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頼もしきかなノートパソコン




 ノートパソコンが1台あれば、たいていのところで仕事ができる。インターネットのおかげで、大量のリファレンスを持ち歩く必要もない。日常の情報収集から、書き物、調べ物、事務雑事にエンタテイメントと、すべてをこなす強力なサポーターだ。だが、ちょっと長期の出張となると、その非力さが気になり始める。

●出張とノートパソコン

 今回の海外出張は、別件取材のために前入りしたため、8泊10日という比較的長丁場になった。通常の出張は4~5泊がほとんどなので、ほぼ倍の日程だ。滞在はカリフォルニアのベイエリアだったが、最初の3泊を郊外のニューアークという街で、そして、残りの5泊をサンフランシスコダウンタウンで過ごすスケジュールだった。

 出張には必ずパソコンを2台持って行く。以前も紹介したが、大中小と3種類あるノートパソコンの中から、今回は、大と小、すなわち、レノボの「ThinkPad T43」と松下の「Let'snote R4」を携行した。大はホテルの部屋に置きっぱなしにし、小はインタビューやカンファレンス会場に持ち出して取材用に使うわけだ。

 最近は、飛行機の座席にもAC100Vのコンセントが装備され、バッテリの持ちを気にする必要はなくなった。今回は、ノースウェスト航空を利用したのだが、往路はコンセント部分の接触不良に悩まされたもののなんとかACを供給できたが、復路は、コンセントどころか、座席装備のオンデマンドTVも使えない状態で、お詫びの印にと、機上でアルコールドリンクと引き替えられるクーポン2枚をもらった。こういう基本的なところがきちんと整備できないというのはどうかと思う。

 往路の飛行機がサンフランシスコに到着したのは、予定時刻よりも1時間以上早かった。迎えを待つ間、空港の無線LANを使ってメールなどをチェックし、Webを一通り見た。ぼくが日本で加入しているNTTコミュニケーションズの「ホットスポット」は、米国の「T-Mobile」とローミングが可能だ。ぼくが降り立ったターミナルでは、無線LANは無償のものが見つからず、ローミングするしかなかったのだが、1分20円と、ちょっと高額だ。それでも携帯電話でつなぐよりははるかに安い。ただ、今どき、接続時分で課金するようなことはやめにできないものかと思う。のろのろしていると、どんどん課金がかさむので、インターネットはさっさと切り上げ、コピーしてあった録画済み1時間ドラマを1本見たところで、迎えが到着した。飛行機の中でバッテリを使い切っていたなら、こういうことはできなかったろう。満充電の状態で出張先の生活をスタートできるというのは心強い。

●ホテルでの作業環境を工夫する

 出張が10日間におよぶと、その期間中には、それなりに〆切がやってくる。そこで、少しでも快適に仕事ができるようにするため、ホテルの部屋での作業環境を工夫してみることにした。

 まず、キーボード。ThinkPadのキーボードは入力のしやすさに定評があるが、さすがに単体のキーボードにはかなわない。ぼくは自宅の仕事場では、東プレの「Realforce 106」を使っているが、別途調達してある「Realforce 91U」をスーツケースに放り込んで持って行った。

 マウスは、ロジクールの「MX-900」だ。デスクトップ用のBluetoothマウスだが、電源スイッチがないため、バッテリの消耗は早い。でも、出張期間くらいならラクにクリアできる。ThinkPadはBluetooth搭載モデルなので接続も簡単だ。

 さらに、サウンド。こちらは、ロジクールの「Logicool V20 Notebook Speakers」を持って行った。USB接続のコンパクトなスピーカーで、意外にズッシリした重量のおかげか、見かけ以上にしっかりした音がする。しっかりしたモバイルケースが付属しているので、安心してスーツケースに放り込んでおける。

●ノートパソコンをスタンドに立てかける

 マウスはBluetoothだが、キーボードとスピーカーはUSBなので、これらを外付けで接続したことで、ThinkPadに装備された2個のUSBポートがふさがってしまった。本当ならiPod用と、Webカメラ用にあと2個のポートが欲しいところだ。USBハブを持って行けば済む話ではあるが、そこまでするかよという自制心が働き、持参はしなかった(でも、現地で欲しくなって近場の量販店に赴いたのだが、最低でも27ドルと、日本円に換算すると税込み4,000円近いのを見てやめにした。同程度の製品が確実に2,000円以下で買える日本は幸せだ)。

 いずれにしても、これらの機器をデスクに並べると、キーボードをパソコンの手前におくために、画面までの距離がどうしても長くなってしまう。この問題を解決するために、ThinkPadをスタンドに立てかける。現行ノートパソコンの多くは、ディスプレイとキーボードがほぼ180度まで開き、完全にフラットになるというものが少ないが、ThinkPadなら大丈夫だ。

 スタンドは手元にあったタブレットPC、NECのLaVieに付属のものを流用した。保証外の使い方だが、角度も2段階に変えられる優れものである。「ノートパソコン スタンド」を検索ワードにして探してみると、けっこういろいろなものが商品化されているようで、きっと、同じような使い方をするユーザーが少なくないのだろう。

 こうして、設置したThinkPadは、持参した無線ルータに、有線で接続する。持ち運ばないのであれば有線LANが安定していていい。そして、ルータのWAN側はホテルのハイスピードインターネット用のVDSLモデムに接続する。

 今回宿泊したホテルでは、ハイスピードインターネットが、正午から正午の24時間で12.95ドルだった。かなり高額だ。しかも、決済時に使ったパソコンのMacアドレスを記憶するため、2台目のパソコンでインターネット接続しようとするとやっかいなことになる。だから、ルータが必要なのだ。

●気になるネットワークのレイテンシー

 今回の出張では、ソニーの「ロケーションフリーTV」を試してみた。先だってのファームウェアバージョンアップで、「VAIO Xビデオステーション」にもAVマウスが対応し、録画済みの番組を指定して配信できるようになったので、その使い勝手を試してみたかったのだ。

 具体的には、XビデオステーションのAV OUTをロケーションフリーのベースステーションのAV INに接続し、AVマウスの送光部をXビデオステーションの受光部のそばに置いておく。こうしておくことで、PCにインストールした「ロケーションフリープレイヤー」から、インターネット越しに、ソフトウェアリモコンでXビデオステーションを操作できるようになる。

 結果として、米国からの視聴でも、画質や音質はガマンできるギリギリのところをクリアしていた。比較的インターネットが軽い時間帯では、かなりまともな品質の映像が得られる。これにはちょっと驚いた。画質が多少落ちることがあっても、音声がとぎれなければ、なんとか鑑賞に堪えるものだ。

 また、今回のバージョンアップにより、「タイムマシンビュー」と呼ばれる番組表からの再生コンテンツ選択機能などが新たに搭載され、以前よりは、はるかに使い勝手は良くなったのだが、結論から言うと、インターネット越しの操作では、反応が鈍すぎて使い物にならなかった。

 そこで、Xビデオステーション用の専用ユーティリティ、XVブラウザで見たい番組を選び「テレビで再生」を実行し、ロケーションフリープレイヤーでそれを見るという二段構えの作戦に出た。

 こうした方法で、日本で放送されているTV番組は自在に見ることができるのだが、リアルタイムで放送されている番組はともかく、再生中の番組を自在にコントロールできるかといえば、さすがにそれはつらい。とにかくインターネット越しのリモコンの反応が鈍いため、CMのスキップなどがままならないのだ。ある程度の帯域幅が確保できたとしても、ネットワークのレイテンシーが使い勝手に大きな影響を及ぼすことがよくわかる。ソニーに言うべき話ではないが、将来的には、これもなんとか解決してほしいものだ。

 しかたがないので、録画済みの番組をダウンロードして見るというなさけないことを繰り返していた。ぼくが日常的に録画しているビットレートでは、1時間番組のファイル容量は約1.5GBある。これをインターネット経由でアメリカからダウンロードすると、6時間では終わらない。朝、ダウンロードを仕掛けてホテルの部屋を出るのだが、正午にいったんインターネット接続が切れるので、夕方戻ってやり直し、ということも少なくなかった。ビットレートでいうと、1Mbps弱といったところだろうか。これでも、以前に比べれば、ずいぶん速くなったものだと思う。こうして毎日のように、前夜の連続TVドラマをダウンロードし、日本にいるときと同様に寝る前のひとときを楽しむことができた。

 帯域制限でもかかっているのかと思ったが、サンフランシスコ最終日の夜中には3時間程度でダウンロードできるようになったので、やはり、IT関連のカンファレンス開催時には、ホテルのインターネットも混み合うということなのだろう。ちなみに、同様のことを日本国内のFTTH相互でやると、10分程度でダウンロードが終わってしまう。海の向こうはまだまだ遠いということがよくわかる。

 そんな状況で、こんな使い方をするのは、他人への迷惑だと言われそうだが、誰かが使わないと永遠に回線は増強されず、状況は良くならない。まして、24時間で12.95ドルといえば、税込みで1,500円近い値段だ。それで1Mbpsというのはあんまりだ。ホテル側の問題なのか、そのプロバイダーの上流の問題なのか、ボトルネックがどこなのかはわからないが、せめて、ビットレート4Mbps程度のコンテンツなら、ストリーム配信で見られるくらいにはなってほしいと思う。もはや、Webの静的コンテンツとメールだけで十分という時代ではないと思う。

●もっともっと速いパソコンが欲しい

 こうして、出張先でも、それなりに快適な作業環境が作れるものの、自宅での作業に使っているパソコンに対して、やはり、パフォーマンスの点で劣る点はどうしようもない。自宅のパソコンでさえ待たされることが少なくないのだから、処理能力の点で劣るノートパソコンではいたしかたない。

 これ以上パソコンが速くなってどうするという論調もあるのだが、個人的には、パソコンはまだまだ遅いと思う。Intelは、プロセッサのデュアルコア化によって、ノートパソコンのパフォーマンス向上を果たそうとしているが、I/Oを含めたトータルパフォーマンスに優れたパソコンで、快適に出張をこなせるようになるまでには、あとどのくらいの歳月が必要なのだろうか。

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(2006年3月17日)

[Reported by 山田祥平]


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