)。また、動作状況に応じてコア単位に動作クロックやコア電圧を細かく制御する「拡張版SpeedStepテクノロジ」や、「ダイナミック・パワー・コーディネーション」、「ダイナミック・キャッシュ・サイジング」などの省電力機構も受け継がれ、高度な電力管理が可能となっている。 Core 2 DuoのTDPは34Wと、Core Duoの31Wに比べ若干高くなっているものの、同一クロック時のパフォーマンスは向上しており、より高度な電力管理機能と合わせ、電力あたりのパフォーマンスは若干向上している。 前モデルでは、2.16GHz動作のCore Duo T2600が最上位CPUだったため、Core 2 Duo T7600搭載時にはかなりのパフォーマンスアップが期待できることになる。さらに、店頭販売下位モデルは、従来のCore Solo T1300からCore Duo T2300に強化されている。これにより、VAIO type S秋モデルでは、直販モデルでCPUにCeleron Mを選択しない限り、全てデュアルコアCPUが搭載されることになったわけだ。 また、CPUに加えHDD容量も強化ポイントだ。秋モデルのHDDの容量は、店頭販売上位モデルが100GB、下位モデルが80GBとそれぞれ増量。また、直販モデルでは160GBのHDDが新たに選択できるようになっている。現在2.5インチHDDで最大容量となる160GBのHDDを選択できるようになった点は、大いに歓迎したい。 ●カーボン素材や白色LEDバックライトの採用で薄型、軽量化を実現 ソニーが2003年に発売した「バイオノート505エクストリーム」で、本体重量を極限まで軽量化するため、ボディ素材としてカーボンファイバー積層板をはじめて採用。それ以降、VAIOシリーズのプレミアムモデルでカーボンファイバー積層板を採用する例が続いている。VAIO type Sでも、直販モデルのプレミアムバージョンで、液晶パネル天板部分にカーボンファイバー積層板を採用しており、もちろん秋モデルのプレミアムバージョンでもしっかり受け継がれている。 加えて、プレミアムバージョンでは液晶ディスプレイのバックライトとして、一般的な蛍光管ではなく白色LEDを採用している。これにより、液晶パネルは50%の厚さとなり、重量も30%軽量化されている。実際に液晶パネル部分は5mmほど(実測値、従来モデルでは約5.1mmとされており、おそらく秋モデルでも同じと思われる)と非常に薄くなっている。しかし、天板部分に金属素材よりも高い強度を誇るカーボンファイバー積層板を採用しているために、これだけの薄さでもしっかりとした強度を実現している。 さらに、キーボード手前のパームレスト部分には、押し出し成形のアルミニウム素材を採用。こういった軽量素材採用やパーツの軽量化などにより、プレミアムバージョンは他のモデルよりも薄型、軽量となっている。ちなみに、一般モデルが厚さ25.7m~37.1mm、重量約1.89kg(標準バッテリ搭載時)に対し、プレミアムバージョンでは厚さ22.8~33.7mm、重量約1.69kg(標準バッテリ搭載時)となっている。
●CPUやHDD容量以外の基本仕様は従来モデルがベース VAIO type S秋モデルは、搭載CPUやHDD容量が強化されているものの、それ以外の仕様はほぼ従来モデルがベースとなっており、大きな変更点はない。そういった意味では、マイナーバージョンアップに近いモデルと言っていいだろう。 液晶ディスプレイはWXGA(1,280×800ドット)表示対応の13.3型ワイドTFT“クリアブラック”液晶を採用。パネル面が光沢のある、グレアタイプの液晶で、表示品質は非常に鮮やかだ。また輝度もかなり高く、個人的には輝度を最大にした状態ではややまぶしく感じるほどであった。 また、GPUは、NVIDIA GeForce Go 7400 with NVIDIA TurboCacheを搭載し、3Dゲームも楽々動作する3D描画能力を実現している。そして、従来モデルでの特徴であった、用途に応じてグラフィック機能を切り替えられる「ハイブリッド・グラフィックシステム」ももちろん継承されている。 これは、外付けのグラフィックチップであるGeForce Go 7400 TCと、チップセット(Intel 954GM Express)に内蔵されるグラフィック機能(GMA 950)を、キーボード上部に用意されている「パフォーマンス切換スイッチ」によって自由に切り替えて利用できるというもの。3Dゲームなど、高い3D描画能力を必要とする場合にはスイッチを「SPEED」にセットしてGeForce Go 7400 TCを利用。そして、3D描画能力が必要なく、バッテリ駆動時間を長くしたい場合にはスイッチを「STAMINA」にセットすることで、GeForce Go 7400 TCが切り離され、GMA 950が利用されるようになる。 またSTAMINAモードでは、内蔵グラフィック機能が変更されるだけでなく、CPUの動作クロックが下がるなど、その他パーツも省電力設定となり、バッテリ駆動時間がSPEED設定時の約1.5倍(前モデル標準バッテリ搭載時)に延長される。 メインメモリは、店頭販売上位モデルが標準1GB、下位モデルが512MB。直販モデルは512MBから最大2GBまで選択可能。メインメモリ用のSO-DIMMソケットは2つ用意されており、1GB以上の容量を選択した場合(また店頭販売上位モデルでは)、同容量のSO-DOMMモジュールが2枚取り付けられ、メインメモリがデュアルチャネル動作となる。 VAIO type Sでは、チップセット内蔵グラフィック利用時はもちろん、GeForce Go 7400 TCもメインメモリの一部をビデオメモリとして利用するため、パフォーマンスを重視するならデュアルチャネル動作となる1GB以上のメインメモリ搭載を最優先に考えるべきだろう。 内蔵される光学ドライブは、店頭販売モデルと直販モデルのプレミアムバージョンではDVDスーパーマルチドライブを標準搭載し、直販モデルの通常バージョンはDVDスーパーマルチドライブとDVD-ROM/CD-RWコンボドライブからの選択となる。ちなみにプレミアムバージョンのDVDスーパーマルチドライブはDVD+R DLにのみ対応する点も従来どおりだ。 さらに、Type2 PCカードスロットやExpress Card/34スロット、メモリースティック デュオスロット(PROデュオ、MG対応)などの拡張スロット、メモリースティックやSDカード、xDピクチャーカードなどに対応するExpressCard/34用のメモリカードアダプタが標準で付属する点も従来モデルと同じだ。
●直販モデルでは、日本語キーボードだけでなく英語キーボードも選択可能 搭載されるキーボードは、ピッチ19mm、ストローク3mmのフルキーボードとなっている。今回試用したマシンには英語キーボードが搭載されていたが、これは前モデル同様、直販モデルでのみ選択可能となっているものだ。秋モデルで日本語キーボードの形状がどういったものになるのか不明だが、おそらく前モデルと同じものが搭載されるはずだ。 英語キーボードに関しては、Enterキーの右側にもキーが配置されている点が気になるものの、ピッチが狭くなっている部分は全くなく、十分扱いやすいキーボードだと言える。個人的には、クリック感をあまり感じず、やや重めのタッチであるという点も気になったが、これはキーボードに対する好みの問題なので、実際に触って確認してもらいたい。 ポインティングデバイスは、パッドタイプの「インテリジェントタッチパッド」を搭載。左右のクリックボタンの間にスライド式の指紋センサーが配置されているが、この指紋センサーを利用したスクロール機能も実現されている。 キーボード上部には、動作モードを変更する「パフォーマンス切換スイッチ」に加え、内蔵の無線LANおよびBluetoothをON/OFFするスイッチ、設定したアクションを呼び出すショートカットボタン(Sボタン)が2個用意されている。Sボタンには、指定したアプリケーションを呼び出したり、「消音」や「スタンバイ」などの特定のアクションを割り当てることが可能。「CPU冷却ファン動作音低減」といったアクションも用意されており、結構便利に使えそうな印象を受けた。
●指紋センサーやTPM、HDDプロテクションなどセキュリティ機能も満載 VAIO type Sは、デスクトップに匹敵する高いパフォーマンスを発揮しつつ、高いモバイル性も実現した、パフォーマンスモバイルというジャンルに位置するノートだ。当然、ホビー用途だけでなくビジネス用途も重要なターゲットとなっており、セキュリティ機能も重要なポイントだ。 タッチパッド下部のスライド式指紋センサーは、Windowsのログオン認証などに活用できるようになっている。また、TPMセキュリティチップが内蔵されており、HDDに保存するデータを暗号化する場合などTPMを利用したセキュリティ性の強化も実現可能。3次元加速度センサーを搭載し、本体に加わる衝撃を感知し、事前にHDDのヘッドを退避させる「VAIOハードディスクプロティション」も盛り込まれている。これらセキュリティ機能は、type S秋モデル全てに標準搭載されている。 これらに加え、パームレスト部にはFeliCaポートが搭載されている(直販モデルでは選択となる)。FeliCaポートは、EdyやSuicaなどFeliCa決済カードの残高照会やチャージ、オンラインショッピング時の決済などに活用できるだけでなく、FeliCaカードを認証キーとしてスクリーンセーバーをロックするという用途にも活用でき、より高いセキュリティ性を実現できる。
●デスクトップ並の高いパフォーマンスを確認 今回も、パフォーマンスを検証するため、いくつかのベンチマークテストを行なった。利用したソフトは、Futuremarkの「PCMark05」と「3DMark05」、「3DMark06」、スクウェア・エニックスが配布している「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」だ。測定は、電源オプションプロパティの電源設定を「常にオン」に設定し、パフォーマンス切換スイッチは「SPEED」側に設定して、最大のパフォーマンスが発揮される環境で測定した。ちなみに試用機の仕様だが、CPUはCore 2 Duo T7600(2.33GHz)、メインメモリは1GB(デュアルチャネル動作)搭載されていた。 結果を見ると、CPUにCore 2 Duoの最上位モデルとなるT7600が搭載されていることもあり、圧倒的なパフォーマンスが記録された。PCMark05をはじめ、CPUのパフォーマンスを計測するCPU Scoreを見ると、軒並み他を圧倒する数字を記録している。また、3D描画能力も非常に高い。もちろん、GeForce Go 7900シリーズなどの上位グラフィックチップを搭載する機種には負けるものの、3Dゲームも十分快適に楽しめるパフォーマンスが発揮されていると言える。ビデオメモリは最大128MBと、Windows Vistaで採用される新GUI「Windows Aero」を快適に利用するにはぎりぎりだが、画面解像度を考えると、十分満足できるパフォーマンスが発揮できるだろう。
【表】ベンチマーク結果
VAIO type S秋モデルは、いち早く最新CPUであるCore 2 Duoが採用されているだけでなく、Core 2 DuoのハイエンドモデルであるT7600も選択可能で、フラッグシップノートに匹敵するパワーを得た。しかも、それでいて一般モデルで約1.85kg、直販モデルのプレミアムバージョンで約1.69kgという高いモバイル性を実現。もちろん、従来モデル同様のスタイリッシュなボディとデザインで、ユーザーに持つことの喜びを与えてくれる。これぞ、フラッグシップモバイルという名に相応しいマシンと言っていいだろう。 ただ、モバイルマシンとしてはやや価格は高めとなるだろう。原稿執筆時点では正確な販売価格は不明だが、直販モデルのプレミアムバージョンを今回試用したスペックに設定した場合、おそらく30万円を超える価格になるものと思われる。もちろん、ある程度スペックを落とせば10万円台でも購入できるはずなので、絶対的に高いというわけではない。とにかく、ビジネスからホビーまで、幅広い用途に余裕で活用できるモバイルノートを探している人にとって、要注目のマシンであることは間違いないだろう。 □ソニーのホームページ (2006年8月31日) [Reported by 平澤寿康]
【PC Watchホームページ】
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