●中古の良さを新しいユーザー層にアピール
9月21日、ソフマップの経営企画部 広報・IR室の松田信行室長から電話がかかってきた。 「ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaが開店した直後の秋葉原の店舗の状況だが、前年同期比で10%以上の売り上げの伸びを見せている。おそらく当社だけでなく、秋葉原の街全体が好調だったのではないか」-松田室長の声ははずんでいた。大きな注目を集めたヨドバシカメラの秋葉原進出は、秋葉原の既存店にもプラス効果をもたらしたようだ。 当初からソフマップでは、「初めて秋葉原を訪れた人にも、ソフマップの専門性を体感してもらって、利用してもらうようになれば、ヨドバシカメラの秋葉原出店は当社にとってプラスになる」との見解を示していた。「当社には中古ビジネスという他社にはない特徴がある」という自信があったからである。 ●早い時期から専門性に特化したリニューアルを実施 ソフマップは、秋葉原に15の店舗を持つ。本店に、1号店から14号店、カクタソフマップ合わせて15店舗だ。加えて、関連会社であるソフマップソフトが運営するヤマギワソフトが加わり、秋葉原は同社にとって重要な拠点となっている。 それぞれの店舗のリニューアルはすでに2003年のMac Collectionを皮切りに、全店で実施していた。 「ヨドバシカメラが秋葉原に出店することは以前からアナウンスされていた。そこで、当社では早い段階から各店舗のリニューアルを実施した。比較的店舗規模が大きく、汎用的な商品を揃えたカクタソフマップは、初めてPCやデジタル機器を購入する人にも入りやすい店舗に。それ以外の店舗は、店舗ごとに専門性を強化し、濃いマニア向けショップへリニューアルしている」 例えば6号店はPCソフトの専門店。1階は新作のゲームソフトが並び、2階にはPCだけでなく、ゲーム専用機も含めた中古ソフトの買い取りと販売が行なわれている。2階では、郊外のゲーム専門店では扱っていないような過去のゲーム機用ソフト、例えばメガドライブ、PCエンジンといったものまで、状態が良ければ買い取りを行なっている。 ビジネス誌や若者向けの雑誌で秋葉原が紹介される場合、「萌えの街 秋葉原」というキャッチフレーズがつくことも多い。秋葉原が萌えの街になった要因として、フィギュアなどを扱うショップが秋葉原以外の地区から出店してきたことがあげられるが、ソフマップは秋葉原の中から、「萌えビジネス」を作り上げてきた販売店である。 「新作ゲームソフトの発売日には、テレフォンカードなどのオマケをつけて販売するという仕掛けは、'90年代の半ばから行なっている。人気ソフトの発売日には、行列ができるなど、秋葉原=萌えの街を作り上げていった。現在でも、萌えは秋葉原における重要な商材の1つとなっている」 こうした“濃いマニア”を納得させる品揃えが同社の特徴の1つ。 9月1日から10月16日までの期間は、「ソフマップ 秋葉原まつり」を開催。新品のWindows PCを購入したユーザーには、最大で15%のポイントを還元するなどセールを実施。 「この時期に初めて秋葉原を訪れた人、久しぶりに秋葉原を訪れたという人に、ソフマップという店舗の強みをアピールしていく」という戦略を採る。 ヨドバシカメラという大規模店舗を目的に秋葉原を訪れた人に対しても、「中央通りを越えてソフマップに来てもらえば、必ず店舗の面白さを実感してもらえるはず」とその特徴をアピールしていく計画だ。
●中古の百貨店としての自負 マニア向けの濃いビジネスとともに、やはりソフマップといえば、“中古ビジネス”だろう。 他社に先駆けて中古PCの買い取りと販売を開始した同社には、他社以上に中古PCに関するノウハウが蓄積されている。現在では、PCだけでなく、デジタルカメラや薄型大画面TVなどデジタル家電製品の買い取り、販売も実施。松田室長は、「中古の百貨店としての自負がある」と中古ビジネスにおける自信をアピールする。 「中古ビジネスは、濃いマニア層から、デジタル機器初心者までターゲットにできるビジネス。数年前は、中古といえばマニアというイメージだったが、ここ数年、中古品を売りに来たり、買いに来たりする女性客が増えている。ヨドバシカメラの開店によって、これまで秋葉原には足を踏み入れたことがなかった女性客やファミリー層が秋葉原に来るだろう。その際、それまでは全く知らなかった中古品やパーツ、組み立てPCといった商品を知ってもらえば、当社には新たなビジネスチャンスが生まれてくることになる」 確かに中古品の買い取り/販売はヨドバシカメラは実施していない事業だ。それだけに、「ヨドバシカメラが近隣に出来たとしても、逆にヨドバシカメラで新品を購入して、古いデジタル機器を当社に売りに来るというお客さんも増える可能性がある」という言葉には説得力がある。 実際に新宿では、ソフマップはヨドバシカメラに隣接する店舗をもち、ヨドバシカメラとは違うビジネス、客層を獲得することで、棲み分けを実現している。「同じサイクルを秋葉原でも作り上げることができる」という自信も、その実績があるからこそ成立している。 「中古品を売りに来て、安価でデジタルカメラが売られているのを見て、購入するお客さんも出てくるだろう。当社の中古品は、品揃えも多いので、『中古品を買うつもりはなかったけれど、実際に店頭で商品を見たら購入することになった』というお客さんも多い。1度ソフマップに足を踏み入れてもらって、中古品を売ったり、買ったりという経験をしてもらえば、ソフマップの顧客を増やす自信はある」(松田室長) 最近では、子供向けの2台目、3台目のPCとして中古品を購入する人も多いという。カクタソフマップのように、誰でも入りやすい店舗を置くのも、こうした中古品を購入する新しいユーザー層を狙ったものでもある。
●対決には自社の強みで勝負 同社が“中古”という自社の強みを強化していくという戦略を打ち出している背景には、2001年、ヨドバシカメラが大阪 梅田に出店した際、同じ梅田に店舗を持っていたソフマップと直接対決をするという経験をしていることが挙げられる。 「大阪地区へのドミナント展開を進めている中で、直接対決ということになった。ビジネスを展開した結果、当社の強みである中古の百貨店というセールスポイントをアピールすることが、ビジネスとしては向いているという結論を得た」(松田室長) 大阪だけでなく、新宿でもヨドバシカメラとの対決を経験しているだけに、ソフマップも敵の特徴をよく知っている。物量でアピールしてくるのに対し、「価格で対決といったことをするのではなく、特徴をアピールして、ヨドバシカメラにはない良さをソフマップに感じてもらう」ことを徹底する。 「秋葉原への集客が増えたと考えると、ヨドバシカメラの出店は秋葉原に店舗を置く家電店にとって朗報とも言える。このプラス材料を生かして、当社のお客さんになってもらえるかどうかが、本当の勝負なのではないか」(松田室長)
□ソフマップのホームページ (2005年9月22日) [Reported by 三浦優子]
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