元麻布春男の週刊PCホットライン

Bob Muglia副社長基調講演
「Longhorn Serverは2007年後半に登場」




●シェア拡大の武器は“馴染み深さ”と継続的な改良

Bob Muglia副社長

 WinHEC初日、最後のキーノートスピーカーとして登壇したのは、Server & Tools事業部を担当するBob Muglia副社長だ。

 “Winning with Windows Server”と題されたキーノートでまず同氏は、すでに出荷台数ベースでサーバーOSのシェアでWindows Serverが圧倒的なトップにあることを指摘した。その理由について、クラスで最高レベルの性能を実現していること、管理の容易さを挙げた。クライアントの分野でサーバー以上に圧倒的なシェアを持つWindowsは、どの市場セグメントにおいても知らない人間はいない。みなが慣れ親しんだ「Windows」であることも、サーバー市場でWindows Serverを後押ししている。

 しかし、すでに大きなシェアを持っているからといって、新たな事業のチャンスが残されていないということではない。Muglia副社長が大きなチャンスのある市場として挙げたのが、Small BusinessとHPCの分野だ。氏によるとSmall Businessの分野ですでにサーバーを導入しているのはわずか12%、800万台に過ぎないという。多くはPCを使っているだけで、そこには2千万台を超える手つかずの市場があると指摘した。

 もう1つのHPC市場は、従来からLinuxのシェアが高い分野だ。しかし、安価なx86ベースのクラスタシステムが増加するに伴い、HPC市場の裾野が拡大、それまではHPCが利用されていなかった分野、企業にもHPCが入るようになりつつある。この時、上述したWindowsの馴染み深さが有利に働いているという。誰しも初めて使うシステムより、すでに基本的な操作方法を知っているシステムを選ぶものだ。

 もちろん、馴染み深さだけでWindowsがサーバー分野でシェアを伸ばしているわけではない。継続的な製品の改良を怠ってはいない。Muglia副社長は、Windows Server 2003(SP1以降、32bitおよび64bit)向けにScalable Networking Packの利用が可能になったことを発表した。

 Scalable Networking Packは、TCP Offloadエンジン、マルチコアプロセッサ、Intel I/OATといったネットワーク分野でのハードウェア革新をサポートするためのソフトウェアスタック。これを利用することでパケット処理の際のCPUオーバーヘッドを20%~100%削減できるほか、最大40%のスループット拡大、接続可能なユーザー数の大幅な増強などを図ることが可能になる。

●改良と仮想化技術の搭載が進む“Longhorn”Server

Windows PowerShellの発表。GUIの時代になっても、コマンドラインの方が手っ取り早く簡単なことは依然としてある

 こうした絶え間ない改良の延長線上にあるのが“Longhorn”Serverだ。“Longhorn”Serverでは、サーバー管理を容易にする「Server Manager」が改良されるほか、管理者向けのコマンドラインシェル環境として、「Windows PowerShell」の提供が行なわれる。Windows PowerShellは、プロであるWindows管理者に複数サーバーの自動管理を助けるスクリプト環境を提供するものだ。

 こうしたサーバーそのものだけでなく、ストレージの世界でもWindowsの存在感は日増しに高まっている。販売された外部ストレージがどのOS環境に接続されるかという調査でも、Windowsが占める割合が急速に高まっている。中でも外部ストレージで著しい成長を見せているiSCSIに対してMicrosoftは投資をしており、iSCSIを用いたディスクレスブート技術の革新を行なっている。

 同様に、現在注目されている仮想化技術の分野においても、Microsoftの積極的な姿勢が見られた。Muglia副社長のキーノートに限らず、今回のWinHECで行なわれたデモの多くが、仮想環境上のWindowsを用いて行なわれている。

 Muglia副社長は、仮想化の種類として、ハードウェアレベルの仮想化(1つのハードウェア上で、複数のOSを動かす)、OSのサービスレベルの仮想化(1つのOSカーネルの上で、複数の独立したシステムサービス環境を動かす)、さらにアプリケーションレベルの仮想化(1つのOS上で独立した複数のアプリケーション環境を提供する)の3つを挙げ、すべてが重要であると指摘、アプリケーションレベルの仮想化を行なうソフトウェアを提供するSOFTRICITYの買収を発表した。デモでは、Windows上の仮想環境下で、RedHat Linuxを実行してみせたが、サーバインフラの提供者として、他社製OSのサポートを行なうことも必要であると述べた。

OSレベルの仮想化 OSサービスレベルの仮想化 アプリケーションレベルの仮想化

●スケジュールに遅れなし、リリースは2007年後半

最後に公表された“Longhorn”Serverのスケジュール

 現在Microsoftはサーバーの仮想化ソフトウェアとして、Virtual Serverを提供しているが、“Longhorn”Serverではこの機能がWindows Server VirtualizationとしてOSに統合される。加えて、“Longhorn”Serverの正式提供後180日以内に、新しい仮想化技術として「Windows Hypervisor」の提供を行なうと発表した。Windows HypervisorはWindows Server Virtualizationの新版であり、年内にβ版の提供が開始される予定だ。

 また、90日以内にSystem Center Virtual Machine Managerのパブリックβが開始される。System Center Virtual Macine Managerにより、仮想マシンの管理が容易になるだけでなく、ハードウェアリソースのより有効な活用、仮想マシンに対するダイナミックなリソースの割り当て(特定の仮想マシンに、仮想的なNICを追加したり、メモリを増設したり)が可能になる。

 最後にMuglia副社長は、“Longhorn”Serverの今後のスケジュールについて明らかにした。今回のWinHECの中日(キーノートの翌日)に参加者に対してβ2の配布が行なわれる。続いて、2007年の前半にβ3、そして2007年後半に製品版の提供が行なわれる見込みだ。これはクライアント版(Windows Vista)の提供から1年後を目処にサーバー版の提供を行なうという従来からの主張を裏付けたものであり、今のところスケジュールに遅れがないことをうかがわせるものだ。



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【5月25日】【WinHEC】64bit化を急速に進めるMicrosoft
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0525/winhec02.htm
【2005年9月17日】【PDC】PDC2005 ボブ・マグリア上級副社長基調講演
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0917/pdc03.htm

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(2006年5月25日)

[Reported by 元麻布春男]


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