Windows XP Media Center Edition 2005のマイナーバージョンアップが行なわれた。公式には“Update Rollup 2”と呼ばれるこのマイナーバージョンアップは、これまで開発コードネーム“エメラルド”(Emerald)で呼ばれてきたもので、日本では12月にリリースが予定されているXbox 360との接続機能などが追加されたことが大きな更新点となっている。 一方で、マイクロソフトは10月半ばに次世代WindowsとなるWindows Vistaのベータ1(プリベータ2とも呼ばれている)のビルドを更新し、ビルド5231をベータテスターなどに公開した。このビルド5231では、9月にロサンゼルスで行なわれたPDC 2005で配布されたビルド(5221)には含まれていなかったメディアセンターやTablet PCの機能などが追加されている。 ●Xbox 360とViivのためのバージョンアップ マイクロソフトが開発コードネーム“エメラルド”で開発を続けてきたWindows XP Media Center Edition 2005(以下MCE 2005)のマイナーバージョンアップ“Update Rollup 2”がリリースされた。MCE 2005を搭載したPCを持っていれば、Windows Updateなどを利用してインストールできる。なお、Update Rollup 2のインストールにはあらかじめ.NET Framework 1.1 SP1がインストールされている必要がある。 Update Rollup 2が適用されたメディアセンター(Windows XP Media Center Editionの10フィートUI)では、以下のような点がバージョンアップされている。 ・Media Center eXtender(MCX)の機能強化~Xbox 360への対応 Media Center eXtender(MCX)は、マイクロソフトが定義するDMAの仕様で、リモートUIと呼ばれる技術を利用して、メディアセンターと同じユーザーインターフェイスを実現しつつ、ネットワーク経由でMCE 2005がインストールされているPCのコンテンツやライブTVなどを再生できる。日本では12月に発売されるXbox 360には、標準でこの機能が搭載されており、Update Rollup 2をインストールすることで、Xbox 360のMCX機能を利用できるようになる。 DVD機能の強化という点では、DVDチェンジャー機能のサポートと書き込み機能の強化があげられる。DVDチェンジャーのサポート機能は、ソニーが米国でtype X Living(米国ではXL1 Digital Living System)と一緒に販売している200枚のDVD/CDを格納して利用できるDVDチェンジャーをサポートするためと思われる。 Away Modeは、MCE向けに新たに用意された待機モードで、実際には待機モードではなく、ディスプレイをオフにしオーディオをミュートに、CPUのクロックをアダプティブモードにするなどの設定を行なう。つまり、見た目だけスタンバイモードにするモードであると言っていいだろう(このため、MCXやDLNAサーバーなどはそのまま動作させることが可能)。 ちなみに、IntelがIDFでデモしたViivテクノロジをサポートしたPCでは、非常に速いスタンバイへの移行や復帰を実現していたが、このとき利用されていたのがAway Modeだ。つまり、この機能はViivテクノロジのためだと言ってもいいだろう。なお、Away Modeを利用するためには、PCのBIOSがAway Modeに対応している必要があるので、従来のMCE搭載PCでは利用できない。 このほか、日本のユーザーには全く関係ないが、サポートするATSC(米国のデジタル放送の規格)のチューナが2つに増加している(従来は1つ)。これにより、米国ではアナログ放送2つ+デジタル放送2つの合計4つのチューナを利用できるようになる。なお、細かいところでは、従来のMCEではワイドアスペクトの切替が3つのモードだったのに対して、今回のUpdate Rollup 2では4つに増えている。 このように、今回のUpdate Rollup 2は、主にXbox 360とViivテクノロジのためのバージョンアップであるといえるだろう。
●エメラルドが搭載されているWindows Vistaのメディアセンター エメラルドことUpdate Rollup 2がリリースされたことで、Windows XP世代におけるメディアセンターのバージョンアップはこれで最後になる。今後は、来年の後半にリリースが予定されているWindows Vistaにおけるメディアセンターのバージョンアップが焦点となる。 すでにマイクロソフトはベータテスタなどに対して、Windows Vistaのプリベータ2とも呼ばれるベータ1のビルド5231を10月半ばから公開している。ビルド5231では、9月にロスで開催されたPDC 2005で公開されたビルド5219に比べていくつかの点でバージョンアップされている。大きな点としては、Tablet PCとメディアセンターのモジュールが新たに提供されていることだろう。 ビルド5231に含まれるメディアセンターは、エメラルド世代のバージョンとなっている。マイクロソフトはWindows Vista世代のメディアセンターとして開発コードネーム“ダイアモンド”を開発しているが、まだ完成をみておらず、実際Windows Vistaの出荷時にはエメラルドがメディアセンターとして提供される可能性が高い。実際、OEMメーカー筋の情報に寄れば、ダイアモンドの提供は2007年になる可能性が高いとマイクロソフトは説明しているという。 しかし、同じエメラルドであるとはいえ、MCE 2005のメディアセンターとWindows Vistaのメディアセンターは見た目がだいぶ異なっている。そもそもメニュー構成が違う。MCE 2005では独立したメニューとして存在している「My Picture」や「My Video」といったメニューがサブメニューになっているほか、「Online Spotlight」(日本ではメディアオンライン)と「More Programs」(その他のプログラム)も1つのトップメニューに統合されている。 だが、最も大きな違いはWindows Vistaのメディアセンターは、より3D効果が多用されたUIになっていることだ。これは、Windows Vistaのメディアセンターが、開発コードネーム「Avalon」で知られるWPF(Windows Presentation Founation)を利用できるためだ。 ●WPFをサポートしたメディアセンター WPFとは、簡単に言ってしまえば、DirectX 9世代のGPUを利用した3Dによる描画システムのことだ。これまでのWindowsは、GPUの中のほんの一部分である2Dエンジンを利用して描画してきたが、Windows Vistaでは2D画面の描画であっても3Dエンジンを利用して描画するシステムを採用している。 WPFのメリットは、2D、3D、動画、Webブラウザなどが混在した描画が可能になることだ。例えば、PDC 2005においてマイクロソフトが公開したNetFlixのデモでは、メディアセンター用に書かれた10フィートUIのアプリケーションで、ある特定のWebサイトに接続し、2D/3Dの描画が混在した状態でそこのコンテンツを閲覧するというデモが行なわれた。 開発者にとってこれらのアプリケーションのユーザーインターフェイスはXAMLを利用して作成でき、比較的簡単に作ることができるほか、2フィートUIと呼ばれる通常のWindows用のユーザーインターフェイスと10フィートUIを同じコードから作成することも可能で、今後は10フィートUIのアプリケーションを作成するハードルが大幅に下がることになる。 これにより、サービスプロバイダーは、Webサービスを提供する高度なアプリケーションを比較的容易に作ることが可能になる。例えば、通信販売のサービスを提供している企業が、メディアセンター向けに通信販売の10フィートUIアプリケーションを作成し、それを提供するといった使い方が考えられる。これにより、ユーザーはリビングでリモコンをいじるだけで、手軽に買い物をしたり、コンテンツをダウンロードする作業が、より表現力の高いUIで利用可能になる。
●日本でも提供が始まったメディアオンライン 先週の金曜日にマイクロソフトは“メディアオンライン”サービスの提供を始めることを明らかにした。メディアオンライン(米国ではOnline Spotlight)に関しては、すでにこの連載でも何度か取り上げているが、サードパーティがメディアセンター向けのWebサービスを提供するための仕組みで、米国ではさまざまなサービスがすでに提供されている。 日本で提供が開始されたのは、「バンダイチャンネル」、「BIGLOBEストリーム」、「GyaO」、「ヤマダ電機」、「ロイター」の5コンテンツで、それそれに動画などの配信が行なわれている。 例えば、その中の1つであるGyaoでは、「サイクロンZ」や「インシデント」といった映画など48個のコンテンツが視聴可能になっている。本家のGyaoでは登録作業をしないとコンテンツをみることができないのだが、MCE版では特に登録などをしなくてもコンテンツを閲覧できる。提供されているコンテンツは本家より少ないなど、現時点ではまだ本格的な稼働ではないのかもしれないが、リモコンを利用してコンテンツをブラウズし再生することが可能で、快適だ。初期状態ではウインドウの中での小さなサイズでの動画再生だが、リモコンによる全画面表示も可能になっている。ぜひ、今後は本家のGyaoと同じコンテンツがみられるようにして欲しいものだ。 1月に米国で行なわれるInternational CESでIntelが発表する計画の“Viivテクノロジ”も、メディアオンラインの仕組みを利用してオンラインコンテンツを配信するサービスが行なわれる予定となっている。現在Intelは複数のサービスプロバイダなどと交渉を進めており、Viivテクノロジが発表される1月以降には、さらにいくつかのサービスが追加されることになるだろう。 □関連記事 (2005年10月27日) [Reported by 笠原一輝]
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