NVIDIAが9月25日に発表した、同社にとってnForce2以来、久しぶりの統合型チップセットとなる「GeForce 6100/nForce 400」。Athlon 64向けとしてはATIの「RADEON XPRESS 200」に続く、期待の統合型チップセットで、すでに秋葉原でも搭載マザーボードが発売されている。ここでは、GIGABYTEが発売予定の同チップセット搭載製品をテストしてみたい。 ●GeForce 6100とnForce 430を搭載する「GA-K8N51GMF-9」 すでにニュース記事が掲載されているとおり、ノースブリッジとなる「GeForce 6150」、「GeForce 6100」、サウスブリッジとなる「nForce 430」、「nForce 410」の4製品が発表された。各チップの仕様については、リンク先記事に詳しいので、ご一読されたい。 今回試用するのは、GIGABYTEから発売される「GA-K8N51GMF-9」である(写真1)。チップセットはGeForce 6100とnForce 430となる。GeForce 6100はビデオ出力等を持たないため、I/Oリアパネル部の映像出力に関するコネクタはD-Sub15ピンが用意されるのみとなる(写真2)。 ちなみに、D-Sub15ピンの脇には、「TV」と表記された空きパターンが用意されている(写真3)。GIGABYTEでは、GeForce 6150+nForce 430を搭載する「GA-K8N51PVMT-9」も予定しており、同一のPCBが使われると想像される。
コアクロックは、GeForce 6100の定格となる425MHzで動作する(画面1)。メモリクロックが表示されていないが、これはUMAとなるためだろう。容量はメインメモリから64MBが割り当てられている(画面2)。 ちなみに、本製品のBIOSではGeForce 6100内のグラフィックコアを無効にすることができない。PCI Express x16スロットにビデオカードを接続した場合は両方が有効になり、マルチディスプレイ環境を手軽に構築できることがアピールされている。 だが、グラフィックコアを無効にできないということは、マルチディスプレイ環境のためではなく、パフォーマンス向上の目的でビデオカードを装着する場合でも、メインメモリ上のフレームバッファが解放されないことを意味する。もしチップの仕様上、有効/無効の切り替えがBIOSレベルで操作可能なのであれば、ぜひ実装してほしい機能だ。 BIOS上のオーバークロックに関する画面を見ると、ノース-サウス間の転送レートを変更する機能が設けられている(画面3)。ノース-サウス間はHyperTransportで接続されるが、データバス幅は上り/下り各8bitとなっている。クロックについては4倍と表記されている。ベースクロックについての情報はないが、仮にAthlon 64のベースクロックと同期していれば、転送速度は上り/下りがそれぞれ800MB/secということになる。
●テスト環境 それでは、GeForce 6100+nForce 430を搭載したGA-K8N51GMF-9のパフォーマンスを見てみたい。環境は表に示したとおりで、比較対象として、同じAthlon 64用統合型チップセットとなる、ATIのRADEON XPRESS 200搭載マザーを用意した。3D性能については、GeForce 6200を搭載するAlbatron「PC6200」をGA-K8N51GMF-9に接続した場合の性能も出している。
●CPU性能 では、順にベンチマークの結果を紹介していきたい。まずは、CPU性能がどの程度引き出されているかを確認するため、「Sandra 2005 SR2」の「CPU Arithmetic Benchmark」と「CPU Multi-Media Benchmark」(グラフ1)、「PCMark05」の「CPU Test」(グラフ2、3)を実施した。 ここはCPUが同じなので、ほぼ同等の性能となっている。若干GeForce 6100+nForce 430環境のほうがスコアが良い傾向が見て取れるものの、意識する必要があるほどのことはないスコア差だ。両製品とも、CPU性能に関しては同じ程度に引き出せていることが分かる。
●メモリ性能 続いては、Sandra 2005 SR2の「Cache & Memory Benchmark」を使って、メモリ性能を見てみたい。グラフ4に全結果、グラフ5に一部結果を抜粋した数値を掲載している。 グラフ4から見て取れるように、結果に若干ばらつきが見られる。グラフ5を見てみると、転送ブロックサイズが小さくL1/L2キャッシュの範囲内で収まる条件ではGeForce 6100+nForce 430のほうが若干ながらスコアがよく、実メモリへのアクセスが必須となる256MBを転送する条件ではRADEON XPRESS 200のほうが良いスコアとなっているのだ。 このメインメモリのアクセス性能に関しては、以前に行なったチップセットテストの結果に類似している点が興味深い。RADEON XPRESS 200の結果がリンク先記事のスコアに近いのは当然としても、GeForce 6100+nForce 430とnForce4 SLIの結果が近い点は注目しておくべきだろう。 絶対性能という点ではもう少し頑張ってほしいという感じだ。だが、GeForce 6100はフレームバッファをメインメモリに展開しているにも関わらず、nForce4 SLIの結果と2%程度しか差がない。マザーボードによっても差は出るだろうが、相対的には健闘している印象を受ける。
●HDD性能 続いてはHDDアクセス時の性能を見てみたい。テストはSandra 2005 SR2の「File System Benchmark」(グラフ6)、PCMark05の「HDD Test」(グラフ7)だ。 結果はやはり以前のチップセットテストの結果と似ており、GeForce 6100+nForce 430とnForce4 SLIは、いずれも好成績で、とくにバッファリードや書き込み性能に優れる。 過去記事においては、RADEON XPRESS 200が芳しくない成績であったが、こうして並べてみると、よりGeForce 6100+nForce 430の良さが際立って見える。 ただし、GeForce 6100+nForce 430はnForce4 SLIに比べると、わずかながら書き込み性能は劣るようである。nForce 430はnForce4 Ultra/SLIからPCI Express x16サポートを削除しただけのような仕様にも見えるが、こうした性能差があるということは内部の設計も改められている可能性がありそうだ。
●アプリケーション性能 それでは、実際のアプリケーションを使用したテストを実施していきたい。テストは「SYSmark2004」(グラフ8)、「Winstone2004」(グラフ9)、「CineBench 2003」(グラフ10)、「TMPGEnc 3.0 XPress」(グラフ11)である。 SYSmark2004とWinstone 2004の結果を見ると、コンテンツ作成系のテストにおいてGeForce 6100+nForce 430が良好な結果を見せる傾向にある。呼び出すファイルサイズが大きく、スワップも発生していると考えられるので、HDDの性能差が影響した可能性が高い。 逆に扱うデータサイズが大きくないならば、メモリ性能のほうが影響するわけで、そうしたテストにおいてはRADEON XPRESS 200の方が良いパフォーマンスを示す。 CineBench2003やTMPGEnc 3.0 XPressはCPU性能が影響するため、スコア差は小さい。TMPGEnc 3.0 XPressでは、わずかにRADEON XPRESS 200のほうが良い結果を見せるが、動画のフレームをメモリ上に展開する上での性能差が出たものと考えられる。
●3D性能 最後にGeForce 6100の3D性能をチェックしてみたい。先述のとおり、ここではGeForce 6100+nForce 430環境にGeForce 6200搭載ビデオカードを接続した場合も加えている。 テストは「3DMark05」(グラフ12)、「3DMark03」(グラフ13)、「AquaMark3」(グラフ14)、「DOOM3」(グラフ15)、「FINAL FANTASY Official Benchmark 3」(グラフ16)、「Unreal Tournament 2003」(グラフ17、18)である。ただし、AquaMark3についてはRADEON XPRESS 200環境でテストが完走しないため、スコアは掲載していない。 この結果からは2つの点が目に付く。1つは、FINAL FANTASY Official Benchmark 3のLow設定時以外は、いずれもRADEON XPRESS 200の方が良い結果を見せていること。2つ目はアーキテクチャが近いGeForce 6200とは1.5~5倍程度の差が付いてしまっている点だ。 これは、やはりフレームバッファをローカルで持たないのはもちろん、メインメモリの性能がRADEON XPRESS 200に劣るのが影響したのではないだろうか。FINAL FANTASY Official Benchmark 3のLow設定については処理が軽くグラフィックコアの処理がボトルネックとなったが、データ転送量が少しでも増えると、芳しくない性能を出すと考えられる。あまり3D性能にこだわる性格の製品ではないものの、寂しい結果である。 ただ、TurboCacheのようにローカルのフレームバッファを持てる仕様であれば、もう少し期待が持てる(ひょっとすると機能は持っているかも知れないのだが、現時点で公式な情報は得られていない)。
●統合型チップセットの選択肢が増えたのは歓迎 GeForce 6100+nForce 430とRADEON XPRESS 200を比較してくると、後者の登場から10カ月近い後発製品としては、インパクトに欠ける結果という印象が強い。 とはいえ、本製品が登場した意義は小さいものではない。Socket 939のAthlon 64に対応した統合型チップセットの選択肢がRADEON XPRESS 200のみではなくなるからである。 ユーザーにとって選択肢が広がったということはもちろん、対抗製品の存在によって、より良い製品が作られていくのは、いうまでもない。 ちなみに、原稿執筆時点でBIOSTARのGeForce 6100+nForce 410搭載製品が秋葉原で発売され1万円以下の価格付けがなされている。nForce 410はシリアルATAが2ポートしかないなど、やや物足りない印象は受ける人もいるかもしれない。 ただ、今回試用したGIGABYTE製品を始め、nForce 430を採用したマザーボードの登場予定も多く、搭載製品のバリエーションも少なくなさそうだ。これまで、このように製品を選べる状況が、Athlon 64用の統合型チップセットにはなかったわけで、NVIDIAが再び統合型チップセットを投入したことを歓迎したい。 □関連記事 (2005年9月30日) [Text by 多和田新也]
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