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WWDC 2006 基調講演レポート

WWDC基調講演速報、"Leopard"を公開。10の新機能をデモ
~Preview版をデベロッパに配布。発売は来春の見通し

会場:San Francisco「Moscone Center West」

会期:8月7日~11日(現地時間)



 サンフランシスコのMoscone Centerで米AppleのWWDC(世界開発者会議)が7日午前10時(現地時間)開幕した。

 オープニングは例年どおり、同社のスティーブ・ジョブズCEOを中心とした基調講演。事前発表のとおり、次期Mac OS Xとなる"Leopard"を初めて公開し、Leopardに搭載されることになる10余りの機能をデモして見せたほか、新製品としていずれもXeon(コードネームWoodcrest)を搭載する「Mac Pro」、そして「Xserve」を発表した。

 この発表により、同社の製品はすべてCore Duo(一部Solo)あるいはXeonを搭載するラインナップとなり、2005年のWWDCから始まったIntel移行を完了させた。

ちょっと痩せた印象のジョブズCEO。中心的な役割は変わらないが、講演では各分野のエグゼクティブと交代をしながらプレゼンテーション

 前回はIntelのポール・オッテリーニ社長や一部のサードパーティのゲストを除き、ほぼ1人で講演とデモを行なったジョブズCEOだが、今回はセクションごとに同社のエグゼクティブが登場。ジョブズCEOと入れ替わり立ち替わり、製品や機能紹介を行なった。やや痩せた感のあるジョブズCEOには一部では健康不安説もあり、そうした理由からの配慮とも考えられるが、従来からWWDCではこうした各分野のエクゼクティブが登場するスタイルが取られることも多く、実際のところは明らかではない。

 本稿では速報と言うことで、基調講演の様子を足早に紹介する。公開された"Leopard"における個々の機能については、追って詳細なレポートを掲載する予定だ。

 既報のとおり、この日発表されたMac Proの紹介ではワールドワイドプロダクトマーケティング担当上級副社長のフィリップ・シラー氏が登場している。また、同時にXserveの発表も行なわれた。

 発表されたXserveは10月上旬に販売を開始。Mac Proと同様にXeonプロセッサをデュアルで搭載。従来製品はシングルコアのPowerPC G5をデュアルで搭載する構成だったため、基調講演紹介されたベンチマークでは約5倍の性能を叩き出している。拡張性としては、本体内に750GBのHDDを3基搭載することが可能で、最大2.25TBのHDD容量を確保。また冗長化された電源など、プロフェッショナルユーザーの多い会場では大いに評価されるアップグレードが行なわれた。Mac Proと同様、基本となるコンフィグレーションは1つ。その代わりに、Apple StoreによるBTOで多様なカスタマイズが可能だ。

 ソフトウェアエンジアリング担当上級副社長のバートランド・サーレイ氏は中盤に登場。いかにVistaが"Tigar"に似ていて、いかに"Tiger"そして"Leopard"が優れているかと言うことをしばらくスピーチしたものの、聞きようによってはしばらくVistaの悪口が続いているだけでもあり、内容自体はいまいちという印象がある。とはいえ、ここはMacintoshデベロッパの集まる会場とあって、ジョーク混じりのスピーチは何度も会場の笑いを誘っていた。

基調講演の開始直前、会場をぎっしりと埋め尽くした世界各国から来場したデベロッパ 今回の基調講演はジョブズCEOを中心にして、ハードウェアの紹介は各分野のエグゼクティブがそれぞれのセクションに登場するスタイル 発表されたMac Pro。単一のコンフィグレーションだが多彩なカスタマイズが可能
すべてのラインナップでIntelへの移行が完了した。2006年最初のiMac、MacBook Proの発表を起点にすると、210日間を経て移行を行なったとのこと 同時に発表されたXserveもXeonプロセッサを搭載。出荷は10月となるが、これをもって全てのラインナップでIntel化が完了したことになる Vistaに搭載される数々の機能は、すでに"Tiger"において実現されているとするバートランド・サーレイ上級副社長。単純に言えばVistaの悪口なわけだが、WWDCというイベントの性格上、ジョークとしては面白い内容

 いよいよ"Leopard"のセクションとなり、ジョブズCEOはこの日全部で10の新機能を披露するとコメントした。その機能紹介とデモは、ジョブズCEOとそしてプラットフォームエクスペリエンス担当副社長のスコット・フォステル氏が分け合う形で行なわれている。この日紹介された"Leopard"に搭載される10の機能は以下のとおり。

1.64bitアプリケーションに完全対応
 "Tiger"の時点でいったんはPowerPC向けにフル64bit対応を行なってはいるものの、Core Duoを採用したIntel化とRossetaによるエミュレーションが32bitベースということで、Intel版"Tiger"はいったん32bitへと後退していた。"Leopard"で、Intel版Mac OS Xも再度64bit化される

2.画期的なバックアップツール「TimeMachine」
 OSに標準搭載される強力なバックアップツール。デイリーの自動バックアップ機能はもちろん、ファイル単位の復旧や、全体の復旧も可能。フォルダ単位あるいはアプリケーション単位で過去の記録がさまざまなポイントで遡れる。

3.すべてのアプリケーションが標準搭載になる「Complete Package」
 これまでβ版として配布されていた「Bootcamp」、iMacなど一部機種に搭載されていた「Photo Booth」や次世代の「Front Row」などが、"Leopard"ではOSに標準搭載される。

PowerPC版、Intel版の両方が提供される"Leopard"で、完全な64bit化が実現する 「TimeMachine」のデモ。標準搭載されるバックアップアプリケーション。いかにもMac OSらしいインターフェイスを持ったアプリケーションだ Bootcamp、Photo Booth、そして詳細は明らかにされなかったが次世代のFront Rowなど、これまで機種を限定して付属していたアプリケーションがOS標準搭載となる

4.仮想デスクトップ環境「Spaces」
 ジョブズCEOが自らデモを行なってみせた「Spaces」はデスクトップを2×2に仮想化する「Spaces」。複数のアプリケーションを同時に起動して利用するとき、目的に応じたアプリケーション単位で画面を切り替えながら作業が可能。ただ単にデスクトップを切り替えるだけではなく、画面間で起動中のアプリケーションウィンドウを移動させたりもできる。

5.強化された「Spotlight」
 デモは行なわれなかったが、Spotlightでは、自分のMacだけではなく他のMacやServerに対してのSpotlight検索が可能になる。

6.第4のCore「Core Animation」
 Core Audio、Core Image、Core Videoに続く第4番目のCoreシステム「Core Animation」。OSの内部に搭載される機能のため、デモンストレーションは現行のスクリーンセーバーが、より機能アップしたものを紹介する形になった。

「Spaces」。デスクトップを4画面で仮想化する。画面の切り替えはもちろん、画面間で起動しているアプリケーションを移動させることができる Spotlightに関しては実際のデモは行なわれなかった。ネットワーク上の他のMacやServer内のファイルをSpotlight検索できるようになる Core Animationは、OSに搭載されるCoreテクノロジーの1つ。CMでもお馴染みのプリレンダリングの映像が、リアルタイムでアニメーションされた

7.より自然な読み上げの「Universal Access」
 「Universal Access」では、テキストの英語読み上げをデモ。Tiger、Vista(β)そして Leopardのそれぞれで英文テキストを音声読み上げさせ、より自然な読み上げが行なわれることを紹介した。加えてLeopardでは、読み上げスピードを上げたものもデモされている。

8.テンプレート機能などが追加される「Mail」
 最近の同社製アプリケーションに顕著な傾向として、ドキュメントのテンプレート化がある。iLifeやiWorkなどをはじめとして、同社製の多彩なテンプレートがあらかじめ用意されていることで、ユーザーはテキストや必要な図版を用意するだけで、キレイにレイアウトされたドキュメントを簡単に作成できる仕組み。この機能がMailにも搭載され、簡単にHTMLメールが作成できるようになった。

Universal Accessでは、Tiger、VistaそしてLeopardで英文の音声読み上げをデモンストレーション。Leopardでは、読み上げの速度を速めてみせた テンプレートによるHTMLメール作成補助、iCalと連動してToDoリストなどを貼り付けておけるNote機能、RSSフィードへの対応など機能強化されるMail

9.「Dashboard」では、開発者向け、ユーザー向け双方の機能が追加
 Tigerで追加されたDashboardには開発者向け、ユーザー向けにそれぞれ機能が追加。前者にはDashcodeという開発ツールが提供されテンプレートやJavascriptのデバッガーが追加される。一方、ユーザー向けには既存のWebページから任意の部分を容易にWidgetとして切り出せる「Web Clip」が加わる。

10.iChatには数多くの楽しい機能を追加
 iCnatの強化はタブ化。さらにビデオチャット時の機能が大幅に強化された。ビデオチャット中にPhoto Boothのエフェクトを加えられたり、iPhotoのスライドショーを同時に流したり、Keynoteのスライドを表示するなど、他のアプリケーションとの連携が強化されている。また人物以外のバックグラウンドをクロマキー合成することもできるようになり、任意の背景はもとより動画も背景として合成できるようになる。

「Dashboard」ではユーザー向けに「Web Clip」の機能が追加。既存のWeb上のエリアを切り取ってWidget化するだけで、その部分の情報が自動更新される iChatには楽しい機能が多数追加された。Photo Boothによるエフェクトを行ないながらビデオチャットしたり、クロマキー合成によって背景に動画を流しながらチャットが可能に

 このほかにも、詳しい紹介はされなかったがペアレンタルアクセスやiCalの機能強化などが行なわれるともコメントされた。デベロッパ向けには、Xcodeの更新も嬉しい話題である。

 予想どおり、"Leopard"はこの日デベロッパに最初のPreview版が配布された。ただし、製品出荷は『来春』(2007年春)とアナウンスされ、2005年の「Vistaよりも先に出荷」というスタンスからは、ややトーンダウンした感も否めない。

 基調講演後のロビーでは、開幕前までの黒い幕が取り払われたパネルが現れた。多くは、Mac ProとIntelへの移行が完了したことを紹介するものだが、2階のフロアに設置されているのは「Introducing Vista 2.0(LeopardはVista 2.0だ)」や「Redomond has a cat,too. A copycat(レドモンド=Microsoftの所在地 には、物まね猫がいる)」など刺激的なものが多い。

訪れたデベロッパには、この日最初のPreview版が配布されることが発表された 製品出荷は来春を予定。2005年にコメントされた「Vistaよりも先行して」という部分はかなりトーンダウンした感がある 2階のロビーには、「Introducing Vista 2.0(LeopardはVista 2.0だ)」など、刺激的なコピーのバナーが多く掲げられている
1階ロビーは、Intel化が完了したことやMac Proを紹介するバナーが中心 基調講演後、参加したデベロッパには"Leopard"のPreview版が配布された。ディスクの内容はNDA管理下に置かれるので、入手したLeopardのスクリーンショットなどは掲載できない

□アップルコンピュータのホームページ
http://www.apple.com/jp/
□WWDC 2006のホームページ
http://developer.apple.com/jp/wwdc/
□関連記事
【8月8日】WWDC 2006でXeon搭載のMac Proが登場
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0808/wwdc02.htm
【8月8日】アップル、Core Microarchitecture搭載のMacPro
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0808/apple1.htm
【8月7日】Appleの開発者会議「WWDC 2006」7日開幕
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0807/wwdc01.htm

(2006年8月8日)

[Reported by 矢作晃]

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