元麻布春男の週刊PCホットライン

Macの次期モデルをCPUから考える




●全MacラインナップのIntel化が完了

 8月7日、AppleはMacのIntelプロセッサへの全面移行を完了するプロダクト、Mac ProとXserveの発表を行なった。

 サンフランシスコで開催中のWWDC(World Wide Developer's Conference)におけるキーノートで、同社のスティーブ・ジョブズCEOが発表した。昨年6月にIntelプロセッサへの移行を表明して以来、210日で全ラインナップの移行を完了したことになる。当初のスケジュールでは2007年中に移行を完了させる、ということだったから、1年以上スケジュールは前倒しされたわけだ。

 もちろん、スケジュールの前倒しが可能だったのは、Apple自身の努力もあるだろうが、Intelが製品リリースのスケジュールを前倒ししたことも大きい。今回発表されたMac ProとXserveに採用されているXeonプロセッサ(Woodcrest)は、2005年6月の時点の予定では、まだ発表にさえなっていなかったハズであるからだ。

 発表の順番も、Conroe(デスクトップ)、Woodcrest、Merom(モバイル)の予定だった。それがWoodcrest、Conroe、Meromの順番に変更された、というより残り2つは本来のスケジュールのままで、Woodcrestだけが前倒しされたのは、Opteronに対抗できる製品を早急に欲していたIntelサイドの都合だろうが、Appleにとっても悪い話ではなかったと思う。

WWDC 2006で発表されたMac Pro(左)とXserve(右)

●Macの次期モデルをCPUから考える

 今回の発表で残念だったのは、ConroeとMeromを搭載したMacに関するアナウンスがなかったこと。Meromについてはまだ出荷が始まっていないし、Conroeもハイエンド品はチャネル向けの出荷もままならない(数量が足りない)状態にある。大手PCベンダが製品発表できる状況ではないのだろう。直販のデル(出荷の調整が流通系よりフレキシブルにできる)も、Conroe搭載PC(Dimension 9200)の発表は行なっているものの、出荷は8月下旬から9月初旬の予定となっている。

 とはいえ、近い将来Woodcrest以外のプロセッサを搭載したMacも登場してくるだろう。が、それにConroeが含まれるのかどうかは良くわからない。

 Appleは今回発表されたMac Proでデスクトップのラインナップは完成したというのだが、残る2機種、iMacとMac miniはモバイル用のプロセッサ(Yonah)を搭載したモデル。Windows PCの世界であれば、省スペースに分類されるPCだ。単純に消費電力(TDP)を比較しても、Yonahの31Wに対し、Conroeは65Wと2倍以上であり、現在のiMacやMac miniの筐体にConroeは収まらない。ストレートに考えれば、iMacやMac miniのモデルチェンジは、Meromが潤沢に出回るタイミングを見て、ということになりそうだ。発表が8月下旬から9月初旬、出荷が9月下旬、というあたりだろうか。

 ただ、現在のデスクトップMacのラインナップ(表1)を見ていると、Mac ProとiMacの間のギャップが大きいようにも思う。Windows PCでいう、普通のデスクトップがMacにはないのだ。特にMac ProがXeonをチョイスし、メモリがFB-DIMMになったことで、これまで以上にワークステーション色を強めたため、ギャップが大きくなったように感じられる。この隙間を埋めるConroeベースのMacが登場しても悪くないと思うのだが、今のところウワサは聞かない。

【表1】デスクトップ向けIntel Mac
 プロセッサメモリ汎用拡張スロットデュアルリンクDVIIEEE 1394Front Row
Mac ProXeon デュアル(Woodcrest)FB-DIMMあり(3) *対応FireWire 800なし
iMacIntel Core Duo(Yonah)DDR2-SDRAMなしなしFireWire 400あり
Mac miniIntel Core Duo/Core Solo(Yonah)DDR2-SDRAMなしなしFireWire 400あり
* Mac Proにはグラフィックス用に別に16レーンのPCI Expressスロットがある(総計4本)

MacBook

 一方、ノートブックタイプのMac(Mac Book)だが、普通に考えれば、Merom発表のタイミングで、現行モデルのプロセッサをそのままMeromに差し替えたマイナーチェンジがあってもおかしくはない。YonahとMeromはピン互換の関係にあるからだ。

 問題は、Mac Bookはどのモデルも比較的熱くなる、ということだろう。特にMac Book Proの15インチモデルは、かなり熱い。Yonahに対しMeromは若干だがTDPが上がると言われており、ストレートな差し替えに不安を感じる。手っ取り早く冷やすには、ファンを回せば良いわけだが、それはそれで嫌われる。

 かといって、現行Mac Bookの筐体を1モデル限りで捨てて、フルモデルチェンジするというのも考えにくい。新デザインのMac Bookはもちろん、デザインは踏襲しているもののMac Book Proも、一応新しい筐体を採用している。リスクはあるものの、ファンを回す方向ではないかと思う(特にMac Book Pro)。Mac Bookの方はMeromの採用をあまり急がないかもしれない。対象とするユーザー、アプリケーションから考えても、64bit化の恩恵が直ちにあるとは考えにくいからだ。

 表2にまとめたMac Bookのラインナップを見ていると、デスクトップと違い、モデル間のギャップはあまり感じない。上から、ディスプレイの大きい順にきれに並んでいる印象だ。が、良く見ると、一番下が13.3インチのMac Bookで、重量が2.36kgもあるのが難点だと分かる。

【表2】ノートブックタイプのIntel Mac
 プロセッサメモリ汎用拡張スロットデュアルリンクDVIIEEE 1394Front Row重量
Mac Book Pro 17inchIntel Core Duo(Yonah)DDR2-SDRAMあり(ExpressCard/34)対応FireWire 800あり3.08kg
Mac Book Pro 15inchIntel Core Duo(Yonah)DDR2-SDRAMあり(ExpressCard/34)対応FireWire 400あり2.54kg
Mac Book 13.3inchIntel Core Duo(Yonah)DDR2-SDRAMなしなしFireWire 400あり2.36kg

 たとえば10.6型ワイド液晶、Intel Core Solo超低電圧版のMac Book miniのような製品があっても悪くない。ただ、こうしたサブノートMacは、大昔から(筆者の知る限り'80年代から)日本のMacファンが渇望しながら、一度も実現していない製品ジャンルでもある。Appleはあまり興味がないのだろう。

 表1と表2を見ていると、「Pro」がつくかつかないか、ということが拡張性の有無とも一致することが分かる。Pro以外のモデルには、拡張スロットが用意されない。また、外部ディスプレイ接続がデュアルリンクDVI対応する(30インチディスプレイ接続可能)のもProの特権だ。FireWire800は、Proモデル中、15インチのMac Book Proのみが対応していないが、熱の問題さえなかったら、採用したかったのではないか、という気がする。

 逆にコンシューマー向けモデルにスロットがないのは、拡張する場合は外部接続、というメッセージなのだろう。以前なら賛同しなかったかもしれないが、IEEE 1394やUSBといった高速シリアルバスの普及と、チップセット内蔵機能の拡充を考えれば、妥当なようにも思えてくる。それでも、Conroeベースで、拡張スロット1本とマスストレージベイ1つを持つモデルがあっても悪くないハズだ。

□アップルコンピュータのホームページ
http://www.apple.com/jp/
□WWDC 2006のホームページ
http://developer.apple.com/jp/wwdc/
□関連記事
【8月8日】WWDC 2006でXeon搭載のMac Proが登場
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0808/wwdc02.htm
【8月8日】WWDC基調講演速報、"Leopard"を公開。10の新機能をデモ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0808/wwdc03.htm
CPUコードネーム一覧表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/intel/codename.htm

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(2006年8月9日)

[Reported by 元麻布春男]


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