ノートPCは、デスクトップPCに比べて省スペースであり、我が国の住宅事情にも適しているため、人気が高い。すでに数年前から、国内のPC総出荷台数に占めるノートPCの割合は過半数を超えており、その傾向は今後も強まっていくだろう。 ノートPCも、用途に応じて、モバイル向けやデスクトップリプレイス向け、AV機能重視のエンターテイメントノートPCなどさまざまな製品が登場しているが、これまであまりなかったのが、コアゲーマー向けのノートPCだ。 今回取り上げるデルの「XPS 1710」は、ボディデザインからスペックにいたるまで、コアゲーマーの要求に応えるために誕生した製品である。 ●鮮烈なレッドとシルバーが印象的なボディデザイン デルは、個人向けPCブランドとして、デスクトップPCの「Dimensionシリーズ」とノートPCの「Inspironシリーズ」を長年にわたって展開しているが、今回レビューする「XPS 1710」は、DimensionやInspironとは別のブランド「XPS」シリーズに属する製品だ。XPSは、個人向けPCのプレミアムブランドとして位置付けられており、デザインやスペック、機能など、一般的なPCでは物足りないユーザーをターゲットとしている。 XPSブランドは、米国で'93年に誕生したが、日本で販売が開始されたのは2003年のことだ。また、2005年まで、XPSシリーズの製品はデスクトップPCしかなかったのだが、2005年米国でノートPCが追加された。デルは、2006年を世界市場においてXPSブランドを本格的に展開する年として位置付けており、日本市場においても、XPS M1710をはじめ、タワー型PC「XPS 700」、20.1型液晶搭載ノートPC「XPS M2010」、モバイルノートPC「XPS M1210」の計4製品を投入した。 XPS M1710は、ゲーマー向けノートPCと謳うだけのことはあって、ボディデザインも一般的なノートPCとは一線を画している。ゲーマーの中には、派手なタワーケースに電飾パーツを多数使って、まるでデコトラのようなマシンに仕上げている人がいるが(特に海外で多いようだ)、XPS M1710のデザインにもそうした雰囲気が感じられる。液晶背面のレッドとシルバーのカラーが印象的で、2カ所に刻印されたXPSロゴも存在感をアピールしている。仕事で使うには派手すぎるだろうが、個性的なマシンで目立ちたいというゲーマーには受け入れられるだろう。 また、詳しくは後述するが、液晶背面のXPSロゴ部分とボディ左右側面の空気孔部分、ボディ前面のステレオスピーカー部分にライトアップ用のLEDが組み込まれており、電源を入れると美しく点灯することも特徴だ。このLEDの発光色は、16色の中から自由に選択できるようになっている。本体の重量は3.99kgであり、部屋から部屋へ移動する程度なら問題はないが、常に携帯するには向かないだろう。
●ビデオメモリ512MBの高性能GPUを搭載 高精細な3D描画を駆使した最新のゲームは、CPUやGPUにかかる負荷が非常に大きい。最新ゲームをフルオプションで快適に遊ぶには、高いパフォーマンスが要求される。そこで、XPS M1710は、現時点でのノートPCとして、最高レベルのスペックを実現している。CPUは、モバイル向けデュアルコアCPU「Core Duo T2600」(BTOでT2500やT2400も選択可能)を、チップセットとしてIntel 945PM Expressを採用。メモリスロット(DDR2対応SO-DIMMスロット)を2基装備しており、メモリ容量は最小512MBから最大2GBから選べる(増設は4GBまで可能)。HDDはシリアルATA対応で、80GB/100GB/120GBからチョイスできる。HDDはパック式になっており、容易に交換が可能だ。 XPS M1710のウリの1つとして、GPUにNVIDIAのGeForce Go 7900 GTXを選択できることが挙げられる。GeForce Go 7900 GTXは、NVIDIAのノートPC向けGPUの中でも、最もハイエンドに位置する製品であり、高い3D描画性能を誇る。筆者が知る限り、日本で発売されているノートPCで、GeForce Go 7900 GTXを搭載したのは本製品が初めてである。ベンチマーク結果については後述するが、3D描画性能は一般的なノートPCに比べてはるかに高く、ハイエンドPCに匹敵する。GeForce Go 7900 GTXを選択した場合、ビデオメモリ容量は512MBとなるが、こちらもノートPC、デスクトップPCを問わず、現時点では最大クラスだ。最新の3Dゲームも、快適に遊べるパフォーマンスを持っているといえるだろう。 GPUのBTOメニューには、GeForce Go 7900 GSという選択肢も用意されている。GeForce Go 7900 GSは、GeForce Go 7900 GTXの下位にあたる製品だが、それでも一般的なノートPC向けGPUに比べて、3D描画性能は格段に高い。価格を重視するのなら、こちらを選択するのもお勧めだ。 また、光学ドライブは、DVD±RWドライブまたはCD-RW/DVD-ROMコンボドライブの選択が可能である。 なお、今回の試用機のスペックは、CPUがCore Duo T2600、メモリが1GB(512MB×2)、HDDが100GB、GPUがGeForce Go 7900 GTX、光学ドライブがDVD±RWドライブ(NEC ND-6550A)というものであった。
●1,920×1,200ドット表示が可能な17型ワイド液晶を搭載 液晶ディスプレイとしては、17型ワイド液晶を搭載している。サイズは、一般的なノートPCとしては最大クラスだ。また、解像度が1,920×1,200ドット(WUXGA)と高いことも特徴である。いわゆる光沢タイプの液晶なので、発色は鮮やかで、コントラストも高い。視野角についても不満はない。アクションゲームなどでは液晶の応答速度が重要になるが、いくつかのゲームをプレイした限りにおいては、残像もほとんど気にならず、応答速度は十分だと感じた。また、解像度が高いので、複数のウィンドウを同時に開いても快適に作業が可能だ。 本体のサイズが大きいので、キーボードにも余裕がある。キーの配置は、ThinkPadシリーズのような7列キーボードになっており、ミスタイプも防げる。ポインティングデバイスとしては、タッチパッドを採用。タッチパッドにも赤色LEDが組み込まれており、電源を入れるとXPSロゴが浮かび上がるようになっている(LEDをOFFにすることも可能)。
キーボード上部には、MediaDirectボタンが用意されており、電源オフの状態で押すことで、素早くCDやDVDなどの再生が可能なDell Media Direct機能を呼び出すことができる。また、前面部には、マルチメディアキーが用意されており、再生や巻き戻しなど、AV関係の操作が可能だ。
●豊富なインターフェイスを装備 インターフェイス類も充実している。USB 2.0×6やDVI出力、D-Sub15ピン、Sビデオ出力、IEEE 1394(4ピン)、モデム、Gigabit Ethernetなどを本体に搭載するほか、ExpressCardスロットと5-in-1カードスロット(メモリースティック(PRO)、SDメモリーカード/MMC/xD-ピクチャーカード対応)を装備している。ただし、ExpressCardスロットのフタがダミーカード方式なのは残念だ。また、コンポーネント変換ケーブルも付属している。
ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g対応無線LANまたはIEEE 802.11b/g対応無線LANを選べるほか、Bluetooth v2.0+EDRも追加できる。独立したワイヤレススイッチは用意されておらず、Fn+F2キーでワイヤレス機能のON/OFFを行なうようになっている。なお、ワイヤレスインジケータは用意されている。
●ライトアップ用LEDの発光色は16色から選択可能 XPS M1710の特徴として、液晶背面のXPSロゴ部分とボディ左右側面の空気孔部分、ボディ前面のステレオスピーカーに、ライトアップ用LEDが多数組み込まれていることが挙げられる。輝度も高く、明るい部屋でも光っていることがはっきりわかる。LEDの発光色は、付属のユーティリティ「Dell QuickSet」またはBIOSを利用して、全16色の中から変更できる。
指定できる発光色は、複数の色が混ざったものもあり、なかなかきれいだ。ちなみに、発光色には「ルビー」、「シトリン」、「アンバー」、「ペリドット」、「エメラルド」など宝石の名称が付けられている。3カ所それぞれを別の色で光らせることができるので、光らせ方のパターンは、4,096通り(16の3乗)にもなる。自分の好みに応じて、発光色を変えられるのは面白い。
バッテリは9セル仕様で、80Whと比較的大容量だ。バッテリには5つのLEDが実装されており、残量を知ることができる。なお、バッテリ駆動時間は現在のところ公表されていないが、持ち歩いて使うマシンではないので、バッテリ駆動時間はそれほど重要ではないだろう。ただし、ACアダプタはかなり大きく、重量が0.76kgもある。
●コアゲーマーも満足できる高い3D描画性能を誇る 参考のために、いくつかベンチマークテストを行なってみた。ベンチマークプログラムとしては、PCMark05や3DMark03、3DMark05、FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3を利用した(電源プロパティの設定は「常にオン」で計測)。 結果は下の表にまとめたとおりである。比較用にVAIO type A、Let'snote CF-Y5やFMV-BIBLO MG75S、Lenovo 3000 C100の結果もあわせて掲載した。どのベンチマーク結果も、非常に優秀であり、特に3DMark03やFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3の結果は、VAIOノートシリーズのフラッグシップモデルであるVAIO type Aと比べても、大きく上回っている。これだけのパフォーマンスがあれば、最新の3Dゲームを高解像度でプレイしても、快適に動くはずだ。
【表】XPS M1710のベンチマーク結果
XPS M1710は、ゲーマー向けノートPCという名に恥じない、高いパフォーマンスを誇る製品である。一般的なビジネスアプリケーションを使ったり、インターネットを活用するだけならここまでの3D描画性能は必要ないが、ノートPCで最新ゲームをプレイしたいという人には、有力な選択肢となるだろう。いわゆるLANパーティ(自分たちでPCを持ち寄って、ネットワーク対戦ゲームを楽しむパーティ)に、持っていくためのマシンとしても向いているだろう。 今回の試用機構成の価格は35万円程度とかなり高価ではあるが、CPUをCore Duo T2400にし、GPUをGeForce Go 7900 GSにしたベーシック構成の最小モデルでは、24万円程度で購入できる。ベーシック構成でも最新ゲームを動かすのに十分なパフォーマンスを持っているので、コストパフォーマンスを重視するならベーシック構成がお勧めだ。 □デルのホームページ (2006年6月6日) [Reported by 石井英男]
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