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WinHEC2006 ビル・ゲイツ基調講演レポート

64bit化を急速に進めるMicrosoft

会期:5月23日~25日(現地時間)

会場:米国ワシントン州シアトル市
    Washington State Convention & Trade Center



 今回のWinHECは、初日のみ基調講演が行なわれる。その口火を切ったのは、もちろんビル・ゲイツ会長兼CSAである。

●64bit化のロードマップを公開

 ゲイツ氏は、まずWindows Vista以後の64bit対応について話を始めた。Microsoftは、Longhorn版サーバー(Windows Server Codename Longhornと現在は呼ばれている。以下Longhornサーバーと略す)のリリースを2007年後半に予定している。

 今後登場するサーバー系OSや2009年頃に登場予定のWindows Server R2 Codename Longhornでは、64bit版のみが提供される予定だという。そうなるのは、以下のものだ。

・Exchange Server 2007
・Windows Server 2003 Compute Cluster Edition
・Windows Server Codename Centro
・Windows Small Business Server Codename Cougar
・Windows Server R2 Code name Lognhorn

Microsoft会長兼CSAであるビル・ゲイツ氏 2007年以後に登場するサーバー系OSやサーバーシステムには64bit版のみ提供されるものが出てくる

 “Centro”は、数百台程度のクライアントを想定した中規模向けのサーバーOSで、カーネルはLonghornを使い、Exchangeなどを含むものになると言われている。つまりSmall Business Server Codename Cougarの上位版である。

 これは、2007年以降にサーバー分野では急速に64bit対応が進むことを意味する。

 なお、64bit版サーバーOSでは、EFIからの起動をサポートするといわれている。UEFI 2.0(Unified EFI Forumが策定するEFI仕様)では、ファームウェアレベルで32bitモードであり、64bitモードにも入ることができるため、16bitモードからスタートする現状のBIOSに比べて、ブートシーケンスが単純化される。このため、サーバー系ハードウェアでは、IA-32でもEFIを採用するハードウェアが増えると予想される(IA-64は最初からEFIを搭載している)。

Hypervisorによる仮想化技術のデモ。WindowsだけでなくRedhat Linuxが動作するところも見せた。敵をWindowsに取り込むというのはMicrosoftの得意な戦略

 基調講演では、Microsoftが搭載を予定している仮想化機能のデモも行なわれた。現在では、仮想化機能を搭載したVirtual Serverが無償で提供されているが、新しい仮想化機能は、“Hypervisor”と呼ばれる機能をOSに統合し、Longhornサーバーの中に仮想環境を構築する。このHypervisorは、年内にβテストが開始され、Longhornサーバーリリース後、100日以内にRTM(最終製品版)となり、その後、出荷されるとのことだ。

 なお、今回のWinHECでは、VistaだけでなくLonghornサーバーやOffice 2007β2の配布も行なわれるとのことだ。



●Windows VistaとPCエコシステム

 続いてゲイツ氏は、Windows Vistaの話に移った。Vistaには多数の機能が搭載されるが、PCを中心としたエコシステムは、さまざまなデジタル機器との連携で成立するとした。それはOSであるWindows Vistaに、インターネット上のサービスである「Windows Live」、そしてPCやインターネットに接続可能なさまざまなデジタル機器である。直接接続できないデバイスであっても、Liveを経由することでデバイス同士を接続することが可能になる。

 その例として、Windows Live Messengerに対応した電話機のデモを行なった。これは、2006 International CESの基調講演で発表されたものと同じだ。

 そのほかに、SideShowと呼ばれるデバイスのデモも行なわれた。これは、当初、ノートPCの液晶裏側(つまり閉じたときの表面)に装着する小さな液晶ディスプレイ、つまり携帯電話のようなセカンドディスプレイだった。組み込み系の小さなプロセッサと液晶から構成されており、PC側とはUSBで接続する。

 PCが動作中には、PCからの情報を表示し、PCがOFFになるときに必要な情報を記憶しておく。このようにすることでPCの電源を入れなくとも予定や最近受信したメールなどを見ることが可能になるわけだ。

 これをデスクトップ用にアレンジしたのが、フォトスタンド型のSideShowデバイスである。これは、メッセンジャーでオンラインになっているメンバーの写真と状態などを表示させておくことができるという。

 また、タブレットPCのデモも行なわれた。現行では、別系列となるTablet PC Editonは、Vistaでは統合され、モバイル機能の一部となる。VistaのTablet PC機能では、指による操作などが取り込まれるようだ。感圧式のタッチパネルを使うことでポイントやクリックといった操作は指だけで行なえるようになる。デモでは、指による操作時に表示にマウスを表すアイコンがオーバーレイ表示されていた。

オンラインサービスであるLiveにより、デバイス、アプリケーション、データ、ユーザーが相互に接続された状態となる。以前から言われていたようにPCにある情報を携帯電話などのほかのデバイスで利用できるようになるわけだ タブレットPCによるWindows Vistaのデモ。タッチパネルを装備していれば、スタイラスだけでなく指での操作も正式な操作方法としてサポートされるようだ。2005年のWinHECでは電磁式と感圧式を同時に組み込むことを提案していた。画面上部にマウス動作を表す画像がオーバーレイ表示されている

●途上国向けのプリペイドPC「FlexGo」

FlexGoでは、プリペイドカードを使って、利用時間を購入する。プリペイドカード上のコードを入力することでWindowsの利用時間を追加することができる仕組みのようだ

 最後に、ゲイツ氏は、途上国向けのプリペイドPCである「FlexGo」を紹介した。これは、MITなどの100ドルPCに対抗するものだ。PC自体は通常のものだが、プリペイドカードを使って、時間単位で利用することができる。簡単にいえば、プリペイド携帯電話をPCにしたようなものだ。プリペイドカードを使ってアクティベートした時間だけPCを利用することが可能になる。

 仕組み的には、かつてISP契約と組み合わせた無料PCと似たようなものだが、支払いをプリペイドカードとして、継続的に支払う必要を無くし、また、カードによる利用権の譲渡などを可能にしている。プロバイダ側は、継続的ではないものの、プリペイドカードにより、長期間の収入が見込めるため、結果的にハードウェアを安く提供することができるようになる。

 ユーザー側は、初期投資額が小さく、必要な時間だけをプリペイドで支払えるため、一時的に大きな出費をする必要がなくなるわけだ。

 ゲイツ氏は、このFlexGoのメリットとして、新しいビジネスモデルであること、ハードウェアが通常のPCであることから、現在のPCのエコシステムに組み込まれ、また継続的な発展が可能であることを述べた。このあたり、MITの100ドルPCをかなり意識しているようだ。

□WinHEC 2006のホームページ(英文)
http://www.microsoft.com/whdc/winhec/
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【5月24日】【笠原】MicrosoftがWindows Vista β2を公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0524/ubiq156.htm
【5月24日】マイクロソフト、次期Officeのβ2を提供開始
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0524/ms.htm
【5月22日】Microsoft、新興市場向けプリペイドカード式PC
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0522/ms.htm
【1月6日】【CES】ビル・ゲイツ氏基調講演レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0106/ces03.htm

(2006年5月25日)

[Reported by 塩田紳二]

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