NECのノートPC「LaVie L」シリーズは、ホームユースをメインターゲットとし、比較的安価な価格設定ながら十分なパワーと豊富なマルチメディア能力を兼ね備える、コストパフォーマンス性に優れたベーシックノートシリーズだ。 そのLaVie Lシリーズの2006年夏モデルとして「LaVie L LL590/GG」が登場。従来モデルにあたるLaVie L ベーシックタイプ「LaVie L LL570/FD」の後継機種で、全3モデル用意される中の最上位に位置付けられている。CPUの強化による基本性能の向上だけでなく、15.4型ワイド液晶の採用や、ワイヤレスTVチューナボックス「AirTV」が付属するなど、フルモデルチェンジと言ってもいいほどの進化を遂げている。 今回、LaVie L LL590/GG(以下LL590)をいち早く試用する機会を得たので、さっそく詳細を見ていくことにしよう。 ただし、今回試用したマシンは試作機ベースのものだったため、仕様面などは変更される可能性もある。この点はあらかじめご了解いただきたい。 ●デュアルコアCPU「Turion 64 X2」搭載によりパフォーマンスアップ 従来のLaVie Lベーシックタイプは、AMD製のCPU(Turion 64またはSempron)を採用する低価格モデルとして位置付けられていた。その後継機種として位置付けられている新LaVie Lも、全モデルでAMD製のCPUを採用しているが、上位2モデルはデュアルコアCPU「Turion 64 X2 TL-50」(動作クロック1.60GHz)に強化されている(下位モデルとなるLL550/GDは「モバイルSempron 3200+」を採用)。Turion 64 X2は、AMD製としては初となるノートPC向けのデュアルコアCPUであり、ノートPC向けとしては現時点で唯一の64bit対応となっている。 【お詫びと訂正】初出時、LL550/GDのCPUを「モバイルSempron 3100+」と表記しておりましたが、搭載されているのは「モバイルSempron 3200+」です。お詫びして訂正させていただきます。動作クロックベースでは、従来モデルで採用されていたTurion 64 ML-34(1.80GHz)より下がっているが、デュアルコアになったことで、複数作業を同時に実行したときなどのもたつきが解消され、トータルでのパフォーマンスや使用感は向上している。エントリーレベルに位置付けられる製品ながらデュアルコアCPUを採用している点は大いに評価できる。 チップセットも変更されており、ATIの「Radeon Xpress 1100」が採用されている。内蔵グラフィックス機能の動作クロックや駆動電圧の動的コントロールなどが行なえる省電力機構「PowerPlay」が搭載され、CPU側の省電力機構である「PowerNow!」と組み合わせることで、非常に高い省電力性、つまり長時間のバッテリ駆動を実現するとされている。また、Radeon X300相当のグラフィックスコアが統合されており、従来モデルのSiS M760GX内蔵のグラフィックス機能より高い3D描画能力が発揮されるだけでなく、DirectX 9ベースの描画命令にも対応する。 メインメモリにはDDR2 SDRAMを使用し、さらにデュアルチャネル動作もサポートしている。LL590では、PC2-4200対応のDDR2 SDRAMが768MB搭載され、最大2GBまで増設可能。メモリ搭載用のSO-DIMMスロットは2スロット用意されており、同一容量のSO-DIMMを搭載することでメインメモリのデュアルチャネル動作が実現される。ただし、標準では512MBと256MBの2枚のSO-DIMMが搭載されているために、メインメモリのデュアルチャネル動作を実現するには、搭載されているSO-DIMMを1枚交換する必要がある。NECのオンラインショップ「NEC Direct」では、メインメモリ容量などをカスタマイズできるため、パフォーマンスを重視するならそちらで搭載メモリをカスタマイズして購入すべきだろう。 ちなみに、Turion 64 X2とRadeon Xpress 1100との組み合わせと聞くと、AMDとATIが共同で開発したモバイルプラットフォームのリファレンスデザイン「Yokohama」を思い浮かべるが、LL590がYokohamaベースになっているのはまず間違いないだろう。 ●15.4型ワイドの高輝度液晶「スーパーシャインビュー液晶」を搭載 液晶ディスプレイは、従来モデルで採用されているアスペクト比4:3の一般的な液晶ディスプレイではなく、15.4型のワイド液晶が搭載されている。もちろん、LaVieシリーズでおなじみの、高輝度かつ鮮やかな発色が特徴の「スーパーシャインビュー液晶」だ。LaVie Lアドバンストタイプなどで採用されている「スーパーシャインビューEX2液晶」ではないものの、それでも一般的な液晶ディスプレイと比較すると、十分高輝度かつ鮮やかな発色が実現されており、デジカメ画像の表示やDVDビデオの再生など、マルチメディア用途に適した表示能力を持つ。 実際にDVDビデオの再生やTV映像などの表示を行なってみたが、一般的なノングレアタイプ液晶と比較して、かなり明るく鮮やかな映像が確認できた。ベーシックノートという位置付けを考えれば、十分満足できる表示能力が実現されていると言っていいだろう。表示解像度は1,280×800ドット(WXGA)と、従来モデル(1,024×768ドット)よりも高精細となっており、デスクトップ領域も広がるため、Webアクセスはもちろん、Excelなどのビジネスソフトを利用する場合でも快適な作業環境を実現してくれる。 ワイド液晶を搭載することで、本体デザインも一新されている。液晶ディスプレイに合わせて本体の横幅が広がっており、サイズはやや大きくなった。カラーリングは、キーボード部分と天板部分がホワイトで、その周囲やそれ以外の部分はシルバーとなった。液晶ディスプレイの周囲もシルバーとなったことで、全体的にすっきりとした印象を受ける。NEC Directでは、キーボード部分と天板部分のカラーリングがライムグリーンとなるモデルも用意されるそうで、好みに合わせてカラーリングが選択可能となっている。 ●AirTV同梱により無線LANを利用したワイヤレスTV機能を実現 LaVie Lアドバンストタイプには、TVチューナ内蔵モデルや、ワイヤレスTVチューナボックス「AirTV」が付属するモデルが用意されているが、ベーシックタイプに位置付けられるLL590にも、AirTVが標準添付されることになった。 AirTVにはIEEE 802.11a無線LANが内蔵されており、同機能を搭載するノートPCなどでワイヤレスでのTV視聴が可能となる。一般的にTVチューナ内蔵のノートPCでは、アンテナを接続できる場所でなければTVの視聴は不可能だった。それに対しAirTVを利用すれば、無線LANの電波が届く範囲内であれば、好きな場所でTV視聴が可能。家庭内の好きな場所にLL590を持って行きTVを楽しむ、といったことが可能となるわけだ。加えてAirTV内蔵の無線LAN機能は通常のアクセスポイントとしても活用できるので、家庭内LANの無線化も同時に実現できる点も嬉しい。 付属するAirTVは、LaVie Lアドバンストタイプに付属しているものと同じものだ。ハードウェアMPEG-2エンコーダを搭載しており、TV番組をリアルタイムにMPEG-2圧縮しながら無線LANまたは有線LANでデータをPCに転送し、離れた場所でのTV視聴を実現している。また、ゴーストリデューサに加え、高画質化エンジン「VISITAL」による3次元Y/C分離、タイムベースコレクタ、デジタルノイズリダクションなどの高画質化機能も搭載されており、表示品質はかなり良い。 実際に試してみたところ、筆者宅のアナログ地上波の受信状況はそれほど良くないものの、高画質化機能によって、かなりの画質改善が確認できた。また、チャンネル切り替えなどのレスポンスも十分素早く、ワイヤレスで視聴しているとは全く感じないほどだった。ただし、OSを起動せずにTV視聴を行なう「インスタントTV」機能には対応していないため、電源が落ちている状態からTVを視聴できるようになるまでに時間がかかる点は残念だ。 TV視聴やTV録画、録画予約などは、NECオリジナルのマルチメディアポータル「MediaGarage」を利用して行なう。OSとしてWindows XP Media Center Edition 2005が採用されているが、Media Center上でのTV視聴には対応しない。MediaGarageには、TV関連機能以外にも、動画ファイルや静止画ファイル、音楽ファイル、DVD/CDなどの再生機能が用意されており、Media Centerを利用する必要はほとんどない(というより、MediaGarageの方が高機能で使いやすい)。Windows XP Home Editionは、次期OSであるWindows Vista登場後2年でサポートが切れてしまうことを考慮して、Windows XP Media Center Edition 2005が採用されたのかもしれないが、せっかくのMedia Centerがほとんど活用できないという点は気になった。 ●必要な機能はほぼ満遍なく搭載されている それ以外の機能面も、ベーシックモデルとして考えるとかなり充実している。内蔵HDD容量は100GBと十分な容量を確保。光学式ドライブは±R DL対応DVDスーパーマルチドライブを標準搭載。さらに、Super A/G対応のIEEE 802.11a/b/g無線LAN機能、Gigabit Ethernetも標準搭載しており、機能面での死角はほとんどない。 また、インターフェイス類も豊富に用意されている。左右に各1ポートと後部に2ポートで計4ポートのUSB 2.0と、IEEE 1394ポートをそれぞれ搭載。本体左側面には、Type2 PCカードスロットに加え、SDメモリーカード/メモリースティック(PRO)/xD-Picture Cardの3メディアに対応するカードスロットを配置。もちろん、ミニD-Sub15ピンも用意されている。 キーボードは、キーピッチ19mmのフルサイズキーボードを搭載。主要キーはピッチが異なる部分や無理な配列はなく、デスクトップ用キーボードと同等の感覚で使用可能。タッチはやや軽めで筆者としては好みだが、しっかりとしたクリック感もあり、重めのタッチが好みの人でもそれほど違和感なく扱えるだろう。ポインティングデバイスはパッド式のNXパッドを採用。画面に合わせて横長になっており、一般的なパッド式のポインティングデバイスより縦が短くなっていることもあり、やや使いづらく感じる部分もあった。 標準搭載されるバッテリは、9.6V/4,000mAhという仕様のものだ。バッテリ駆動時間は試用時点では公表されておらず正確な数字は不明だが、おそらく2~3時間程度になると思われる。また、ACアダプタも、モバイル性重視のノートのACアダプタと比べるとかなり大きい。そもそも、LL590は本体サイズが大きく重量も約3.1kgあり、持ち運ぶとしてもせいぜい家庭内だけで基本的にはデスクなどに設置して利用するという用途のノートPCだ。そのため、バッテリ駆動時間が短かったり、ACアダプタが大きくても、それほど大きな問題とはならないだろう。 ところで、本体左側面には、CPUおよびチップセットを冷却するための空冷ファンの排気口が配置されているが、この冷却ファンの音は非常に静かで、常にファンが回転しているにもかかわらず、ほとんど気にならない。また、高負荷のアプリケーションを実行した場合でも、ファンの音はほとんど大きくならない。マルチメディア機能の充実したノートとして考えると、この点は大きな魅力となるだろう。
●パフォーマンスも十分で、かなりお買い得 パフォーマンスを検証するため、いくつかのベンチマークテストを行なった。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark05」と「3DMark05」、「3DMark06」、スクウェア・エニックスが配布している「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」だ(3DMark03は測定中にエラーが発生して実行不能だった)。今回は、DirectX 9世代のグラフィックチップを搭載していることもあり、3DMark05および3DMark06も加えている。測定は、電源オプションプロパティの電源設定を「常にオン」に設定し、さらにグラフィック機能の省電力機構「PowerPlay」もOFFにして行っている。 結果を見ると、Intel Core Duo搭載のノートPCより若干低い結果となっている。また、グラフィック関連のテスト結果もあまりスコアがのびていない。これは、メインメモリがデュアルチャネル動作になっていないためだと思われる。メインメモリがデュアルチャネル動作であればスコアが大きく向上するはずなので、パフォーマンスを重視するのであれば、購入時にメインメモリを交換するか、NEC Directでのカスタマイズで同容量のSO-DIMMを搭載し、デュアルチャネル動作を実現した方がいいだろう。 とはいえ、AirTVを利用したTV視聴やTV録画、DVDビデオの再生はもちろん、搭載されているさまざまなアプリケーションを活用するには十分すぎるパフォーマンスが発揮されているのは間違いない。しかも、デュアルコアCPUの搭載によって、全体的に軽快な動作が実現されている点もポイントだ。例えば、TV番組の録画中に時間をさかのぼって再生させる場合でも、動作がもたつくことは全くなく、非常にスムーズな操作が可能だった。
【表】ベンチマーク結果
LL590は、ベーシックモデルながらデュアルコアCPUやWXGA表示対応のスーパーシャインビュー液晶を搭載し、ワイヤレスTVユニットAirTVを標準添付することによって、クラスを超えたパフォーマンスやマルチメディア能力を実現している。しかも、販売価格が21万円前後と、お買い得感は高い。必要十分なスペックと豊富なマルチメディア機能を搭載するコストパフォーマンス性の高いAVノートを探している人にお勧めしたい製品だ。
□NECのホームページ (2006年8月3日) [Reported by 平澤寿康]
【PC Watchホームページ】
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