松下電器産業の「Let'snote」シリーズは、軽くて堅牢性に優れ、バッテリ駆動時間も長いモバイルノートPCとして人気がある製品だ。 2006年4月25日、Let'snoteシリーズの夏モデル4製品が発表された。今回発表された4製品の中でも特に注目したいのが、Let'snoteシリーズで初めてCPUにCore Duoを搭載した「Let'snote Y5」だ。 Let'snote Y5は、筐体デザインも旧モデルのLet'snote Y4から一新されており、耐荷重100kgfやキーボード全面防滴を実現するなど、フルモデルチェンジと呼ぶにふさわしい製品に仕上がっている。 筆者も2年前から「Let'snote Y2」を愛用しており、いつYシリーズにCore Duoが搭載されるか、心待ちにしていたのだ。今回は、Let'snote Y5の試作機を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。 ●Core Duo搭載で高いパフォーマンスを実現 松下電器産業のLet'snote Y5 CF-Y5KW8AXR(以下Let'snote Y5)は、14.1型液晶を搭載した2スピンドルモバイルノートPCだ。Let'snote Yシリーズは、携帯性重視のLet'snoteシリーズの中で最もサイズが大きいモデルだが、他社の14.1型液晶搭載機に比べてはるかに軽く、バッテリ駆動時間が長いことが魅力だ。Let'snote Y5は、従来のLet'snote Y4に比べて多くの点が進化しているが、まずは基本スペックから見ていきたい。 Let'snote Y5では、CPUとして低電圧版Core Duo L2300(1.5GHz)を搭載している。Let'snote Y4に搭載されていた低電圧版Pentium M 778(1.6GHz)に比べると、動作クロックは100MHz低いが、デュアルコア化されたことと、内部のマイクロアーキテクチャが改良されたことによって、パフォーマンスは大きく向上している。デュアルコアCPUなので、バックグラウンドでウイルススキャンなどの他のアプリケーションが動作していても、メインのタスクにあまり影響を与えず、快適に作業が可能だ。 ちなみに、同時に発表された他のLet'snoteシリーズでは、シングルコアの超低電圧版Core Solo U1300を搭載しており、デュアルコアCPUを搭載しているのは、Let'snote Y5のみだ。ただし、これまでのLet'snoteシリーズはファンレス設計であったが、Let'snote Y5では冷却用ファンが搭載されている。 ファンを搭載したのは賛否両論あるだろうが、筆者のLet'snote Y2は、ごくたまにだが、床の状況などによって本体が異常に熱くなり、動作が不安定になることがあった。ファンを装備していれば冷却能力に余裕が生じるため、そうした状況にはならないことが予想される。もちろん、騒音面では不利だが、無理にファンレス動作を実現するよりも、ファンを装備しているほうが安心して利用できる。 チップセットには、最新のIntel 945GMS Expressを採用。Let'snote Y4に搭載されていたIntel 915GMS Expressに比べて、内蔵グラフィックスコアの3D描画性能が向上している。メモリは標準で512MB実装しており、MicroDIMMによって最大1GBまで増設が可能だ。ただし、Intel 945GMSは、デュアルチャネルアクセスには非対応だ。 モバイルノートPCでは、サイズや軽量化を優先して1.8インチHDDを採用している製品も多いが、Let'snoteシリーズではパフォーマンスを重視して、2.5インチHDDの搭載にこだわっている。HDD容量は従来と同じ60GBだが、直販サイトの「マイレッツ倶楽部」では、100GBモデルも用意されている。HDDには衝撃吸収材が貼られているほか、底面のゴム足が大きくなったことで、耐衝撃性能が向上。非動作時30cm落下試験(26面)と、動作時10cm落下試験(底面)をクリアしている。
●耐荷重100kgfとキーボード全面防滴を実現 Let'snote Y5の筐体サイズは従来とほぼ同じだが、天板のボンネット構造の形状が変更されており、耐荷重が従来の50kgfから100kgfと2倍に向上した。他のLet'snote R/T/Wシリーズでは、すでに耐荷重100kgfを実現していたのだが、Let'snote Yシリーズもようやく追いついた格好だ。 Let'snote Y4では、後部のバッテリ部分がやや分厚くなっていたが、Let'snote Y5では筐体がよりフラットな形状になり、カバンへの出し入れがしやすくなった。また液晶のヒンジ部分の形状も変更されており、耐衝撃性の向上に貢献している。
また特筆したいのが、Let'snoteシリーズで初めてキーボード全面防滴を実現したことだ。ウォータースルー構造と呼ばれる構造を採用しており、万一水(コップ1杯程度)をキーボードにこぼしても、キーボード下部に敷き詰めた防水シートによって内部への水の浸入を防ぎ、底面の水抜き穴から排出される仕組みになっている。ノートPCのキーボードに誤って液体をこぼして、壊してしまった経験がある人もいるだろうが、Let'snote Y5ならそうした事故を減らすことができる。 ほかのメーカーの製品でも、コンシューマー向けのモバイルノートPCでキーボード全面防滴を実現している製品は非常に珍しい。もちろん、企業向けの「TOUGHBOOK」と違って防水仕様ではなく、水をかけても壊れないことが保証されているわけではないが、より安心して使えるようになったことは確かだ。 ●重量が40g軽量化 Let'snote Y5は、スペックが大幅に強化されたにもかかわらず、重量が1,490gまで軽量化されたことも魅力だ(Let'snote Y4では1,530g)。14.1型液晶搭載2スピンドルノートPCとしては世界最軽量を誇る。 この軽量化は、マグネシウム成型ボディの肉厚を従来の0.6mm厚から0.55mm厚に削減したことや、59.5gの超軽量光学ドライブの採用(Let'snote Y4では99g)によって実現したという。光学ドライブには、松下独自のシェルドライブを採用。DVDスーパーマルチドライブだが、DVD+R DLなどの2層メディアの書き込みには対応していないのが残念だ。 液晶ディスプレイとして、1,400×1,050ドット(SXGA+)表示対応14.1型液晶を搭載。ガラスの厚みをLet'snote Y4の0.3mmから世界最薄の0.2mmにし、さらなる軽量化が図られている。解像度が高いので、複数のウィンドウを同時に開いても快適に利用できる。いわゆる光沢タイプではなく、ノングレアタイプの液晶なので、鮮やかさには欠けるが、写り込みも少なく、長時間使っていても疲れにくい。
14.1型液晶搭載機なので、キーボードにも余裕がある。キーピッチは19mmで、配列も標準的で使いやすい。ポインティングデバイスとしては、Let'snoteシリーズではお馴染みの円形のホイールパッドを採用。ただし、従来とはボタン周りのデザインが変更された。従来のLet'snote Y4では、左右のクリックボタンが隣り合わせになっていたが、Let'snote Y5では、中央部分がボタンではなくなり、左右のボタンが離れて位置するようになっている。
●Let'snote Yシリーズで初めて無線LANスイッチを搭載 インターフェイスとして、USB 2.0×2やアナログRGB出力、モデム、Ethernetなどを装備しているほか、新たにミニポートリプリケーター端子が用意されたことも特徴だ。オプションのミニポートリプリケーターには、USB 2.0×3やD-Sub15ピン、Ethernetポートが用意されており、ワンタッチで周辺機器などの着脱が可能だ。
USBポートの位置も、Let'snote Y4では左側であったが、Let'snote Y5では右側になり、マウスなどを繋ぐ際にケーブルの取り回しがしやすくなった。また、Ethernetポートやモデムポートのゴムカバーがなくなったことも、個人的には評価したい(ゴムカバーは邪魔だし、劣化してくるので)。Let'snote Y4にはなかった無線LANスイッチが用意されたことも嬉しい(W/Tシリーズではすでに実装されている)。 【お詫びと訂正】初出時、無線LANスイッチについて「R/W/Tシリーズではすでに装備されており」とありましたが、Rシリーズでは搭載されておりません。お詫びして訂正させていただきます。このようにインターフェース周りにも改良が行なわれており、使い勝手が向上している。 カードスロットとしては、Type2 PCカードスロットとSDカードスロットを装備。このあたりの仕様は、従来と変わらない。
●標準バッテリで約9時間駆動を実現 モバイルノートPCではバッテリ駆動時間が重視されるが、Let'snote Y5では、最新の高容量電池(2,850mAhセル)や高効率液晶の採用、消費電力の地道な削減努力によって、公称バッテリ駆動時間も従来の約7時間から約9時間へと延びている。標準バッテリで9時間持てば、十分満足できる。バッテリは10.65V/5,700mAhの6セル仕様で、大容量バッテリは用意されていない。
また、従来と同様、バッテリの充電を80%に留めることで、サイクル寿命を1.5倍に延ばすエコノミーモードも搭載されている。セキュリティ機能も強化され、セキュリティに関する設定項目を一括して管理できる「セキュリティ設定ユーティリティ」がプリインストールされたほか、BIOSレベルでポートやスロット類の有効/無効の設定を行なえる。
Let'snoteシリーズは、本体の携帯性が高いことはもちろん、ACアダプタもコンパクトで軽いことが魅力であった。しかし、Let'snote Y5では、ACアダプタが従来に比べてやや大きく重くなっている。とはいえ、ACアダプタの重量差は45g程度であり、本体との合計重量はほぼ同じだ。
参考のために、いくつかベンチマークテストを行なってみた。ベンチマークプログラムとしては、SYSmark 2002や3DMark03、PCMark05、FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3を利用した(電源プロパティの設定は「常にオン」で計測)。 結果は下の表にまとめたとおりである。比較用に「FMV-BIBLO MG75S」や「Lenovo 3000 C100」、「ThinkPad Z60t」の結果もあわせて掲載した。 Core Duo T2300を搭載したFMV-BIBLO MG75Sに比べると、Let'snote Y5は、CPU動作クロックが低く、チップセットも下位のものを採用しているため、ベンチマークスコアは全体的に低くなっているが、Pentium M 740を搭載したLenovo 3000 C100に比べれば、PCMark05のCPU Scoreなどの値は高い。重さ1.5kg以下のモバイルノートPCとしては、トップクラスの性能を持っているといえる。
【表】ベンチマーク結果
●携帯性と堅牢性、性能の三拍子揃ったマシン Let'snote Y5は、携帯性と堅牢性、パフォーマンスの三拍子揃ったモバイルノートPCであり、製品としての完成度は非常に高い。従来のLet'note Y4に比べて、パフォーマンスが向上しただけでなく、堅牢性も向上し、キーボード全面防滴を実現している。 さらに、重量も軽くなり、バッテリ駆動時間も延ばしていることには、本当に驚かされた。開発者の努力には、頭が下がる思いだ。 価格が高めなことがネックだが、14.1型液晶搭載の2スピンドルモバイルノートPCで、重さ1.5kgを切った製品は、Let'snote Y5しか存在しない。携帯性と性能の両方を重視するヘビーモバイラーにお勧めしたい製品である。 □松下電器のホームページ (2006年4月26日) [Reported by 石井英男]
【PC Watchホームページ】
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