元麻布春男の週刊PCホットライン

成熟した外付け2.5インチHDDの魅力




●主戦場は2.5インチクラス

 前回お伝えしたように、現在HDDメーカーの大きな収益源となっているのは、2.5インチおよび1.8インチといった小型ドライブだ。それを牽引する最大の市場はノートPCだが、もう1つ人気を博している製品がある。それは小型ドライブ、特に2.5インチドライブを用いた外付けタイプのHDDユニットだ。

 昨年末、あるPCメーカーの人にうかがったところでは、今やその出荷量は完成品PCの出荷台数に匹敵するほどだという。にわかには信じられないような数だが、それくらい売れているらしい。これに2.5インチドライブ用の外付けケースキットの数を加えれば、外付けドライブとして使われている2.5インチHDDの数はもっと増えることになる。

 だが、外付けのHDDという製品ジャンル自体は、それほど目新しいものではない。それが、ここにきて急に売れ行きを伸ばしているのは、USB 2.0の普及と2.5インチドライブの価格が手ごろなレンジに降りてきたのが理由だと思われる。実際、3.5インチドライブを用いた外付けドライブは、それほど急激に売り上げを伸ばしているわけではないようだ。

 なぜ2.5インチドライブを使った製品が売れているのか。3.5インチドライブを使った製品に対し、手ごろな大きさと重量であることは大きな要因だろう。が、もう1つ忘れてならないのは、USBケーブル1本で接続できるという手軽さだ。3.5インチドライブを用いた製品が、どうしてもACアダプタが欠かせないのに対し、2.5インチドライブの外付けドライブなら、データ転送用のUSBケーブルで給電までできる。ポータブル用途で利用するにせよ、自宅の据え置き用途で利用するにせよ、ケーブル1本で済むというメリットは大きい。

 もちろん、同じことは1.8インチドライブを用いた外付けドライブにも該当するが、絶対容量が小さく(現時点では最大60GB。80GBのドライブは発表されているが、歩留まりが相当悪い)、割高感が否めない。5V単一電源の2.5インチドライブは、USBケーブルでの電源供給はスペック上ギリギリで、ノートPCとの組み合わせで時に動作しないというトラブルも生じている(この問題を緩和するために、二股のUSBケーブルが添付されている製品もあるが、これで100%どんなPCでも大丈夫というわけでもない)。

 安定動作の観点から見ると3.3V駆動される1.8インチドライブの方が望ましいのだろうが、現時点では市場価値(値頃感)という点で難しいようだ(プラッタが小さければ小さいほど、耐衝撃性という点でも有利になる)。歩留まりの改善や、垂直磁化記録などによる記録密度の向上によりバイト単価が改善されれば、USB外付けドライブの主流も1.8インチへと移行するのかもしれないが、今のところは2.5インチが最もバランスが良い、ということだと思われる。

 その2.5インチドライブを使った外付けドライブだが、筆者も愛用している。最初に購入した40GBモデルは容量が足りなくなり、80GBモデルに買い換えた。といっても40GBモデルもまだ手元にあるから、買い増しといった方が適切かもしれない。用途はノートPCのバックアップイメージ保存と、データの持ち運びで、自分が書いた原稿の控えやさまざまなサイトからダウンロードした資料、発表会で配布された資料をスキャンしてPDF化したものなどを入れ、出張の際に持参している。同じデータはノートPCのローカルドライブにも持つようにしているから、万が一の際の保険というところだ。

 この2台目の80GBモデルを購入する際、ちょうど登場してきていたのが耐衝撃性を売り物にする製品である。最初は持ち運びすることを考えて、耐衝撃性のある製品にしようと思っていたのだが、市場に登場した第1世代の製品はいかにも大きく、ビデオカセットに近いサイズだった。店頭でモックアップを握って、その大きさにメゲて断念、通常タイプのポータブルタイプを購入した記憶がある。

●モバイル機能が充実した最新HDDをチェック

 今回試してみたバッファローの「HD-PHGU2/UC」シリーズは、「モバイル機能満載」がウリのポータブルHDD。高さ1mから落としても壊れない耐衝撃性(非動作時)をはじめ、ソフトウェアによる暗号化や仮想CD/DVD機能をサポートする。昨年秋に発売されたHD-PHSU2/UCシリーズの耐衝撃性が高さ75cmであったのに対し、若干アップグレードされたことと、仮想CD/DVD機能のサポートが加えられたこと、さらに120GBモデルが設定されたことが違いだ。

 筆者の手持ちのポータブルドライブも同じくバッファロー製だったのだが、並べてみても大きさにそれほど極端な違いはない。もちろん、耐衝撃性を高めている分このHD-PHGU2/UCシリーズの方が大きいが、これくらいの差なら保険だと思って我慢しようという気になる程度だ。ケーブル巻きつけもちょっとしたアイデアではあるのだが、思ったよりケーブルが本体に密着しないため、それほど便利という感じでもない。このあたりの処理がもう少しスマートならもっと良かったのだろうが、巻き取り式にしてケーブル直出しになるのとどちらが良いかというと、微妙な気がしないでもない。

付属の巻きつけ用ケーブルをとりつけたところ。それほどキッチリと巻きつく感じではない。本機のコネクタ部。左から仮想CD/DVD機能をコントロールするスライドスイッチ、USBコネクタ、DCジャック。
左から筆者が最初に購入した40GB(4,200rpm)の外付けドライブ(HD-P40U2/UC)、現在使用している80GB(5,400rpm)の製品(HD-PH80U2/UC)、そして本機。大きさは一回りほど違うが、その差はそれほど大きくない。厚みの比較。やはり差は小さい。

 本機の特徴であるモバイル機能のうちソフトウェアによる暗号化は、Secure Lock Mobileというアプリケーションにより実現されたもの。暗号化ソフトは本機をWindows PCに接続すると、自動的にタスクトレイに常駐する「モバイルランチャー」から呼び出すことができるため、いちいち暗号化ソフトをインストールする必要はない。

本機のスライドスイッチを1に設定した状態でシステムに接続すると、タスクトレイにモバイルランチャーが常駐し、ドライブレター割り当てを示すダイアローグが表示される。

 仮想CD/DVD機能は、本機のスライドスイッチの設定により動作が変化する。スイッチが1の状態(デフォルト)で本機を接続したままシステムを起動すると、バックアップソフトであるAcronis True Image LEが起動、システムのバックアップとリストアが可能になる(BIOS設定等でCD-ROMからの起動を選択してある場合)。起動したシステムにスイッチが1の状態の本機を接続すると、HD-PHDU2/UCのユーティリティCD(イメージ)と、ユーザーが登録したCDイメージが、それぞれ2つのドライブレターとして認識され、本機のHDDがもう1つのドライブレターを占有した状態(ドライブレター3つが占有された状態)となる。

 スイッチを2に設定しておくと、ユーザーが登録しておいたCDイメージが唯一の仮想CD-ROMドライブとなり、ユーティリティCDは見えなくなる(モバイルランチャーも起動しない)。ユーザーが登録したCDイメージがブータブルであれば、ここからシステムを起動することも可能だ。

【お詫びと訂正】初出時に「CDイメージそのものを作成するツールは含まれていない」旨の記載がありましたが、誤りでしたお詫びして訂正させていただきます。

 モバイルランチャーや仮想CD/DVD機能は、便利ではあるものの、こうした機能を余計なものと思うユーザーもいるかもしれない。そうしたユーザーは、上記のスライドスイッチを無効に設定すれば、本機は通常の外付けHDDとなる。余計な機能がついていて困る、ということはないハズだ。

 付属品は、本体に巻きつける短め(40cm)のケーブルと長めのケーブル(80cm)の2本と、バスパワーで利用できない場合にUSBポートと本機のDCジャックを接続するUSB給電ケーブルの3本。本体色は、写真で示したシルバーのほか、ブラックも用意されている。ポータブルHDDを持ち運ぶ機会が多く、うっかり落とすのが心配なユーザーは検討してみると良いだろう。

□米SeagateによるMaxtor買収の告知ページ
http://www.seagatemaxtor.com/
□富士通、HDD事業の強化についてのプレスリリース
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2006/01/13.html
□関連記事
【2005年11月4日】アイ・オーの耐衝撃HDD「HDP-U」を試す
~シリコンジャケットで武装したポータブルHDD
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/1104/iodata.htm
【2月14日】2.5インチ以下が優劣を決めるHDD業界
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0203/hot407.htm

バックナンバー

(2006年2月14日)

[Reported by 元麻布春男]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp ご質問に対して、個別にご回答はいたしません

Copyright (c) 2006 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.