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次世代Opteronを選択したIBMとサン




●次世代Opteron搭載サーバーが登場

 8月2日、日本IBMはAMDとの提携拡大に関する説明会を同社箱崎事業所で開催した。IBMは、早期からAMDのOpteronプロセッサを搭載したサーバーをラインナップしていたが、今後さらにそれを拡充させると同時に、マーケティングや営業面でも協力体制を築く。特に、わが国ではサーバー市場におけるAMDプロセッサのシェアが2.9%と低迷しており、両社が協力することで、年内にも10%のシェア獲得を目指す。日本AMDでは、日本IBM専任担当を設置、営業支援体制を強化するとしている。

 ただIBMのx86サーバーがすべてOpteronになるわけでもなければ、AMDのOpteronがIBMにだけ供給されるわけでもない。両社の協力体制が営業面にまで踏み込むと、それぞれ他のベンダとの競合や反発も考えられる。このあたりの舵取りが注目されるところだ。

 さて、この説明会で、間もなく発表されると言われる次世代Opteronプロセッサ(Revision F)を搭載したサーバーが公開された。まだプロセッサそのものが発表されていないため、正式な製品発表ではない(したがって価格や出荷開始時期は明らかにされていない)ものの、実質的なお披露目といって良い。

 発表されたサーバーのラインナップは、ブレードサーバー2種、ラックマウントサーバー3種の計5機種。いずれもServerWorks(Broadcom)製のチップセットを採用する。

 ブレードサーバーのLS21とLS41は、これまで提供されてきたLS20の後継となる製品。いずれもLS20と同一のシャーシにマウント可能だが、上述のようにチップセットが更新されており(LS20はAMD-8000)、中身的には全くの新製品ということになる。

 従来のLS20と同サイズのLS21は、やはり2ソケット構成のブレードサーバー。LS41は、このLS21を2枚重ねたような構成の4ソケットサーバーだ。実際、LS41は、2ソケットのベースユニットと、それに連結する2ソケットの拡張ユニットで構成されており、最初はベースユニットだけ購入し、後から拡張することも可能だ。LS41のベースユニットとLS21は酷似しているが、LS21には拡張ユニットを増設するためのコネクタが用意されていない。LS41のベースユニットと拡張ユニット間の接続にはHyperTransportが用いられており、大きな特徴となっている。

 今回、LS41のベースユニットを見ることができたが、プロセッサのソケットが従来のPGAタイプではなく、IntelのPentium D/Xeonに採用されているLGAタイプであることが確認できた。サポートメモリをDDR2に変更したクライアントPC向けプロセッサ(Athlon 64系)では、従来通りPGAタイプのソケットAM2を採用したわけだが、サーバーでは大きくソケットを変更することになる。

LS41のベースユニット。写真下側のソケットはカバーが外されており、LGAタイプのソケットが見える。ソケットの左にある白いコネクタがHyperTransportのコネクタ LS41のベースユニット(右)と拡張ユニット(左)。ベースユニットと拡張ユニットは、2カ所のコネクタで接続される(手前がHyperTransport、奥がPCI-X)

 もう1機種、会場に展示されていたのは4Uサイズの4ソケットサーバーであるSystem x3755。これまで日本IBMのOpteronプロセッサ搭載ラックマウントサーバーは、1Uサイズのデュアルソケットサーバーのみであったから、市場セグメント的にも全くの新製品だ。プロセッサの搭載はモジュール形式で、1CPUで1モジュールを構成する。2ウェイあるいは4ウェイといった一般的な構成に加え、モジュール3枚をインストールし、1モジュールをバックアップ用にすることも可能だ。

x3775の外観。上部手前に乗せられているのがプロセッサモジュールで、4モジュール搭載可能。後方、電源部の上に乗っているのは、PowerPCベースの管理用プロセッサカード x3755に採用されているHTXスロットとServerWorks製チップセット。HTXスロットはPCI Express x1スロットとブラケット部を共有する

 このx3755は、LS41のようなHyperTransportによる連結機能をサポートしているわけではないが、HyperTransportの外だしコネクタとでもいうべきHTXスロットをサポートしている。このようにHyperTransportを大きくフィーチャーしているのが、日本IBMの新しいOpteronサーバーの特徴となっている。これも両社の提携関係拡大の一環だろう。

 同日Opteronサーバーの発表を行なったサン・マイクロシステムズのサーバー製品の場合、拡張スロットはPCI-XあるいはPCI Expressで、HTXを搭載したものは用意されていない。他の多くのベンダと異なり、サンはx86サーバーにAMDのOpteronだけを採用しており、Intel製プロセッサの採用はないわけだが、HTXに関しては距離を置く方針のようだ。

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【8月2日】IBMとAMD、Opteronサーバー分野での提携を強化
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0802/ibm.htm
【8月2日】サン、4UサイズでデュアルコアOpteronを8個搭載可能なx64サーバー(ENTERPRISE)
http://enterprise.watch.impress.co.jp/cda/hardware/2006/08/02/8376.html

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(2006年8月4日)

[Reported by 元麻布春男]


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