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AMDがAMD LIVE!のデモを初公開




●AMD LIVE!をデモ

 AMDは、先週前半(3月6日~8日)に、米サンフランシスコで報道関係者向けの個別ブリーフィングを開催。そこで、AMDのエンターテイメントプラットフォーム「AMD LIVE!」や、デュアルコア版モバイルCPU「Turion 64 X2」のデモなどを公開した。また、次期リビジョンK8「Revision F(Rev. F:レヴエフ)」やその先のロードマップについての説明も行なった。

 AMD LIVE!は、1月の「Consumer Electronics Show (CES)」でコンセプトだけが発表された。今回は、具体的な戦略と要求仕様が公開された。AMD LIVE!準拠のデスクトップスペックは下の通り。ノートPC向けスペックは、まだ策定中だという。

AMD LIVE! PC
CPUAMD Athlon 64 X2 or dual core AMD Athlon 64 FX
OSWindows MCE (Windows Vista Premium)
要求仕様Vista対応
推奨仕様Vista Premium Logo要求仕様
グラフィックスVista Premium (Aero)対応
デュアルグラフィックス対応(AMD Athlon 64 FX)
マザーボードAMD LIVE! Ready (Socket AM2/95A)
HDDSATA HDD
2 SATA HDD w/RAID (AMD Athlon 64 FX)
ODDDVD+/-RW
ネットワークIEEE 802.11gまたは802.11 a/g(オプション)
メモリ1GB以上
ディスプレイ出力VGA, DVIまたはHDMI w/HDCP(オプション)
TVチューナ(リモコン)オプション
ワイヤレスキーボード&リモコン推奨
電力高効率, 低RPM(温度センサーコントロールファン)
騒音未定

AMD LIVE!デモ機

 AMDによると、Intelの「Viiv」との最大の違いは、Intelのようなソフトウェアスタックを提供しない点だという。「Intelのソフトウェアスタックは、PC OEMが望んでいないものだ。製品に複雑性を加えてサポートコストを増すだけ。AMD LIVE!は、IntelのViivに似ているように見えるが、その精神は大きく異なる」と、AMDのTeresa de Onis(テレサ・デ・オーニス)氏(Desktop Product and Brand Manager, Microprocessor Solutions Sector)は主張する。もっとも、IntelはIDFで、Viivではユーザーの使い勝手が増すため、サポートコストが削減できる点を訴えている。

 ここでAMDは「AMD LIVE!」のデモを初公開した。もっとも、AMD LIVE!の実態は、現状ではハードウェアスペックとそれに対するロゴライセンスであるため、デモといっても、AMD LIVE!準拠のRev. Fマシンが展示されただけ。AMD LIVE!ロゴとユーセージモデルのムービーを再生するだけにとどまった。

●急ピッチで進むSocket AM2への移行

 秒読み段階に入ったRev. Fは、デスクトップCPUでは、940ピンの新ソケット「Socket AM2(Socket M2と呼ばれていた)」で導入される。AMDの計画では、Socket 939だけでなくSocket 754の両方をSocket AM2に置き換える。「トップツーボトムで、Sempronまで全てをRev. Fへと移行させる。CPUソケットも、全てがSocket AM2へと移行する」とOnis氏は語る。

 その結果、現在の2ソケットに分断されたAMDプラットフォームは、Socket AM2で統一されることになる。AMDが顧客に行なった説明では、2006年中にはSocket AM2への移行が終了することになっている。実際には、それより若干ずれ込む見込みだ。

Dual core K8 Revision F
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CPUソケット移行図
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 Rev. FのDRAMインターフェイスはDDR2対応になっており、Socket AM2ではDDR2 Unbuffered DIMMをサポートする。DDR2への対応は、Intelより大幅に遅れたが、AMDはDRAM側の供給状況からすれば最適な時期だという。「DDR2の供給量や価格などを考えると、2006年第2四半期というのはベストなタイミングだと思っている」(Onis氏)。Onis氏は、Rev. Fの投入は「非常に近いうち(very soon)」とコメントした。

コンセプトモデル「Yamato」
 モバイルでは、AMDはRev. FベースのデュアルコアK8が「Turion 64 X2」という名称になることを正式に明らかにした。モバイルではRev. FはSocket S1で提供され、DDR2をサポートする。

 AMDは、Turion 64 X2のリファレンスシステムとして、日本の「AMD JEL(Japan Engineering Lab)」で開発したNVIDIAチップセットベースのプラットフォームソリューションのコンセプトモデル「Yamato(ヤマト)」を示した。Yamatoは2005年12月に日本で公開されたが、その時は、デュアルコアCPUとあるだけで、Turion 64 X2というブランドは公開されなかった。AMDのDavid Rooney(デイヴィッド・ルーニー)氏(Divisional Product Manager, Mobile Division, Microprocessor Solutions Sector)は「ATIとも同様のコンセプトモデルの開発を行なっている」と説明。ATI版のコードネームが「Yokohama(ヨコハマ)」であることも認めた。

●サーバーはRev. F世代のSanta Rosaに

 サーバーCPUも、デスクトップよりやや遅れてRev. Fへの移行をスタートさせるという。

 「OpteronでのRev. Fは、今年の第3四半期に、『Santa Rosa(サンタローザ)』ベースの製品が登場する。Santa Rosaでは、プロセス技術は90nmのままだが、Socket Fとなり、DDR2メモリをサポートする。CPUのTDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)枠は95Wを維持するが、DDR2メモリにより、システムはより低消費電力になる。また、AMD仮想化テクノロジをサポートする」とAMDのBrent Kerby(ブレント・カービー)氏(Product Marketing Manager, Server and Workstation Marketing, Microprocessor Solutions Sector)は説明する。

 Intelも次世代モバイルプラットフォームに「Santa-Rosa」というコードネームをつけており、ややこしい。Socket Fではピン数が1,207へと大幅に増え、現行のPentium 4と類似のLGA(Land Grid Array)型のパッケージとなる。

 AMDでは、これまでサーバーCPUにはシリーズ毎に異なるコードネームをつけていた。例えば、8 WayのMP(Multi-Processor)対応の800シリーズのデュアルコアOpteronは「Egypt(エジプト)」、DP(Dual-Processor)対応の200シリーズのデュアルコアOpteronは「Italy(イタリー)」だった。しかし、Socket FベースのOpteronからはMPとDPともに共通するコードネーム「Santa Rosa」となる。

 ちなみに、同じRev. Fでも、UP(Uni-Processor)対応の100シリーズのデュアルコアOpteronは、DP/MPのSanta Rosaとは異なる路線を取る。UPはSocket Fではなく、デスクトップと同じSocket AM2になると言われている。そのためか、UP Opteronだけはコードネームが「Santa Ana(サンタアナ)」と、異なっている。AMDは、ローコストUPサーバー市場への対応のために、UP OpteronのSocketをデスクトップPCと共通化する戦略に転じており、すでにSocket 939の「Denmark(デンマーク)」ファミリを投入している。Rev. Fでも、この路線は継続され、OpteronはUPとDP/MPで、異なるソケットとなる。

AMD デスクトップ&サーバーCPUコア移行図
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(2006年3月13日)

[Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]


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