大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

ソフマップが中古パソコン事業を加速する理由



ソフマップの中古フランチャイズ「Sofmap U-FRONT」のロゴ
 ソフマップが中古パソコン事業を加速し始めた。

 その第1弾として、都下および神奈川県などで展開している家電量販店のノジマと提携。ノジマの店舗内に、ソフマップが中古パソコンの販売機能と、中古パソコンの買い取り機能を持った店舗をインショップ型でオープンする。ソフマップでは、これを「Sofmap U-FRONT」という名称でフランチャイズ形式の出店とし、今後同様の出店を加速させる考えだ。

 本誌既報通り、ソフマップの中期経営計画では、この中古パソコンのフランチャイズ展開を、同社の重要な事業の柱と位置づけており、今後、急速な勢いでフランチャイズ展開をすすめる計画を明らかにしている。

 2002年度は、赤字決算が見込まれるソフマップにとって、収益性の高い中古パソコン事業の拡大は、まさにV字回復のためのエンジン役ともいえるものなのだ。

●新品の市場縮小を尻目に2桁増

 パソコン業界全体としても中古パソコンへの注目度は高まっている。

 ソフマップの試算によると、2002年の中古パソコンの市場規模は年間約1,000億円強。前年比で約10%増の伸び率になっているという。

 業界団体であるJEITAのパソコン出荷統計では、国内のパソコン出荷金額は年間1兆6,793億円。この統計数字が新品の市場規模を示しているといえるが、もう少し詳細に見てみると、これがパソコン市場全体の約90%をカバーしていること、さらに最終販売価格ではなく、メーカー出荷金額であるということを勘案すれば、直接比較する数値はもう少し大きくなるはずだ。つまり、販売店で流通する価格などを考えると、新品パソコンは、約2兆円の市場規模だといえ、ここから逆算すれば、中古パソコンの市場規模は、新品パソコンの20分の1程度の規模だと推定することができる。

 しかし、JEITAの統計では、前年比11%減という過去最悪の落ち込み率となっており、新品パソコン市場の低迷ぶりは深刻な問題となっている。そうしたなか、中古パソコンが2桁増の伸び率となっていることは、徐々に中古パソコンの比重が高まっていることの証。中古パソコンに注目が集まっているというのも、こうした数値的な背景があるからなのだ。

 さらに、この中古パソコンの高い伸び率は、当面続くであろうとの見方が業界筋では出ている。

 例えば、インターネットでの利用に限定するのであれば、最新のスペックをそれほど必要としないといったユーザーが増えている点が見逃せない。実際に、中古パソコンの購入者のなかでは、インターネットをやるのに最低限必要なスペックを搭載したパソコンを低価格で購入することができるという点が中古パソコンの購入メリットにあがっている。

 また、中古パソコンの買い取り手法などが定着しはじめ、新品パソコンを1年で買い換え、常に最新のスペックのパソコンを手に入れるという購入手法を繰り返すパワーユーザーが登場するなど、業界全体として中古パソコンが確保しやすい環境になってきた点も見逃せない。質の良い中古パソコンが出回るようになってきたともいえるのだ。

 さらに、今年10月以降、個人向けパソコンの改正リサイクル法の施行が見込まれており、これによって、中古パソコンに、さらスポットが当たる可能性があるのだ。

 というのも、改正リサイクル法施行前に販売されたパソコンに関しては、廃棄時に数千円単位のリサイクル費用の負担がユーザー側に求められるため、これを嫌って、中古パソコンとして売却するという動きが加速すると予測されているからだ。

 中古パソコン市場は、慢性的な品薄傾向にあるのが実態。これを機に、質の良い中古パソコンが流通するとともに、中古パソコンに対する認知度が高まることになるだろうと、業界筋では目論んでいる。

●ソフマップが強い背景

昨年新設された物流拠点「ソフマップ東京ロジスティクスセンター」。中古製品の再商品化作業を一カ所で行なえるリユースセンターが併設されている
 中古パソコン市場は、今後の成長が期待できる分野ではあるが、誰でもが参入できるという市場ではないのが実態だ。ソフマップが中期経営計画の柱のひとつとして、中古パソコン事業をかかげ、そのフランチャイズ店舗を2005年度までに直営店で20〜30店、フランチャイズ店で50〜70店という強気の出店計画を掲げているのも、同社が蓄積した中古販売ノウハウを、他社が簡単には真似ができないと見ているからにほかならない。

 例えば、そのノウハウのひとつは、中古パソコンの確保という点にある。

 中古パソコン販売の基本は、当たり前のことだが、まずは中古パソコンを確保することから始まる。だが、多くの販売店の場合、この中古パソコンが確保できないという問題に直面する。

 企業のリースアップ物件などを専門業者として提携して調達することは可能だが、中古としての商品性を持つ商品を確保することは難しいのが実態。リースアップした5年以上前のパソコンでは、Windows 95パソコンの可能性も強く、とても商品価値があるとはいえない。中古としても人気を持つ製品を確保するには、やはり個人を対象とした買い取りセンターなどを設置する必要があるのだ。

 だが、この買い取りセンターも一筋縄ではいかない。買い取りセンターを運用するには、それなりの仕組みを持つ必要があるからだ。例えば、中古買い取りセンターには、パソコンを買い換えたいというユーザーがパソコンを持ち込む例が多い。

 そのため、中古パソコンを持ち込んだユーザーが、持ち込んですぐに新品に買い換えられるだけの品揃えやサービスを持つことが必要なのだ。裏を返せば、新品販売で力を持っていないと、中古パソコンが集まらない、という構図になる。

 かつてある販売店が、中古パソコン専門店事業に乗り出そうとした例があったが、結局、中古パソコンを安定的に確保するために新品パソコンの販売に乗り出さざるを得なくなったという本末転倒ともいえる事態に陥ったことがあった。

 その点、ソフマップは、先行の利もあって、買い取るための仕掛けが進んでいる。例えば、「中古パソコンの日」を設定して、同店の会員を対象に通常よりも15%高く買い取ってくれたり、購入時に安く購入できたりといったサービスを用意している。

 また、現在所有しているパソコンが、自分が売りたい価格に達した時。あるいは、欲しい中古パソコンが買いたい価格に下がってきた場合に、情報を通知してくれるサーピスも用意している。

 中古パソコンを確保するためには、新品パソコン販売とのバランスが重要だというわけだ。

 さらに、中古パソコン事業には「目利き」ともいえる人材が必要。業界内では、中古パソコンの目利きともいえる人物を数千万円でスカウトした例がある、という噂が流れているほど。それほど、中古パソコン販売には優秀な目利きの存在が必要だというわけだ。

 「中古パソコン事業は、いかに質の良い中古パソコンを数多く確保できるかどうか。そして、それを運用できる人材が必要だ」(ソフマップ)というのが実態であり、だからこそ、他店が簡単には中古パソコン市場に参入できないのである。

●V字回復の切り札となるか

 現在、業界で流通する中古パソコンの価格は、事実上、ソフマップが決定権を握っているといってもいい。これは自他共に認めるところだ。

 すでに、年間15万台の中古パソコンを取り扱っており、中古パソコン市場全体におけるシェアは約20%と圧倒的である。

 そのソフマップが、この強みを背景に、中古パソコンのフランチャイズ展開に乗り出すのは、ごく自然な流れだといえよう。

 同社では、中古パソコンだけで、2005年度には現在の約2倍となる500億円の売り上げ規模を見込み、年間30万台を売り切る計画だ。

 中古パソコンは、1台あたりの利益率は高い。だが、新品以上に陳腐化しやすいこと、売れ筋と人気製品の格差が明白なことから、その販売管理は極めて難しい。

 この難しいビジネスをV字回復の切り札とするソフマップ。同社の中古パソコン事業の行方は業界内からも注目されている。

□ソフマップのホームページ
http://www.sofmap.com/
□関連記事
【3月19日】ソフマップ、ノジマ店舗内に中古専門店を出店
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0319/sofmap.htm
【2002年10月23日】ソフマップ、リユース事業を中心に据えた中期経営計画
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1023/sofmap.htm
【2002年9月20日】ソフマップ、東京板橋区に物流拠点を開設
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0920/sofmap.htm
【2002年2月21日】個人向けパソコンのリサイクル費用徴収の基本方針が固まる
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0221/recycle.htm

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(2003年3月24日)

[Text by 大河原克行]


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