2月のトリノ冬季オリンピック、3月のワールドベースボールクラシック、そして、6月のサッカーワールドカップドイツ大会。前半はビッグイベントが目白押しだ。 では、そのスポーツイヤーの2006年のIT業界は、果たしてどんな1年になるのだろう。 それは、IT業界にとっても、「WORLD CUP」の1年になりそうなのだ。
例年通り、言葉遊びで、2006年の1年間のトピックスを追ってみたい。
●2つの意味がある「W」 まずは、WORLD CUPの「W」だ。 Wには、2つの意味がある。1つは、今年後半に発売される予定の「Windows Vista」。これは、まさに、今年最大のプロダクトといえる。ここで、Vistaの内容について触れるつもりはないが、今年末には、Vistaを搭載したPCがメーカー各社から発売され、さらに、夏モデルからはVista Readyと呼ばれるPCが市場に投入されることになる。 いまや1つのOSに左右される時代ではなくなったとはいわれるものの、久しぶりのメジャーバージョンアップということもあって、メーカー各社の製品企画の力の入れ方、製品投入のタイミングの見極めといった点でも、Vistaの影響を大きく受けるのは間違いない。ユーザーにとっても、購入時期をしっかりと見極めることが必要な年だといえるだろう。 もう1つの「W」は、「WiMAX」だ。2006年はWiMAXの実用化に向けて、一気にインフラが整い始めることになるだろう。WiMAXを視野に入れたコンテンツサービスに関する動きや企業間の提携もいくつか表面化してくることになりそうだ。これまでの延長線上としてのWiFiのインフラ整備もさらに進展するだろうが、数年後のWiMAXの本格普及に向けた助走期間としては、極めて重要な1年だといえる。 ●「O」は“Optical Disc” 「O」は、Optical Discの「O」。つまり、次世代光ディスクを巡る争いの熾烈化があげられる。 2006年は、Blu-ray、HD DVDの両陣営が真っ向から勝負することになるのは誰の目にも明らかだ。今年は、それぞれの陣営からの製品投入がいよいよ本格化し、デジタル家電、PCといった分野で熾烈な競争が始まることになる。 これまでの両陣営を巡る前哨戦の様子を見ると、ほぼ互角ともいえる状況。この1年でどちらかに軍配があがるとは考えられないが、もしかしたら、潮流がどちらの方向に向くのかは、今年後半には肌で感じることができるかもしれない。 Oは、「Office12」の「O」ともいえる。この進化は、我々を驚かせるには十分ともいえるポテンシャルを持っていることは多くの業界関係者がうなづくところ。今年後半の台風の目の1つとなりそうだ。 ●「R」は“RFID” 「R」は、RFIDだ。2005年から、すでに一部の分野で、RFIDの活用が開始されているが、IT業界にとっては、まさに大きなビジネスチャンスを迎えることになる。トレーサビリティの浸透や、製品管理、各種サービス業での活用といった点で見ても、RFIDの応用範囲は幅広い。 また、NECのように、PCの生産から物流に至る範囲で、RFIDを活用するといった動きも出ており、IT業界においても、RFIDの活用は大きなポイントといえそうだ。 ●「L」は“液晶” 「L」は、液晶(LCD)の「L」である。 デジタル家電業界では、2006年から、薄型TVの本格的な普及時期を迎えると予測されている。地上デジタル放送が全国で閲覧可能になるほか、冒頭に触れたように、世界的なスポーツイベントの相次ぐ開催も、薄型TVの需要拡大に追い風となるのは明らかだ。 売れ筋の主流となるのは30インチ台。この分野は、家電メーカー各社ともに液晶TVを主軸として展開しており、「液晶」という同じ方式をベースとした戦いとなる。そのなかで、各社間の技術力の戦い、そして、マーケティングを巡る戦いが繰り広げられるというわけだ。液晶TVの低価格化も、今年はさらに進展することになりそうだ。 Lは、Microsoftが仕掛けるWindows Live、Office Live、Xbox Liveの3つのLiveの「L」という言い方もできる。この仕掛けが、ユーザーにどんなメリットを与えられるのか、その片鱗が見られることになるだろう。そして、IT業界関係者の観点からすれば、スティーブ・パルマーCEOが「賭け」と表現するMicrosoftの新たなビジネスモデルへの転換が、日本においても成功するのかに注目が集まる。 ●「D」は“DLNA” 「D」は、DLNAがキーワードとなる。ホームコンピューティングの実現において、異機種間の接続を実現するDLNAは大きな意味を持つ。2006年は、このDLNAがいよいよ現実のものとなって家庭のなかに入りはじめることになるだろう。 また、Dという点では、デュアルコアCPUの浸透も、今年はさらに加速することになるだろう。Yonahの登場によって、モバイルPCの世界にもデュアルコアが広がることになり、2006年後半には、かなりの製品が、デュアルコアの製品となりそうだ。デュアルコアが実現するパフォーマンスを、多くの人が体験できるようになる1年だといっていいだろう。 ●「C」は“キャッシュレス” さて、後半の「CUP」である。 「C」には、キャッシュレスの「C」という意味を持たせたい。 なかでも、携帯電話で改札を通過できる「モバイルSuica」が今年1月からスタートするように、ますます我々の生活に密着した形で、Cashlessの環境が浸透することになるだろう。 ●「U」は“ユニバーサルデザイン” 「U」は、ユニバーサルデザインの「U」である。 昨年来、家電メーカーやPCメーカーにとって、ユニバーサルデザインは、欠かすことができないキーワードとなっている。とくに、TVとPCの融合、放送と通信の融合という世界が広がるにつれて、ユニバーサルデザインが各社の差別化ポイントとなってきているのは周知の通りだ。 チューナを搭載した家庭向けPCが一般化するなかで、PCメーカー幹部の間からも、「家電メーカーと戦うには、いかに使いやすいインターフェイスを実現するかが鍵になる。機能が複合化する一方で、いかに簡単な操作環境を実現するという相反する要件を解決することが必要であり、そこに向けて積極的に投資をしていく」といった声が異口同音に聞かれる。 2005年以上に、ユニバーサルデザインという言葉が頻繁に聞かれる1年になるだろう。 ●「P」はプラズマ、PS3…… そして、最後の「P」だが、ここには、いくつもの意味がある。例えば、LのLCDに対するプラズマのP。40インチを越える薄型TVの領域では、国内の主流となっているプラズマTVだが、今後の薄型大画面市場を、プラズマTVがどうドライブしていくのかは今年の注目点の1つだ。プラズマTVの低価格化が薄型大画面TVの需要動向を大きく左右するからだ。 また、30インチ台の薄型TVは、各社とも、ほぼ液晶TVで一本化しているのに対して、40インチ以上の領域は各社各様の戦略となっており、ここを巡る戦いも見逃せない。 37インチあるいは40インチ以上をプラズマTVとする松下電器、日立製作所、パイオニアに対して、液晶TVで一気通貫とするシャープ、切り札ともいえるSXRDを擁し3LCDと組み合わせたラインアップで展開するソニーのリアプロTV戦略、そして、次世代ブラウン管といわれるSEDで大画面市場に乗り出す東芝、キヤノンなど、大画面分野は、さまざまな方式が林立している。40インチ以上の大画面TV市場において、どこが抜け出すのかといったことも、2006年の楽しみなポイントの1つではある。
また、ビッグプロダクトとして「PLAYSTATION 3」も頭文字は「P」だ。これも、2006年を象徴する「P」の1つといえる。早期の発売を期待しているユーザーも少なくないだろう。 そして、Intelが展開するプラットフォーム戦略も、今年は大きな進化の1年となる。 すでに1月には、モバイルPCの新プラットフォームとして、「Napa」が正式発表され、それに準拠したモバイルPCが各社から登場。さらに今年後半には、ビジネス向けクライアントPCのプラットフォームとして、「Averill」が正式発表される予定で、ホームコンピューティング向けの「Viiv」とともに、Intelのプラットフォーム戦略が一気に加速することになる。 加えて、最後の1つとしては、ややこじつけだが、ポータビリティという意味も「P」に持たせてみたい。これは、携帯電話の分野で、今年最大のトピックスとなるであろうモバイルナンバーポータビリティ制度の実施を指している。 現在利用している携帯電話の番号をそのままにして、他社に乗り換えることができるモバイルナンバーポータビリティは、携帯電話キャリアの勢力図に少なからず影響を与えるのは確かで、すでに、これを見据えた、熾烈なサービス競争、料金競争が始まっている。ただ、こうしたサービス競争は、利便性が高まるという点で、ユーザーにとってはプラスになるといえそうだ。
こうして見ると、2006年は、さまざまなトピックスが用意されている1年だということがわかるだろう。 ビッグプロダクトも目白押しだ。そして、景気の回復傾向も、企業の積極的な活動にプラスの要素となるだろう。 2005年以上に楽しみな1年であることは間違いないといえる。
□関連記事 (2006年1月5日) [Text by 大河原克行]
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