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PDC2005 ボブ・マグリア上級副社長基調講演
~Longhorn Serverは2007年に

Windows Server担当のボブ・マグリア上級副社長

9月13日~16日(現地時間)

会場:米ロサンゼルス市コンベンションセンター



 PDCは、4日間開催されるが、基調講演は3日目までしかない。4日目は午前中だけで、開催期間は実質3日間という感じである。

 さて、3日目に登場したのは、Windows Server担当のボブ・マグリア上級副社長である。Longhornに関しては、ClientとOfficeそしてServerが予定されていて、すでに最初の2つは発表された。残るServerに関しての話がマグリア氏のスピーチである。

●Windows Server 2003 R2

 予定から先にいってしまうとLonghorn Serverは、2007年の登場になる。だいたい2年先の話である。

 それでは、ビジネスが持たないわけで、現行のWindows Server 2003に対しては、機能を強化した「Windows Server 2003 R2」が予定されている。マグリア氏は、このR2から話を始めた。

 R2は、Windows Server 2003 SP1を強化するものだが、これまでの話では、どちらかというとリフレッシュ版といった感じのものだった。

 しかし、今回、R2には、Webサービスを使ったシステム管理機能を実現するWS-ManagementとVistaで導入予定のMMC 3.0などが含まれることが発表された。MMC 3.0では、管理コンポーネントを.NETのマネージコード(CLRの仮想コード)で記述することが可能になる。

 これまでに発表された話だと、バグフィックスや若干の機能拡張、それと.NET Framework 2.0やServices for Unixなど、すでに無償でダウンロードできるものが同梱される程度という話だったが、これではあまりに代わり映えがしないからだろうと思われる。

 本命のLonhorn Serverだが、先に述べたように、その登場は2007年になる。つまり、WindowsVistaが登場したあとのタイミングだ。2006年には、Windows Server 2003ファミリに大規模計算クラスタに対応したCompute Cluster Solutionが登場する。これは、High Performance Computing Clusterを構築するためのWindows Server 2003 Compute Cluster Editionと管理ツールなどのパッケージから構成されるもの。これまで、Microsoftは、クラスタ機能を提供していたが、これは、高可用性を実現するためのもの。つまり、1台が壊れても他のマシンで作業を肩代わりするようなものを前提としたものだ。

 これに対してCompute Cluster Solutionは、複数のマシンで並列計算を実行することを前提にしたクラスタシステムである。これを使うことで、64bit CPU(Compute Cluster Editionは、64bit CPU版のみ)を使った高速計算システムなどを構築できる。数多くのノードを使えば、スーパーコンピュータークラスの計算が可能になるし、スーパーコンピュータとまではいかないものの、ハイエンドのマルチプロセッサシステムが必要となるような場合でも、安価なPCシステムを寄せ集めて処理が行なえるようになる。

Windows Server 20003には、WS-Management、MMC3.0などが組み込まれる 2006年には、Windows Server 2003 Compute Cluster Solutionが登場。さらにWindowsVistaによりWinFXとMonadが市場に導入される

●Monad

Monadは、.NETオブジェクトを扱うことができるスクリプト言語システムのコードネーム。MSHとしてコマンドラインウィンドウで利用できる

 また、Vistaにより、Longhorn Serverでも重要となるコンポーネントが広く使われるようになる。それは、WinFXと新しいスクリプトシステムであるMonad(Microsoft Command ShellやMSHと呼ばれていたもの)である。

 Monadは、従来のBatchやWSHよりも広範囲な適用が可能なスクリプトシステム。感じとしては、Unix系のシェルスクリプト同様に、細かいシステムの制御などを可能にするスクリプトシステムである。.NETのオブジェクトを直接扱えるため、WinFX環境では、広範囲なシステムへのアクセスが可能だ。

 スクリプトなので、グラフィックスを動かすようなアプリケーションの作成には向かないが、リアルタイム性が高くなければ、大規模なアプリケーションも記述が可能だ。また、XMLを直接扱うことができる言語仕様になっており、設定データや.NETアプリケーションが扱うデータファイルなども処理可能だ。

 実際、Unix系のシステムでは、シェルスクリプトやPerlなどのスクリプト言語で作られた大規模なアプリケーションなどがあり、Monadはこうした分野をカバーするものになる予定。

 2003年のPDCでは、単純なシェルスクリプトという位置づけでMSH(Microsoft SHell)などと呼ばれていたが、この2年の間に適応範囲が広くなったようだ。

 GUIの時代になぜいまさらスクリプト言語を? と思われるかもしれないが、管理や運用といった場面では、GUIを使えない場合が少なくない。コマンドラインでは、実行に必要な情報や動作指定などをすべてオプションとして記述でき、記録することで再実行が簡単になる。このため、複雑な設定や作業であっても、必要なコマンドを並べておきさえすれば、自動的に実行させることができる。これがGUIだと、ユーザーがマウスを動かしたり、キーボードからパラメーターを入力してやらねばならず、自動実行は困難である。

 これまで、こうした役目は、CMD.EXEのBatchやWSHが担ってきた。また、Windows Server 2003では、コマンドライン機能もかなり強化されたのだが、まだまだ力不足な場面が少なくなかった。たとえば、Batchはあまりに非力でファイル処理程度にしか利用できず、WSHの標準言語であるVBScriptやJScriptでは、Win32 API呼び出しができなかったり、イベントハンドリングに制限があった。

 WinFXの登場により、OSのほとんどの機能が.NETオブジェクトとして扱えるため、Monadは、広範囲なシステムへのアクセスが可能になるわけだ。

●Longhorn Server、IIS7.0、仮想化技術

 その後に登場するLonghorn Serverの役割は、サーバーとしてネットワークに対して各種のサービスを提供することにある。特にIndigo(Windows Communication Foundation:WCF)では、重要な位置を占める。Windows Workflow Foundationのように多くのクライアントが協調して動作するような機構では、管理中枢としてどうしても必要になる。

 その中核ともいえるのが、WebサーバーというよりもHTTPサーバーであるIISである。Webサービスを実現するためにHTTPは重要な要素であり、そのサーバーとなるIISは、Webサービスだけでなく、WCFにとっても必要なパーツである。

 Longhorn Serverでは、IISがバージョンアップされ7.0となる。この7.0は、現在のIIS 6.0の後継としてASP.NETを統合し、よりモジュラー化を推し進めたものになるという。また、開発時のデバッグなどを考慮し、実行のトレースや状態診断機能などが強化される予定。Webサービスでは、SOAPなどのプロトコルを使って機能呼び出しが行なわれるが、これは従来のAPI呼び出しのようなもの。デバッグ時には、この部分の動きを詳細に分析する必要などがあり、このための機能が強化されるのだという。

 また、このIIS 7.0から、設定情報がファイルベースになるようだ。現在のIIS 6.0では、管理情報はすべて専用のデータベースファイル内に格納されている。このため、設定の変更は管理者だけが行なうことができた。しかし、これでは、たとえば、レンタルサーバーやWebページサービスのように特定の部分だけの管理をユーザーに任せることができない。このためにIIS 7.0では、設定情報をXMLベースのテキストファイルに格納、たとえば、特定のフォルダ以下の設定をこのファイルで管理できるようにした。これは、Apacheなどの.htaccessファイルと同じやり方である。

 さらに2007年には、IntelのVT、AMDのPacificaに対応した仮想化技術が導入される予定だという。Windows Hypervisorを使い、ハードウェアを仮想化、複数の環境を同時に実行、管理できるようにする予定だという。現在でも、VertualPCやVirtual Serverなどの製品があるが、Longhorn Serverには、このWindows Hypervisorが組み込まれることになるという。

 初日の基調講演のあと、参加者は、Windows Vistaなどが含まれたディスクセットを受け取った。しかし、そのケースには1つ空きがあった。最終日の基調講演で、その空きに入れるのは、LonghornのCTP(Community Technology Preview)版であることが明かされた。

 最後に、マグリア氏は、64bit版の可能性について述べた。大容量のメモリがパフォーマンスを改善することになり、Windows Serverは急速に64bitに移行すると予測。すでに32bitはレガシーであり、我々は、レガシーのサポートは続けるが未来は64bitにあると述べ、スピーチを終えた。

2007年にはLonghorn Serverが登場。今回は、そのCTP版が配布された Longhorn Serverでは、ハードウェアのホットプラグ(稼働中の部品交換)に対応する
IIS 7.0は、ASP.NET 2.0を統合、WEBサーバー、Windows Communcation Foundationサーバーとしの役割を持つ CPUがサポートする仮想化技術を使うWindowsHypervisorや管理ツールが開発中だという

□PDC2005のホームページ(英文)
http://msdn.microsoft.com/events/pdc/

(2005年9月17日)

[Reported by 塩田紳二]

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